パーティーの続きは、あるの?

 4月6日にアッシュがひと晩限りの来日公演を行うけど、このライヴの目玉のひとつが、ブロック・パーティーのギタリストでアシンメトリー・カットの髪型でお馴染み(?)のラッセル・リサックが特別に参加すること。アッシュのファンにとっては、シャーロット・ハザレイが脱退して以来初めてダブル・ギター編成の彼らのライヴを観る機会となるから、ビッグなニュースなんだろうけど、プロック・パーティーのファンには複雑な心境になる話だろう。というのは、去年5月に予定されてたジャパン・ツアーは一旦11月に延期になったうえ、結局中止となり、メンバーの動向としてはそれぞれ自分のサイド・プロジェクトに没頭してるような話ばかりが伝わってくるから。
 彼らのデビュー・アルバムがリリースされた2005年は、私は『キャラメルハウス』への引っ越し、弟子との新生活、ポッポの誕生など私生活で多忙を極めてた時で、彼らの音楽に触れる余裕(と接点)が残念ながら無かった。私が彼らの音楽を初めて耳にしたのは、2ndアルバムの『ア・ウィークエンド・イン・ザ・シティー』から。音楽雑誌『CROSSBEAT』2007年3月号掲載の『DISC REVIEW』でフィーチュアされていたため興味を持って買ったんだけど、もしもこの時『CROSSBEAT』のレヴューを見ていなかったら、彼らの音楽を発見するのはもっと後になってたことだろう。この『ア・ウィークエンド〜』のアタマを飾る“Song For Clay (Disappear Here)”のイントロの静かなパートからドラムやギターが入ってロックなサウンドに転換するドラマティックな展開を聴いて「このアルバムは、傑作だぁ〜〜〜!!!」と興奮状態になった。数年に一度くらいは。アルバム1曲目のイントロを聴いただけで「傑作だ!」と分かる名盤があるけど、このアルバムはまさしくソレだった。このアルバムで聴かれる'80年代ニュー・ロマンティックやニュー・ウェイヴにも通じる美学が大いに気に入った私、この年のベストアルバムの2位に推したくらい評価したんだけど、実際に彼らのアーティスト写真を観たのは、ず〜〜〜っと後のことで、ヴォーカルのケリー・オケレケがドレッドヘアの黒人と知って、ビックリ! それまで、ゲイリー・ケンプやマーティン・フライみたいなキザなヴォーカリストをそーぞーしてたモンで...(苦笑)。ここで彼らのサウンドがユニークなのは、黒人や中国系のメンバー(ドラムのマット・トン)が居るバンド編成が影響してるってことを遅まきながら、知った(苦笑)。そして、2008年に『フジ・ロック』では彼らが出演する日に標準を合わせて参戦。この時の予習で、1stの『サイレント・アラーム』を初めて聴いて、2ndと違ったダンス/テクノ色が強いサウンドにまたビックリ! ライヴ当日には、ベースのゴードン・モークスが奥さんの出産のため不参加でまたまたビックリ!(代役の刺青をムキ出しにしたベーシストがいろんな楽器をこなす芸達者ぶりをみせつけたものだから、彼の不在は気にならなくなった...苦笑)。音楽雑誌で彼らのライヴについて「ショボくてビックリ」とのレヴューを読んだことがあったけど、実際に彼らの演奏を観て、その意味が解った(笑)。ま、要は、ケリーが陽気過ぎなんですワ(笑)。ライヴの完成度を落とすくらい、陽気(笑)。あと、上半身裸になったマットの腹周りがだらしなかったのも、印象によ〜〜〜く残ってる(苦笑)。


2007年来日時のブロック・パーティー
左からラッセル(g.)、マット(ds.)、ケリー(vo., g.)、ゴードン(b, key.)

 『フジ・ロック』の興奮が遠い記憶に変わる前の2008年秋には3rd『インティマシー』をリリース。1stの音楽性を推し進めながらも、2ndのような叙情性を持つ曲もある両方のイイとこ取りしたような意欲作であり、ライヴを観れるのを楽しみにしてたんだけど(ゴードンも居る編成で観るのは初めてだし)、まさかの来日公演中止、そして活動中止...。しかも、マットがバンドのメンバーたちとは今後活動しないかもしれないという発言をしているというニュースも聴こえてくるし、ラッセルやケリーはソロ活動に精力的なようだし...。早く4人が揃った姿をみてみたいものです。

Bloc Party Discography

Silent Alarm

(国内盤 : HOSTESS HSE-70016)
1. Like Eating Glass 2. Helicopter 3. Positive Tension
4. Banquet 5. Blue Light 6. She's Hearing Voices
7. This Modern Love 8. The Pioneers 9. Price Of Gas
10. Little Thoughts 11. So Here We Are 12. Luno
13. Plans 14. Compliments
 2005年にリリースされたデビュー作。
 この作品よりも先に2ndを聴いてたため、最初聴いた時、ダンスやテクノの要素が強いのにビックリした(苦笑)。無機質なマット・トンのドラムはリズム・マシーンによる打ち込みと勘違いしたくなるほど。“Banquet”や“Price Of Gas”などがこの系統の楽曲の代表で、“Helicopter”はロックとしての魅力を充分に兼ね備えたキラー・チューンだし、“She's Hearing Voices”はライヴで大いに盛り上がりそう。その一方で、“Blue Light”や“This Modern Love”、“So Here We Are”のようなウォームハートな佳曲もある。「静」と「動」がバランスよく同居してる。

A Weekend In The City

(国内盤 : HOSTESS HSE-70017)
1. Song For Clay (Disappear Here) 2. Hunting For Witches
3. Waiting For The 7:18 4. The Prayer 5. Uniform 6. On
7. Where Is Home? 8. Kreuzberg 9. I Still Remember
10. Sunday 11. SRXT
 2007年年明けにリリースされた2ndで、私・ヒロくん(師匠)をいっぺんに虜にした名作。1曲目の“Song For Clay (Disappear Here)”のイントロのドラマティックな展開は鳥肌モノで、一聴しただけでこのアルバムが大傑作であることを確信させた。都会の夜をコンセプトにしたためか、'80年代のニュー・ロマンティックやニュー・ウェイヴっぽい音づくりになってる。鉄琴の音色が印象的な“Waiting For The 7:18”を聴いてると夢心地になれます(笑)。私のなかでは、今作は前作とは別モノという捉え方をしてたんだけど、改めて聴いてみると“Hunting For Witches”や“The Prayer”〜“Where Is Home?”はサウンドじたいは前作の延長戦上であり、変わったと思うのは...ケリーの歌心だな(笑)。“I Still Remember”と“Sunday”は聴いてるだけで心が温ったまってくる。♪I love you in the morning〜

Intimacy

(国内盤 : HOSTESS HSE-70046)
1. Ares 2. Mercury 3. Halo 4. Biko 5. Trojan Horse
6. Signs 7. One Month Off 8. Zephyrus 9. Talons
10. Better Than Heaven 11. Ion Square
12. Letter to My Son 13. Your Visits Are Getting Shorter
14. Flux
 前作から1年半後の2008年秋にリリースされた、現時点での最新作の3rd。
 “Ares”のイントロからも解るとおり(?)1stの音楽性を推し進めながらも、ピーター・ガブリエルの名曲と同名異曲(笑)の“Biko”や“Signs”に代表されるように、前作に通じる叙情性を持つ曲も収録。♪mercury〜の連呼にインパクトがある“Mercury”など、聴きどころ充分。ただし、同じ色の絵の具で塗りたくったような曲が中盤以降続くので、ちょっと飽きるかも...。あと、このジャケットは...(以下、略。苦笑)。

(2010.3.31/4.1)

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