北アルプス西部、奥飛騨の名峰・笠ヶ岳に、富山在住の地の利を活かして、9月28日に日帰りで登って来た。それも、笠新道の往復で(笑)。ホントは私も小池新道→双六小屋(1泊)→弓折岳→笠ヶ岳→笠新道...の1泊2日で登りたかったんだけど、イロイロ忙しくてこの日しか空いてなかったんだもん(苦笑)。
「北アルプスの登山道のなかでも屈指の急登コースと言われる笠新道を往復しての日帰りってムリじゃない?」と思われる向きもあるかもしれないけど、笠新道入口の標高が約1,350
m、笠ヶ岳の標高が2,898 m...ということを考えると、標高差は約1,500
m。1時間あたり300 m
登ると仮定すると5時間で登れる。帰りは3時間半もみとけば大丈夫だろう。休憩時間を2時間みとけば、合計10時間半。朝6時に出れば、理屈の上からいえば午後4時半には下りて来られることになる。ただ、実際にやってみると...。
登山シーズン中の休日ともなると、笠ヶ岳の登山口になる新穂高温泉の登山者専用(無料)駐車場(深山荘前)は朝早くから駐車スペースが全て埋まってしまう。山のほうでは紅葉シーズンが始まる9月の下旬も、よっぽど早発ちしない限りクルマを駐める場所が無くて苦労しそうなので、予め前夜10時に新穂高温泉の登山者専用駐車場に入っておく。ここにクルマを駐めてクルマのなかで仮眠。
9月28日の朝5:11に駐車場を出発。まだ夜は明けきっておらず、ヘッドランプを装着して歩き始める。新穂高温泉バスターミナルへの階段状になってる近道を通り、バスターミナルの左側で蒲田川を渡って温泉街を抜け、一般車両通行止めの左俣林道に入る。笠ヶ岳の日帰り往復の障害のひとつが、約1時間にわたる林道歩き。登山者を何人か追い抜きながら林道を歩いてるうちに、夜が明けて明るくなる。ただ、天気予報では「晴れ」のはずが、雲が多くて陽射しが遮られていた。穴毛谷の砂防工事現場につながる林道に入っていった登山者が間違いに気付いて戻ってくるのを見遣りながら、なおも林道を往くと、駐車場から約1時間で、引水ホースの水場(たいして水が出てなかったが)がある笠新道の入口に到着。入口からそのまま登山道に入り、いきなり始まる電光型にジグザグに切られた登りを少し歩いたところで、休憩。休んでると、ひとりの登山者が、もの凄いペースで登っていった。
この笠新道、だいたい標高100 m
おきに標識が設置されており、自分がどこらへんまで登ってるのかの目安になってた。「標高1,800
m」の標識を過ぎたあたりで休憩。蒲田川左俣を挟んで向かい側に、中崎山が壁のように聳える。いつの間にか陽も出て、槍ヶ岳の穂先もみえた。なおも笠新道の急な登山道を登る。私はだいたい1ピッチ1時間で登ることにしてんだけど、あまりの急登に、日帰り装備でふだんによりも荷が軽いにもかかわらず3ピッチ目は45分でダウン(苦笑)。「標高1800
m」の標識を過ぎたあたりだ。ここで、キットカットを食べながら休憩。
この日は日曜日だったから、土曜のうちに笠の登頂を済ませてこの日は下山するだけ...といった多くの登山者とすれ違う。60歳以上の高年登山者ばかりの20人くらいのパーティーも居た。登ってる途中から周りはガスに覆われ始め、先ほどまで見えてた槍の穂先も見えなくなった。ガスが出たお蔭で暑くはないけど、ペースがどんどんダウンしてた私。1人の女性登山者が山を歩き慣れたペースで登って来て、たちまち私を追い抜いていった...。この笠新道は「2段構え」の急登になっている。「1つ目の急登」は、登山口から杓子平まで。杓子平の平坦な道が終わると、主稜線までの「2つ目の急登」が待っている。笠ヶ岳までの道のちょうど半分が杓子平と言えるだろうか。実際には半分以上登ってるんだけど、気分的には、そうだ。杓子平まであと一息ってところで休憩し、登り始めたところですれ違った登山者から「あともう少しですよ」と声をかけられたけど、勿論「もう少し」なのは笠の頂上ではなく、杓子平だ(苦笑)。杓子平の入口に立つ「標高2,450
m」の標識を9:32に通過。これまでの急登から開放され、しばらくは杓子平の起伏の少ない道を往く。この杓子平に初めて来たのは1989年の7月のことだけど、残雪と雪解け水が豊富な杓子平を見て、世界で一番綺麗な場所...とすら思ったものだが、雪が無く高山植物も枯れた今の季節は殺風景な場所に過ぎない...。
沢の流れの音を聴きながら杓子平を歩いて行くと、突然、新ルートの分岐点に出た。「標高2,520 m」の標識と、旧ルートは通行せずに新ルートを通って欲しい旨が書かれた標識がある。ここで、休憩。笠新道の従来の旧ルートは稜線まぎわがもの凄い急斜面で確かにアブナかったので、ルートの付け替えがなされるのは理解出来るが、新しいルートはそれはそれでまた問題で...。稜線到達点が従来の旧コースが標高2,730 m だったのに対し、新コ−スは標高2,812.8 m の抜戸岳頂上付近。新ルートでは100 m 近くも余計に登らされることになった。
新ルート分岐から50分くらいの登りで、抜戸岳頂上付近へ登り切る。ガスってて周囲の山の景色はまったくナシ。抜戸岳頂上付近では1人の登山者がガスが晴れるのを待ってた。「この天気じゃあ笠まで行ってもしょうがないから、ここでガスが晴れるのを待ってようかな」と、その登山者は言ってた。抜戸岳頂上付近から稜線の西側に少し下ると、縦走路に合流。縦走路に合流したところで20代の男性登山者と遭遇。「笠新道を登って来られたんですか?」って訊かれたので、「そうです。しかも、日帰りというとんでもないヤツなんですよ(笑)」と答えると、その登山者は「エ"エ"〜〜〜ッ!」って感じで驚いてた。一般の登山者にとってこの笠新道ってのは、キツくて地獄のような登山道みたいな印象なんだろう(苦笑)。ここから笠新道の旧合流点まで100
m
近く下る(泣)。笠新道の旧合流点では、笠ヶ岳山荘のオヤジが「くだるな」という看板を取り付けてた...。旧ルートはこの日から通行禁止措置が取られた模様(苦笑)。笠新道の旧合流点からは稜線歩きで、起伏も(笠新道に比べれば)少なく、廊下を歩いてる感覚に近い。周囲はガスってても、頭上では日が射しており、言うなれば周囲を高い塀で囲まれた広場で運動してたのと同じで、実はしっかりと紫外線を浴びてたんである。自然が作った関門のような抜戸岩を越え、いよいよ笠ヶ岳本体の登りへ。キャンプ指定地を過ぎ、大岩がゴロゴロしてるなかを往くと、笠ヶ岳山荘に11:49、到着。ここでコカコーラを買って、飲む。\300だったけど、ここまで頑張って来た自分に対する御褒美だ。11:59に笠ヶ岳山荘を出発し、12分の登りで笠ヶ岳頂上にたどり着いた。ガスってて景色はほとんど見えない。笠ヶ岳の頂上に来たのは3度目だけど、いつも晴れてたためしがない...。笠ヶ岳の頂上には登山者が2名(単独行者が2人)居て、彼らは1人ずつ、クリヤ谷コースのほうに降りて行った。笠新道を歩いてる途中に私を抜いていった登山者たちが全然帰って来ないし、会わないし...でおかしいと思ってたら、みんなクリヤ谷コースを下ってたのね...。ただ、最初から笠新道の往復のつもりでクリヤ谷への下山は全く念頭に無かった私、クリヤ谷のほうへ下りたい気もしたけど、日没までの残された時間を考えるとやっぱり笠新道を下ったほうが無難。「笠新道入口の左俣林道まで日没前の午後5時までに下ればいい。林道歩きは暗くなっても大丈夫だから、まだ持ち時間は4時間半はある」というふうに考えると帰りの時間がヨメるし、時間が限られてるというのに、何も未知のコースを無理して下るリスクを冒す必要は無いだろう...との判断だ。後からクリヤ谷コースへ下って行った登山者は高年登山者で、携帯電話で(おそらく)家族と下山時間についての連絡取ってたケド、大丈夫だったのか? ワケで私ひとりだけ居た頂上に、ひとりの女のコが登って来た。彼女とイロイロ話してると、彼女は私の大学時代の同期生の元・同僚ということが判明! しかも、彼女の勤務先は私が2ヶ月働いてたバイト先!!! 世間は狭い...(苦笑)。
笠ヶ岳頂上を12:41に出発。山荘までは彼女と一緒に下山(笑)。山荘で休憩する彼女と別れ、ひとりで来た道を戻る。私も山荘前でインスタントラーメン作って休みたかったけど、インスタントラーメンとコッヘル(クッカー)、ガスストーブ持って来てたのに、ガス・カートリッジ持ってくるの忘れてた(笑)。山荘から抜戸岩のほうへ歩いてると、まず、旧コース封鎖の看板取り付け作業を終えて山荘に戻る途中の山小屋のオヤジと遭遇(笑)。そして、抜戸岩のあたりで、ライチョウのカップルと遭遇(笑)。
笠新道の旧分岐から新分岐へと登りきり、来た時と同じように抜戸岳頂上付近で休憩。笠新道の新分岐付近には、笠新道を登り切って稜線にたどり着いたばかりの中高年登山者たちがヘタっていた。ここから杓子平への下りにかかる。あれだけ苦労して登った急坂も下りになると面白いように下れる。笠新道の下りというと、1度歩いた経験から、岩ゴロゴロの歩きにくいイメージがあったんだけど、コース改良のせいかそんなに歩きにくくはなかった。旧分岐から約2時間ほどの下りで、左俣林道の笠新道の入口に、16:43に戻った。ここからまた長い長い林道の歩きで、17:26に元の駐車場に到着。
この日の登山、行程の殆どがガスに覆われて涼しかったため、対策を怠ってしまい、日光をまともに浴びてしまってたようで、今年一番の陽焼け(苦笑)。2〜3日後から鼻のアタマと耳たぶが剥けてきました(苦笑)。
【行動記録】2003年9月27日(土)〜9月28日(日) 前夜発日帰り
9月28日(日)
新穂高温泉登山者用駐車場511─新穂高温泉バス停519─新穂高キャンプ場526─
─笠新道入口609─612//622─「標高1700 m」標701─「標高1800
m」標719─
─722//732─「標高2100 m」標801─817//827─「標高2200
m」標828─857//907─
─杓子平「標高2450 m」標932─947新ルート分岐「標高2520
m」標957─1043抜戸岳南
抜戸岳南1053─笠新道(新)分岐1055─笠新道旧分岐1102─抜戸岩1122─1149笠ヶ岳山荘
笠ヶ岳山荘1159─1211笠ヶ岳1241─1250笠ヶ岳山荘1300─抜戸岩1319─
─笠新道旧分岐1338─笠新道(新)分岐1346─1349抜戸岳南1359─
─新ルート分岐「標高2520 m」標1422─杓子平「標高2450
m」標1433─1500//1510─
─「標高2200 m」標1515─「標高2100 m」標1525─「標高1800
m」標1544─
─「標高1700
m」標1552─1605ベンチ1615─笠新道入口1643─新穂高キャンプ場1713─
─新穂高温泉バス停1718─1726新穂高温泉登山者用駐車場
【1:25,000地形図】笠ヶ岳