ヒロくんのLIVE REPORT '01 PART 19 RADIOHEAD

 '97年のアルバム『OKコンピューター』で大ブレイクを果たし、ロック・ファンの間から常に挙動が注目される存在になったレディオヘッド。去年の秋にリリースしたアルバム『キッドA』、そして今年の春に発表したアルバム『アムニージアック』...これら2枚のアルバムを引っさげ、約4年ぶりに演奏しに日本の地を踏んだレディオヘッドを9月29日、大阪城ホールで観てきた。私の居場所はステージに向かって右側のスタンド席。
 今回のライヴ、オープニング・アクトとしてクリニックが演奏することになっていた。クリニックといえば、バンド名どおりの白衣にマスク姿が話題で、ライヴでもその格好で出てくる...という噂が流れてた。が、7時ジャストにステージに現れたクリニックの面々は、Tシャツにジーンズ姿といったフツウの格好で登場。私の席からは遠すぎてよく見えなかったんだけど、マスクもしてないような感じ。このクリニック、私が音聴いたのはこのライヴが初めてだったんだけど、4人組でヴォーカル、ギター、ベース、ドラム...の編成。だけど、ヴォーカルのひとがオルガン弾きながら歌う曲や、ヴォーカルのひとがエキゾチックな笛吹く曲などあってバンドの編成は流動的。ギタリストがギター手放してオルガン弾く曲もあったりして。このクリニック、与えられた時間は30分きっかりだったようで、「thank you」って御礼を言う程度でMCらしいMCも無く、曲を演ることだけに集中してたようです(笑)。与えられた短い時間に10曲もつめ込んで行った(笑)。彼らのことを知らないレディオヘッド・ファンに自らの存在をアピールするには十分なパフォーマンスだった。クリニックの演奏が終わると、ステージではセットチェンジが始まった。 8時ちょうどに客電が消え、ステージにレディオヘッドの面々が現れた。白の長袖シャツ姿のトム・e・ヨークがギターを構える。エド・オブライエンとジョニー・グリーンウッドもギターを構え“The National Anthem”スタート。いきなりトリプル・ギター編成だけど、ジョニーはキーボードのほうも忙しい(笑)。ステージの真ン中に居るトムの右にエド、左にジョニーが居て、ステージ奥のドラムキットに座るスキンヘッドのフィル・セルウェイの右前にベースのコリン・グリーンウッドが居る...という立ち位置。コリンはずっと黒の丸首長袖シャツ着た(暑くないのか!?)フィルのそばでベース弾いてた。リズム確保のためにはそのほうが都合がいいのかな。フィルのリズムに音乗せる曲が最近の曲に多いから。“The National Anthem”が終わると、そのまま最新作『アムニージアック』収録の“Hunting Bears”になだれ込む。この短いインストゥルメンタル・ナンバーが終わると、観客から拍手が贈られた。「コンバンワ〜!!!」 観客に日本語で挨拶したトム、ここでギターを降ろす。ステージにはキーボードが持ち込まれる。トムがキーボードに就いたところで、フィルが叩き始めたリズムは“Morning Bell”。ステージの両側にはスクリーンが用意されていて、固定カメラによるメンバーの姿がモノクロで映し出されてる。キーボードにもカメラが設置されていて、キーボード弾きながら歌うトムの顔のアップがスクリーンに映ったりしてた。1曲のみでキーボードは撤去され、トムがエレキギターを構えたところで演奏されたのは“My Iron Lung”。この曲のイントロが流れただけで場内からは大歓声が上がる。シンセ類を操るためギターを離しがちなジョニーもこの曲ではギターをしっかり弾いて、トリプル・ギター編成に。“My Iron Lung”のような曲こそ、トリプル・ギター編成が威力を発揮する。この曲のトリプル・ギターは何度聴いても殺傷力抜群!!!
 “My Iron Lung”が終わると、観客に「アリガト」と日本語でお礼言ったトム。ここでアコースティック・ギター(以下、アコギ)を構え、“Karma Police”。この曲もトムが歌い始めただけで観客が沸いた。“Knives Out”と“Optimistic”が終わると、アコギを構えたトムが弾き始めたフレーズは“Exit Music (For A Film)”。この曲の登場に最初のうちこそ観客から歓声が上がったけど、すぐに静かになり、会場にはトムの奏でるアコギの調べのみが響く。トムが歌い始めても場内は静けさに包まれたまま。美しいくらいの静寂だった。曲が進むとバンドが入ってくるんだけど、トムと、ジョニーのシンセのみで演奏される部分までは神々しいくらい荘厳な空気が会場を支配してた。曲が終わると、ステージに鉄琴が持ち込まれる。ジョニーがこの鉄琴をプレイした“No Surprises”。ギターにシンセに...そしてここでは鉄琴。トムも忙しいけどジョニーも大忙しだ(笑)。鉄琴はこの曲だけで撤去され、フツウのバンド編成に戻って“Dollars And Cents”へ。この曲が終わるとトムは「hey! come」って叫ぶ。どうもジョニーのほう向いてたようなんだけど...。ここで始まった曲は“Airbag”。観客の間から歓声が上がる。『ザ・ベンズ』と『OKコンピューター』の曲に対する観客の反応は、明らかに『キッドA』や『アムニージアック』の曲に対するそれよりも大きい。昔の曲がウケるのはファンに馴染みの曲だからだろうけど、ホントにそれだけ?(笑) 次の“Street Spirit (Fade Out)”も勿論ウケました(笑)。フィルの叩くリズムがCDよりも強烈だった“I Might Be Wrong”が終わると、ステージにピアノが運び込まれ、コリンもここでウッドベースを構える。トムが弾き始めたピアノの調べは“Pyramid Song”のイントロ。この曲は『ザ・ベンズ』/『OKコンピューター』の曲並に観客の反応が良かった。曲が終わってピアノが撤去され、トムがギターを構えると、ファンのほうからイロイロ声がかかる。いったいどんなことをトムがファンから言われたのかは分からないけど、トムは「sure」と英語で返した後、「ソウデスネ」って日本語喋ってた(笑)。ここでプレイされたのは“Paranoid Android”。これには観客も大歓声! 曲のアタマのベース要らないところではコリンもマラカス類振ってた(笑)。“Paranoid Android”が出たからにはもう終わりかな???とも思ったけど、まだまだライヴは続く。フィルが刻み始めたリズムと耳馴染みなシンセのフレーズは“Idioteque”。この曲ではトムは鈴かマラカスなどの打楽器を持ち、激しく腕を振りながら歌う。歌が終わると、ステージのあちらこちらを飛び跳ね廻る。スタンドに居る客に手を振ってみせたり(勿論、観客は歓声で応える)、空飛べちゃうんじゃないかと思うくらい激しく腕を『羽ばたかせ』たりして。まるで暴れてるような感じ。“Idioteque”っつうと、『キッドA』収録の無機質な曲だけど、メチャクチャ情が籠って熱かった。後ろに流れるシンセのフレーズはCDどおり無機質だったけど、トムの動きが全てを変えてた。
 熱い“Idioteque”が終わると、ステージにまたキーボードが運びこまれる。ここで、トムがキーボードを弾きながら歌った曲は、な、何と、R. E. M.の“It's The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine)”(邦題は“世界の終わる日”)!!! サビの部分をチョロ〜ッっと歌っただけだけど、こんなのが出るとは! この後トムのキーボードに先導されて始まった曲は『キッドA』のアタマを飾る“Everything In Its Right Place”。曲がエンディングに差し掛かると、まずはトムが観客に手を振ってステージを去る。少し間を置いて、フィルとコリンのリズム隊がステージを去り、さらにエドとジョニーもステージを去り、ステージには誰も居なくなった。だけど、曲じたいは自動演奏で続いてる。そんななか、会場に観客の拍手が渦巻き、そのままアンコール要求へとつながっていった。
 観客のアンコール要求に手拍子のなか、ステージではピアノが用意されている。トム、コリン、ジョニーの3人がステージに戻って来て、この3人のみの演奏...っつうか、メインはトムのピアノ...で“Like Spinning Plates”。CDだとシンセ類使ってるんだろうけど、ピアノ・ヴァージョンで聴くと、また感じがひと味違う。“Like Spinning Plates”の後、ステージにフィルとエドも戻って来て、5人で演奏された曲は映画『ロミオ+ジュリエット』からの“Talk Show Host”。これもイントロだけで客が沸いた。曲が終わると、またしてもステージにキーボードが持ち込まれる。キーボードに就いたトムが歌い始めたのは“You And Whose Army?”。キーボードに付けられてる固定カメラには微妙に魚眼が入ってるんだろうか、スクリーンに大写しにされるトムの顔は犬かゴマアザラシのようにみえた(笑)。曲が終わってキーボードが撤去されると、会場に響くエフェクトかかったギター。“Lucky”だ! 勿論、観客は大喜び。“Lucky”が終わると、トムは「オヤスミサナイ」(かなり発音に難アリ...笑)って日本語で挨拶し、5人はまたステージを去った。
 「払ったお金以上の演奏をさせる」と定評の関西だから(笑)アンコール1回だけではファンも納得しない(笑)。観客のアンコール要求の手拍子によって三たびステージに現れたレディオヘッドの5人。トムがアコギを構え、演奏し始めた曲は“Fake Plastic Trees”。この曲ではコリンはまたウッドベース弾いてた。“Fake Plastic Trees”にはファンも大喜び。“Fake Plastic Trees”が終わると、トムが観客に向かって何か叫ぶ。私にはトムが「“Creep”! “Creep”!」って叫んでるように聴こえたから、「え? “Creep”演るの!?」ってビックリしたけど、ここで演った曲は“How To Disappear Completely”。やっぱそうだよな(笑)。「これは現実じゃない。ぼくはここにいない」...『キッドA』の日本盤オビタタキに使われた歌詞を持つこの曲で、この日のライヴは幕を閉じた。
 「暗い」とか「感情が無い」とか、一部でさんざんな言われようだった『キッドA』と『アムニージアック』からの曲だけど、“Idioteque”におけるトムの激しい動きに代表されるように、楽曲がいくら無機質なようであっても生身の人間が演奏すると魂が籠っていくものである。そこらあたりの変貌が興味深かったッス...。

【SET LIST】...'01.9.29 大阪城ホール
1. The National Anthem
2. Hunting Bears
3. Morning Bell
4. My Iron Lung
5. Karma Police
6. Knives Out
7. Optimistic
8. Exit Music (For A Film)
9. No Surprises
10. Dollars And Cents
11. Airbag
12. Street Spirit (Fade Out)
13. I Might Be Wrong
14. Pyramid Song
15. Paranoid Android
16. Idioteque
17. Everything In Its Right Place

(encore 1)
1. Like Spinning Plates
2. Talk Show Host
3. You And Whose Army?
4. Lucky

(encore 2)
1. Fake Plastic Trees
2. How To Disappear Completely

RADIOHEAD live @ Matsumoto Shi Shakai Bunka Kaikan '98.1.15

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