2014年なんでもTOP10

−2014年 Music TOP10−

by Sweeperさん

1位 テイミング・ザ・ドラゴン:メリアナ
・エクステンデッド・サークル:トルド・グスタフセン
・シティ・フォーク:ジェームズ・ファーム
・チャーリー・アンド・エドナ :ステファン・ツァピス
・インヴェント:ジャン・ルイ・マテニエール&マルコ・アンブロシニ
・シャドー・シアター:ティグラン・ハマシアン
・セカンド・ロウ・ビハインド・ザ・ペインター:ロイ・アサフ
・ルーヤ:シン・イェウォン
・エル・ヴァレ・デ・ラ・インファティカ:ディノ・サルーシ
・ラスト・ダンス:キース・ジャレット&チャーリー・ヘイデン
・ビバング:レミ・パノシアン

(1位以外は順位なし)

1位は「テイミング・ザ・ドラゴン」メリアナです。
リスクを冒す、とよくいうけどピアニストとしてあれだけ名声があるBメルドーさんがこれほどギャンブルに近いコンセプトはないかと思う。ギャンブルといっても奇をてらった感じでない気負いがないのがいいです。
ティグランの新作にはかなりしびれました、Cヘイデンの新録音がもう聞けない(ただ過去の録音のものが出てくるのは大歓迎です)のがさびしい。
マルコ・アンブロシニが奏でる古い楽器奏でるバッハの音色が発見ともいえるものでした。

1位以下は順不同です。

1位 テイミング・ザ・ドラゴン:メリアナ
Mehlianaとは、Brad MehldauとMark Guilianaによるエレクトリック・デュオ
PianoTrioでないメルドーさんは久し振りです。モワーとしたシンセにシンセベース、エレピ、たまにアコピが入る。一方ドラムはメルドーさんの頭の中を完全に理解して激しくドラムをたたきまくる。これはたぶんJAZZとは言えないでしょう、でも間違えなくメルドー音楽です。非JAZZな趣の「Largo」でもかなりびっくりしたけど今回はその免疫があったせいかそれほどビックリもしない、むしろもっとガンガンやっちまえ、という気持ちすらある。辛口のものが美味しいというのに似ているのかも最初はびっくり辛いなのだけど慣れてくるとそれがかえって和んでくるというものか。何度も聞いてくるとそんな感じにさせる音楽です。

・エクステンデッド・サークル:トルド・グスタフセン
サックスとピアノの取り合わせがかなりKジャレットのヨーロピアンカルテットのような趣がある。Tord GustavsenのTrio演奏は静かで感情がグワリグワリするそういう演奏が多かったのでこの「似ている」具合は相当意外でした。これはこれでいいのだけどどこか別人が演奏しているような気もしています。これも聞き惚れるようにジンワリ聞くと違いが出てくるのだろうか? 意外なほどの化学反応の結果というべきなのでしょう。一方ではジワリジワリな曲も同居してちょっと落ち着かない気もします。

・シティ・フォーク:ジェームズ・ファーム
Joshua Redman (ts,ss),Aaron Parks (p),Matt Penman (b),Eric Harland (d)
この4人で2枚目のアルバム、それぞれのメンバーが曲を持ちよってみんなでアレンジしているんでしょうね、それはかなり楽しくて創造的な場面なのでしょうね。そういう雰囲気は今回もあります。が、前作がプログレのような曲が満載ですごく良かったので今回も期待が大きかった。今作は曲が今一つひねりが無いのですね、普通のジャズにちょっとひねりを加えたような立ち位置になっています。その前作はやりすぎましたので今回はちょっと遠慮しておきます、というそう「遠慮」が感じられる演奏と曲になっています。

・チャーリー・アンド・エドナ :ステファン・ツァピス
室内楽のような趣のあるM-1がいい。M-2の「モントーバンの火」は歌で聞いたことがあるがここではPianoTrioで聞けるのがいい。M-3が富士山という原題もFujisanというのが面白い。Tモンクの曲を3曲も演奏していたりどこか東欧な雰囲気(ギリシアらしい)チャーリー・アンド・エドナ というタイトルはCチャップリンと恋人のエドナのことらしい、どこか懐かしい感じもする曲とそれとは違う新しい感覚にあふれたピアノのサウンドのアンバランスが心地よい。

・インヴェント:ジャン・ルイ・マテニエール&マルコ・アンブロシニ
Jean Louis Matinierがaccordionで、Marco Ambrosiniが nyckelharpaを演奏する。
nyckelharpaという古くからある楽器、ヴァイオリンと同種Jean Louis Matinierのaccordion目当てで購入した、正解でした、しかもnyckelharpaとaccordionでバッハの2曲が演奏されている。nyckelharpaという、とてもレアで独特な響きがする楽器は古楽で使われる楽器で当然これを演奏するひとは少ない。もうこの楽器が鳴るだけで感動的ですらある。ということで、accordionが結構縦横無尽に音の配置をするDUOになる、accordionはどちらかというとお膳立てしてもらう楽器なのにこのDUOのセッションでは逆になっている。accordion弾きの私にはとても参考になる、アプローチで、しかもJean Louis Matinierの演奏が好きなので特にこの演奏がいい、ある意味、音色で楽しめてしまう、ハーモニーももちろんいいのだけど。そう二度おいしいというところか同時においしいというべきか。聞きどころがいっぱいということなのです。

・シャドー・シアター:ティグラン・ハマシアン
前作Verveでのピアノソロアルバムでは哲学的な音をしているなと思ったらグルジェフの影響が大きいとのこと。そして今回はアルメニアの音楽をグループで音楽にしてみました、特にピアニストというより音楽家としてそのアルバム制作に参加するような音楽、ボーカルが入り、弦が入り、そして殆どが例外なく変拍子の曲。繰り返し聞くとある一定の心地よさ、こぶしに近いような歌い回してきなメロディがすごく染みてくる曲の数々。ピアニストのアルバムとして購入したけどいい意味で裏切られてすごくいいコンセプトアルバム&ヴォーカルアルバムでした。アルメニア・トラッドの曲が頭から離れない、すごく切なく(おそらくは歌詞を知ったらもっと切なくなるでしょう)。

・セカンド・ロウ・ビハインド・ザ・ペインター:ロイ・アサフ
イスラエル出身のピアニスト、RoyAssafのPianoTrio作。
数曲スタンダードが演奏されているがそれ以外はオリジナル。曲の作りがかなり複雑で演奏もかなり高度な演奏です。途中の曲でシンセが出てくるしエレピでの演奏があるのでアコースティック原理主義な人ではないですが、音楽はとても鋭角的で確実な個性がありそれを曲や演奏の角になって何度も聞きたくなる音にさせている。曲がChamberMusicのような響きがある、ということを付け加えておきましょう。
アルバム全体からするとシンセ曲はやはりやや浮いている気もします、使う必然性があればもっと使えばいいのにとさえ思うのですが。2曲目のワルツ曲がとても作曲の高さを感じさせる人です。

・ルーヤ:シン・イェウォン
ECMからのリリース、韓国女性によるヴォーカルにAaronParksのピアノとRobCurtoのアコーディオンが絡む。youtubeでYeahwon Shinの音源も聴いたがこの人の声がとても温かく包み込むような世界がある。outubeでの演奏ではボサノバを歌っていたがその彼女の声があまりにもいいので化学作用として伴奏者も素晴らしくなっていくその演奏は聴きごたえがある。このアルバムはそんな声を最大限に活かせるテーマ、Lullaby です。
母性をも感じさせるこの声で一応曲があるのだろうけどそれらしく聞こえるようで聞こえない、かなり即興もしくはフェイクが入っているのでしょう、そこにAaronParksのピアノが何とも言いようが無い音で絡んでいる。うーん、かなり至福な子守唄である。ECM録音でなくともボサノバ録音であったらならFULLで聞いてみたくなる虜になってしまった声をもっと聴いてみたい。

・エル・ヴァレ・デ・ラ・インファティカ:ディノ・サルーシ
サルーシ・グループでの久々の演奏である。息子のギター兄のサックス、甥のベースと家族バンドである。録音場所がSaluzzi Music Studioという場所を見ると自宅スタジオでの録音の様である。流石にパワーみたいなものが薄れて枯れた演奏になってきている気がします、なんというか躍動感が薄れたというか、もしくはFusion的な音を排してよりフォークローレのような音に原点回帰したというべきか。
Dinoのバンドネオンの音は相変わらず素晴らしい。躍動的な弾き方は流石に少なくなってきている気がしますがそれでもこの人の出す音は他の人に代えられない何かがあり長年ECMレーベルが手放さない理由もそこにあるのだと思う。収録曲も大半は長い組曲のようでしかもDinoのオリジナルでもあります。演奏は今回参加のクラシックギターのNicolasBrizuelaという人とJoseMariaとの静かな掛け合いと兄Felixのアンサンブル的な参加という聴き方でいいのだと思う。

・ラスト・ダンス:キース・ジャレット&チャーリー・ヘイデン
もう言葉や説明が要らない。
Jasmineと同じ録音とのこと。その時にまとめて出してくれればよかったのにという気持ちもあります。
でもこの音楽そのものを聞けばそんなことはどうでもよくなる。選曲がやや意外なものもあり演奏はサクサクと録音できたんでしょうね、という気がします。この二人があのアメリカンカルテットでの厳しい音を出していた表情とはまた別の側面が聞けて正直うれしいところです。

・ビバング:レミ・パノシアン
フランス人のPianoTrioです。値段とジャケット買いでしたが、見事に当たりです。
一曲目から変拍子な雰囲気で始まり、軽めなPOPな音楽と思わせておいて相当に難しいことしています。しっかりとピアニスティックな響きを持たせてやや踊れる感覚も残しています。ありそうでなかった「軽さ」が売りかもしれません。ただ相当の技量がありしかも編曲が優れていてよく練られた構成のものが多いです。次回作でたらチェックですね、これは見逃せないです。全編オリジナルで固めていますね、それも楽しい音楽にさせている。

(received '15.1.24)

Sweeperさんのプロフィール...故・ウクレレ前田さんのブログ『裏声喫茶』の常連さん。14年続けて『なんでもTOP10』に参加いただき、こっちのほうでもすっかり常連さん。どうもありがとう!

 

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