台風の直撃を受け『史上最悪のイヴェント』となった『FUJI
ROCK FESTIVAL
'97』から1年。会場を富士山麓の天神山スキー場から、東京湾に面した埋立地・東京ベイサイド・スクエアに移し、8月1日・2日の両日に『FUJI
ROCK FESTIVAL '98 IN
TOKYO』なる名前で開催された今年のフジ・ロックも、新聞やTVの報道で皆さんも御承知のとおり、暑さのため2日間で約1000人が体調不良を訴えて救急車で運ばれる凄まじいイヴェントとなった。1日目のみ密かに参加していた私・ヒロくんが実際にあの場で目撃したモノとは...。
私が現地に着いた8月1日の6時、東京の天気は小雨で、去年のことを思いだし「また雨かよォォォ〜」と始まる前から少し泣きが入った私。だけど開門時間の8時頃には雨も止んだ。が、ステージ前の地面にはしっかり水たまりが出来ていた...。そんな足場の悪いステージ前方向かって左側の2列目のところで開演を待つ。10時になり、主催者代表で自称“バカの総大将”(←ホントに自らそう言ってた)の日高正博氏が開演の挨拶をした後、いよいよ最初のバンド、ミジェットが登場した。
《MIDGET》
ミジェットは今年フル・アルバム・デビューを飾ったイギリスの3人組で、メンバーは皆ハタチそこそこのガキ・バンド。ステージに登場するなりディープ・パープルの“Smoke
On The
Water”のイントロを演奏し、観客の歓声を集めた後、デビュー・ミニ・アルバム『アルコ・ポップ』からの“Kylie
And
Jason”をプレイ。ミジェットはデビュー・ミニ・アルバムでこそ若さに任せたパンキッシュなロックを披露しているが、この前リリースされたフル・デビュー・アルバム『ジュークボックス』ではわずか半年の間にこんなに成長するか?と驚くほど、メロディーとコーラス重視のポップ・ロック・バンドに変身している。今回のステージではこの2枚のアルバムから同じ割合で曲をプレイし、ミジェットの持つ音楽の幅を充分にアピールしていった。ベースのアンディ・ホーキンスがバカでかいベッコウ縁のメガネをかけてみせ「ケント・デリカットでぇ〜す」と言ってみたり、悪ガキ3人組はギャグも披露していった(笑)。
《STEREOPHONICS》
'97年に英国が生んだ最も強力な新人でありながら、諸事情により日本でのデビューが1年も遅れてしまったウェールズの3人組・ステレオフォニックス。彼らの音楽性を乱暴に例えると『レディオヘッドの曲をオアシスが演奏したようなバンド』...となる。実は彼らの演奏に期待するものが大きかったのだが、日本でのデビューが7月18日のため、あまり彼らのことが浸透していないのか、観客の反応が鈍かった。あと、ステレオフォニックスの3人は真面目過ぎるくらい真面目な人たちのようで、そのあまりにも真面目な人柄に気圧されて観客がヒイてしまった...そんな印象さえ受けた消化不良のライヴだった。残念!
《BLANKEY JET CITY》
日本が誇るロック・トリオ、ブランキー・ジェット・シティー。観客には彼らが目当てのひとが多かったようで、暴れたり、とび跳ねたりする過激な客が多く出没した。盛り上がる観客にブランキー・ジェット・シティーの3人は8曲プレイしてステージを去った。
《GARBAGE》
今回のフジ・ロック、私が一番楽しみにしていたのがガービッジ。ガービッジの出番の頃から空模様は曇りから晴れに変わり、真夏の太陽がマトモに照りつけるようになった。シャーリィを出来るだけ身近で観たい!と思った私はそれまでのステージ向かって左側の2列目から、ステージ中央真ン前の2列目へ移動。お待ちかねのガービッジ登場は午後1時頃。シャーリィは黒のレースのシャツにダブダブのジーンズというお姿で、髪形は『若奥様ふう』といった感じ。1曲目は“Not
My
Idea”で、いきなりステージ真ン前は大混乱状態。シャーリィの歌に合わせ♪this
is not my idea of a good time ~
とガナりながら、確かにこの状況は『私の考える最良の時じゃない』よなぁ...と思った(笑)。シャーリィが「ニュー・アルバムからの1stシングル曲」と紹介して始まった次の“Push
It”でもステージ真ン前の観客の混乱は止まらず、おしくらまんじゅう状態のうえに容赦無く陽差しが照りつけるためみんな汗ダクになっていた。あまりの凄まじさに位置を少しずつ後退させた私。シャーリィが前回の来日ツアーの想い出を語り、観客の声援を集めて披露された“Hammering
In My
Head”など新作『ヴァージョン2.0』からの曲が中心の選曲だったライヴ、ホントに暑かった...。あまり暑いので、不本意にも「ライヴ、早く終われ~! 水を飲みたい! 涼しい所へ行きたい!」と思ってしまった(笑)。シャーリィもこの暑さには相当参ったようで、頭からミネラル・ウォーターを振りかけたりしていて、これを見たスタッフがライヴ途中にもかかわらずステージ上に現われ、急遽シャーリィの足元に扇風機をセッティングしていったほど。ホントに(ライヴじたいも観客の反応もそうだが、気温が)暑かった。シャーリィが「これが今日、最後の曲」と紹介して始まった“Only
Happy When It
Rains”(邦題は“オンリー・ハッピー”)を聴きながら、「ホントに雨降ってくれないかなぁ」と思ったもの(笑)。というわけで、楽しみにしてたガービッジのパフォーマンスはあまりの暑さのため、よく憶えてません...。えッ? これだけ憶えていれば充分だって? それは失礼しました(笑)。
《SONIC YOUTH》
ガービッジの演奏までステージ真ン前で観ていたため、時折暑さ対策のためステージ前列に居る観客に放たれた水と汗で上半身ビショ濡れになり、さらには地面のぬかるみをものともせず暴れまくるキッズのハネ返りをモロに受けて下半身は泥だらけになっていた私は、暑さに耐え切れなくなり、フィールドの中ほどまで避難しグッタリ座り込んでた。フィールドの中ほどからはステージ上の動きは豆粒ほどにしか見えず、従ってソニック・ユース以降の登場アーティストのパフォーマンスはステージ向かって左側に用意された巨大スクリーン(ちなみにこのスクリーンの左隣に救急車が待機してた...笑)に映った映像を観ていた。ソニック・ユースは登場するなりノイズの垂れ流しともいえるインストをながながと10分ほども披露。身長200
cm
の大男・サーストン・ムーアが「明日についての曲だ」とMCし自らヴォーカルもとった2曲目は“Sunday”。次はロック界の大姐御・キム・ゴードンがヴォーカルの“French
Tickler”。この後、リー・ラナルドがヴォーカルの“Karen
Koltrane”...と、10枚以上のアルバムを出している歴史あるバンドにもかかわらず、今年出たアルバム『ア・サウザンド・リーヴズ』からの曲ばかりをプレイ。最後に昔からの人気ナンバーをプレイしたようだが、帰り際、サーストンとリーはアンプの縁にギターの弦を押し付けて弾き、キムは床に置いたベースの弦を足で踏みつけ、ドラムのスティーヴ・シェリーは小さなシンバルを掌のうえで弄び、4者4様でノイズを撒き散らしていった(笑)。
《忌野清志郎 LITTLE
SCREAMING REVUE》
この日、朝食抜きだったので、時間が午後3時ともなれば空腹も極限。キヨシローさんの時間は『お食事タイム』にしていた私。キヨシローさんは、RCサクセション時代の名曲“雨あがりの夜空に”や“キモチE”、新曲の“サンシャイン・ラブ”などをプレイ。
《ELVIS COSTELLO WITH STEVE
NIEVE》
コステロ親父は、コステロ自身のギターとスティーヴ・ナイーヴのピアノの2人編成での演奏。(今となっては虚しいが)チャールズ英皇太子とダイアナ妃(当時)のソックリさんが登場したヴィデオ・クリップが懐かしい曲“Everyday
I Write The
Book”や、リンダ・ロンシュタットもカヴァーした曲“Alison”など、名曲の数々を披露したコステロ親父、いつの間にか額が大きく後退し、デップリ太ってて、最初姿を見た時「ビリー・ジョエルが出て来たか!!!?」と思ってしまった...(あんまり笑えない)。
《BECK》
午後6時頃、登場するなり代表曲の“Loser”を披露したBECK、次に“Novacane”をプレイすると、「去年、ボクはフジ・ロックに出るハズだったけど台風で中止になった。だからボクはこの舞台に戻って来た」てなMCをした。これには去年、悔しい思いをした観客から大歓声が上がった。去年のことがあるから観客のテンションが異様に高く、3曲目の“Beercan”(邦題は“ビール缶”)の後、観客がステージに押し寄せたためこの日初めて『演奏中断』が出た。BECKのバック・バンドはギター2本、ベース、ドラム、キーボード、ホーン2本、そして『皿廻し』(D.J.)の総勢8名。途中いくつか新曲を演ったBECKだが、そのうち1曲はプリンスを想わせるファルセットのソウル・バラード・ナンバー。いつも童顔に不釣り合いな低い声で歌うBECKの意外な一面を見た気がした。近いうちに新作が2枚出る予定のBECKだが、そこら辺に新作の『鍵』があるのかも...。“One
Foot In The Grave”でのハーモニカ・ソロ、“Where It's
At”でのブレイク・ダンス、そして『ピストン運動』(笑)...とBECKは相変わらず怪しいパフォーマンスを繰り広げていった。
《BJORK》
陽はすでに落ちて会場の廻りには東京湾の夜景が広がり、先ほどまでの暑さがウソのように海辺の風が心地よく吹くようになった頃、ステージにクラシックの弦楽器奏者6名(チェロ系2名にヴァイオリン系4名)が現われ、日本の古典的名曲“サクラ・サクラ”を演奏。この荘厳なイントロに導かれビョークが登場し、新作『ホモジェニック』の1曲目を飾る“Hunter”を披露。ビョークの衣装は白のワンピースで、白鳥をイメージしてるのか袖には羽根が付いてた。さらに言うとビョークは額と鼻筋を白く塗っていた。このメイクにはどういう意味があるのだろうか? 演奏メンバーは弦楽器奏者6名に、シンセやリズム・マシーンを操り無機質な音を出すシステム担当が1名。『クラシック』と『テクノ』という相反する世界をひとつにまとめ上げていたのは勿論、ビョークの歌。さらには、この日の会場は勿論のこと、東京湾の美しい夜景...レインボー・ブリッジもお台場のフジテレビも...全てがこの日のビョークのために建てられたのではと思ったほどあの場の『世界を変えて』たビョーク。殆どの観客は『ロック・フェスティヴァル』に居ながら、オペラでも観ている感じがしたに違いない。最後に、激しい焦燥感に駆られる曲“Pluto”を披露したビョーク。曲のクライマックスで花火が数発打ち上げられ、物の怪が取り憑いたようなビョークのパフォーマンスは一度終了。この時、時刻は午後8時50分過ぎ。会場の規定で9時には音を止めなければならないためアンコールはムリか...と思ってたら、再びステージに姿を見せたビョーク、何とか“Joga”ともう1曲詰め込んでいった。こうして無事(?)FUJI
ROCK FESTIVAL
'98・1日目が終了。1日目を何とかサヴァイヴした私、こういう野外フェスティヴァルは後ろのほうでくつろぎながら観るものだってことが解った(笑)。
【SET LIST】...'98.8.1
東京ベイサイド・スクエア
《MIDGET》
. Intro.(“Smoke On The Water”)
1. Kylie And Jason
2. Invisible Balloon
3. Welcome Home Jellybean
4. Ben Wants To Be A Secret Agent
5. The Pop Song
6. On The Run
7. All Fall Down
8. A Guy Like Me
9. Camouflage
10. Optimism
《STEREOPHONICS》
1. More Life In A Tramps Vest
2. Looks Like Chaplin
3. A Thousand Trees
4. Traffic
5. Too Many Sandwiches
6. Not Up To You
7. Local Boy In The Photograph
《GARBAGE》
1. Not My Idea
2. Push It
3. Special
4. Hammering In My Head
5. Medication
6. Stupid Girl
7. Temptation Waits
8. Vow
9. I Think I'm Paranoid
10. When I Grow Up
11. Only Happy When It Rains
《SONIC YOUTH》
1. Anagram
2. Sunday
3. French Tickler
4. Karen Koltrane
5. Wildflower Soul
6. The Ineffable Me
7. Death Valley '69
《BECK》
1. Loser
2. Novacane
3. Beercan
4. medley(F_ _ _in With My Head~Sissyneck~Lord Only Knows)
5. Debra (新曲)
6. Deadweight
7. Nobody's Fault But My Own (新曲)
8. One Foot In The Grave
9. Jack-ass
10. The New Pollution
11. Where It's At
~turntable solo~
12. Devils Haircut
《BJORK》
. Intro.(サクラサクラ)
1. Hunter
2. You've Been Flirting Again
3. Isobel
4. All Neon Like
5. Possibly Maybe
6. Immature
7. Come To Me
8. 5 Years
9. I Go Humble
10. Venus As A Boy
11. Bachelorette
12. Hyper-ballad
13. Human Behaviour
14. Violently Happy
15. Pluto
(encore)
1. Joga
2. Play Dead