Against the run of the mill
Swimming against the stream
Life in two dimensions
Is a mass production scheme(“Grand
Designs”より)
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RUSH--Power
Windows produced by Peter Collins and RUSH |
前々作『SIGNALS』からいわゆる「ポリスの時代」(この表現、好きだねぇ...苦笑)と呼ばれる近未来路線に踏み込んだRUSHが1985年にリリースした13作目。『SIGNALS』を最後に「第4のメンバー」とまで呼ばれたプロデューサー、テリー・ブラウンと手を切ったRUSHは前作『GRACE
UNDER
PRESSURE』ではピーター・ヘンダーソンと組んでたけど、このコンビは1作のみで解消。新たにRUSHがプロデューサーとして選んだのが、ピーター・コリンズ。彼らと一緒に全米をツアーして廻ったゲイリー・ムーアが使ってたプロデューサーを横取り(笑)したワケです。このピーター・コリンズとタッグを組んで制作された本作はそれまでのRUSHのどの作品よりもポップで、きらびやか。この作品と同じく、いわゆる「ポリスの時代」と呼ばれる時代の『SIGNALS』や『GRACE
UNDER
PRESSURE』が実験的な作風であるのに対して、この作品はホップさとハードさのバランスが絶妙。よって、この作品はRUSH入門者に最適ともいえ、事実この私もこのアルバムからRUSHにハマっていった(笑)。なかには、この作品こそ最高傑作に推す声もあるくらいで、この作品を手掛けたピーター・コリンズは一躍売れっ子プロデューサーになっていくのでした。ボン・ジョヴィから声がかかって彼らの作品のプロデューサー務めたくらいだから(笑)。
前作『GRACE UNDER
PRESSURE』からキーボードの使用が大っぴらでしたが、本作でもキーボードばんばん使ってます。キーボードだけじゃなく、生ストリングスやコーラス隊入れてるし(笑)。アルバム単位でいえば一番アレンジ凝ってるんじゃないでしょうか。あと、このアルバムから、ヴォーカル・ハーモニーも導入。っつうか、前作『GRACE
UNDER PRESSURE』の“Kid
Gloves”からバック・ヴォーカル付けてるんだけど、“The Big
Money”では目立つほどバック・ヴォーカル付いてます(笑)。
このアルバムでニール・パートが選んだテーマは『POWER』。お金の力、兵器の力、帝国主義の力、都会の吸引力...などなど、力にまつわる詩が綴られております。
ここで、この「Brought to you by the letter
"M"」(笑)のアルバム収録曲を順に見ていきましょう。旧アナログのA面の1曲目“The
Big
Money”はシングル・カットされ、全米チャートで45位まで上昇するヒットになりました。今のところ、RUSHの曲が『Billboard
HOT 100
Singles』にランク・インしたのはこれが最後になってます。この曲はヒットするのも分かるくらいポップでキャッチー。私がRUSHにハマるキッカケもこの曲でした。ヴィデオ・クリップでは、前作『GRACE
UNDER
PRESSURE』の時から続いてるニール・パートの短髪三つ編みおさげヘアが確認できます(笑)。みんな観て笑ってあげて下さい(笑)。
続く“Grand
Designs”はシンセのイントロがきらびやか。「工場の操業に逆らい/流れに逆らって泳いでいく」って歌詞が好き。原子爆弾誕生の悲劇を題材にした、ズバリ“Manhattan
Project”(『マンハッタン計画』こそ、原子爆弾開発プロジェクトの名ですからね)は、生ストリングスを導入した劇的な曲。「The
Pilot of "Enola Gay"/Flying out of the shockwave/On that August
day/All the power could be/And the cause of history/Would be changed
for
evermore...」。中盤に7/4拍子、終盤にコーラス隊を配した“Marathon”は、マラソンの中盤の苦しさとゴールインの時の劇的さ表現した曲。曲構成が上手く出来てるッス。ゲディのベースが、リードギターならぬ「リードベース」と呼ばれるほど目立ってる(笑)。
旧アナログB面に移ると、1曲目は“Territories”。植民地主義/帝国主義...考えようによっては『グローバル化』をも批判したとも受け取れるエスニックな味付けの曲。郊外の街に住む人々が都会に夢を求めることを題材にした“Middletown
Dreams”は隠れた名曲(と、個人的には思ってる...笑)。『SIGNALS』の“Subdivisions”で扱ったテーマがここでも登場。
中盤のアレックスのギター・ソロが華麗な“Emotion
Detector”を挟んで、アルバムの最後に収録されてる“Mystic
Rhythms”はスピリチュアルな曲。この曲の歌詞に出てくる「northern
lights」は、1985年にゲディ・リーがヴォーカルで参加したカナディアン・チャリティー・オールスターズ「NORTHERN
LIGHTS」(カナダ版U.S.A.フォー・アフリカ)を想い起こさせるね(笑)。ちなみにこの“Mystic
Rhythms”は日本では“The Big
Money”に続く2ndシングルとして発売されました。たぶん、今やレア・アイテム(笑)。
なお、このアルバムは『HEMISPHERES』以来のイギリス録音っつうことも話題になってましたけど...音的にはあんまり関係ありません(笑)。
ところで、この『POWER
WINDOWS』ほど、収録曲の力関係が変わったアルバムは、RUSHには無いです(笑)。1990年リリースの2枚組ベスト・アルバム『CHRONICLES』には『POWER
WINDOWS』からは、“The Big Money”と“Manhattan
Project”が収録されました。ライヴ・ヴァージョンで“Mystic
Rhythms”が入ってるけど、『POWER WINDOWS』を代表する曲は“The Big
Money”と“Manhattan
Project”...と1990年当時は考えられてたワケです。ところが、1997年リリースのベスト盤『RETROSPECTIVE
II 1981-1987』は、『POWER WINDOWS』からは、“The Big
Money”と“Marathon”、“Mystic
Rhythms”を収録してます。7年経った間に、曲の評価というか位置付けが変わってるワケですね。“Mystic
Rhythms”に関して言えば、RUSH本人たちがライヴで大事に演奏し続けたせいで“Manhattan
Project”以上の評価を得るようになったものと思われます(笑)。“Manhattan
Project”のほうがイイ曲だと思うけどねぇ...(苦笑)。
で、私がRUSHにハマるキッカケになったこのアルバム、今でもよく聴くかというと、残念ながらあまり聴きません。というのは、シンセの音色があまりも、きらびやか過ぎ。良くも悪くも'80年代のバブリィな時代の空気を伝えてて、今の耳にはそーとーに恥ずかしく聴こえるから...意識して避けてます(笑)。
ここから先では、個人的な思い入れを語るので、そーゆーのが鬱陶しいひとはINDEXへお戻りになって結構です。
『POWER
WINDOWS』と私
私が初めてRUSHを買って聴いたアルバムがこの『POWER
WINDOWS』。『SIGNALS』は友達の家で聴いてたし、『GRACE UNDER
PRESSURE』からの“Afterimage”はFMラジオ番組をエア・チェックしてテープに録ってたから、「初めて聴いた」という表現は正しくないので、「初めて買って聴いたアルバム」とさせていただきます。ちなみに、私がホントに初めて聴いたRUSHの曲は“Red
Barchetta”。1981年頃、地元・富山の自動車販売店のAMラジオCM曲として使われてた(笑)。このことに気が付いたのは、1987年に『EXIT...STAGE
LEFT』を聴いてからです。
1983年から1985年...すなわち学年で言えば、中学2年から高校1年...にかけての私は、ラジオ日本が土曜深夜に放送してた『全米TOP40』を毎週聴き、チャート・ノートを付けていたチャート・マニアだった。TOP40入りした曲はみんなFMラジオ番組をエア・チェックしてカセット・テープに録音してた。『TOP40入りした曲テープ・コレクション』を完璧にするためには...TOP40入りしそうな曲もあらかじめ録音しとけばいい(笑)。当時は、FMラジオでかかる曲は『全米TOP40』ものが主流。FM雑誌も4誌体制(2001年末に最後の牙城『FM
fan』も休刊になり、ついに「0誌」になってしまったが...)を誇り、FM番組表っつうものが充実してたから、どの番組でどの曲がかかるか、あらかじめ分かってたし、FM雑誌では全米チャートも100位まで載せてたから、TOP40入りしそうな曲もどれか見当がついてた。だからTOP40入りしそうな曲がFMラジオで流れる日には、私はラジオの前で「網を張って」(録音の準備をして...笑)曲がかかるのを待ち構えてた(笑)。そんな頃に私は「あの曲」と出会ったのだった。'85年11月9日付で『Billboard』HOT
100 Singles
にチャート・インした「ある曲」は、着実に順位を上げ、'85年12月28日付ではTOP50入りを果たしました。その「ある曲」こそ、RUSHの“The
Big Money”。
TOP40入りまぢかまで上昇したこのRUSHの“The
Big
Money”は、当然当時の私のなかでは「録音しておくべき曲」としてリスト・アップされており、'86年1月のFMとやまの某深夜番組でこの曲がかかることを『FM
fan』の番組表で知った私は、録音準備をしてこの曲がかかる時を待っていた。深夜25時からの某番組で、“The
Big
Money”がかかったのは番組終了まぎわだった。もう深夜26時までまぢかという時。単に自分の『TOP40入りした曲テープ・コレクション』を完璧にするだけのために深夜まで起きて曲がかかるのを待っていた私は、このRUSHの“The
Big
Money”をいちど聴いてブチのめされてしまった! 「今、オレが聴いた曲はいったい何だ? 何て凄い曲だッ!!!」。今まで聴いたことの無いほどドラマチックな展開を持つ、きらびやかな曲に私の耳には響いたのだった、その“The
Big
Money”って曲は。夜遅かったのでその日はすぐに寝たけど(笑)、翌日はこの録音したテープを繰り返し繰り返し何度も聴いて過ごした。ところで、この私の録音した“The
Big Money”、曲が5' 37"
という長さのためが、件の深夜FM番組では完奏されなかった...尻切れトンボの状態でしか録音できなかった。ということで、またFMで“The
Big
Money”がかかるのを待っていればよかったんだけど、当時のFMはTOP40に入ればよく曲がかかったものの、入らないと冷たい扱いを受けてた。RUSHの“The
Big Money”は『Billboard』HOT 100 Singles
の'86年1月11日付の45位がピークで、後は奈落の底まで(笑)落ちていったので、かかる機会はなかなか無かった。そこで、私は当時聴き浸ってた(笑)富山ローカルな洋楽ラジオ番組『KNBポップス'86』へRUSHの“The
Big
Money”をリクエストするハガキを出しまくった。4週連続ボツを喰らい、5週目にしてようやく曲がかけてもらえた。今回は完奏だ。勿論、これもテープに録音し、何度も聴きまくった。よく「テープが伸びるほど聴いた」という表現を耳にするけど、この時ホントにテープが伸びたもんなぁ...(笑)。そうしてますますRUSH熱を高めた私は、その年の春休みにLPで『POWER
WINDOWS』を買った。
この頃の私がLP買うっていうのは大事件で、この当時私が所有してたLPはクィーンの『GREATEST
HITS』と『HOT SPACE』、ポリスの『ZENYATTA
MONDATTA』と『SYNCHRONICITY』、そして寺尾 聰の『REFLECTIONS』だけだったモン(笑)。こうして初めて買って聴いたRUSHのアルバム『POWER
WINDOWS』、A面1曲目は聴き慣れた“The Big
Money”、次はシンセのイントロがきらびやかな“Grand
Designs”、カッコイイ曲で、アルフィー・ファンに聴かせてやりたい...と感じた“Manhattan
Project”、7/4の変拍子で迫る“Marathon”。B面はエスニックな風味漂う“Territories”で始まり、“Middletown
Dreams”、“Emotion Detector”と続き、スピリチュアルな“Mystic
Rhythms”で終わる。1曲1曲聴くごとに新鮮な驚きがあった。毎晩、寝る前に『POWER
WINDOWS』を聴くのが日課になるほどハマった私に、ある変化が訪れた。チャート・マニアを卒業〜!!!(笑) ラジオ日本の『全米TOP40』を聴くのもやめたし、『FM
fan』買うのもやめた。あれほど御執心だった『TOP40入りした曲テープ・コレクション』を編集するのもやめた。RUSHの『POWER
WINDOWS』さえあれば、あとの音楽は要らない...と思ってた(笑)。そんな時期が半年は続いたなぁ...。で、半年後にしたことは...『POWER
WINDOWS』だけじゃ満足出来ないので、RUSHのバック・カタログを買い集め始めた(笑)。こうして、RUSHファンがひとり、出来上がった(笑)。↓こんなもの↓まで買ったしな(笑)。
('02.2.24)