奥越・赤兎山...2003.5.24〜25(1泊2日)

 

 2年ほど前から登山を計画していた奥越・赤兎山に、5月24〜25日に登りに行った。今や赤兎山は、小原林道を使って、殆どハイキングの感覚で登るひとが多い。登山口から頂上までわずか1時間半ならそれも当然だろう。だけど、それじゃあ全然モノ足りない私は、南面の鳩ヶ湯からのコースを使い、頂上東側の赤兎避難小屋宿泊の1泊2日の計画で登って来た。
 5月24日(土)、早朝の4時くらいにクルマで富山を出発。国道41号線を南下し、高山から国道158号線に入る。国道156号線に合流した岐阜県荘川村牧戸付近の駐車帯にクルマを入れ、1時間ほど仮眠。白鳥から油坂峠を越えて福井県に入る。九頭竜湖畔の道を往き、荒島岳の登山口でもあるJR越美北線勝原(かどはら)駅前にクルマを駐めて、買って来たコンビニ弁当で腹ごしらえ。食事が済んだ後、刈込池へと向う県道を進む。ところどころ対向車が来たら困るような狭隘な部分を持つ県道を往き、9時半頃に赤兎山登山口に当たる鳩ヶ湯に到着。鳩ヶ湯は温泉旅館が一軒あるのみ。鳩ヶ湯の駐車スペースはみんな鳩ヶ湯の私有地なので、ここにクルマを置いて登山に向う場合は、必ず鳩ヶ湯に許可を取ること。私も、鳩ヶ湯旅館に駐車許可を求めたところ、大野市営バスの廃車が放置されてる奥にクルマを駐めるように言われた。登山の支度をして、クルマから離れて登山開始しようかとすると、「こらぁ〜! 勝手にクルマ駐めるな!」と御老人の怒鳴り声が...。「あ、あのひと、ちゃんと駐車許可とってますよ」と、横から取りなすひとが居たので事無きを得たが(当たり前だ!)、ちゃんと駐車許可もらってても怒鳴られるんだから、無断駐車したらどんなふうになるか、容易に想像出来るだろう。もし、無断駐車する者が絶えない場合、赤兎登山者は全面駐車禁止措置が取られる恐れもあるので、登山者諸氏には是非ともモラルを守っていただきたいものである。
 9:41に鳩ヶ湯出発。鳩ヶ湯から たんどう谷に架かる橋を渡るとすぐに、赤兎山への登山口がある。これは、林道のヘアピン・カーヴをショート・カットする道で、コンクリート製の階段を登り、さらに急坂を登ると、すぐに林道に出る。林道に出てからは、ヘアピン・カーヴの連続。林道といっても、通るクルマは1台も無い。やがて谷沿いの道になって、登山口から30分あまりで林道から登山道への入口に到着。緩くだだっ広い道を行くと、登山道右手にベンチが現れる。このベンチを過ぎたところで休憩していると、山のほうから下ってくる若いハイカー1人と遭遇。この時間にここを下ってくるというのは??? 休憩が終わってなおも歩き出すと、山菜取りの中年夫婦が居た。無惨な落ちた屋根だけがここに小屋があったことを示す小屋跡のあたり。道路標識のような落石注意の看板を過ぎると、道はどんどん細くなり、雑草がうるさくなってきた。たんどう谷徒渉点が近付き、登山道は谷へと下りて行く。11:41、たんどう谷徒渉点に到着。
 雪解け水のせいで、たんどう谷は水量が多く流れも早い。どうみても靴を脱がずに対岸に渉れそうもなかったので、潔く、靴と靴下を脱ぐ。両手に靴を持って、沢の流れに足を入れる。冷たい! さらに、水苔のせいか足が滑る。よく見ると、木の枝が1本渡してあったので、それを頼るかたちで、たんどう谷を渉る。靴を持ってると足が滑った時に手がふさがっていて突発事故に対処出来ずに危険なので、手に持ってた靴を向こう岸に放り投げた。沢に渡してあった木の枝を頼りになんとか渉り終えたところで、休憩。
 たんどう谷徒渉点からは、谷を離れ尾根を目指す。途中、何度か小沢を過ぎる。「天然のものではなく、私たちが栽培しているものです。採らないで下さい」といった旨が書かれた看板のある わさび田を過ぎたところで休憩。ここら辺りから残雪が現れ始め、ベンチのある奥ノ塚峠あたりでは残雪ためコースが分かりづらい。雪面に残った足跡を頼りにコースを捜す。先の休憩から10分歩いただけで、腹ごしらえのため、またも休憩。勝原駅前で弁当喰ってから何も食べてなかったから(苦笑)。奥ノ塚峠から尾根に出るまでは急な登りが続く。枯れ葉がフワフワしてて歩きにくい。『赤兎山2.7 km/鳩ヶ湯5.3 km』の標識があるあたりが尾根上到達点で、ここから小ピーク(・1,351 m)を越えると、なだらかな尾根道になる。時折、残雪が道を覆うものの、先行者の足跡が付いているので、それを拾って行く。途中、何組かの登山者とすれ違ってるし、彼らのつけたてホヤホヤの足跡があるんだから。こうやってブナ林のなかの登山道を時たま残雪に阻まれながら往くと、14:48、『赤兎山頂上まで500 m』の標識がある、頂上直下のうさぎ平に出た。雪が無い頃には湿原となる場所だそうで、樹林帯が切れて見晴しが良く、これから向う赤兎山頂上がよく見える。残りの登りは標高差で約130 m といったところ。だけど、ここから先が長かった...。緩くて、だだっ広い尾根は残雪に埋まり、雪で寸断された登山道の続きを見つけるのは困難。雪面を適当に登っていくと、ヤブで行き止まりになり、この先進めそうもない。大人数居るパーティーだと、みんなで手分けして登山道の続きを捜せばいいんだろうけど、ひとりでそれをやるといたずらに体力を消耗するだけ。せっかく登った雪面を引き返し、元のうさぎ平に戻る。幸いにして、小屋泊まりの予定にもかかわらず、テントを担いで来てる。少しくらい迷ってもどこでもテント泊が出来る...そういう心の余裕があった。うざぎ平で暫し「作戦会議」(苦笑)。このまま雪面を登っても、登山道の続きを捜して見つけるのはムリだろう。頂上まで道無きヤブを漕いで登る体力はもう残ってないので、敢えて雪が残ってるコースを選んで残雪の上を歩いたほうが早い...そう判断して、うさぎ平から頂上西側に廻り込み、雪の残ってるところを選んで登る。赤兎山頂上西側の急坂をキックステップを切って行く。陽射しが強く雪面が溶けて柔らかいのでステップは切り易いけど、このままだと雪目になっちゃうな(苦笑)...と思いながら最後の急坂を登り切ったところは、小原峠から赤兎山への登山道。しかも、頂上を示す柱がすぐ見えるところ。登山道に出てから1分も経たないうちに、16:09、赤兎山の頂上に到着。


赤兎山頂上からみた白山方面

 赤兎山の頂上には、誰も居ない。私だけ。この時間だと、赤兎避難小屋に宿泊するひとしか、ここに居ないだろう。天気は晴れで、白山をはじめ、別山、経ヶ岳方面がよく見えた。天気が良過ぎてモヤがかった感じなのか、荒島岳はぼんやり見える程度。北隣の大長山は残雪をたっぷり。翌日は大長山まで足を伸ばす気で居たけど、この残雪量だと、大長山まで往復してから鳩ヶ湯まで下山するのは、時間と迷い易さを考えるとリスクが大き過ぎる。頂上に設置してある展望盤をみながら、周囲の景色を楽しんだ後、この日の宿泊地である赤兎避難小屋に向う。


赤兎山頂上からみた大舟山、経ヶ岳方面

 頂上から10分あまりの歩きで、16:43、赤兎避難小屋に到着。小屋の扉は開きっ放しだったけど、中には誰も居ない。どうやらこの日の宿泊者は私だけのようだ。そう思って、紅茶をいれて、チョコレート食べながらくつろいでると、17時半を廻った頃、ひとりの登山者...20代後半...が小屋に到着。小原峠コースから来たという彼は、金沢の広告代理店に勤務。なかなか休みが取れないので、このような強行登山をやることが多いそうだ。同じ小屋に泊まったのも何かの縁ってことで、彼とはイロイロ話したんだけど、彼は北海道でヒグマを討つのが夢だそうで、狩猟免許取得を計画中。山が国立公園にかかるため狩猟が出来ない地域が多い石川県や富山県の山を避け、狩猟可能範囲が広い福井県の山を重点的に登ることにしてるそうだ。いずれ狩猟免許取得した日に向けて、福井の山に慣れておくために。そういうふうに、彼とイロイロ話してるうちに、19時を廻り、薄暗くなってきた。ここで私は就寝。
 翌5月25日(日)の朝、5時26分に赤兎避難小屋を出発。出掛けに彼に「お気を付けて」と声を掛けられる。前日の晴天とうって変わって小屋の周りはガスに包まれていて、真っ白。視界20 m くらいだろうか、小屋前から赤兎山の頂上すら見えない。ガスに白く包まれた道を往き、赤兎山の頂上へ。展望は全くナシ。前日、白山や別山、経ヶ岳や荒島岳など周囲の展望を欲しいがままにしたあの頂上とはまったく別モノである。この天気に、豊富な残雪...大長山往復などトンデモナイ!!! この日は、道を見失ずに鳩ヶ湯に戻ることだけに専念。長居の必要を感じなかったので、赤兎山頂上からそのまま下りにかかる。前日登ってきたルートではなく、頂上から鳩ヶ湯への正規登山道へ入る。やがて、やっぱり登山道は残雪に寸断されていた。ここで下山ルートを見失ったら帰れなくなるので、雪が登山道を隠してる続きを必死に捜す。慎重に捜すも、なかなかルートが見つからない。そのうち開き直って雪の緩斜面を南のほうへ下って行ったら、足跡が!!! この足跡をたどって下ってたら、いつの間にか、うさぎ平に到着。霧がかかった曇り空のため、前日居た、展望開けた爽やかなうさぎ平と全く別の場所に見える。うさぎ平に着いてしまえば、あとは何とか下れるだろう...そう思いながら、ルートを往く。途中、奥ノ塚峠のベンチあたりで、残雪のお蔭でルートを見失ったけど、よく捜したら道の続きを見つけられた。ここはルートが90 °曲がるところなので、残雪に道が隠されると迷い易い。奥ノ塚峠から たんどう谷に向って下る。この日入山したと思われる登り組とすれ違う。たんどう谷の徒渉点に来たところで、対岸に大人数のパーティーが到着。たんどう谷徒渉点には前日よりも木の枝が1本多く渡してある。前日に下山したパーティーが置いたものだろう。前日に靴を脱いで裸足で渉ってる身とすれば、最初からここは裸足で渡る覚悟が出来てたから、すぐに靴と靴下を脱いでザックのなかに仕舞う。前日の徒渉時に手に靴を持ってたらいざという時に危ない...ということが分ったから。私は裸足になって谷を渉ったけど、大人数のパーティーのみなさんは、靴を脱ぐ気はサラサラなく、沢に架けてある木の枝を利用してひとりひとり渉って行った。中には失敗して濡れたひとも居たけど。ま、私と彼らでは、日帰り装備とテント泊装備の違いがあって、背負う荷物の重さも違うし...。ただ、靴と靴下を脱いで渉るほうが安全パイなんだけどね。流されたら、この水量にこの流速、助からないかも...。
 たんどう谷を渉った後、インスタントラーメン作って休憩してると、別の大人数パーティーが到着。彼らも靴を脱がずに木の枝を利用して渉って行った。靴脱いで渉ってしまった私がバカに思えてくる...。ところで、この日はここまで20人以上の登山者とすれ違ったことになるけど、みんなクルマをどこに駐めてるんだろうか? 鳩ヶ湯に駐めた自分のクルマが、「他のクルマが邪魔して出せない」...という悪夢が頭をよぎる...。
 たんどう谷を渉ってしまうともう殆ど山旅はお終い。残り行程は、鳩ヶ湯に戻るだけ。迷うところも無いし、危ないところも無い。鳩ヶ湯の入浴は10時以降からなので、10時に鳩ヶ湯に戻れるように、慌てず歩いたつもりだったんだけど、9:36には鳩ヶ湯に着いちゃった(苦笑)。鳩ヶ湯に駐めてた私のクルマの周りには1台もクルマが駐まってなかったので、ひと安心。間違い無く、クルマを出せる。「あの大人数パーティーたちはどこにクルマを駐めてるんだろう? 鳩ヶ湯の宿泊者か?」などと考えながら、10時まで鳩ヶ湯の公衆トイレ前のベンチで時間を潰し、10時から入浴。勿論、入ってるのは私だけである。鳩ヶ湯で山の汗を流した後、帰宅の途についた。
 残雪が多くて、予想以上に手こずった。もう半月遅かったら、もっとよかったのかもしれない。

【行動記録】2003年5月24日(土)〜5月25日(日) 1泊2日
5月24日(土)
鳩ヶ湯941─赤兎山登山道入口1013─1041//1051─1141たんどう谷徒渉点1152─
─わさび田1228─1230//1246─奥ノ塚峠(ベンチ)1252─1256//1321─稜線1338─
─1422//1432─1448うさぎ平1538─1609赤兎山1629─1643赤兎避難小屋

5月25日(日)
赤兎避難小屋526─赤兎山542─うさぎ平604─632//642─奥ノ塚峠(ベンチ)711─
─わさび田720─743たんどう谷徒渉点814─902赤兎山登山道入口912─936鳩ヶ湯

【1:25,000地形図】願教寺山

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