I am born
I am me
I am new
I am free
Look at me
I am young
Sight unseen
Life Unsung...
(“The Fountain Of Lamneth I. In The Valley”より)

RUSH--Caress Of Steel
RUSH『鋼の抱擁』
(1976年、国内盤 : イーストウエスト AMCY-2291)
1. Bastille Day 2. I Think I'm Going Bald 3. Lakeside Park
4. The Necromancer I. Into The Darkness
II. Under The Shadow III. Retern Of The Prince
5. The Fountain Of Lamneth I. In The Valley
II. Didacts And Narpets III. No One At The Bridge
IV. Panacea V. Bacchus Plateau VI. The Fountain

produced by RUSH and Terry Brown

 RUSHが20世紀中にリリースしたアルバム全20枚のなかで、個人的には一番聴くことがないアルバムが1975年リリースの3rd『CARESS OF STEEL』。RUSHの作品のなかでも『Billboard』のアルバム・チャート上での成績が一番悪い(最高148位)この作品、売り上げが悪くても、RUSHのいうバンドの歴史を振り返る際には、決して無視出来ない重要なアルバムなんだけどね。
 前作『FLY BY NIGHT』で哲人ニール・パートを迎えて、プログレ趣味の組曲スタイルの曲を演り始めたRUSH、この『CARESS OF STEEL』では、12' 29''にも亘る“The Necromancer”(邦題は“新しい日”)、さらに旧アナログのB面全てを使った大作“The Fountain Of Lamneth”(邦題は“ラムネスの泉”)の2曲の組曲を披露してます。ニール・パートを迎えてからプログレ化の道を進み出したRUSHの方向性は
次の『2112』で明確になり、花開くんだけど、このアルバムではまだキレ味が無く、冗漫な印象が拭えないね。特に“The Necromancer”のほう。“The Fountain Of Lamneth”のほうは情景が目に浮かんでくるだけかなりマシ。
 というところで、アルバム収録曲を順に見ていくと、旧アナログA面の1曲目はフランス革命から題材を取った“Bastille Day”(邦題は“バスティーユ・デイ”)。バスチーユ監獄襲撃がフランス革命の狼煙だったよね(笑)。初期RUSHの代表曲で、初期のライヴのオープニング曲としてファンには馴染みのこの“Bastille Day”、『CARESS OF STEEL』はこの1曲だけだよね...とファンの間でもよく言われてる(笑)。ハードロックの佳曲。次の“I Think I'm Going Bald”には“老いてゆくのか”という素晴らし過ぎる邦題がついている(笑)。原題を直訳すると「僕はハゲてってるように思う」ってなるのかな(笑)。なんのヒネリもないアタリマエ過ぎのオールド・スタイルなハードロックだから、ファンのなかでも不人気ぶりでも一二を争います(笑)。3曲目の“Lakeside Park”(邦題は“湖畔の想い出”)。この曲は初期の隠れた名曲に挙げておきたい! RUSHではこの後絶滅する(笑)青臭い青春モノです。あ、『HEMISPHERES』の“Circumstances”っつうのがあったネ(笑)。でも、この“Lakeside Park”は青酸っぱい感じがするよ。爽やか(笑)。
 小作3曲のあと、いよいよ組曲群。まずは“The Necromancer”。この曲、リフの積み立てで出来た感じで、何かイマイチ、ストーリーが見えてこないんだよね。最後に前作にも登場した正義の味方『Prince By-Tor』がやってきて、悪の魔術師をやっつける...という勧善懲悪モノの他愛のないストーリーです(笑)。
 国内盤のライナーノーツで「B面の方に現在のRUSHの魅力がある」と大貫憲章センセイが力説してるとおり(大貫センセイも'75年当時のライナー、今も使われるの迷惑に思ってない?...笑)の旧アナログB面全てを使った力作の組曲、“The Fountain Of Lamneth”。この曲はもう片方の組曲とは違って、表現力豊か。「ラムネスの泉」を捜し求める旅に出る『僕』の物語。“No One At The Bridge”(邦題は“誰もいない橋”)での難破船のイメージや、愛しき女性・パナセアへのラヴ・ソング“Panacea”(邦題は“万病薬”)など情景が目に見えてきます。この曲を通じての学習体験が
次の『2112』につながったと思うのは私だけではないハズ。このアルバムがあったから『2112』があった...と私は思ってるんだけど、ところが、アルバム通して聴くことは殆ど無いなあ。アルバムのもつ意義は大きいんだけど、魅力には乏しい...。近年のRUSHがこのアルバムからの曲をライヴで演らないせいからか、ファンも話題にしないし(笑)。
 ところで、このアルバムには'75年当時に付けらてた邦題がそのまま残ってるんだけど、異様な邦題が今も放置されてるのは感心しません。ファンの間では“老いてゆくのか”(“I Think I'm Going Bald”)が評判悪いんだけど、コレ、私は容認します(笑)。真に許せないのが、“誰もいない橋”(“No One At The Bridge”)と“万病薬”(“Panacea”)でしょう。ストーリー読めば、『橋』じゃなくて『船橋』だって解るし、『Panacea』は『万病薬』っていう意味なのは辞書にあるとおりだけど、これまたストーリー読めば『パナセア』っていう女性のことだっていうことが解るハズ。邦題を付けた当時のレコード会社の担当ディレクターが歌詞読んでないってことがバレバレ。レコード会社の担当ディレクターですらこの体たらくなんだから、当時の日本のロック・ファンがRUSHに無関心だったのはある意味しょうがないねェ...。
 なお、この『CARESS OF STEEL』からRUSH御用達デザイナー・Hugh Symeが、アルバムのアートワークを担当し始めました。

('01.6.30)

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