北アルプスの常念岳は、私が一番登ってる山である。少なくとも、北アルプスの中では群を抜いて登頂回数が多いハズ。記録を紐解いてみると、1989年7月、1991年8月、1995年8月、1997年8月、1998年8月...の計5回登ってる。私がこれだけ常念岳を好むのは、私が松本市民だったせいだろう。個人的意見を言うと、松本市街からみる常念岳のピラミダルな姿は、日本一の名山と思えるくらいの風格を備えてる。高校の山岳部時代には、単に顧問の先生や先輩たちに連れていってもらうだけの存在だった「山」。それが、自分の意志で登るもの...へと変化したのが大学時代。高校時代、地元の立山連峰みても何ら感動を覚えなかったけど(っつうか、どれが立山でどれが剱かすら分からなかった)、山に目覚めた松本時代はいつも常念か見える/見えないを気にしながらキャンパスに向かってたものだ。そして、夕方には鉢伏山を観ながら夕食の買い出しに向かってた...と(爆笑〜!!!)。私的『日本一名山』だからこそ、今でも頻繁に常念に登りに行くのだ。といいつつ、前回の登頂から5年ものブランク。こんなに常念に登らない日々続いたのは(初登頂した時から数えて)初めて。というワケで、久しぶりに愛すべき名山・常念岳に登りに行ってきた。
8月22日(金)、夜7時にクルマで富山を出発。10時には信州・安曇村稲核(いねこき)の国道158号線『道の駅
風穴の里』に到着。ここで仮眠。最近、早朝1時や2時に起きて、登山口までクルマを運転してから登山にかかると、露骨に疲れが出てくるようになったので、前日のうちに現地に入ることを考えてる。翌8月23日(土)、朝3:40に『道の駅
風穴の里』を出発。安曇村の『サークルK』で朝食のハンバーグ弁当を購入し、堀金村の須砂渡へ向かう。堀金村須砂渡付近は国営安曇野公園の整備のため、数年前とはかなり様子が変わってる。実は、ここに来るのは今年2回目で、常念に登るつもりで7月5日(土)に来たものの、雨が降ってて「中止」にした。今回の山行はその時のリヴェンジの意味も兼ねている。登山口・三股大駐車場に4:50頃到着。駐車場はすでにクルマであふれんばかり。クルマの横にテント張って寝てるパーティーも居る。ここの駐車場が早い時間帯にすぐに満杯になるのは経験上分かってたから、この時間に着くように早出したんだけど、あと30分くらい遅かったらクルマを駐める場所が無くなってたろうな。私がクルマ入れたスペースは、ちょうどテント張ってたパーティーがテント片付けたばかりの『跡地』だった模様(苦笑)。クルマのなかで『サークルK』のハンバーグ弁当を食べた後、5:06に三股大駐車場を出発。10分あまりの歩きでかつての林道終点・三股登山相談所に着く。ここで蝶ヶ岳へのコース(蝶ヶ岳新道)を分け、常念への道に入った。
この日の山旅には「常念から三股に下るのはイヤ」というのと「宿泊地は蝶ヶ岳ヒュッテにしたい」というコダワリがあった。常念から三股への急な下りはもうウンザリ! 出来ることなら敬遠したい(苦笑)。宿泊場所を常念小屋にするよりも、蝶ヶ岳ヒュッテにしたほうが回り道せずに済むから、コ−ス的に有利。これらのコダワリを満たそうとすると、1日目は三股→常念→蝶...というロングコースになる。そのロングコースを踏破するつもりで挑んだんだけど...。
三股から尾根上までつづら折りの道を往く。私はテントありのフル装備だけど、小屋泊まり装備の軽量な登山者に次々と追い抜かれる。天気は晴れ。途中2回の休憩を挟み、どんどん登っていくにつれて沢音が小さくなっていく。2時間あまりの登りでひょっこり尾根上に出た。古い地図に載ってる大平原からの登山道(廃道)の分岐だ。尾根上からは尾根通しにほぼ緩い登りの道を往く。雨続きだった天候の影響か、ところどころ道がぬかるんでる。途中、休憩してると、女性の単独行者が通り過ぎて行った。勿論、小屋泊まり装備。こうしてみてると、テント一式のフル装備でここを歩くひとは少ない。休憩を終えて歩き出すとすぐに森林限界に到達。このルートは、森林限界過ぎるとあからさまに植生が変わる(当たり前?)。ここまでは見通しのない林のなかの道だったけど、森林限界から先は、展望はあるが岩ゴロゴロで歩きにくい道に激変。小学生くらいの女のコが父親に連れられて下って来た。地元に愛される山ならでは...か。緩い登りから突然、手も使わなきゃ登れないような岩ゴロゴロの急坂にこちらのペースも乱れ、先の休憩から30分のところでたまらず休憩。どーも、「燃料切れ」のよう(苦笑)。『サークルK』のハンバーグ弁当のエネルギーでは3時間チョイしかもたなかった(笑)。ここでパイン缶を空けて、なおも前常念を目指す。ここからも急坂で、すっかりヘロヘロになった私、30分ほどの登りで、8:53、なんとか前常念避難小屋に到着。前常念避難小屋前で休んでると、関西から来たとおぼしきオバチャン集団が常念岳からの岩ゴロの急な下りに音を上げてたので、「この先、もっと凄い下りになる。『地獄の下り』だ」と脅かしてやった(笑)。私もここの下り、何度も歩いてもうウンザリなの!(笑)
前常念からは富士山や南アルプス、浅間山、これから向かう蝶方面などの展望が得られた。
当初の予定では、この日は常念の頂上踏んで、蝶まで行く予定だったけど、このヘロヘロな体調では「蝶まではムリ」と判断。蝶ヶ岳ヒュッテ前でテント泊の予定だったけど、常念小屋前でテント泊に変更。で、常念小屋でこの日の日程は終わり...となると、急ぐ必要は全く無い(笑)。今の時間は9時、常念小屋まで1時間と考えると、このまま歩くと10時台に常念小屋に着いてしまう。これじゃあ、早過ぎ...ってことで、前常念避難小屋のなかで2時間ばかり昼寝(爆笑〜!!!)。前常念避難小屋は、石を積み上げた石室にトタン屋根をかぶせただけの粗末な小屋で、見掛けだけだととても泊まる気にはならない小屋。だけど、中に入ってみると案外キレイなんである。ベニヤ板が敷かれただけの床も汚れが少ない。お盆休みに雨にたたられた登山者が緊急避難的にこの小屋を使ったのか、1週間前くらいの日付け讀賣新聞が残されてた。前にこの小屋を覗いた時、小屋の片隅に置かれていた冬山登山者用?の飲料水とガソリンが入ったポリタンクは、今回はナシ。水さえあればここに泊まったのに...と思ったくらい居心地がよかった。この前常念避難小屋で昼寝してると、通りがかりの登山者が何名もこの小屋を覗いてったんだけど、私が寝てるの見ると、何故か、みんな逃げてった(苦笑)。そんなに私の風貌、アヤシかったッスか?(笑)
12:13、ようやく重い腰を上げ、前常念避難小屋を出発。前常念への登りの途中に私を追い抜いてった軽装の登山者が、常念から下ってくるのとすれ違った。この軽装登山者みて、「常念だけなら、三股から日帰りで登れる!」...今まで考えもしなかった発想に目からウロコが落ちた気がしました(笑)。前常念からすぐに常念小屋への巻き道の分岐に出る。この常念小屋への巻き道は、残雪がある時期には通行禁止措置が取られてるけど、もう8月だし、当然通れるものと思うわな。だけど、落石が多いので、常念岳頂上のほうを廻って下さい..といった旨が書かれた看板がある。「常念岳頂上のほうなんか廻っていられるか〜〜〜!!!」と、この巻き道に入る。何度か通ってる道だし。と、巻き道に入ったはイイが、途中、急な下り坂ンところで、立ち往生してる(ように見えた)グループが居た。「もしかして、道が崩壊してて通れないですか???」って訊くと、急坂にビビってるだけだった(苦笑)。ここは先に通してもらって常念小屋へ向かう。巻き道といえども、沢形地形をいくつも越えていくので、アップダウンが激しく、常念小屋が見えてるのに、なかなかたどり着かない(苦笑)。ようやく縦走路に出ると、常念からの下りの登山者がどっと増え、ちょっとの下りで常念小屋が建つ常念乗越に13:21、到着。この日はここのキャンプ指定地で幕営。トイレの度に長い道を歩くのはイヤだから、トイレからさほど遠くない場所にテントを張る。あまりトイレに近過ぎると臭うし(笑)。常念のキャンパー用トイレは、ここ最近の登山者トイレ有料化の流れに沿って、1人1日\100の使用料を払う仕組みになっていた。もっとも、料金箱が置いてあるだけだから、登山者の良識に委ねられてるワケだけど。
翌8月24日(日)は4:43、まだ夜が明けぬうちに常念小屋前キャンプサイトを出発。すでに多くの登山者が山頂で御来光を迎えるため頂上に向かっており、彼らが使うライトで登山道の道筋が分かるくらい(笑)。私もヘッドランプを装着し、足元をライトで照らしながら登ってたけど、すぐに夜が明けて明るくなり、ライト要らずになった。頂上には登山者が100人くらい居て、超満員。後から登ってくる登山者が休む場もないようで、頂上に居る者が下山してスペースが空くまで、頂上の手前で2〜3分待機を余儀無くされたほど。5:42、常念岳頂上にようやく立った。頂上の標識の白ペンキ文字がすっかり色褪せて字が消えてる。初めて常念に登った1989年は白ペンキ文字クッキリだったのに...(苦笑)。天気予報では、8月23日(土)よりも8月24日(日)のほうが雲が多い...と言っていた(このこともあって、当初、初日に蝶ヶ岳まで行く計画を立てたんだけど)とおり、東側の安曇野は雲海に覆われ、展望は良くない。が、西側の上高地を挟んで対峙する槍・穂高連峰はクッキリ見えた。
北方に目を転じれば、双耳峰の鹿島槍ヶ岳まで見渡せた。
常念岳の頂上がミョーに混んでるのは、どうも近畿日本ツーリスト主催の登山ツアー客の集団が居るためのよう(苦笑)。30人くらいの集団で、私が常念の頂上から下ろうとしたら、ちょうどこの集団も下山にかかるところで、前がふさがってる。急なガレ場の下りに不慣れな登山者も多いらしく、なかなか列が進まない。しびれを切らせた私は登山道じゃないガレ場を下り、近ツーの集団を追い抜いた(笑)。
近ツーの集団を追い抜き、ようやく自分のペースで歩けるようになった私は、悠々と蝶への道を往く。常念から下り切った鞍部の先にモッコリ盛り上がる(地形図上の)・2,512
m
を越え、森林帯に入ったところで休憩。が、休憩場所の選定を誤り、蚊など虫が多く寄ってきてウザい!!!
休憩を終えて、なおも樹林帯を往く。林の切れ目にお花畑が広がってる場所が数ヶ所現れる。多くの登山者が休む(地形図上の)・2,592
m
を越え、池を過ぎ、蝶槍への登りにかかったところで休憩。この場所も蚊など虫が多く寄ってきて...(泣)。
蝶槍への登りは、この日最後の登り...と自分に言い聞かせて登り、巻き道通らずに蝶槍の頂上に出た。多くの登山者が休む蝶ヶ岳三角点を通過し、蝶ヶ岳ヒュッテへ向かう。蝶ヶ岳はこれといった目立ったピークがなく、一番高いのは、蝶ヶ岳ヒュッテ南の
2,677
m峰だ。二重山稜のなかの道を往くと、展望台、そして蝶ヶ岳ヒュッテに9:11到着。
相変わらず、東側は雲に覆われているものの、西側の槍・穂高連峰はハッキリみえる。東側が雲に覆われてるってことは、9時台の時間なら陽が出てない。蝶ヶ岳ヒュッテ前のベンチで休んでると風が冷たい。北側に目を遣れば、今越えて来たばかりの常念がみえる。森林限界から前常念にかけての稜線がほとんど45°の傾斜なのがハッキリ分かる。前日はあの急坂登って「死んでた」ワケだ。あの傾斜をみたら、それも納得...(苦笑)。
蝶ヶ岳ヒュッテを9:33に出発。大滝山へのコースを分け、蝶ヶ岳新道に入る。下りに入った途端、太陽が雲塊から逃れたようで陽が照りつけるようになった。暑い! 1時間ほどの下りで、蝶沢に到着。いつもの年の8月ならば蝶沢には水は流れてない(伏流になってる)んだけど、これだけ雨が多い今年はしっかり水が流れてる(笑)。蝶沢から常念が仰ぎ見られたんだけど、異様なほど高くみえた。蝶沢で冷たい水を飲んだ後、なおも蝶ヶ岳新道を下る。蝶ヶ岳新道は標識等を付け替えたらしく、最終べンチ、旧ベンチ、蝶沢にもしっかり真新しい標識が付いてる。(地形図上の)・1,916
m
にはかつて「まめうちだいら」と全文字ひらがな書きの看板があったけど、今は「まめうち平」と書かれた真新しいモノが置かれてた。
この蝶ヶ岳新道、前日歩いた三股→常念のコースよりも多くのひとが登ってるようで、この時間になっても多くの登山者とすれ違った。ま、蝶ヶ岳ヒュッテの標高は前常念とほぼ同じだから、登りだけを考えるとこちらのほうがラクか。だけど、下りもこちらのほうが歩き易くて、ラクだ。傾斜もユルいし。力水の水場を過ぎ、吊り橋を渡り、沢沿いに往くと、ひょっこり元の三股登山相談所に出た。ここからは林道を10分ほど歩いて三股大駐車場に戻るのみ。
三股大駐車場から須砂渡への林道をクルマで走ってたら、この狭い林道の向こうから大型バスがやってきてビックリ! どうやら、近ツーの登山ツアーの迎えのよう(苦笑)。
【行動記録】2003年8月22日(金)〜8月24日(日) 前夜発1泊2日
8月23日(土)
三股大駐車場506─三股登山相談所519─607//617─717//727─尾根上749─827//837─
─森林限界841─907//922─953前常念避難小屋1213─巻き道分岐1227─1321常念小屋
8月24日(日)
常念小屋443─542常念岳602─・2,512 m
657─702//712─池746─811//821─
─蝶槍838─蝶ヶ岳三角点844─911蝶ヶ岳ヒュッテ931─1029蝶沢1039─まめうち平1108─
─1139//1149─吊り橋1200─三股登山相談所1207─1217三股大駐車場
【1:25,000地形図】信濃小倉、穂高岳