今こそVERSUS

 ニューヨークを拠点とするギターバンド、VERSUSが『Merge』に移籍して初めてのアルバムを出した。タイトルは『Hurrah』。前作の『Two Cents Plus Tax』がなかなかの力作だったから、新作を心待ちにしてたんだけど、ようやく出たねッ!...って感じだ(笑)。
 残念ながら、VERSUSの作品がここ日本でリリースされたことは一度も無い(ハズ)。VERSUSは中国系アメリカ人のBaluyut兄弟と女性ベーシストのFontaineを中心とした4人組。今まで、新作『Hurrah』を含めて4枚のフル・アルバムと多数のシングルをリリースしてる。残念ながら私がフォロウ出来てるのは『Caroline』レーベル移籍後にリリースした2ndアルバムの『Secret Swingers』から。このアルバムでのメンバーは...
Richard Baluyut (vo. g.)、James Baluyut (g.)、Ed Baluyut (ds.)、Fontaine Toups (b. vo.)


『Secret Swingers』リリース時のVERSUS

この後、Baluyut兄弟の末弟のドラマーが脱退し、Patrick Ramos (ds.)が加入し現在に至る。ここで、VERSUSのアルバムを紹介すると...。

Secret Swingers

(import : Caroline CAR-7533)
1. Lose That Dress 2. Yeah You 3. Glitter Of Love
4. Ghost Story 5. Use As Directed
6. Double Suicide (Mercy Killing) 7. Jealous
8. Shower Song 9. Angels Rush In 10. One Million
11. A Heart Is A Diamond
 1996年リリース。『Caroline』レーベル移籍後初のアルバムにして、2枚目のフル・アルバム。陰のある“Glitter Of Love”は名曲。ハードな“Lose That Dress”、“Shower Song”もイイし、Fontaineがヴォーカルとる“Yeah You”と“One Million”もイイよ。“Ghost Story”から中盤にかけては、Fontaineのルーツ(笑)のヨラテン的楽曲も聴ける。

Two Cents Plus Tax

(import : Caroline CAR-7557)
1. Atomic Kid 2. Dumb Fun 3. Never Be O.K.
4. Morning Glory 5. Rader Follows You 6. Underground
7. Spastic Reaction
8. Crazy Maker (I'm Still In Love With Your Eyes)
9. Jack And Jill 10. Mouth Of Heaven
 1998年リリースの3rdアルバムで、ドラマーがPatrick Ramosに交代。このアルバムでは『ヨラテン的楽曲』が無くなり、ポップ感覚が増大。バンドが次のステップへ大きく飛躍したことを証明してる。Fontaineがヴォーカルをとる胸キュン・ポップ“Never Be O.K.”は後世に語り継ぐべき名曲。RichardとFontaineのデュエット曲???“Spastic Reaction”も爽やか青春ポップ(笑)。アタマを飾る“Atomic Kid”はストレートなロックだし、ハワイアンみたいな“Jack And Jill”も面白い。

Hurrah

(import : Merge MRG-186)
1. My Adidas 2. Eskimo On Fire 3. Play Dead
4. Said Too Much 5. You'll Be Sorry
6. Frederick's Of Hollywood 7. The Spell You're Under
8. Shangri-la 9. Walkabout 10. Sayonara
11. I Love The WB 12. Mermaid Legs
 リリースされたばかりの4th。このアルバムからスーパーチャンクが運営する『Merge』に移籍。前作の延長線上にある作風で、ポップな楽曲にたまにラウドなギターがからんで張りを持たせてるが、“Play Dead”での♪ララララ〜のコーラスは反則だ(笑)。“You'll Be Sorry”と“Shangri-la”もほのぼのポップ。“Frederick's Of Hollywood”はソニック・ユース風。ただし、前作のようなキメの曲が無いように感じるし、Fontaineの出番が控えめなのも残念...。“Sayonara”はオフコースの名曲のカヴァー...ではありません(笑)。当然だろ?(笑)

 これらの他に、デビュー作『The Stars Are Insane』(Teenbeat 142)がリリースされているけど、どのレコ屋でも私はいまだに見たことが無い(笑)。
 で、VERSUSの音楽性を説明するのと...そうだね、Fontaineは、1991年にヨ・ラ・テンゴに対してストーカー行為を働いたかどで逮捕された経歴があることから解るとおり、初期は幾分『ヨ・ラ・テンゴ的』だよね。ところが『Two Cents Plus Tax』からは、ハイ・ファイ・セットやサーカス...といった青春歌謡的な楽曲が目立って増えて来た(笑)。私がVERSUSにハマったキッカケの“Never Be O.K.”なんかモロにそう。ハイ・ファイ・セットの名前を引き合いに出したけど、基本的にVERSUSって『ロー・ファイ』なんだけどね(笑)。Richardのモッタリしたヘタなヴォーカルなんか特にそう(笑)。そのRichardのヴォーカルが延々と続けば単調過ぎになるところ、たま〜にFontaineがヴォーカルを担当してそれを回避してる感じ(笑)。Fontaineのヴォーカル担当比率は1/5ってとこかな? いまでは『王道ギター・ポップ』って感じだよね。『ブライトゥン・ザ・コーナーズ』の時のペイヴメントを思い出すんだけど。たまにヒネリが加わるから(笑)
 アジア系がやってるバンドだから...という理由で彼らをプッシュする気は全く無い。音楽は演ってる中身が大事だからね。先にも書いたけど、いまだに日本発売のないVERSUSだけど、オモロいバンドだと思うんでみなさん、聴いてあげてくださいな!

(2000.11.4)

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