2008年の復活アルバムについて考える
最近のミュージック・シーンでは、再結成がブームとなっており、そのせいか2008年には10何年ぶりかにアルバムをリリースしたというケースが頻発した。例えば、16年ぶりにアルバムを出したB-52's(シンディ・ウィルソンを含めた編成では19年ぶり)、22年ぶりにアルバムを出した水谷 豊、メジャーからのオリジナル・アルバムとしては12年ぶりのシンディローパー、オリジナル・メンバーでは25年ぶりとなるアルバムを出したエイジア、そして、17年ぶりのアルバム・リリースとなったクォーターフラッシュ。2008年のこの復活アルバム・ブームを検証するため、この項では上記5枚のアルバムの内容について簡単におさらいしよう。
THE B-52'S--Funplex |
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(国内盤 : EMI TOCP-66762) |
1992年の『ホット・スタッフ』以来となる作品で、前作には不参加だったシンディ・ウィルソンを含めた編成としては1989年の『コズミック・シング』以来19年ぶりとなる。
このアルバムで彼女たちが出してる音は、不思議なほど昔と変わってない(苦笑)。変わってないけど、古さを全然感じない。彼女たちが出してるようなエレポップはその時代その時代の最新テクノロジーに依存するところが大きく、サウンドの流行り廃りのサイクルも早いので、「昔と同じように聴こえ」ていて、なおかつ「古臭さを感じない」ということは、16年もの時が進んだぶんだけ、彼女たちの音も新しくなってるということだ(笑)。
水谷
豊--TIME CAPSULE (国内盤 : エイベックスイオ
IOCD-20251)
1. はーばーらいと 2. 表参道軟派ストリート
3. 故郷フィーリング 4. やさしさ紙芝居
5. カリフォルニア・コネクション 6. 何んて優しい時代
7. 普通のラブ・ソング 8. マリーナ・デル・レイ
9. 真夜中のスウィング 10. レモンティーで乾杯
11. Because (for a Wedding Day) 12. SNOW BIRD
13. 心のままに
このアルバムのサウンドは見事に古臭い(苦笑)。このアルバムと同じような企画モノとして、一昨年、寺尾 聰が往年の名作の再演盤である『Re-Cool Reflections』をリリースし、成功を収めている。それの『2匹めのドジョウ』を狙ったのだろうか、この作品も往年のヒット曲の再レコーディング盤となっている。寺尾 聰のアルバムは、曲は昔のものだけど、2006年時点の音楽の流行を取り入れた現代ふうのアレンジになってるお蔭で、全然古さを感じさせない作品に仕上がってるが、水谷 豊の場合、ほぼ昔のまんま(苦笑)。古き良き昭和を想い起こさせるダサいアレンジになってる(苦笑)。まるで22年もの間、時間が止まってたようだ。あ、だからアルバム・タイトルが『TIME CAPSULE』なのか!(爆笑〜!!!)
CYNDI LAUPER--Bring Ya To The Brink |
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(国内盤 : ソニー
EICP-968) |
1996年に5th『シスターズ・オブ・アヴァロン』をリリースした後、インディーズから『シャイン』を出したものの、メジャーから出たのはクリスマス・アルバムだったり、スタンダード・カヴァー集だったり...と、オリジナル・アルバムを出させてもらえない不遇な状況が続いてたシンディ。で、ようやく出すことが出来たこのアルバム、マドンナがダンス・ミュージック回帰をはかった『コンフェッションズ・オン・ア・ダンスフロア』で当てたから、かつて「マドンナのライヴァル」と呼ばれたシンディにも同じ路線のアルバムを...と余計なことを考えた取り巻きが周りに居たんだろう。『トゥルー・カラーズ』以降、「パァなネエちゃん」からアーティスティック路線を進めて居たシンディのキャリアを全否定しかねないほど酷い作品が出来上がってしまいました〜(泣)。
ASIA--Phoenix |
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(国内盤: キング
KICP-1300) |
1983年の2nd『アルファ』以来、ジョン・ウェットン、スティーヴ・ハウ、カール・パーマー、ジェフ・ダウンズのオリジナル・メンバー4人が集結して作ったエイジアのアルバム。(水谷 豊同様)昔のエイジアそのまんまなサウンドで、今の時代にこのシンセの音?...と思ってしまう箇所もあるが、このサウンドこそファンが待ち望んでたエイジアの音に他ならない(苦笑)。ファンが望むものを提供した...という意味において、とても良心的なアルバムだと思います。私も、このアルバムの音は、嫌いでは、ない(苦笑)。
MARV
& RINDY ROSS QUARTERFLASH --Goodbye
Uncle Buzz (import : Ross Productions
RP002)
1. Crazy Quilt 2. Goodbye Uncle Buzz
3. Trying To Find A New Way
4. Nothing Runs As Deep As You 5. Rise Above
6. Brothers 7. In The Air 8. Home
9. The Child Who Raised Her Mother 10. Opening Doors
11. This Business Of Music 12. At Least I Tried
1981年のデビュー盤『ミッドナイト・フラッシュ』(当時の邦題)からの大ヒット・シングル“Harden
My
Heart”(当時の邦題“ミスティ・ハート”)で一世を風靡したクォーターフラッシュですが、その後アルバムを出す度セールスが落ち込み、1991年の4th『ガール・イン・ザ・ウィンド』をリリースする頃にはすでにバンドは崩壊。中核となるリンディとマーヴのロス夫妻+ゲスト・ミュージシャンによる作品となっていた。このアルバムもしょーじきに「MARV
& RINDY ROSS
QUARTERFLASH」名義となり、現在のクォーターフラッシュがロス夫妻によるプロジェクトである点を明確にしてる。
肝心の音のほうだけど、'80年代には、リンディ・ロスのヴォーカル・スタイルがパット・ベネターと比較されたこともあるほど一部にハードロック然とした曲もあったが、流石にもうハードな曲は無く、カントリー・ミュージックに転落する一歩手前で踏ん張ってるような(苦笑)オトナ向けのポップスが収められている。彼女たちが何をやっても現在のミュージック・シーンでは話題にならないんだから、自分たちの好きな音楽をやってみました...といった感じ。秋の夜長によく聴いた好盤。
ということで、5枚のアルバムを検証した結果、「2008年にリリースされた」という共通項以外にそれぞれに共通するモノはない。リリース時期が偶然重なっただけなんだろうけど、昔のまんまの音を出すひと、前作から大幅に路線転換したひと、自分のやりたいようにできるひと/できないひと...五者五様で興味深いものがあります。
(2008.12.31)