『FUJI ROCK FESTIVAL
'97』の2日目が台風のため中止になってしまい、プロディジーやBECKたちのライヴが観られなかった。ウィーザーのライヴも観られなかったが、『FUJI
ROCK
FESTIVAL』とは別にウィーザーだけの単独ツアーが組まれていたので、このチケットを押さえてあった私は、富士山麓で観られなかったぶんの埋め合わせをすべく、8月2日名古屋クラブ・クアトロへ行ってきた。
ウィーザーというバンドの人気が如何に凄まじいか、世間一般はあまり認知していないが、音楽雑誌『CROSSBEAT』の'96年度読者人気投票でグループ部門1位を獲得。音楽雑誌『MUSIC
LIFE』の'96年度読者人気投票でもグループ部門14位と、世間が思っている以上に人気のあるバンドである。勿論、私が観た名古屋公演のチケットも完売。満員の観客の6〜7割は女のコ。ヴォーカル兼ギターの『自閉症男』ことリヴァース・クオモに母性本能をくすぐられるという女のコが多いのだろうか?
7時10分頃、ウィーザーの4人が登場。オープニング曲は“My Name Is
Jonas”。私は去年の10月の来日公演も観ているので、それと比較させてもらうが、まず驚かされたのはリヴァースが髪の毛を伸ばしていたこと。前に観た時は通称『のび太』と言われるヘア・スタイルだったのに、今では後ろ髪は肩にかかるほど。前髪も目が隠れるほどで、外見上『のび太』らしきところは無くなったリヴァース。リヴァースの変化は外見だけに留まらない。前回観た時、頼りなげに体を左右に揺らすだけの動きしかしなかったリヴァースが、ロック・ミュージシャン然としたアクションをするようになった。激しい動きをしながら汗の滴を撒き散らすリヴァースの姿を観て、もっと髪の毛を伸ばして金髪に染めればニルヴァーナの故・カート・コバーンそっくりと思ったぐらいだ。そういえば他のメンバー3人がみんなTシャツ姿だったのに対し、リヴァースだけは派手な柄モノの長袖シャツを着ていたな。さらにリヴァースの成長点をもう一つ挙げると、前回観た時、恐る恐る日本語でMCしてどうにか観客とコミュニケイトしていたリヴァースが堂々と日本語MCしていたことだ。前回を『相手と眼を合わさずに話していた』と例えるなら、今回は『相手の眼をジッと見据えながら話してた』といえるだろう。「コンバンワ」とか「ゲンキ?」という簡単なMCの他に、観客の呼び掛けに「ワカリマセン〜」と答え、観客の盛り上がりに対しては「スゴイネェ〜!」。ブライアン・ベルのギターの具合が悪く、演奏がストップした時には「チョット待ッテクダサイ」。“Across
The
Sea”の演奏前には「日本ノ女ガ好キ」と言うなど、日本語喋りまくったリヴァース。
観客のほうはというと、リヴァースが「スゴイネェ〜!」と驚くほどモノ凄い盛り上がりぶり。よくライヴの良いところとして『見知らぬ者同士の観客が一体となる感触が味わえる』点が挙げられるが、私はウィーザーのライヴほど観客が一体となるライヴを他に知らない。何しろどの曲も観客のみんなが徹底的に歌いまくるんだから...。私も年甲斐もなく、歌いまくってきました。ステージ上でブライアンとベースのマット・シャープがバック・コーラスを入れているが、この2人が歌わなくともコーラスは観客の歌だけで充分過ぎるくらいだ。だから、ウィーザーのライヴを興味本位で観に来ると、屈辱的なくらいモノ凄い疎外感を味わうことになる。みんなが大合唱のなか、自分だけその輪に加われないんだから...。去年の来日公演について、ある雑誌に「観客みんなが大合唱する様は、新興宗教の儀式みたいで気持ち悪かった」とコキオロシ記事が載ってたが、この記事書いたアンタ、会場で自分ひとり歌えず、淋しい思いしたんで、悔しかったんだろ?
“Undone-The Sweater
Song”まで全部で13曲演って一度ステージを去ったウィーザーだが、熱心なファンのアンコールの求めに再びステージに戻ってきた。リヴァースは「今、何時デスカぁ〜」と言い、右手で時計の針が動く身振りをしながら「ちく、ちく、ちく、ぼーん!!! 湖池屋ぽてとちっぷす〜」と、湖池屋ポテトチップスのCFのマネ(?
←富山じゃO.A.してないんでホントにそんなCFなのか判らんが...)をして、大作“Only
In Dreams”を披露。この後“El
Scorcho”を演奏するとリヴァースは、この日が今回のツアー最終日だったこともあり「サヨナラ、ニッポン」と挨拶した後、「昨日、buy
it」と言って、観客にたまごっちを見せつけた。そして、そのたまごっちを何の惜しげもなく会場に投げ入れた。たまごっちの奪い合いをして興奮状態に拍車がかかった観客に、最後に“Surf
Wax
America”を披露し、全演奏曲目を終えたが、ベースのマットとドラムのパットが担当楽器を入れ替えたお遊びのジャム・セッションを披露したり、リヴァースが客席に飛び込んでファンにモミクチャにされたりと、最後までファンを喜ばせていった。
個人的には「たった10ヶ月でこんなに変わるか?」とリヴァースのロック・ミュージシャンとしての成長ぶりに感銘を受けた。が、これで『母性本能をくすぐられるからリヴァースが好き』という女のコより、『カッコイイからリヴァースが好き』という女のコが多くなるかと思いきや、終演後の会場で女のコ2人組が「リヴァース、カッコ悪い〜!!! まるでお笑い芸人みたいィ〜!!!」と言っていた。必要以上に日本語でMCするから、コメディアン扱いされるんだよ、リヴァース君...。
【SET LIST】...'97.8.2
名古屋クラブ・クアトロ
1. My Name Is Jonas
2. Getchoo
3. No One Else
4. No Other One
5. The Good Life
6. The World Has Turned And Left Me Here
7. Falling For You
8. Buddy Holly
9. Pink Triangle
10. Why Bother?
11. Across The Sea
12. Say It Ain't So
13. Undone-The Sweater Song
(encore)
1. Only In Dreams
2. El Scorcho
3. Surf Wax America