私が山に登る理由(1)

 私が、富山高校山岳部に入部した頃、すなわち1年生だった頃は山岳部員は全員男で、女子部員は居なかった。かつては居たらしいんだけどね。男だけの部活を2年間続け、私が3年生になった時、十数年ぶりに山岳部に女子部員が入った! それも2人も!!! 入学したての1年生が2人(あと、男も3人ほど入った)。で、それまで女子と縁遠い部活動をしてたものだから、うれしくてさ(笑)。「失った2年間を取り戻してやる!」って(笑)。で、自然と私はこの2人の1年生女子部員の世話係になったんだけど...(笑)。

『 ─プロローグ─ グラウンド横のロッジ。去年建て変えたそうだが、隣の大きな旅館に圧倒されて隣りで小さくなっている。入口に生える毒だみの花の数花の数。こんな場所でも好きでやってくる奴がいるものだ。今年入ったらしい少女の面影を残した新米の子が、常連らしき体のでけえやつの相手をしている。M & T 「お客さん。お客さんは随分この辺りのことに詳しいのね」 T 「おう。なんたってオレはこのロッジ“Bushitsu”の主だけんのー。この辺りの山のことなら何でも知っとらあさ。のハハハハ...」(以下、略)』

 これは、同期の山岳部員が'88年の私宛の年賀状に書いた、1年生女子部員2人と私の仲を揶揄する文章だが、ま、はたから見ると誰の目にもそう写ってたかもしれない(笑)。ちなみに、M & T が1年生女子部員2人のことで、T とは私のことね(笑)。で、すっかり1年生女子部員のお守役になってた私だが、M & T のうち、Mさんのことが好きになってね...(笑)。
 そんなある日、Mさんと私が『1対1』で部室の前にたたずんでた時、Mさんが自分の『夢』について語ってくれたことがあった。その時にMさんが語ってくれた『夢』の内容とはこうだ。「山に登るひとと結婚して、子供が生まれたら、家族みんなで山に登りにいくの。そんなのって良くない?」 Mさんはそう言って私に微笑みかけた。「ウン、イイ話だね」とか何とか私は返したハズだが、内心ではこう叫んでた。「そうか! Mさんは『山男』と結婚したいのか! じゃあ、山はヤメられないな!!!」...実は私は高校時代は、どっかの山岳会のババアどもと同じようにリーダーが決めた計画に沿って動くだけで、自分からどこの山に行きたいかとかそんなプランなど起てたことすらない『受動的登山者』だった。ハッキリ言って、山なんかどうでもよく、大学行ったら山やめるつもりでいたくらい。ところが、Mさんが「結婚相手の条件は山男」なんて言うものだからさ、「こりゃあ、大学行っても山やめれんなあ...」となった(笑)。だって、Mさんのこと好きだったんだもん(笑)。だから、信州大学に進学してすぐに松本ワンダーフォーゲル部の門を叩いた。Mさんの『結婚相手の資格』を失うわけにはいかなかったからさ。こうして私は、信州大学松本ワンダーフォーゲル部部員になったんだけど、これから先が...。
 さて、「結婚相手の条件は山男」などと言ってたMさん、高校卒業後はアッサリと山をやめ、大学ではテニスサークルに所属。勿論、早い段階で「山に登るひとと結婚して、子供が生まれたら、家族みんなで山に登りにいく」という『夢』は放棄したものと思われます(爆笑〜!!!)。勿論、今現在私が山に登る理由には、Mさんのことは全く関係ございません。13年前のカラ手形なんか信用しとらんよ!!! でも、これだけは断言できる! もし、13年前のMさんのあの『夢』の話を聞かなかったら、私はもう山に登ってない。10年以上前にやめてる...って。

 女はみんな嘘つきだ!!!(笑)

※この項つづく

('00.11.12)

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