Against the run of the mill
Swimming against the stream
Life in two dimensions
Is a mass production scheme
(“Grand Designs”より)

RUSH--Power Windows
RUSH『パワー・ウィンドウズ』
(1985年、国内盤 : イーストウエスト AMCY-2299)
1. The Big Money 2. Grand Designs
3. Manhattan Project 4. Marathon 5. Territories
6. Middletown Dreams 7. Emotion Detector
8. Mystic Rhythms

produced by Peter Collins and RUSH

 前々作『SIGNALS』からいわゆる「ポリスの時代」(この表現、好きだねぇ...苦笑)と呼ばれる近未来路線に踏み込んだRUSHが1985年にリリースした13作目。『SIGNALS』を最後に「第4のメンバー」とまで呼ばれたプロデューサー、テリー・ブラウンと手を切ったRUSHは前作『GRACE UNDER PRESSURE』ではピーター・ヘンダーソンと組んでたけど、このコンビは1作のみで解消。新たにRUSHがプロデューサーとして選んだのが、ピーター・コリンズ。彼らと一緒に全米をツアーして廻ったゲイリー・ムーアが使ってたプロデューサーを横取り(笑)したワケです。このピーター・コリンズとタッグを組んで制作された本作はそれまでのRUSHのどの作品よりもポップで、きらびやか。この作品と同じく、いわゆる「ポリスの時代」と呼ばれる時代の『SIGNALS』や『GRACE UNDER PRESSURE』が実験的な作風であるのに対して、この作品はホップさとハードさのバランスが絶妙。よって、この作品はRUSH入門者に最適ともいえ、事実この私もこのアルバムからRUSHにハマっていった(笑)。なかには、この作品こそ最高傑作に推す声もあるくらいで、この作品を手掛けたピーター・コリンズは一躍売れっ子プロデューサーになっていくのでした。ボン・ジョヴィから声がかかって彼らの作品のプロデューサー務めたくらいだから(笑)。
 前作『GRACE UNDER PRESSURE』からキーボードの使用が大っぴらでしたが、本作でもキーボードばんばん使ってます。キーボードだけじゃなく、生ストリングスやコーラス隊入れてるし(笑)。アルバム単位でいえば一番アレンジ凝ってるんじゃないでしょうか。あと、このアルバムから、ヴォーカル・ハーモニーも導入。っつうか、前作『GRACE UNDER PRESSURE』の“Kid Gloves”からバック・ヴォーカル付けてるんだけど、“The Big Money”では目立つほどバック・ヴォーカル付いてます(笑)。
 このアルバムでニール・パートが選んだテーマは『POWER』。お金の力、兵器の力、帝国主義の力、都会の吸引力...などなど、力にまつわる詩が綴られております。
 ここで、この「Brought to you by the letter "M"」(笑)のアルバム収録曲を順に見ていきましょう。旧アナログのA面の1曲目“The Big Money”はシングル・カットされ、全米チャートで45位まで上昇するヒットになりました。今のところ、RUSHの曲が『Billboard HOT 100 Singles』にランク・インしたのはこれが最後になってます。この曲はヒットするのも分かるくらいポップでキャッチー。私がRUSHにハマるキッカケもこの曲でした。ヴィデオ・クリップでは、前作『GRACE UNDER PRESSURE』の時から続いてるニール・パートの短髪三つ編みおさげヘアが確認できます(笑)。みんな観て笑ってあげて下さい(笑)。
 続く“Grand Designs”はシンセのイントロがきらびやか。「工場の操業に逆らい/流れに逆らって泳いでいく」って歌詞が好き。原子爆弾誕生の悲劇を題材にした、ズバリ“Manhattan Project”(『マンハッタン計画』こそ、原子爆弾開発プロジェクトの名ですからね)は、生ストリングスを導入した劇的な曲。「The Pilot of "Enola Gay"/Flying out of the shockwave/On that August day/All the power could be/And the cause of history/Would be changed for evermore...」。中盤に7/4拍子、終盤にコーラス隊を配した“Marathon”は、マラソンの中盤の苦しさとゴールインの時の劇的さ表現した曲。曲構成が上手く出来てるッス。ゲディのベースが、リードギターならぬ「リードベース」と呼ばれるほど目立ってる(笑)。
 旧アナログB面に移ると、1曲目は“Territories”。植民地主義/帝国主義...考えようによっては『グローバル化』をも批判したとも受け取れるエスニックな味付けの曲。郊外の街に住む人々が都会に夢を求めることを題材にした“Middletown Dreams”は隠れた名曲(と、個人的には思ってる...笑)。『SIGNALS』の“Subdivisions”で扱ったテーマがここでも登場。
 中盤のアレックスのギター・ソロが華麗な“Emotion Detector”を挟んで、アルバムの最後に収録されてる“Mystic Rhythms”はスピリチュアルな曲。この曲の歌詞に出てくる「northern lights」は、1985年にゲディ・リーがヴォーカルで参加したカナディアン・チャリティー・オールスターズ「NORTHERN LIGHTS」(カナダ版U.S.A.フォー・アフリカ)を想い起こさせるね(笑)。ちなみにこの“Mystic Rhythms”は日本では“The Big Money”に続く2ndシングルとして発売されました。たぶん、今やレア・アイテム(笑)。
 なお、このアルバムは『HEMISPHERES』以来のイギリス録音っつうことも話題になってましたけど...音的にはあんまり関係ありません(笑)。
 ところで、この『POWER WINDOWS』ほど、収録曲の力関係が変わったアルバムは、RUSHには無いです(笑)。1990年リリースの2枚組ベスト・アルバム『CHRONICLES』には『POWER WINDOWS』からは、“The Big Money”と“Manhattan Project”が収録されました。ライヴ・ヴァージョンで“Mystic Rhythms”が入ってるけど、『POWER WINDOWS』を代表する曲は“The Big Money”と“Manhattan Project”...と1990年当時は考えられてたワケです。ところが、1997年リリースのベスト盤『RETROSPECTIVE II 1981-1987』は、『POWER WINDOWS』からは、“The Big Money”と“Marathon”、“Mystic Rhythms”を収録してます。7年経った間に、曲の評価というか位置付けが変わってるワケですね。“Mystic Rhythms”に関して言えば、RUSH本人たちがライヴで大事に演奏し続けたせいで“Manhattan Project”以上の評価を得るようになったものと思われます(笑)。“Manhattan Project”のほうがイイ曲だと思うけどねぇ...(苦笑)。
 で、私がRUSHにハマるキッカケになったこのアルバム、今でもよく聴くかというと、残念ながらあまり聴きません。というのは、シンセの音色があまりも、きらびやか過ぎ。良くも悪くも'80年代のバブリィな時代の空気を伝えてて、今の耳にはそーとーに恥ずかしく聴こえるから...意識して避けてます(笑)。

 ここから先では、個人的な思い入れを語るので、そーゆーのが鬱陶しいひとはINDEXへお戻りになって結構です。


『POWER WINDOWS』と私

 私が初めてRUSHを買って聴いたアルバムがこの『POWER WINDOWS』。『SIGNALS』は友達の家で聴いてたし、『GRACE UNDER PRESSURE』からの“Afterimage”はFMラジオ番組をエア・チェックしてテープに録ってたから、「初めて聴いた」という表現は正しくないので、「初めて買って聴いたアルバム」とさせていただきます。ちなみに、私がホントに初めて聴いたRUSHの曲は“Red Barchetta”。1981年頃、地元・富山の自動車販売店のAMラジオCM曲として使われてた(笑)。このことに気が付いたのは、1987年に『EXIT...STAGE LEFT』を聴いてからです。
 1983年から1985年...すなわち学年で言えば、中学2年から高校1年...にかけての私は、ラジオ日本が土曜深夜に放送してた『全米TOP40』を毎週聴き、チャート・ノートを付けていたチャート・マニアだった。TOP40入りした曲はみんなFMラジオ番組をエア・チェックしてカセット・テープに録音してた。『TOP40入りした曲テープ・コレクション』を完璧にするためには...TOP40入りしそうな曲もあらかじめ録音しとけばいい(笑)。当時は、FMラジオでかかる曲は『全米TOP40』ものが主流。FM雑誌も4誌体制(2001年末に最後の牙城『FM fan』も休刊になり、ついに「0誌」になってしまったが...)を誇り、FM番組表っつうものが充実してたから、どの番組でどの曲がかかるか、あらかじめ分かってたし、FM雑誌では全米チャートも100位まで載せてたから、TOP40入りしそうな曲もどれか見当がついてた。だからTOP40入りしそうな曲がFMラジオで流れる日には、私はラジオの前で「網を張って」(録音の準備をして...笑)曲がかかるのを待ち構えてた(笑)。そんな頃に私は「あの曲」と出会ったのだった。'85年11月9日付で『Billboard』HOT 100 Singles にチャート・インした「ある曲」は、着実に順位を上げ、'85年12月28日付ではTOP50入りを果たしました。その「ある曲」こそ、RUSHの“The Big Money”。


『Billboard』HOT 100 Singles 1985年12月28日付より

 TOP40入りまぢかまで上昇したこのRUSHの“The Big Money”は、当然当時の私のなかでは「録音しておくべき曲」としてリスト・アップされており、'86年1月のFMとやまの某深夜番組でこの曲がかかることを『FM fan』の番組表で知った私は、録音準備をしてこの曲がかかる時を待っていた。深夜25時からの某番組で、“The Big Money”がかかったのは番組終了まぎわだった。もう深夜26時までまぢかという時。単に自分の『TOP40入りした曲テープ・コレクション』を完璧にするだけのために深夜まで起きて曲がかかるのを待っていた私は、このRUSHの“The Big Money”をいちど聴いてブチのめされてしまった! 「今、オレが聴いた曲はいったい何だ? 何て凄い曲だッ!!!」。今まで聴いたことの無いほどドラマチックな展開を持つ、きらびやかな曲に私の耳には響いたのだった、その“The Big Money”って曲は。夜遅かったのでその日はすぐに寝たけど(笑)、翌日はこの録音したテープを繰り返し繰り返し何度も聴いて過ごした。ところで、この私の録音した“The Big Money”、曲が5' 37" という長さのためが、件の深夜FM番組では完奏されなかった...尻切れトンボの状態でしか録音できなかった。ということで、またFMで“The Big Money”がかかるのを待っていればよかったんだけど、当時のFMはTOP40に入ればよく曲がかかったものの、入らないと冷たい扱いを受けてた。RUSHの“The Big Money”は『Billboard』HOT 100 Singles の'86年1月11日付の45位がピークで、後は奈落の底まで(笑)落ちていったので、かかる機会はなかなか無かった。そこで、私は当時聴き浸ってた(笑)富山ローカルな洋楽ラジオ番組『KNBポップス'86』へRUSHの“The Big Money”をリクエストするハガキを出しまくった。4週連続ボツを喰らい、5週目にしてようやく曲がかけてもらえた。今回は完奏だ。勿論、これもテープに録音し、何度も聴きまくった。よく「テープが伸びるほど聴いた」という表現を耳にするけど、この時ホントにテープが伸びたもんなぁ...(笑)。そうしてますますRUSH熱を高めた私は、その年の春休みにLPで『POWER WINDOWS』を買った。
 この頃の私がLP買うっていうのは大事件で、この当時私が所有してたLPはクィーンの『GREATEST HITS』と『HOT SPACE』、ポリスの『ZENYATTA MONDATTA』と『SYNCHRONICITY』、そして寺尾 聰の『REFLECTIONS』だけだったモン(笑)。こうして初めて買って聴いたRUSHのアルバム『POWER WINDOWS』、A面1曲目は聴き慣れた“The Big Money”、次はシンセのイントロがきらびやかな“Grand Designs”、カッコイイ曲で、アルフィー・ファンに聴かせてやりたい...と感じた“Manhattan Project”、7/4の変拍子で迫る“Marathon”。B面はエスニックな風味漂う“Territories”で始まり、“Middletown Dreams”、“Emotion Detector”と続き、スピリチュアルな“Mystic Rhythms”で終わる。1曲1曲聴くごとに新鮮な驚きがあった。毎晩、寝る前に『POWER WINDOWS』を聴くのが日課になるほどハマった私に、ある変化が訪れた。チャート・マニアを卒業〜!!!(笑) ラジオ日本の『全米TOP40』を聴くのもやめたし、『FM fan』買うのもやめた。あれほど御執心だった『TOP40入りした曲テープ・コレクション』を編集するのもやめた。RUSHの『POWER WINDOWS』さえあれば、あとの音楽は要らない...と思ってた(笑)。そんな時期が半年は続いたなぁ...。で、半年後にしたことは...『POWER WINDOWS』だけじゃ満足出来ないので、RUSHのバック・カタログを買い集め始めた(笑)。こうして、RUSHファンがひとり、出来上がった(笑)。↓こんなもの↓まで買ったしな(笑)。


Complete Score Series...バンドスコアです(笑)。

 

('02.2.24)

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