ヒロくんのLIVE REPORT '96 PART 7 NO DOUBT

 新宿リキッド・ルームでアッシュのライヴを観た後、津田沼のビジネスホテルで一夜明かし、翌9月29日、私は渋谷のレコード屋めぐりをして時間をつぶしていた。そして夕方の5時、渋谷クラブ・クアトロに乗り込んだ! この日はノー・ダウトのライヴ〜!
 ビルボードのアルバム・チャートのTOP10に今もランク・インしている大ヒット・アルバム『トラジック・キングダム』を引っ提げての初来日。'96年、今年は密かに『スカ・ブーム、ツー・トーン・ブームの再来』などと言われている。ホントにブームと呼ばれるほど、スカやツー・トーンが盛り上がっているかと言われれば大いに疑間の余地があるものの、このノー・ダウトというバンドはスカ、ツー・トーン、レゲエなどを下敷きにしたお気楽なロックを聴かせる。紅一点のヴォーカルのグウェン・ステファニー嬢のキュートな魅力も何かと話題になっているバンドである。
 7時から、オープニング・アクトのブリンク-182が30分あまりの時間で10曲ほど演奏。ブリンク-182はアメリカからの男性3人粗で、スカを基本にしたパンキッシュなロック・バンド。ブリンク-182の演奏の時点で客は大ノリ。ダイヴ敢行者続出で大変な騒ぎどなっていた。ブリンク-182の演奏終了時には、熱気ムンムンでステージからシャワー代わりにミネラル・ウォーターが振りかけられるなど、すでに客は『デキあがった状態』。私はステージから3〜4列目にいたのだが、この時点でこのポジショニングを後梅し始めていた。が、客がギュウギュウ詰めでもう後には引けない...。
 8時を少し廻ったころだろうか、グウェンを除くノー・ダウトのメンバー3人とサポート・メンバーのホーン隊2人が登場。ドラムのエイドリアン・ヤングは桃色のパーマ頭のカツラを着け、怪しげないでたち。ホーン隊の黒人2人は赤いチョッキに、もんぺみたいなズボン。この2人のうちレゲエ頭の黒人さんは編笠をかぶってのご登場だった。こうしてメンバー3人とホーン隊2人が楽しげなイントロを演奏し始める。このイントロが終わるといよいよグウェン・ステファニー嬢の登場。グウェンのいでたちは下半分をカットした黄色のタンクトップに紺のパンタロンで、へソ出しルック。ブロンドの髪を下ろした彼女は「髪を妙な色に染めない初期シンディ・ローパー」といった感じ。
 オープニング・ナンバーは“Different People”。歌詞を覚えていて、グウェンの歌に合わせて一緒に歌っている客が意外に多い。この曲の後、♪you come in with the breeze〜とグウェンがちょっとフると、観客から♪sunday mornin'〜とすぐに返ってきて、そのまま“Sunday Morning”になだれ込むなど、みんなシッカリ『予習』してきている。サビの部分だけしか歌えないクセに『予習』してきた気でいた自分が恥ずかしくなるくらい、熱心な客が多かった。勿論、歌詞を全く知らず、ただ暴れたいためにライヴに来ているヤツもいて、ダイヴする者も後を絶たなかったが...。
 “The Climb”のあと、グウェンはオーヴァーヒート気味の観客にミネラル・ウォーターのシャワーをプレゼント。これはまともに喰らってしまった私。観客の盛り上がりは異様なほどで、あまりの『おしくらまんじゅう』度の高さのせいか、私の前にいたネエちゃんのハンドバックの口が開いて、おもいっきし中身がポロポロこぼれている。親切な私はこのことを彼女に教えてあげたが、落ちたものはどーしようもなかったろうな。そーいえば、ブリンク-182の演奏終了後、「鍵が無い〜!」と騒いでいるヤツもいたな。
 5曲目の“Sailin' On”の後、グウェンが髪を束ねると、ヒット曲“Just A Girl”のイントロが鳴り響く。この“Just A Girl”の曲中、グウェンは客と掛け合いを始め、「Am I just a girl?」と客に問いかける。これに対して客は「yeah!」と返すが、この返事にグウェンは大いに不満のよう。実は“Just A Girl”の歌詞を見れば解るが、この曲はいつまでも子供扱いされるのを不満に思う女のコの気持ちを歌ってる。ってことは、グウェンが観客から引き出したい返事は「yeah!」とは全く逆の筈。ところが盛り上がり過ぎて冷静さを完全に失った客にその事が解るはずもなく、執拗なるグウェンの「Am I just a girl?」の間いかけにずっと「yeah!」と応えていたら、グウェンは塞ぎ込んでしまい、ステージの中央に座り込んでしまった。暫くストライキ(この間ステージ上では、ギターのトム・デュモントは黙々とギターを弾き、ベースのトニー・カナルが好き放題客を煽っていた)をしたあとグウェンはもう一度「Am I just a girl?」と問いかけ、それでも「yeah!」としか返ってこないと解るや否や、勝手に騒ぎ続ける客に対し、「shhhhhhh〜」と静かにさせた後、「fxxk you〜」と中指を立てた。でも「ふぁっきゅ〜」やられても「yeah!」としか返さないアホな客どもに張りあいをなくしたのだろう、このあとグウェンは機嫌を直し、デビュー・アルバムからこの日唯一披露された“Move On”、曲の途中でメンバー紹介のあった“Excuse Me Mr.”、グウェンがしっとりとした歌を聴かせた“Don't Speak”といった具合に曲が進んだ。本編ラストで最新シングルの“Spiderwebs”を披露した後、一旦ステージを去ったが、アンコールの手拍子に呼び戻され、前座のブリンク-182のメンバーまで加えて披露したのはビートルズの“Ob-La-Di, Ob-La-Da”だった。観客みんなでこの曲を合唱し、大いに盛り上がった後、この日のライヴは終わったのだが...グウェンのミネラル・ウォーター攻撃を喰らったあと、ホーン隊の黒人さんのミネラル・ウォーター攻撃を2度まともに喰らっていた私は上半身ビショ濡れになっていた...。この日のライヴも前日のアッシュのライヴももの凄く疲れるライヴだったので、次の日、私、会社休みました...。

【SET LIST】...'96.9.29 渋谷クラブ・クアトロ
1. Different People
2. Sunday Morning
3. Happy Now
4. The Climb
5. Sailin' On
6. Just A Girl
7. Move On
8. Excuse Me Mr.
9. Don't Speak
10. Total Hate
11. Spiderwebs

(encore)
1. Ob-La-Di, Ob-La-Da (ビートルズのカヴァー)

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