南アルプス北部西麓・三峰(みぶ)川流域の前衛峰・風巻峠は『峠』と名が付くものの、三角点設置のちゃんとしたピーク。この風巻峠、5年前に脚光を浴びた山だったりする。何故、5年前に脚光を浴びたか? 答えは簡単で、この山の標高が1,994.5
m。小数点以下を四捨五入すると1,995
m。つまりは年号と同じ高さをもつ山として注目されたワケ。だけど、この山の標高『1,994.5
m』ってのは実にクセモノ! 『点の記』を調べたワケじゃないから判らないけど、仮に1,994.45
mでも地図には『1,994.5
m』って表記されるワケでしょ? でもこの場合、小数点以下を四捨五入すると1,994
m。だから1995年の山だったかはアヤしかったんだけど、そーゆーことにコダわって山歩きするひとは、ちゃんと国土地理院に行って『点の記』を調べてるんだろうね...やっぱり...。
で、この風巻峠、私が松本市民だった頃から目を付けてたんだけど、この山に関する情報があまりにも少ないので、ずっと登頂を見合わせていた。ら、この度、石井光造氏の著作『静かな山』シリーズでこの山が取り上げられていたので、この本による情報...といっても立ち読みで頭に残った程度のモノ(笑)...を元に永年の懸案だった風巻峠登頂を果たして来ました。
1:25,000地形図には三峰川沿いの小瀬戸ノ湯付近の発電所から風巻峠を経て、三峰川最上流に至る道が表記されているから、6月3日と4日の土日を利用して、この道を歩いてこよう...と考えてたけど、あいにく6月3日(土)は天気が悪く、4日(日)のみの日帰り行動になりました。
朝6時富山発。安房峠を越え、松塩広域農道で塩尻に出て、R153、R361経由で高遠からは秋葉街道(R152)ヘ。松本市民だった頃から幾度となく通った道。市野瀬から秋葉街道を外れ、三峰川沿いに行く。山菜採りのシーズンだから地元ナンバーの他、名古屋、尾張小牧、三河、豊橋、浜松ナンバーのクルマが路肩にけっこう駐まってた。三峰川の清流沿いの林道をクルマで行くと、前方に発電所の送水管が見えた。「風巻峠の登り口が近い!」と思い、ちょうど『一般駐車場』の看板も目についたので、この駐車場にクルマを駐めて、ここから歩き...にしたけど、実際のところ、クルマ駐めたところは登山口からず〜っと手前で、ダム建設で水没するため廃湯になった小瀬戸ノ湯跡地よりもまだ下手にクルマを置いていた...。駐車場から侘びしさ漂う小瀬戸の廃屋の横を通り過ぎ、約20分の歩きで昭和電工三峰川発電所付近に到着。地形図には東風巻谷の右岸の林道を少し入ったところから風巻峠への入口があるような表記になってたので、これを信じて東風巻谷の右岸の林道に入る。この林道の入口の片隅には風巻峠への入口を示すサビサビの標識があった。例の石井光造氏の著作には、風巻峠への標識は1箇所しかない...とか書かれてたけど、石井氏が紹介してるものの他にもうひとつ標識が立ってることを指摘しとく(笑)。
地形図には東風巻谷の右岸の林道を少し入ったところから風巻峠への入口があるような表記になってたけど、案の定、明確な入口は無く、水門のところのヤブを漕いで対岸に渡る。水門を渡ったところに巡視路入口の旨を示した看板があり、ここから大企業・昭和電工様が保全管理してる立派な巡視路に入る。巡視路入口着、11:18。なお、この巡視路入口までには昭和電工三峰川発電所から立派な道が付いてる。それなのにわざわざヤブこぎして水門渡った私って...。
巡視路に入るといきなり、沢沿いのためロープが張られたところがあったけど、それも特に危ない感じはナシ。石井氏の著作で紹介されてる標識を過ぎ、2つめの堰堤の脇から沢沿いを離れ、登りに入る。登りに入ってもそれほど急な坂では無く、何度かジグザグを繰り返しているうちにホントにアッケなく送水管上の貯水池に12:00到着。三峰川側が開け、対岸の二児山がよく見えるこの貯水池には水門と管理小屋があって、あたりの平地には一升瓶がなぜか散乱してた。ここまでは山のシロウトでも来れる『初心者向けコース』。問題はここから。そもそもここまでは貯水池を見廻るための巡視路だから道が良かったワケで、その先まで整備する筋合いは昭和電工様には無いし(笑)。
貯水池からなかなか風巻峠への登り口が分からない。いろいろ捜した結果、貯水池から100
m
ほど戻ったところに立つ、幹に白いビニールの紐(といっても風雨にさらされ灰色だけど...笑)が巻かれた木のところから鬱蒼とした植林帯のへの踏み跡を拾う。やがて二重山稜っぽくなったところでこの『二重山稜』の谷間を歩くと、踏み跡が明確になってきた。何回か間違った踏み跡に誘い込まれたりしけど『山歩きのセンス』をたよりに歩いてると、木にコースサインを発見。ここで帰りの方向を誤らないように念のため石を積んでケルンをつくる。一旦、木にコースサインを見つけるとその後は適度な間隔でサインが現れる。石井氏の著作でも紹介されてた倒壊小屋を過ぎて、鬱蒼とした植林帯のなかをサインをたよりに高度を稼いでく。貯水池から歩き始めて1時間、道がちょっと平坦になったところで休憩。ここからなおもサインをたよりに歩いてくと、風巻峠の頂上部にたどり着いた。
地形図見れば分かるとおり、風巻峠の頂上部はなだらかになっていて、感覚的には3つほどのピークで成り立ってる様子。最初たどり着いたところから(ここまではサインが明確)ひとつピークに登り、隣の高みに向けて下り降りてヤブをかき分けて登りつめると、ひょっこり切り開きに出た。この開けた踏み跡をゆくとひょっこり風巻峠の三角点に出た。13:54着。かつては何にもない頂上だったそうだけど、今では『風巻峠
1995
m』の標識も立っていた。頂上は薄暗い林のなかで、安倍荒倉あたりだろうか、南アルプス主稜線の山が木々の間から見えていた。
頂上で20分ほど休憩。三峰川最上流への降り口を捜したがイマイチ明確じゃないので、来た道を戻ることにした。もっとも時間的に三峰川最上流への降りるのはムリだろうケド(笑)。来た道を忠実に辿るように細心の注意を払いながらの下り。途中の倒壊小屋までは道を外さずに来れたけど、倒壊小屋から先はコースを西に振りすぎたため、ヤバい状況に...。が、永年の山歩きで培ったセンスで、こんどはコースを北に振りすぎるように取ったらしっかりした踏み跡に出た。ここで正規ルートに再び乗り、なおも下るとまたルートが怪しくなったので、サインを捜すためあちこち見回ってると、斜面の下方に赤い屋根の建物が見えるではないか!!! 貯水池と水門小屋だ!!!(笑)。ここからは登りのルートは完全に捨てて、貯水池を目指して下り降りた。そして無事貯水池に15:04に到着。登りの際に作ったケルンは必要無かった(笑...でも、あれは一種の保険だからな)。最初から貯水池の裏側の斜面を登ってりゃよかったんだろうけど、サインが一切無い以上そういう発想は出てきにくいものがあるし...(苦笑)。
貯水池からは、それまでの道と比べると「目隠ししても歩ける」感じの立派な巡視路歩き。20分余りで巡視路入口に出て、さらに20分ほど歩いて元の駐車場に15:58に戻った。
空気が乾燥してて爽やかな山行でした。
【行動記録】2000年6月4日(日) 日帰り
駐車場1055─小瀬戸集落跡1100─巡視路入口1118─1200貯水池1220─
─倒壊小屋1254─1322//1332─1354風巻峠1414─倒壊小屋1444─1504貯水池1514─
─1536巡視路入口─小瀬戸集落跡1553─1558駐車場
【1:25,000地形図】間ノ岳