『チョー足手まとい』が
引きずった跡

 「アメリカ南部テネシー州出身の田舎者がこんな極上のギター・ポップを演るなんて!」という驚き(失礼!)と賞賛をもって迎えらえた4人組・スーパードラッグが2年振りに新作『In The Valley Of Dying Stars』をひっそりとリリースしてた。しかも、メジャーの『Elektra』から契約を切られて、インディーからのリリースだ。さらに言えば、ベーシストも交代しての再出発。インディー落ちとなると、アルバム『リグレットフリー・ユアーズ』でメジャー・デビューした際あれだけ絶賛してたメディアの扱いも、軽〜い軽〜い。どこのレコード屋に行っても『Elektra』からの2枚しかないし(勿論、それすら置いてない店のほうがはるかに多い)、雑誌もレヴュー載せてなかったりする。『CMJ』のチャートにランクインしてるの見て、出てるのに気が付いたくらいだから、『CMJ』のチェック入れてなかったら、気付きもしなかっただろう(苦笑)。
 ちなみに、スーパードラッグ/SUPERDRAG...ってバンド名は『ぶっ飛んでるクスリ』っていう意味じゃないからな。『SUPERDRUG』じゃなくて『SUPERDRAG』だから。『DRAG』って、パソコン用語にもなってる「引きずる」っていう意味だよ。クスリじゃないからな(笑)。ある雑誌で『SUPERDRAG』を『チョー足手まとい』って訳してるひとが居て、あまりにも面白いものだから、私はずっとこれを使ってるのさッ!(笑)
 そのスーパードラッグは、全ての楽曲の作詞作曲を手掛けるジョン・デイヴィス(vo., g.)を中心に、ブランドン・フィッシャー(g.)、ドン・コフィーJr.(ds.)、そして脱退したトム・パパスの後釜に新しくサム・パワーズ(b.)を加えての4人組。
 彼らが1996年にメジャー・デビューしてからの足跡をたどってみると...。

Regretfully Yours

(国内盤 : WEA WPCR-721)
1. Slot Machine 2. Phaser 3. Carried 4. Sucked Out
5. Cynicality 6. Destination Udsa Major
7. Whitney's Theme 8. Truest Love
9. What If You Don't Fly 10. Garmonbozia
11. N. A. Kicker 12. Nothing Good Is Real 13. Rocket
 リリース時、注目を集めた1996年のメジャー・デビュー作。メタリック(文字どおり金属的という意味)な感触のギター・サウンドは個人的には衝撃的で、他のひとも同じように思ったらしく一部好事家の間で話題になった好盤。勿論、ギター・サウンドを抜きにして、楽曲だけとりあげても名曲と呼べる曲が多い。ジョン・デイヴィスのメロディー・センスはこの時点ですでに開花してた。

Head Trip In Every Key

(国内盤 : イーストウエスト AMCY-2578)
1. I'm Expanding My Mind 2. Hellbent
3. Sold You An Alibi 4. Do The Vampire 5. Amphetamine
6. Bankrupt Vibration 7. Mr. Underground 
8. Annetichrist 9. She Is My Holy Grail 10. Pine Away
11. Shuck & Jive 12. Wrong vs. Right Doesn't Matter
13. The Art Of Dying
 アコースティックな生ギターで始まる1998年リリースの2ndアルバム。全体を通して、前作で話題になった独特のギター・サウンドは後退し、アコースティックな感触の音造りが増え、楽曲の良さにモノを言わせてるかのような作風に変化。“Sold You An Alibi”は誰が何と言おうと名曲! 新機軸ともいえる“She Is My Holy Grail”も個人的には好き。ジャケットからして名盤の風格。

In The Valley Of Dying Stars

(import : Arena Rock ARE-00014)
1. Keep It Close Me 2. Gimme Animosity
3. Baby's Waiting 4. Goin' Out 5. Lighting The Way
6. The Warmth Of A Tomb 7. Bright Pavilions
8. Ambulance Driver 9. Unprepared
10. Some Kind Of Tragedy 11. True Believer
12. In The Valley Of Dying Stars
 『Elektra』から契約を切られ、インディーから再出発。ベーシストも交代しての2000年リリースの3rd。サウンドの面からいうと1stと2ndの中間に位置する感じ。ギターが全面にでるようになったものの、デビュー作ほど無闇にまき散らす感触はナシ。一聴したところ、今のアメリカの王道メインストリーム・ロックに接近したとも受け取れる音に聴こえたけど、よく聴くとやっぱりみんなの愛したスーパードラッグの音だった。

※この他、
『Stereo 360 Sound』(Superdrag Sound Laboratories 1)...デビュー前リリースしたカセット音源にボーナス・トラックを付けたCD
『Fabulous 8-Truck Sound Of Superdrag』(Darla 7)...未発表曲&レア音源集

 彼らのデビュー作『リグレットフリー・ユアーズ』でのギター・サウンドは、少なくとも私の耳には新鮮に響いた。何度も書くようだけど、メタリック(文字どおり金属的という意味)な感触のギター・サウンドは個人的には衝撃的だった。メタリックっていっても、「金属粉をまぶしたような」というか、「蛾が金粉をまき散らしながら飛ぶような」感じのサウンド。彼らから受けた衝撃以上のものを得るには1997年にビルト・トゥ・スピルのメジャー・デビューまで待たなきゃならなかった(笑)。とにかくギター・サウンドに殺られたッ!...って感じだったな(笑)。その独特のギター・サウンドにジョン・デイヴィスのポップでちょっと高めの歌が乗って疾走するさまは実に爽快だった。2nd、3rdと作品を重ねるごとにギター・サウンドは幾らか変わったかもしれないけど、ジョン・デイヴィスの書く曲のポップさと歌の誠実さはまったく変わらない。ってことで、インディー落ちしようが彼らを支持していきます!
 サウンド的には、ウィーザーがもっとギターにコダわってウェットになったような音。でも、ザ・ポウジーズほどはウェットじゃない。アメリカンに突き抜けて賛否が分かれたザ・ポウジーズのアルバム『アメイジング・ディグレイス』みたいな音っていうのがいい表現かな? 爽快感と疾走感はサマーキャンプのアルバム『ピュア・ジュース』に通ずるものがあるし。ここで名前があがったバンドのファンのかたは一度試して見てください。きっとハマっるよ(笑)。

(2001.2.25)

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