最近おもしろかったディスク・レヴュー〜ヤイコとボストン〜

 最近、音楽雑誌の新譜レヴューで思わず笑ってしまうような面白いモノがあったので、ここで紹介してみようと思います。
 まずは、『MUSIC MAGAZINE』の11月号に載ってたヤイコの新作『i/flancy』のレヴュー。評者は保母大三郎サン。

矢井田瞳/I/FLANCY
 相変わらず、互いの傷をナメ合って明日へGO!的な歌詞。と毎度酷評だが、今回はサウンドの創意工夫と疾走感に心を惹かれる。ザキール・フセインなタブラと、KLFな(笑)シタールの効果的な導入など、音がブ厚い。イングヴェイも真っ青な「アンダンテ」の疾走感も好印象。[7]
(註・10点満点で)。

(『MUSIC MAGAZINE』2002年11月号 p. 154より)

 ヤイコのアルバムは1stから聴いてるけど「相変わらず、互いの傷をナメ合って明日へGO!的な歌詞」というこの的確過ぎる表現は初めて見ました(笑)。だって、そのとおりなんだモン(笑)。ま、ファンにはイロイロ障りがあって、気付いててもズバリ言えないことも多いから、よくぞ代わりに言ってくれた!...みたいな感激があった(笑)。
 私がヤイコの『i/flancy』聴いた感想言うと、シングル曲だった“アンダンテ”だけがズバ抜けてインパクトあって、他の曲の印象が薄い(苦笑)。イングヴェイが真っ青になるかは別として(笑)、“アンダンテ”のもつインパクトや疾走感だけで聴き手を一気に土俵の外へと寄り切る力技アルバムですな(笑)。
 にしても、『MUSIC MAGAZINE』がヤイコに[7]点も付けるとは、異例中の異例。「毎度酷評」と書いてるとおり、いつもはもっとボロクソ書かれてるからね。『MUSIC MAGAZINE』にしては異例の好意的レヴューで、他のアーティストなら[9]くらいのホメられかたです。私は上のレヴューを「大絶賛」と捉えております(笑)。
 続くは、『BURRN!』12月号に載ってたボストンの8年振りの新作『コーポレイト・アメリカ』のレヴュー。評者は藤木昌生サン。

■CORPORATE AMERICA/BOSTON
コーポレイト・アメリカ/ボストン
 産業ロックの帝王、8年振りの5th。ブラッド・デルプ<vo>、フラン・コズモ<vo>、キンバリー・ダーム<vo>、アントニー・コズモ<g>、トム・ショルツ<g,b,ds,key>という布陣で制作。BとDsは曲によってセッション・マンを起用。“I Had A Good Time”は1987年の3rd「THIRD STAGE」のアウトテイクかと思うような曲で「うわ〜BOSTONだぁ」と感激。だが“Stare Out Your Window”以降は少々感触が異なる。ショルツが作曲に関わっていない曲が4曲もあるためか、微かに今風のロックの気怠い雰囲気も漂っている。全体的な印象はBOSTONらしく納得するものの、3rdと前作の間でメロディの質にかなり落差を感じた僕のようなファンにとっては今回もやはり物足りない。“Lovin' For You”は前作の別ヴァージョンで、これが一番良い曲。(藤木)
 [78](註・100点満点で)。

(『BURRN!』2002年12月号 p. 187より)

 ...と、これだけなら何の変哲も無いレヴューです。肝心の新作がまだリリースされてないので(日本盤は11月20日発売)このレヴューが正当なのかどうかも判断つきかねるし...。ま、「天下のボストン様に80点未満の評点を付けるとは!!!」...と、ちょっと驚きましたけど...(苦笑)。が、同じく『BURRN!』12月号の編集後記の藤木サンの欄をみると...

 (前略) ええ、根が正直なもんで(笑)。ま、とりあえず80点とか82点とか付けときゃファンからもレコード会社からもアーティストからも恨まれることはないんだろうけどね。でも俺が読者だったらそんな保身のためのレビューは勘弁してよって思うから。

(『BURRN!』2002年12月号 p. 198より)

 あっはっは〜♪ どうもコレ、件のボストンの新作レヴューに対するエクスキューズのようなんですけど、藤木サンの言うとおり、読者にしてみれば「保身のためのレビュー」は確かに要らないし、迷惑! 藤木サンってホントに正直なひとだなぁ...と感服した次第です(笑)。

(2002.11.7)

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