台風の上陸をまともに喰らい、2日目が中止になるなど悲惨な結末を迎えたものの、今となっては『伝説』になった感もある'97年の1回目の『FUJI
ROCK
FESTIVAL』(以下、『フジ・ロック』)だが、あの場に居合わせた者にとっては、本来観られる予定だったモノが台風で観られなくなったことが一番の心残りなワケである。私のなかではまだ'97年の『フジ・ロック』は終わっちゃいない! 演奏途中に台風のためステージが大揺れしたのに身の危険を感じ、たった8曲演奏したところで逃げるようにステージを降りたレッド・ホット・チリ・ペッパーズ(以下、R.H.C.P.)が、その'97年の『フジ・ロック』以来の来日を果たしたので、『あの時の続き』を観るつもりで1月8日、私は日本武道館に足を運んだ。
R.H.C.P.がジャパン・ツアーを行うのは『フジ・ロック』を除けばこれが3回目。前回の'92年のジャパン・ツアーの途中に突然、ギタリストのジョン・フルシャンテがバンドを脱退・帰国し、残りのメンバーはジャパン・ツアーを途中でキャンセルせざるを得なくなるという大事件が勃発した(結局、R.H.C.P.がまともに演奏していったのは'90年の初来日の時だけ)。今回の久方振りのジャパン・ツアーは、その問題のギタリスト、ジョン・フルシャンテがバンドに復帰し、黄金時代のメンバーに戻った新作『カリフォルニケイション』に伴うもの。まともなライヴを日本で演らない間にバンドの人気はうなぎ昇りで、初めて武道館公演が組まれるまでになった。そしてその武道館公演もあっという間にSOLD
OUT! A席を何とか確保した私の居場所は左上方からステージを見下ろすような位置。会場は勿論満員。20代前半が中心の観客だが、歴史あるバンドゆえ30代の客も見受けられた。
開演時間の6時を20分ほど過ぎた頃、会場の灯りが消え、ステージにR.H.C.P.のメンバーがパラパラと現われて楽器を構える。オープニング曲は新作のアタマを飾る“Around
The
World”。ベーシストのフリーは髪の毛を真っ赤に染め(←ヅラかも...?)、例によって上半身は裸で、ピンク色のズボンを履いていた。ステージに上がるまで着ていたシャツ(←多分)を腰巻みたいにして腰のところに巻いていたので、フリーの姿はまるで『赤鬼さん』(笑)。アイスホッケーかサッカーのシャツにダボダボのズボンというストリート・ファッションのヴォーカルのアンソニー・キーディスは永年親しまれてきた『浅野温子風』長髪をやめ、金髪の坊ちゃん刈りになって、ステージ上を跳ね廻っていた。アンソニーが「ドモアリガト、Tokyo~!」と日本語で挨拶し、ファンから歓声を引き出した後、ジョンとフリーが互いに向き合い気ままなフレーズを弾き始める。やがてそのフレーズはファンに耳馴染みなモノに変わった。“Give
It Away”だ! 大人気曲の“Give It
Away”を2曲目で演るなんて贅沢なハナシだが、この後、フリーの「コンバンワ~!」との日本語挨拶を挟んで演奏されたのは“Scar
Tissue”!!! 最新アルバムからの大ヒット曲が早くも3曲目で登場!!! ファンが聴きたい曲を出し惜しみすること一切無いR.H.C.P.に悶絶寸前...。
“My Loverly Man”に続いてプレイされたのは“If You Have To
Ask”。この曲に限らず、CDでは女性コーラスが入っているような曲ではジョンがウラ声を駆使してバック・コーラスを付けていた。8年振りに日本に、そしてバンドに戻って来たジョンは、昔のようなスキンヘッドではなく、肩よりも長いロン毛をポニーテイル風に結わえていて、ジージャンにジーンズ姿だった(ように見えた)。“If
You Have To
Ask”の曲の終わりのほうではフリーとジョンの2人でジャム・セッションが繰り広げられた。この間にアンソニーもシャツを脱ぎ上半身裸になったところで新作からの“Otherside”を演奏。ドラムのチャド・スミスはここ最近の写真で見られるとおり野球帽を後ろ前に被り、タイトなリズムを叩き出す。とにかく終始チャドのドラムとフリーのベースが強調されたサウンド・バランスになっていた。そんなチャドが短いドラム・ソロをプレイして始まったのは“Skinny
Sweaty
Man”。初期のバカバカしい曲で観客が沸いたところで、地味な曲の“I
Could Have Lied”。アンソニーが「thank you, Tokyo
!」と観客に御礼を言った後、“Blood Sugar Sex
Magik”をプレイし終わると、フリーが「ジョンはとってもシャイな奴なんだよ。でもここで1曲奴に歌ってもらおう!」といった感じでジョンにフッた。これを受けてジョンが1曲チョロッと歌った。これは彼のソロ・アルバムの曲だろうか? それとも...?
ジョンにスポットライトを浴びさせた後、“I Like
Dirt”と“Californication”をプレイ。アンソニーが英語で観客に何かながながと言った後(私には中身が聴き取れなかったが)、聴くとイジリー岡田を思い出してしまう曲(笑)“Easily”と“Right
On
Time”...ここら辺りは新作『カリフォルニケイション』の曲が続いた。
“Right On
Time”が終わった後、ジョンがファンには耳馴染みのフレーズを弾き出した時、この日武道館が一番沸いた。“Under
The Bridge”だ!!! アンソニーが“Under The
Bridge”を歌い終わった時の観客からの拍手もこの日の武道館一番だったと断言できる。名曲中の名曲“Under
The
Bridge”でファンが大いになごんでいるところに、フリーが英語で次のようにスピーチした。「次の曲は、アキラ・クロサワとトシロウ・ミフネに捧げる」 これに観客が沸いたところで突然始まったのが“Me
& My Friends”。この“Me & My
Friends”で爆発的に盛り上がると、R.H.C.P.の面々はステージを去った。
ファンのアンコール・コールにステージに戻って来たR.H.C.P.、まずは“Scar
Tissue”みたいなユルい曲をプレイ。次に“Power Of
Equality”を演奏。“Power Of
Equality”で盛り上がったところでR.H.C.P.はステージを後にした。ステージの去り際、フリーがファンの歓声に応えて英語で盛んに何か言っていたのが印象的だった。
今回のライヴ、ジョン抜きで作られた前作『ワン・ホット・ミニット』からの曲はゼロ。フリーが何度もジョンと向き合いベースとギターのジャム・セッションを仕掛けていたのをはじめ、メンバーみんな『バンドに出戻ったばかり』のジョンにとても気を遣ってる印象を受けた。でも、いろいろあったけどR.H.C.P.も紆余曲折を経て、収まるところに収まったな。これで良かったんだ...と、なんだかしんみりしちゃいました...。
【SET LIST】...'00.1.8 日本武道館
1. Around The World
2. Give It Away
3. Scar Tissue
4. My Loverly Man
5. If You Have To Ask
6. Otherside
7. Skinny Sweaty Man
8. I Could Have Lied
9. Blood Sugar Sex Magik
10. I Like Dirt
11. Californication
12. Easily
13. Right On Time
14. Under The Bridge
15. Me & My Friends
(encore)
1. Soul To Squeeze
2. Power Of Equality