スタジオ・レコーディングのオリジナル作品としては8枚目となるアルバム『リトル・プラスティック・キャッスル』をこの2月にリリースしたばかりのアーニー・ディフランコ。去年の2月の初来日から丸1年、今回2度目の来日ツアーが実現した。私が観たのは3月22日に行われた大阪公演。前回のアーニーの初来日公演も大阪で観たが('97.2.22)、まず大きく変わってたのが会場の規模。今回の会場のバナナホールは、前回の会場の心斎橋ミューズ・ホールの6倍くらいの広さ。そして「お客様が入り切らないので、前のほうのお客様、みんな一歩ずつ前に進んでください~!」というアナウンスが10回以上されるなど超満員状態の客の入り。こんなに客の密度が高かったライヴはちょっと記憶に無いくらい。KNB第3スタジオくらいの狭い会場で客の入りが7割だった前回の大阪公演をしっかり憶えてる私は「アーニーってこんなに人気あったっけ?」と自問自答を繰り返してた(笑)。
開演予定時間の7時を少し廻った頃、ステージに大阪の地元FM局のFM802の男性D.J.(ヒロ寺平?)が現われ、前説を始める。「アーニーのライヴ、英語が解らないとかなりキビシいです。今日も会場に外国のかたが多くみえられてるけど、いいかみんな、負けるなよ!」と地元・関西のキッズに『喝!』を入れた後、会場の2〜3割を占める外国人の観客に英語で「少しは抑えて観ててくれ~!」と懇願してた。前回のアーニーのライヴ・リポートで書いたとおり、英語が解らないとミジメなくらいの疎外感を味わうほどアーニーのライヴは英語によるトークが多いので、この前説をやる必要性がよォォォ〜く理解できた私。
前説が終わって10分くらい経った後、場内の灯りが消えていよいよアーニーとドラムのアンディ・ストチャンスキー(伊良部似)、ベースのジェイソン・マーサーの3人が登場。顔ぶれは1年前のライヴとまったく同じ。髪形を変えるのが好きなアーニーだが、今回は奇をてらったような髪形ではなく、フツウの髪形だった。そんなアーニーは黒のタンクトップにジーンズといういでたち。オープニング曲は新作『リトル〜』より“Gravel”。2曲目の“Fuel”は『歌』というよりもベースに『喋り』を乗せる...といった感じの曲で、歌詞の内容を変えて歌ってた(←多分)アーニーに、早くも外国人の観客だけが大ウケ...。
アーニーの音楽の特徴として、リズム・ギターどころか『パーカッシヴ・ギター』とさえ呼ばれるほどリズミカルなギター・プレイが挙げられる。あまりにもリズム要素が強すぎるため、ベーシストが弾くべき音が無い『ベーシスト殺し』状態になっていたようで、アーニーのバンドはベーシストがコロコロ替わってた。そのことを気にしてたのかどうかは知らないが、今回のライヴでアーニーはベースのジェイソンに見せ場を作っていたような気がする。CDではサックスがプレイしている“Little
Plastic
Castle”のフレーズをベースで再現させてたり(お蔭でサックスではなくトロンボーンのような音になったが)、アーニー自身の持ち味の『パーカッシヴ・ギター』を抑え気味にしてまで、ジェイソンにちゃんとベースを弾く余地を与えてたように感じたのは私だけだろうか? 曲と曲の間で毎回のようにギターのチューニングを直してたアーニーだが、曲が進むにつれその間がどんどん長くなっていった。そのうち外国人客から「早く演れよ!」との声がかかり、この声には「そんなのだったら、私の代わりにギターのチューニング直してよ!」と笑いながら応えてたアーニー。だけどギターのチューニングに手間取ることがしばしばあったたためか“Anticipate”を演奏した後、突如アーニーは「10分後に戻ってくるわ」と言い、ステージを去った。こーゆーふうに途中休憩のあるライヴというのは有りそうで無く、少なくとも私は初めて。最初からアーニーはここで休憩をとるつもりだったのだろうか? それとも先ほどから気にしてたギターのチューニングの乱れが自分では直せないほどドツボに嵌ったための緊急措置的なのだろうか?(笑) ステージ上でローディーのかたが器材の調整を行い、10分どころか20分ほど経ってようやくアーニーたちはステージに戻って来た。
まず新作から“Loom”をプレイ。新曲を2曲披露した後“Worthy”、“Untouchable
Face”、“Cradle And
All”、そして“Shy”...とライヴの定番曲をたたみかけるようにプレイ。余計な休憩を取ってしまったため、お喋りしてる暇は無いわ...ということなのかは判らんが、後半は殆どお喋りすることなく曲を次々繰り出したアーニー。それだけに圧巻だった。“Untouchable
Face”ではアーニーが「fxxk
you」と歌う度、観客が沸き、合唱が起こった。写真などで受ける印象や、スキンヘッドやモヒカンにしたりするとか、鼻ピアスをしてワキ毛を剃らないパンキッシュ・フォーク・シンガーといった情報のせいでつい忘れがちになるが、アーニーは安室奈美恵並みにカワイイ。底が10
cm もある靴を履いてる彼女は身長150 cm
くらいで小柄。自分の体の半分くらいの大きさのギターを抱えて弾く姿は実にセクシー。 アーニーの右手を見ると、やはりいつものように、激しくギターの弦を掻き毟るための『爪』が全ての指に青色のテープでしっかり固定されてた。
メンバー紹介の後、日本側スタッフのノリコを「ケーキをバクバク喰う」とからかい、「エフエムエイトオートゥー(FM802)」にお礼を述べ、「Nattou
is crazy
foods!!!」と納豆の悪口を言ったりと英語によるトークで観客の笑いを誘ったアーニー、“Shameless”を披露してステージを去った。が、関西の観客の激烈アンコールに呼び戻され、1度目のアンコールではベースのジェイソンと“Joyful
Girl”をプレイ、2度目のアンコールではボンゴを股に挟んだアーニー、フロア・タムを叩くアンディと激しいリズム・バトルを繰り広げながら、ポエトリー・リーディング“Not
So Soft”を披露していった。
途中トラブルがあったためかアーニーの英語によるトークが少なかったので、英語を理解できない疎外感に邪魔されずにアーニーの音楽のもつ『鼓動』を掴んで来れました。
【SET LIST】...'98.3.22
大阪・バナナホール
1. Gravel
2. Fuel
3. Little Plastic Castle
4. ? (新曲?)
5. As Is
6. Letter To A John
7. Two Little Girls
8. Dilate
9. Anticipate
~break time~
10. Loom
11. ? (新曲?)
12. ? (新曲)
13. Worthy
14. Untouchable Face
15. Cradle And All
16. Shy
17. Shameless
(encore 1)
1. Joyful Girl
(encore 2)
1. Not So Soft