ヒロくんのLIVE REPORT '96 PART 2 MARIA McKEE???

 5月21日の火曜日、私は名古屋パルコ東館8Fのクラブ・クアトロにいた。つい9日前にへザー・ノヴァのライヴをここで観たばかりだというのに、その余韻が醒めやらぬまま、私はまたこのハコに戻って来てしまった。今回、会社を休んでまでわざわざこの場所に来たのは他でもない、マリア・マッキーの2年振り2回目の来日公演を観るためだった。今回もへザー・ノヴァを観たときからの私の指定位置となった感のある最前列左側でマリアの登場を待った。場内を見渡すと、客の殆んどは20代前半で男女比率は6:4くらいか。しかしなかには30代のオッサンもいて、マリアが11年前、ローン・ジャスティスの歌姫としてデビューしたときからの支持者が今も健在でいることを伺わせていた。が、しかし...。
 開演予定の7時をほぼ1時間過ぎようという8時頃になっても、いっこうにマリアは姿を現さないのである。イヤな予感がしていたころ、ステージ上にようやく明かりが灯る。一瞬歓声に沸くが、ステージ上にマリアの姿はなく、マリアと10年もの長きに亙って活動を共にするキーボード・プレイヤーのブルース・ブロディーと通訳のひとのみが...。
 ブルースが言った。(勿論、通訳のひとを通して) バンドのベーシストが急病になり、今日のライヴはキャンセルせざるを得ない状況になった。これを聞いて当然会場はブーイングの嵐。「バンド抜きで、マリアだけでギターの弾き語りをさせろよ!(マリアはVo.兼G.)」と誰かが叫べば、他からも「そうだ!そうだ!」との声。しかし、「このベースのひとはマリアの恋人で、『病気の彼の事が気になって、今夜はとても人前で歌うことなんてできない』とマリアが言っている」と説明されると、もはやこれまで。せっかく組んであったステージの機材の解体作業が始まると、みんなブツブツ言いながらも会場を後にし始めた。私を含め諦め切れない連中はステージ前にそのまま居続け、ローディーのかたがせめてもの慰めに配るギター・ピックやセット・リストの争奪戦をしていた。運よくセット・リストを手に入れた女の子がリスト中に自分のお目当てのナンバーを見つけ、「この曲、ナマで聴きたかったよおおお」と泣き伏すのを横目に私は会場を後にした。
 フツウ、富山からわざわざ名古屋までライヴを観に行って、そのライヴが中止になるという憂き目に迫ったら、殆どのひとは激怒するだろうが、何故か私は今回の件に関して一切ネガティヴな感情は沸いて来なかった。それどころか「恋人のベーシストの病気が心配で、歌うことすらままならない」というマリアの公演キャンセルの理由もいかにも『マリア・マッキーらしい』理由なので、微笑ましく思えたぐらいだ。森高千里ではないが♪今、私気分爽快だよ〜と言いたくなってくる。ちなみにこれはマリアだから許せるのであって、タカビーで大顰蹙のド×レス・オ×オーダンがこんな理由でショウをキャンセルしようもんなら、私は「ふざけるなッ! このアマ」と激怒することだろう。
 今、私の手元にはマリア・マッキー'96年のジャパン・ツアーのパンフレットとツアーTシャツがある。次回の来日は多分また2年後になると思うが、そのときにはこのTシャツを着て彼女のライヴを観に行こうと思う。

INDEX