奥美濃・蕎麦粒山
2004.6.4〜6.6(前夜発、1泊2日)

 

 ヤブ山登山のメッカ(笑)と呼ばれる(?)奥美濃の蕎麦粒山(そむぎやま)へ登って来た。まだヤブが少ない5月中に登っておきたかったんだけど、実行に移したのは梅雨入り目前の6月第1週のことだった。岐阜県といえば、私の住む富山県の隣県で、事実、地の利を活かして飛騨や東濃の山には結構出掛けている。だけど、蕎麦粒山のある岐阜県揖斐郡坂内村は、富山からは行きにくい場所のひとつ(と、今回出掛けるまでは思っていた)。フツウ、富山から岐阜県に行く場合、国道41号線もしくは国道156号線(または平行する東海北陸自動車道)を使うことになるけど、坂内村を始めとする揖斐川上流域に出かけようとすると、一旦岐阜市内や大垣市内まで出て、揖斐川に沿って遡ることになり、時間がかかる。国道41号線や国道156号線などにあくまでコダワると「一番遠い岐阜県」である坂内村、ここは発想を変え、一旦滋賀県内まで出て、八草峠を越えて坂内村に入るルートを選択した。
 6月4日金曜日の夜8時に富山をクルマで出発、福井県あわら市内のファミリーマートに10時過ぎに到着。ここの駐車場で仮眠。翌朝6月5日の朝4時に再びクルマを転がし、武生から国道365号線に入り、栃ノ木峠越えで滋賀県へ。木之本から国道303号線に入り、八草峠を目指す。木之本町金居原から先の八草峠に至る道は、クルマどうしのすれ違いも難しいほど細い。ところが、峠の部分だけは3,000 m 以上の長さを誇る立派な八草トンネルが完成済みで、すでに供用中。トンネルの前後だけが昔ながらの細い道だ。その細い道も現在改良中で、橋脚がニョキニョキ立つのをみて「こんな山奥に不釣り合いなくらい立派な道路作ってどーすんの?」と思う(苦笑)。朝が早いため対向車はほとんど無く、狭隘な部分も問題なく通過。6時過ぎに坂内村広瀬到着。さらに、スキー場「遊らんど坂内」の駐車場に移動。
 シーズンオフで閑散とした「遊らんど坂内」の駐車場にクルマを駐め、ここから蕎麦粒山登山口まで林道歩き。「林道」とは言っても、スキー場から30分弱の歩きで舗装はなくなり、そこから先は林道崩壊でクルマは通れなくなっている。林道崩壊点からは右側の斜面を急登するロープと、そのまま崩壊部分を直進してく踏み跡があり、ここでは直進するコースを選んだ。崩壊部を通り過ぎると、林道跡が続く。クルマが通れなくなってから時間が長いのか、轍の片方はたまにハイカーが歩くため登山道として残ってるものの、もう一方の轍は雑草に埋もれてる。その登山道も、両側から雑草が伸びてきており、決して快適に歩ける道じゃなく、それらの雑草をかき分けながら歩くため、朝露でズボンが濡れてゆく。北アルプスの登山道のほうがよっぽど立派だ(笑)。舗装終了点から林道跡を行くとすぐに180°方向転換。林道のヘアピンカーヴに当たる部分だ。それまでと違って南向きにしばらく歩き、再びカーヴで180°方向転換。元の北向きの歩きになる。このヘアピンカーヴ部で高度を稼いだせいか、沢の音はだいぶ下のほうから響いてくる。基本的に「林道歩き」だから、傾斜も緩くラクな歩きだけど、たまに土砂崩れに林道が呑まれてしまって崩壊のフチをロープをたよりに渡るような箇所がある。滑落したら相当にヤバそうな場所だ。やがて、登山道のかなり下を流れていたハズの大谷川の沢音がすぐ横で聞こえるようになってくる。川沿いを歩きながら空を見上げると、雲ひとつない青空が広がってる。ただし、初夏の熱い陽射しはこの谷底までは届かず、ジメジメしてて薄暗い。木の枝にガムテープのコースサインが時折現れ始め、「ソムギ岳登山口まで15分」と書かれたガムテープ・サインがあるところに到着。スキー場からノン・ストップでここまで来たけど、ここで10分休憩。すでに林道跡から解放されているのか、急にアップダウンが激しくなってくる。やがて沢に降り始める。8:18、渡渉点に到着。石伝いに沢を渡ったところが蕎麦粒山と五蛇池山の分岐。後から五蛇池山へ登りに行くことを考え、ここにテントなど重い荷物をデポし、必要な用具と食料を持って蕎麦粒山へと向かう。手にはしっかり軍手だ(笑)。いきなり急登が始まり、ロープがあるところもあって先が思いやられたが、尾根上に乗ってしまえばそれほど急でもない。シャクナゲ混じりのヤブも最初のうちはそんなに酷くはなかった。が、村界ピークが近付くにつれ、ヤブが濃くなってくる。村界ピークには9:59到着。ここからは小ソムギと呼ばれるピークへの道が分かれてる。村界ピークからはこれから向かう蕎麦粒山がよく見えたが、一旦100 m下って200 m 登り返す...ってのがしっかり見えたのが、かえってウンザリ(苦笑)。地図で見るよりも遥かに先は長い...。
 村界ピークと蕎麦粒山の鞍部へは面白いように下って行けたが、鞍部から蕎麦粒山までは(いよいよ出た〜〜〜!!!)背丈を超すネマガリタケのヤブをかき分けながらの登り。ネマガリタケをかきわけるのにウンザリし始めた頃、ようやくシャクナゲ帯に変わり、ネマガリタケのヤブから解放された。シャクナゲの道を登りきり、尾根を廻り込んだところが蕎麦粒山の頂上だった。10:51着。頂上からは、坂内村広瀬の集落が真ッ正面に見える。遠くに雪を頂いた(おそらく)白山や、冠山など、奥美濃の核心部がよく見えた。
 ヤブ漕ぎの登りに疲れ、放心状態だったため(笑)、頂上での休憩タイムはあっという間に30分経過。この日は蕎麦粒山を登った後、五蛇池山も登るダブル・ヘッダーを考えてた。時間のこともあるし...で、蕎麦粒山の頂上を辞し、下山にかかり始めたところでちょうど40歳くらいの男性がひとりこちらに向かって歩いて来た。この日初めてみた登山者だ。下りは登りほどの苦労もなく歩けたけど、村界ピークから小ソムギを往復しようと小ソムギへ道に入ったところ、それまでに輪をかけて凄いヤブ。一旦岩場に出てヤブから解放されたけど、それはほんの一瞬のことで、基本的に小ソムギまでヤブ漕ぎの連続だ。小ソムギはヤブの中の小ピークで、特に展望がいいとか、そんなこともあるワケでもない。


小ソムギのヤブのなか(笑)から蕎麦粒山を望む

 このピークで15分休憩して、村界ピークに戻ったところ、先ほど蕎麦粒山の頂上付近ですれ違った登山者とまたもすれ違う(苦笑)。その登山者も小ソムギに向かうようだ。村界ピークからはノンストップで荷物をデポしてある元の渡渉点に13:50に到着。
 本来の予定では、この後五蛇池山を往復するつもりだったけど、時間がもう14時だし、いくら今の時期の昼が長いとはいえ、蕎麦粒山以上のヤブ山と言われる五蛇池山を往復する持ち時間としては心もとない。残り4時間で往復は不可能じゃないけど、ムリが多い。それに...やっぱり蕎麦粒山への往復でのヤブ漕ぎで思った以上に体力を消耗してた。6月3日に東京出張で帰りが遅くなり、4日はクルマの中での仮眠。睡眠不足の反動が一気に出て疲れてたのかもしれない。五蛇池山登山は中止。翌日の天気が晴れならば、翌日に五蛇池山登山を廻す手もあったけど、あいにく翌日の天気は「曇りのち雨」。五蛇池山登山はまた別の機会にチャレンジすることにした。
 最初から五蛇池山に登った後はテキトーな場所でテント泊するつもりでテント一式を持ってきていたので、渡渉点から15分くらい戻ったところの広場(っつうか、草むら)にテントを張る。こここそが林道(跡)の終点だそうだ。テントを張ってくつろいでると、蕎麦粒山の頂上と、村界ピークで2度すれ違った例の登山者がテントの脇を通り過ぎていった(苦笑)。昼寝にかかろうとしたけど、朝と違って初夏の陽射しがまともにこの谷底にも照りつけてるので、暑い〜! だけど、暑さよりも疲れのほうが勝り、いつの間にか眠ってた。目覚めた頃には17時くらい。もう陽射しは谷底には届かず、あたりはすっかり沢沿いの清涼な空気に包まれ、寒いくらいだ。この日はこのままここで宿泊。時間的には、この日のうちに富山に戻れないこともなかったが、疲れを考えると帰りの運転が危険。ここで泊るほうが無難だろう。
 翌6月6日は、朝4:42に林道跡終点広場を出発。前日来た林道跡を戻るだけ。天気予報は「曇のち雨」だったけど、今にも雨が降り出しそうな空。ヘアピンカーヴ部に差し掛かり、南向きに歩いてたのが北向きに変わってから数十m 歩いたところに左側にコースサインがあり、そちらのほうに踏み跡があったので入っていくと、物凄い急な下り坂で、下部はロープにつかまりながらの下降。下り切ったところが林道崩壊部の手前。この急坂はちょうどヘアピンカーヴを1つショートカットした形になっている。林道跡の緩い傾斜歩きに慣れた足に突然の急坂はリズムが狂うので、この急坂を使わず、遠回りでもヘアピンカーヴ部を歩いたほうがイイと、個人的には思う。崩壊跡からは1~2分で舗装道路に出て、スキー場の駐車場まで林道歩き。5:52にクルマのところに戻った。クルマに乗って広瀬に出た頃から雨が降り始めたんだけど、広瀬の集落からは蕎麦粒山がよく見えた。この日・6月6日は坂内村の夜叉ヶ池の山開きの日。あいにくの天気ですねぇ〜(苦笑)。


坂内村広瀬より望む蕎麦粒山

 今回の登山の最大の失敗...それは上半身はTシャツ姿で肘より下の肌を露出してたこと。ヤブ対策のため手には軍手をしてたけど、それだけでは不十分だった(苦笑)。ヤブとの格闘で肘から先の腕に多くの傷を作ってしまった。さらに、うるしか樹液か...皮膚にはよくない物質を付けちゃったせいか、2~3日後に痒みが発現...。長袖でも快適に登れる季節じゃないと奥美濃の山に行っちゃダメ!!!...と思いました(苦笑)。となると、4月か10月〜11月だなぁ〜...。

【行動記録】2004年6月4日(金)〜6月6日(日) 前夜発、1泊2日
6月5日(土)
遊らんど坂内スキー場625─林道鋪装終了点652─759「そむぎ岳登山口まで15分」標識
「そむぎ岳登山口まで15分」標識809―818徒渉点833―933//943―村界ピーク959―
―1051蕎麦粒山頂上1121―村界ピーク1205―1222小ソムギ頂上1237―
―村界ピーク1252―1350徒渉点1410―「そむぎ岳登山口まで15分」標識1418―1424広場

6月6日(日)
広場442─552遊らんど坂内スキー場

【1:25,000地形図】美濃広瀬

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