9月29日の渋谷クラブ・クアトロでのノー・ダウトのライヴでヴォーカルのグウェン・ステファニー嬢、他1名に水をブッかけられ、上半身ズブ濡れになった私は、それが原因で数日後、『風邪引き小僧』になっていた...。そんな体調最悪ななか、1週間も空けずに渋谷クラブ・クアトロに舞い戻ったのは10月5日。この日はイギリスのロック・トリオ、ドッジーのライヴ!!! ドッジーは3rdアルバム『フリー・ピース・スウィート』を引っ提げての2度目の来日である。
会場に入るとすでにステージ上には機材がほぼセッティングされていたのだが、驚いたのがドラムの位置。ステージ向かって右側の前のほうにセットされている。普通、ドラムはステージ中央の奥と相場が決まっているのだが、「ドッジーというバンドはギターもベースもドラムも対等なんだ!」という意思表示なのだろうか。
7時を5分廻ったころ、会場にアルバム『フリー・ピース・スウィート』のオープニングを飾るイントロが流れ、ドッジーのメンバー3人...ナイジェル・クラーク、アンディ・ミラー、そしてマシュー・プリーストが現れた。まずナイジェルとアンディがアコースティック・ギター(以下、アコギ)を構え、この2人の間にタンバリンを持ったマシューが立ち、アコースティック・セットで3曲演奏した。そのヴォーカル・ハーモニーの素晴らしさから、ドッジーはクロスビー、スティルス&ナッシュと比較されることもあるが、アコースティック・セットの3曲ではCDどおりの素晴らしいヴォーカル・ハーモニーを披露した。4曲目の“Homegrown”はマシューはドラム・セットに座ったものの、ナイジェルとアンディはアコギで演奏。ここまでの4曲はファン・サービスだったのだろう、ここでナイジェルはベースを、アンディはエレキギターを構え、披露された曲はデビュー・アルバムの1曲目の“Water
Under The Bridge”。いよいよライヴも本番だ。
ステージ上にはドッジーの3人のほかに、キーボード奏者(リチャード・ペイン)とホーン隊3名のバック・メンバー。ドッジーの3人のなかで一番目立ってたのは勿論ベース兼リード・ヴォーカルのナイジェル。タンバリンが括りつけられていたハイハット・シンバルが印象的なドラム・セットで手数の多いプレイを観せてたマシュー、ドラムを叩きながら殆んどのバック・コーラスをこなし、スティックをクルクル回転させ客の眼を楽しませたりと、結構目立ってた。(スティックもポロポロよく落としてた)
デビュー・アルバムからもう1曲“Stand By
Yourself”を披露した後、2ndアルバムから4曲続けて演奏。2ndアルバム1曲目の“Staying
Out For The Summer”、3拍子の曲“One
Day”、フルート奏者が淋しげなフレーズを奏でたのが印象的だった“Grassman”、そして、私が大好きな曲“So
Let Me Go Far”という順に披露した。ハッキリ言うと、私はこの“So Let
Me Go
Far”をナマで聴きたいためにこのライヴに来たようなもんである。この曲ではドッジーの3人は基本的にアルバムどおりの演奏とヴォーカル・ハーモニーを聴かせてくれた。ただし、曲の高音部でナイジェルは声が出ず、途中フェイクしていたことを除けばの話だが...。
この後、ナイジェルはいろいろ英語で喋っていたが、私に聞き取れたのは、これからロック・クラシックスを演るということと、'53年の曲だということ。こうして演奏されたのは私の知らないロックのスタンダード・ナンバー。次の曲も知らない曲で、これもカヴァー曲だろう。この2曲が終わった後、ナイジェルは演る気もないのにジョークで「次の曲は(ブルース・スプリングスティーンの)“Born
In The U.S.A.”」と言うと、マシューがホントに“Born In The
U.S.A.”のドラム・リフを叩き出す。キーボード奏者も悪ノリして、“Born
In The
U.S.A.”のリフを弾きだし、それでもナイジェルが「ありゃ、ジョークだよ。勘弁してよ〜」ってな感じで歌わずにいると、マシューがブルース・スプリングスティーンのような作り声をして2秒ほど“Born
In The U.S.A.”を歌った。これには場内、大ウケ。
カヴァー曲大会の後、いよいよ最新アルバム『フリー・ピース・スウィート』からの曲を次々と披露。“If
You're Thinking Of
Me”ではナイジェルはアコギを構え、ホーン隊のひとが代わりにベースを弾いた。(あと2回ほどホーン隊のひとがベースを担当) 最新ヒット曲“Good
Enough”を演った後、ナイジェルとマシューは掛け合い漫才のようなトークを始め、なりゆきからマーク・ボランの“20th
Century
Boy”をワン・コーラスだけ演奏した。さらにナイジェルとマシューのトークが続いた後、バック・メンバーの紹介。“One
Of Those
Rivers”を披露すると、ナイジェルは花瓶に挿してあった赤い花をステージに投げ込み、メンバー全員袖へ引っ込んだ。投げ込まれた赤い花は観客の間で取り合いになってたが、どうやら薔薇の花だったらしい。そうとは知らず、夢中で茎をつかんだひとは...。
アンコールを求める手拍子が起こると、暫くしてドッジーの3人とキーボード奏者が戻って来た。キーボード奏者はバック・ステージに置いてあったらしきフルーツ籠を持っていて、ドッジーの3人も加わり、籠の中身を観客に投げ込む。私のほうへはアンディがリンゴを投げ込んできて、これを私の真ン前にいた30代女性が片手で見事にキャッチ。最後には果物の入っていたバスケットまで観客に投げ込んだ。アンコールでは3曲披露。曲の途中や合間に相変わらずナイジェル+マシューのコンビによるお戯れや、即興のカヴァー演奏、ナイジェルが自分が吸っていた火の点いたタバコを観客に手渡しするなど、客を盛り上げるツボを心得たステージングを展開。この日のライヴ全般にいえることだが、イギリスのクラブやパブでの演奏で揉まれながらここまで大きくなった叩き上げのバンドは、見せ場をよく心得ている。結局、即興演奏で披露したカヴァー類を除くと全部で23曲、2時間も演ってくれた。ホントに楽しいライヴだった。ライヴ終了後、会場の係員が、投げ込まれたバスケットを観客から回収してた。どうやらここ(渋谷クラブ・クアトロ)の備品だったらしい(笑)。
【SET LIST】...'96.10.5
渋谷クラブ・クアトロ
1. What Have I Done Wrong?
2. ( ? )
3. Trust In Me
4. Homegrown
5. Water Under The Bridge
6. Stand By Yourself
7. Staying Out For The Summer
8. One Day
9. Grassman
10. So Let Me Go Far
11. ( ? ...カヴァー曲 )
12. ( ? ...カヴァー曲 )
13. In A Room
14. Prey For Drinking
15. Jack The Lad
16. Long Life
17. Found You
18. If You're Thinking Of Me
19. Good Enough
20. One Of Those Rivers
(encore)
1. You've Gotta Look Up
2. Melodies Haunt You
3. Ain't No Longer Asking