船戸与一作品の映像化を考える
昨日(2003年6月26日)、TBS系で船戸与一の『龍神町龍神十三番地』が2時間サスペンスドラマ化、放送されてましたが、私の手元にある徳間文庫版(2002年11月15日初版)で600ページを超えるこの大作をどう「2時間サスペンスドラマ化」するのか興味津々だったため、船戸与一ファンの私はTVの前に貼り付いて観てました(苦笑)。やっぱり深甚で遠大な船戸与一の世界を2時間の枠に収めることはムリで、登場人物は半分以下に削られ、エピソードもかなり端折られてました。「原作が気に入ったんだったら、映画化されたものは観るな! 映画が気に入ったのなら、原作は読むな!」の法則(←んなもの、あるんかい???)が見事に適中〜! ただし、そんなにガッカリはしませんでした。今回わざわざこのドラマを観たのは「船戸の作品が如何に改悪されてるか」を確認するためだったんだから(爆笑〜!!!)。女子中学生を誘拐、強姦/殺害した犯人を射殺したため刑事をクビになったうえにムショ送りにされた過去を持つ主人公・梅沢俊介役が佐藤浩市ってのは、ドハマリかもしれませんが、長崎県警の鼻つまみ者・郡家徳雄が柴田恭平ってのは、ちょっと違うような(苦笑)。「パンジー」こと諸井昭平が宇崎竜童ってのも違和感あったんだけど、ドラマ観ているうちに馴染みました(笑)。キャストの話はこのくらいにして、と。登場人物を大幅に削ったせいで、ストーリィの細かな流れや結末など、原作とは大幅に違ってたため、ストーリィの結末に意外性がまったく無いつまんないドラマになってました。船戸の原作読んでないひとの目にもつまんないドラマに映ったんじゃないのかな、アレ(苦笑)。あのドラマみて、船戸の作品もつまらないと思われたら迷惑なんだけど(苦笑)。
船戸の作品がTVドラマ化されたのは、(私の記憶が正しければ)そんなに無いハズです。何故なら、船戸の作品には海外が舞台の作品が多いから(笑)。南米3部作と呼ばれる『山猫の夏』、『神話の果て』、『伝説なき地』、アフリカが舞台の『猛き箱舟』、北米が舞台の『炎流れる彼方』、旧ソ連黒海周辺が舞台の『砂のクロニクル』などなど。だから、これらの船戸作品を映像化しようと思ったら海外ロケが不可避だし、登場人物中に占める日本人(日系人も含む)率も3割以下。NHK大河ドラマ的な日本の人気俳優・女優勢揃い豪華キャストで話題づくりってのも出来ない。だから、お手軽2時間サスペンスドラマ化は予算の都合上難しいでしょうね。さらに船戸の作品ってどれもページ数が多くて漬け物石みたいにブ厚いため(笑)、原作に忠実に映像化しようとしたらとてもじゃないけど2時間の枠に収めるのはムリ。これじゃあ、比較的制作費がかけられる映画化すらもムリかな。船戸の作品を、作品のもつスケールそのまんまで映像化しようと思ったら、正月番組あたりでやる4時間ドラマ(それも、出来れば2夜連続で都合8時間)くらいにしないと不可能じゃないかな。だけど、船戸の描く世界には血で血を洗う「暴力的なシーン」が多くて、主要登場人物の殆どが殺されてしまったりして、ハッピーエンドを拒否するかのような作品が多いことを考えると(苦笑)、映画はともかく、お茶の間向け(笑)のTVドラマは不向きかなぁ(苦笑)。
船戸与一の『龍神町龍神十三番地』の結末について私はこちらで「朝倉理恵の望みは結局叶わなかったワケだけど、彼女の望みを叶えて欲しかった読者は多いと思うゾ!」などと甘チャンなことを書いてますが、今回のドラマ化では「朝倉理恵の望み」はちゃんと叶ってました(笑)。ここだけは評価したいです(笑)。
今回のドラマ化の脚本書いてたの、ジェームズ三木だった(爆笑〜!!!)。船戸の冷酷な世界を描き切れない(敢えてハッピーエンドを択んだ)ジェームズ三木も甘チャンだな!(笑)
('03.6.27)