『オルタナの純真』に訪れた黄昏? 〜新作『Peace & Love』によせて〜
'90年代前半のオルタナ黎明期にブレイク・ベイビーズの看板シンガーとして、またソロ・アーティストとして人気を博し、『オルタナの純真』とか『USインディー界のヒロイン』と呼ばれたジュリアナ・ハットフィールドが前作より1年半ぶりにリリースした10枚目のフル・レングス・アルバム(ジュリアナズ・ポニー名義も含む)『Peace & Love』は、シンプルなアコースティック・アルバムとなった。しかも、クレジットから察する限り、全曲の楽器演奏・歌を彼女自身が手掛けた『宅録アルバム』だ。前作の『How To Walk Away』が'彼女の全盛期といえる'95年までの『Mammoth』レーベル所属時代を彷佛とさせるみずみずしさにあふれたフレッシュな作品だっただけに、突然の『宅録アルバム』のリリースに正直なところ、驚いた。
Peace & Love |
|
|
(import : Ye Olde Record
YOR-007) |
彼女が全盛期や『How To
Walk
Away』で聴かせてくれたインディー・ギター・ポップをそのままアコースティックな演奏に変えただけなら、そのまま爽やかなフォークみたいな仕上がりの音になったろうけど、実際に完成したモノは内省的で、人生の黄昏を強く感じさせられる作風に仕上がった。
ブレイク・ベイビーズ時代からソロとしての全盛期にお世話になった『Mammoth』レーベルを離れてからのアルバム『Bed』や『Total
System Failure』(ジュリアナズ・ポニー名義)、『In Exile Duo』、『Made
In
China』は、彼女のフラストレイションを感じるダークな作品だったけど、今回のこの新作からはダークな印象は受けない。アルバム・タイトルじたいが『Peace
& Love』だし、この曲では♪I won't give up on peace and
love〜...と歌ってるし、“Why Can't We Love Each
Other”というタイトルの曲もあるし、'93〜'95年頃には『オルタナ・カップル』と持て囃された元・恋人(?)のイヴァン・ダンドに宛てたと思しき“Evan”という曲はあるわ、“I'm
Disappearing”という曲もあるわ...で、まるで彼女が自身のこれまでの人生を振り返ってみて、悟りの境地に達したかのようだ。彼女のキャリアをず〜〜〜っと追い続けてた私にとって、今のところこのアルバムは『怪作』以外の何物でもないが(ただし、悪いとか失敗作とか問題作とかとも思っていないが...)、次のアルバムがどういう作品になるかによってこの作品の位置付けが決まるような気がする。
彼女によれば、このアルバムはブルース・スプリングスティーンの『ネブラスカ』を意識して創ったそう。ということは...次のアルバムは、『BORN
IN THE U.S.A.』だね? 期待してるよ(爆笑〜!!!)。
(2010.4.27)