葬式饅頭あたらんそうだ。

 日本経済新聞の毎週水曜日に、作家の出久根達郎さんが『レターの三枚目』というコラムを連載してるんですけど、3月13日(水)掲載分のコラムで、出久根さんは最近の新聞や雑誌の事件報道で「〜という。」で終わる文がやたらと多いことを批判してます。調べればハッキリすることでさえ、「〜という。」などと伝聞調で終わるのは、報道としていかがなものか...というのがコラムのおおまかな内容でしたけど、このコラムの終わりほうに次のような文章がありました。

 子供の頃、友だちが、「何々だそうだ」ときわめてあいまいな話し方をすると、すかさず、こんな文句を歌うように唱えてひやかした。「ソーダ村の村長さんが、ソーダ飲んで死んだそうだ。葬式まんじゅう、でっかいそうだ」
 私の村だけで行われた文句かと思っていたら、そうじゃない。ほぼ、全国で、子供たちが大声ではやしていたらしい。

(出久根達郎『レターの三枚目』より−日本経済新聞2002年3月13日−)

 「私の村だけで行なわれた文句かと思っていたら、そうじゃない。ほぼ、全国で、子供たちが大声ではやしていたらしい」っつうのは...私もこのセリフ吐きたいくらいだワ(笑)。私が幼少期を過ごした富山でも、この「ソーダ村の村長さん」の歌、はやしたててました(笑)。ただ、出久根さんが紹介するのと違って、1970年代後半の富山ヴァージョンでは「葬式まんじゅう、でっかいそうだ」ではなく、「葬式まんじゅう、あたらんそうだ」という文句で締めていました。
 この「あたらん」っつう文句は、富山(もしくは北陸近辺)でしか通用しない。よーするに方言です。富山県人のなかにはこれを方言だと思ってないひとも居るみたいですけど(笑)、他府県のひとには通じないようですよ(笑)。
 いちお説明しておくと、「あたる」っつうのは、富山ではね、「宝くじに当たる」「食中毒に当たる」といったような全国共通の用途以外に「もらえる」「いただく」「与えられる」「支給される」っつう意味が加わります。何を隠そう、私も「あたる」って言葉に富山ローカルな意味があるとはず〜っと知らずに居ました(笑)。「あたる」って言葉に富山ローカルな意味がある...って気付いたのは、富山ローカルな洋楽番組『KNBポップス'97』のパーソナリティー・渡辺一宏さんがそう言ってたからです(笑)。富山のローカル局・北日本放送(KNB)の局アナの渡辺氏は栃木県出身。その渡辺氏はKNBに入社して初めて給料が出た時に先輩社員たちにこう言われたんだって。「給料あたったんけ?」(疑問文の語尾に「け?」が付くのも北陸ローカルです...笑) この「給料あたったんけ?」発言聞いて渡辺氏はこう思ったんだって、「ひと月まともに働いた正当な労働の対価をもらっただけなのに、『当たった』だとお...!?」(憤然)
 共通語では「不確実な要素が絡むものが手元に来た場合」のみに「あたる」って使いますけど、富山ローカルでは「手元に来て当然なもの」にも「あたる」って使うんですよね。個人的には「与えられる」の短縮形だと思ってますけど(笑)。...っつうか、もっと分かり易くいうと、共通語の「あたる」って英語で言うと「hit」、富山ローカルの「あたる」って英語で言うと「get」(笑)。「ボーナスがあたった」「有給休暇があたった」「お年玉があたった」「賞状とトロフィーがあたった」「粗品があたった」...で、富山のソーダ村の村長さんの葬儀では、葬式饅頭が出なかった...っと(苦笑)。

※この記事をみて、「ウッソだぁ〜!!!」と納得できない富山県人へ。
 英和辞典で「get」を引いてみなさい。「あたる」なんて日本語、載ってないよ!(笑)

('02.3.14)

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