南アルプスの1:25,000地形図を何とかして下さい!
平成17年11月1日付で(おそらく静岡で開かれる『地図展』に合わせての発刊なんだろうけど)、静岡市の市域に係る国土地理院の1:25,000地形図が一斉に刊行された(静岡5-4『富士宮』、甲府16-4『光岳』など一部は発行されなかったが...)。県庁所在地としては日本一の広さを誇る静岡市(北は、南アルプスの秀峰・白根三山の間ノ岳から南は駿河湾まで)なだけあって、市の全域を1:25,000地形図で揃えるためには全部で28枚くらい必要で、そのうち24枚が今回、平成14年図式に基づいた新しい地形図となった。
静岡市域の地形図の新刊が大量に発刊された...ということは、20年以上前に修正されて以来、一度も修正されることがなかった南アルプス中心部の地形図の新刊が出たことを意味する。1:25,000地形図の『塩見岳』(甲府15-2)と『赤石岳』(甲府16-1)は昭和57年修正のものが昭和59年に発刊されて以来修正がなく、1:25,000地形図の『間ノ岳』(甲府15-1)は平成15年部分修正版が出てるものの、市町村合併による自治体名変更(芦安村→南アルプス市)を盛り込んだだけのおおよそ「修正」とは呼び難いシロモノだった。今回、『塩見岳』も『赤石岳』も『間ノ岳』も本来の意味で修正がなされたハズだった。ところが...。
新しく発刊されたこれらの地形図では、この20年間に新設された登山道や、廃道化してしまったため地図上で登山道表示されることが適切とは思えないような旧ルートがそのまんま載ってる。山小屋が倒壊したため、場所を移して新設した百間洞山の家も旧小屋の位置のまんまだし、小屋移設のため新しく開かれた登山道、また廃道化した旧小屋へのルート、いずれも修正されてない!
塩見岳への最短ルートとして近年人気が高い塩見新道、笊ヶ岳への静岡県側・椹島からのルート、塩見岳から蝙蝠岳を経て二軒小屋までのルート、いずれも地形図には記載がない。1980年代から存在する荒川中岳避難小屋も載ってない(苦笑)。逆に、熊ノ平小屋から大井川右俣、または新蛇抜山から大井川右俣に下りるルートはもう一般的ルートではなく、ここに登山道があるように地形図に記載したままにしておくのは不適切だろう。
そういやほとんどヤブ山になってた風巻峠のルートもまだ載ったまんま(苦笑)。あと、三伏(沢)小屋が未だに載ってるんだけど、三伏(沢)小屋って2003年に閉鎖になったんじゃなかったっけ?(苦笑) この地形図持った登山者が暴風雨に見舞われ、緊急避難的に宿泊する気で三伏(沢)小屋に行って閉鎖になってるのをみたら愕然とするだろうなぁ〜(苦笑)。ま、小屋が解体されない限り建物の表記を残すのは構わないと思うけど、「三伏小屋」の注記は消しておくべきだと思います(苦笑)。
『山と渓谷』などの登山雑誌に時折「国土地理院の地形図は間違いだらけ」なる記事が載ってたりする。個人的には、沢の右岸にある登山道が地形図では左岸表記になってるくらいは大した間違いじゃないと思ってるけど(経年変化で道が付け替えられることは日常茶飯事だし)、「国土地理院の地形図は間違いだらけ」とまで公のメディアで書かれてくやしくないのか!? 国土地理院の職員たちはッ! 恥を知れッ!!!
そういや、10年以上前に「より正確な地形図」を作るため、間違いなどの情報を提供してくるヴォランティア「マップ・モニター」を募集してたことがあったけど、いつの間にか募集は打ち切られてしまった。たぶん、地形図オタクのようなひとたちが大勢「マップ・モニター」に名乗りを挙げ、どーでもいいよーな重箱の隅をつっつくような細かいミスをたくさん指摘したんだろう(苦笑)。私は「マップ・モニター」になったら、あれもこれも指摘したくなる自分が容易に想像出来たので、マップ・モニターには手を挙げませんでした(苦笑)。
...というふうに、ここまで南アルプス南部に関連する国土地理院の1:25,000地形図がなかなか更新されない件についてイロイロ苦言を呈したけど、今や多くの登山者は昭文社の『エアリア』など市販の登山ガイド地図を買って利用してる。1:25,000を使って山に登るひとは少数派であり、1:25,000地形図の情報が間違ってても、それが原因の遭難事故や道迷いなどは起こらない...と思う(苦笑)。今回の新刊地形図の情報が間違ってて一番残念なのは、誤った地図情報が後世のひとに伝えられてしまうことである。最近、レトロ・ブームで戦前の地図の復刻版が出版されたりして、今のひとたちは古地図に描かれてる情報をもとに、「70年前の東京ってこうだったんだぁ」といった具合に昔の街の姿に思いを馳せてるが、70年後の登山者は今回発売された地形図をみながら「平成17年現在、三伏(沢)小屋はまだあり、百間洞の山の家は再建前で、塩見新道も中岳避難小屋もまだ無かった」って思うんでしょねぇ...(苦笑)。
で、今度、このあたりの地形図が新しく出直しになるのは、また20年後ですか...(泣)。
('05.11.25)