RUSHの新編ベスト盤『The Spirit Of Radio Greatest Hits 1974-1987』の選曲は妥当か
2月11日にアメリカでRUSHのベスト盤『The Spirit Of Radio Greatest Hits 1974-1987』がリリースされました。発売日が「2. 11. 2003」だって。く、苦しい...(苦笑)。
The Spirit Of Radio Greatest Hits 1974-1987 |
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(import : Anthem
68852510972) |
『Mercury』レーベル在籍時の12枚のアルバムからの選曲による1枚モノのベスト盤で、『Billboard』のアルバム・チャート3月1日付で初登場62位。ベスト盤にありがちな新録音源や貴重な発掘音源、ワケの解らないリミックスなどのオマケがついていないワリにはなかなか健闘してるといえるでしょう(ま、初回限定でどーでもいいようなDVDがついてるケド...苦笑)。ベスト盤が大好きなアメリカ人のこと、最終的にはこのアルバム、プラチナ・ディスク獲得(100万枚売り上げ)するでしょうね(苦笑)。
ところで、RUSHに限らず、どのアーティストの場合でもベスト盤が出る度に気になるのが、「選曲が妥当かどうか」です。今回のRUSHの『The
Spirit Of Radio Greatest Hits
1974-1987』の場合、「おおむね妥当」。...っつうか、長い歴史を持つバンドゆえ、CD1枚モノのベスト盤だと自ずから選曲が決まってしまいます。12枚のアルバムから1曲ずつ選曲しただけで60分近く埋まってしまうし...(苦笑)。選曲に対して「こっちのほうが良かったんじゃないの?」的な対案はあるにはあるんだけど、「このベスト盤はダメだ!」と言い切れるほどの致命的な欠点は無い。RUSHファンが12人集まって、12通りの『グレイテスト・ヒッツ』案を持ち寄ったら、7割方は一致を見るんじゃないかなぁ。CD1枚モノという時間の制約もあるし。
今まで
RUSHは2種類ベスト盤をリリースしてます。1990年リリースのCD2枚組の『クロニクルズ』、そして1997年リリースの『ベスト・オブ・ラッシュ/Retrospective』の[1]と[2]です。今まで出たベスト盤2種はどちらもRUSHの歴史(『Mercury』在籍時の12枚のスタジオ・アルバム)をCD2枚使ってフォロウしたものでした。今回リリースされたベスト盤はCD1枚モノ。これら3種類の収録曲を比較してみましょう。
RUSHのベスト盤3種の収録曲の比較
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・Finding My Way ・Working Man |
・Finding My Way |
・Working Man |
“Finding My Way”のほうがよかったんじゃないの? |
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・Anthem ・Fly By Night |
・Anthem ・By-Tor & The Snoe Dog ・Fly By Night |
・Fly By Night |
“Anthem”のほうがよかったんじゃないの? |
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・Bastelle Day ・Lakeside Park |
・Bastelle Day |
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“Bastelle Day”を外したのは??? |
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・2112 Overture/The Temples Of Syrinx |
・2112 Overture/The Temples Of Syrinx ・Something For Nothing |
・2112 Overture/The Temples Of Syrinx |
妥当。 |
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・A Farewell To Kings ・Closer To The Heart |
・Xanadu ・Closer To The Heart |
・Closer To The Heart |
妥当。 |
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・The Trees ・La Villa Strangiato |
・The Trees ・La Villa Strangiato |
・The Trees |
妥当。 |
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・The Spirit Of Radio ・Freewill |
・The Spirit Of Radio ・Freewill |
・The Spirit Of Radio ・Freewill |
妥当 |
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・Tom Sawyer ・Red Barchetta ・Limelight |
・Tom Sawyer ・Red Barchetta ・Limelight |
・Tom Sawyer ・Red Barchetta ・Limelight |
“Red Barchetta”を外して、“YYZ”を入れろ! |
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・Subdivisions ・New World Man |
・Subdivisions ・The Analog Kid ・New World Man |
・Subdivisions ・New World Man |
妥当。 |
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・Distant Early Warning ・Red Sector A |
・Distant Early Warning ・Red Sector A ・The Body Electric |
・Distant Early Warning |
“Red Sector A”でもよかった。 |
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・The Big Money ・Manhattan Project |
・The Big Money ・Marathon ・Mystic Rhythms |
・The Big Money |
妥当。 |
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・Force Ten ・Time Stand Still |
・Force Ten ・Time Stand Still ・Mission |
・Force Ten ・Time Stand Still |
妥当。 |
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・What You're Doing (LIve) ・Mystic Rhythms (LIve) ・Show Don't Tell |
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...とまあ、上の表でこれまでのベスト盤の収録曲の比較してみると解るとおり、1枚モノのベスト盤だとほとんど選択の余地無く収録曲が決まってしまいますよね。変えようがあるとすれば、初期の曲と、これといったヒット曲が出なかった『GRACE
UNDER
PRESSURE』だけかな。あと、これまでのベスト盤(今回もだ!)にはRUSHファンに一番人気のある曲の“YYZ”が入っていなかったので、「“YYZ”を入れろ!」くらいしか、意見のしようがないです(苦笑)。
んで、実際にこのベスト盤聴いた感想を言うと...歴史のめぐりが早い!(苦笑) 特に、'70年代のRUSHの歴史がもの凄い駆け足で振り返られてます。あっという間に『パーマネント・ウェイヴス』と『ムービング・ピクチャーズ』でスターダムにのし上がった時代まで進んでしまう。これ、やっぱり濃ゆいファンにはかなりもの足りなく感じます。今回リリースされた『The
Spirit Of Radio Greatest Hits
1974-1987』の場合、RUSHなんて聴いたことないような完全初心者向けのアイテムですね。
ということで、「RUSHを聴いたことはないけど、彼らの音には興味ある」という皆さんは、まずこのアルバムから聴いて試してみてやってください。
アルバムのアートワークについて
今回、RUSHのメンバーはこのベスト盤『The Spirit Of Radio Greatest
Hits
1974-1987』のリリースに大反対したらしい。そりゃ、そうだよな。似たような内容のベスト盤ばっかり出てるんだもん。だけど、最終的にレコード会社に押し切られ、アートワークに『RUSH御用達デザイナー』Hugh
Syme を起用することで『手打ち』となったようだけど、そのHugh Syme
の手掛けたアートワーク、なかなか奥が深いです。表ジャケットの裏側(CDケース内面側)にこーゆー絵が描かれてるんだもんなぁ...。
このアートワークにもの凄い皮肉や嫌みを感じ取って、思わず笑ってしまったのは、私だけでしょうか???(苦笑)
(2003.3.3)