『ハートバザール、解散!』...この寝耳に水な話が私の許に飛び込んできたのは、4月の下旬。ホントはいちど解散ライヴ演った後だったんだけど、ファンからの要望が強いため、正真正銘最後のお別れになる解散ライヴ『さいはてのさいはて』の開催が急遽決定した経緯があるという。私はここらの動きにノー・チェックだったんで、解散の知らせにホント、ビックリ! 去年、デビュー・アルバムをリリースしたばかりの彼女たちがこんなに早く解散を決意するとは、フツウ思わないじゃない?(苦笑) 慌ててSOLD
OUT寸前のチケットを押さえ、5月17日、雨降りのなか、ハートバザール(以下、ハバザ)最後のステージとなる下北沢GARAGEに出向いた。ハバザ最後のステージになるということで、会場はギッシリと多くのファンで埋まっている。私はステージに向かって左側、すなわち、ベースの永井紀子さん(以下、ノッチ)の前のほうに陣取った。これ、基本(笑)。
開演時間を20分ほど廻った頃、劇場や映画館での開演を知らせるようなベルがジリリリ〜と鳴り響き、コンピュータの合成音みたいな声が「さいはてのさいはて〜」とアナウンスし始めると、フロアの客電が落ちた。ステージにハバザの4人が登場。それぞれが持ち場に就き、いきなり演奏始まったのが、アルバム『さいはて』のアタマを飾る“さいはてのうた”。ヴォーカル/ギターの石井皐月さん(以下、皐月)は一時期ショートにしていた髪がすっかり元のセミ・ロングに戻ってる。皐月の左側に、昔の井上陽水みたいな爆発アタマしたリーダーでギターの鈴木玲史さん(以下、アッキン)が居て、皐月の右側には白のハバザTシャツ着たノッチがベース弾いてる。ステージ奥に、マッシュルーム頭の『タックン』こと國分建臣さんはオレンジのハバザTシャツ着てドラムを叩いてた。続く曲は“コレクター”、その次は“飛べない羽根”で、人気ある曲の連発にファンが沸く。フィンガー・ピッキングでベース弾くノッチは上手いなぁ。ノッチの前のマイクスタンドにベースピックが5つくらい挿してあったから、曲によってはピック弾きだったようだけど。
ここで、MCタイム。リーダーのアッキンが「雨降ってゴメン。今日は何でもみんなオレのせいにしていいから」などと観客に言う。すると皐月が「ハバザになって最初のライヴの時も雨降ってたよねぇ。雨と縁があるんだ」と言う。続けて「今日、このGARAGEさんの観客動員記録を更新したそうです。この中に俺ッチ、ミュージシャン目指すゾ!...ってひとが居たら、この記録を破ることを目指して下さい!」(笑) GARAGEのキャパシティーはせいぜい200人。メジャー・レーベル所属のバンドの終焉ににては狭過ぎる気もするけど、狭いお蔭でハバザの最期の勇姿もしっかりと観られるワケだし...。ここで、皐月が曲紹介。「“或る晴れた昼下がり”!」。♪今朝の夢は子猫を三匹殺すものでした〜...という狂気に染まった詩を持つこの曲が聴けるとは思いませんでした(苦笑)。次の未発表曲も♪被害者ヅラして〜...とか、辛辣な言葉が飛び出す未発表曲だったし(苦笑)。「さすが、皐月ィ〜」と感心しました(笑)。シングル曲の“ジギタリス”で観客が沸くと、タックンが「♪パ〜パパパパパ〜」と歌って?始まった“フラグメント”。この曲をライヴで聴くのは初めてだったけど、ノッチとアッキンが♪ウ〜ラ〜ウラウラ〜とコーラス入れてアルバムどおり再現するのを観て、感動した(笑)。シングル『アイ』収録の“流浪の民”の後、未発表曲を披露すると、皐月、「今のは“晴れ”という曲でした。これから演る曲は誰も聴いたことのない新曲です。“メタモルフォーゼ”っていう曲で、“メタモルフォーゼ”って「変身」っていう意味なんですけど...」と語ったのち、いかに自分がほんの数年前まで『困ったちゃん』だったかを長々と喋る喋る(笑)。そんな『困ったちゃん』だった皐月が友達のお蔭で変わることが出来た。そんな意味の曲です...って結論にうまく『着地』するのに四苦八苦(苦笑)。皐月、自分で『着地』下手って認めてたけど(笑)。新曲の“メタモルフォーゼ”の後は、デビュー・シングル収録の“water.”。この曲ではアッキンはキーボード弾いてた。曲が終わると、「この曲(“water.”)はハバザで一番最初に出来た曲なんですよ。最後に出来た曲の次は最初出来た曲...そんなふうに狙ったワケじゃないですけど」とファンに説明する皐月。ここで、最後ってことで、ドラムのタックンも前に出てきて、スネア・ドラム(小太鼓です)を肩から下げ、メンバー横一列に並んで“はらいそ”。皐月をナマで観る度に思うのが、「皐月は顔がデカいなぁ〜」(笑)。こうしてメンバーが横一列に並ぶと、身長はノッチのほうが高いのに、顔の大きさは皐月のほうが勝ってるってよく解る(笑)。ウラを返せば、ノッチは顔が小さくってスタイル抜群ってことなんだけど(笑)。この“はらいそ”、アルバムではタックンが口笛ふいてるところを皐月が奇妙な笛吹いて再現してた。バンド1列に並んでの演奏が終わり、タックンがドラムに戻って、12月の富山でも演奏した“ぬけがら”、随一のロック・ナンバー“共鳴”が続く。未発表曲を挟んで、アルバム『さいはて』のラストを締める“海の底の空”がプレイされると否応なく終演(終焉)間近を感じさせられる。
最初こそMCが少なめだったけど、中盤以降はバンバン喋りまくる皐月。アッキンもノッチに向かって「最後には脱ぐんだろ?」って言って、ファンに「脱げ!」コールをさせたり、悪ノリ(笑)。「脱がないもん!」ってノッチはきっぱり(笑...アタリマエだ)。皐月が観客に訊く。「今、何時ですか? 8時半? 金曜の夜だからまだまだこれからだよねぇ〜。(ここで観客から、「そうだ〜!!!」って声) でも、遠くから来てくれてる客も居るから」...おお、皐月、配慮ありがとう!(笑) 「私は群馬出身なんですよ」と語りかけて、「あ、やっぱ『着地』に失敗しそうだから、やめよう」って、この話題を打ち切り(笑)。
結果的にラスト・シングルになってしまった“アイ”、♪ボクは垂れ流しの汚物〜...というトンデモナイ詩で始まる“有明けの月”、そして“ナトリウム灯”...と、曲が進む。そして、とうとう皐月の口からこのセリフが飛び出した。「最後の曲なんだけど...」 ファンが「エ"エ"〜ッ!!!」って反応を返す。最後の曲は「アレ」に決まってるから、私が一番聴きたかった曲“色彩”は演奏なし...か...(泣)。最後の曲を演る前に、メンバーひとりずつ最後にひとこと...ってことで、最初はタックンの挨拶。ファンから「脱げ!」コールが掛かったので、タックンが「やっぱ、オレ、脱がなきゃダメ?」などとズボンを下ろしにかかる。アッキンが慌てて「最後だからヤメロ!」って制止(笑)。次にノッチが簡単に挨拶。そしてアッキンの挨拶。「中学生の頃からバンド活動してるんだけど、さっき演奏した“water.”って曲は、始めて満足出来るような曲が書けた...このまま音楽やっていけるな...って思えた曲なんですよ」というようなことを喋ってた。最後は勿論、皐月。「最後のライヴってことで、もしかしたらレコード大賞もらった時の聖子チャンみたいに涙ウルウルで歌えなくなるんじゃないかな...と思ってたけど、全然そんなことなくって...」...今までの皐月みたら分かるワ(笑)。で、皐月は、「新しいバンドを組んでて」と、新しいバンドで音楽活動を始めてることを宣言! もう解散が決まってるとはいえ、ここまでアッケラカンと新しいバンドを始めてることを言わなくても...(苦笑)。正式に離婚届を出す前に、新しい相手と同棲始めるようなものでしょう?(苦笑) ま、いいっか(苦笑)。「さっき、アッキンが『始めて満足出来るような曲が書けるようになった』って言った頃っていうのは、アッキンが今の皐月くらいの(年齢の)頃で、今の皐月もようやく満足出来るような曲が書けるようになってきてて...」 ハバザの曲って、アッキンが書いた曲に皐月が詩を付けるという感じで生まれてきたものが多いと思うけど、皐月が自分の詩に自分で曲を付けられるようになったら、どうなるか??? なんとなく、ハバザの解散理由が解ってきたような気がする...(苦笑)。ここで皐月が紹介した最後の曲は、やっぱり「アレ」で、デビュー曲の“北風と太陽”。「この曲は皐月が新潟へ免許取りに合宿に行ってた時に、アッキンからテープで届いた曲で...。3週間の予定だったのにいつまで経っても皐月が帰って来ないから、テープ送ったんだよね(笑)。なにしろ、2回仮免落ちちゃってて...(苦笑)」などと、曲が出来た時のエピソードを語る皐月。こうして、演奏始まった“北風と太陽”。この曲を熱唱する途中、珍しく皐月が歌に詰まった。感傷と無縁の態度をこれまで貫いてきた皐月にも、この時ばかりはこみ上げてくる何かがあったのだろうか?
演奏が終わり、楽器を離したメンバーたち、次々とハイタッチを交わしで、これまでの労をねぎらい合う。ファンに手を降って御礼を言ったハバザの4人がステージを去ると、ライヴの開始時と同じく、コンピュータの合成音みたいな声が「またね〜〜〜!」。これでライヴが終わった。ハバザがステージを去ってから、ファンの間からアンコールの手拍子が起こり始めた。だけど、ハバザのホームページ上で今回のライヴの最初の曲と最後の曲をファンの投票で決めることが書かれていた以上、この“北風と太陽”って曲がファンの投票で「ハバザの最後の曲」に指定されたってことが明白だったし、その“北風と太陽”で綺麗に締めた後、どんな曲を求めていいものだろうか?とファンの誰もが思ったんだろう。そういういきさつゆえか、手拍子も次第にフェイド・アウト...。客電も灯き、会場にはハバザの曲をリミックスしていくつもつなげた音源が流れる(この日のためにわざわざこんなものまで作ったのか!?...とファンの間からも驚きの声が上がってた)。スタッフがステージ機材を撤収していく。明らかにライヴはもう終わってるんだけど、ファンはフロアに立ち尽くし、誰も出口に向かわない。ファンはしばらく名残り惜しそうに、フロアに留まってる。が、遠方から来てる私は電車の都合もあり、ハバザからの最後のプレゼントのTシャツも受け取らずに脱走〜! 地方者はツラいや...。
他のメンバーはともかく、皐月がアッケラカンとしたトークを延々(笑)続けてたため、解散ライヴにつきものの湿っぽさに無縁のライヴ。最後の最後まで皐月らしかった(笑)。短い間だったけど、ハバザのみんな、ありがとう! マタネ〜!
【SET LIST】...'02.5.17
下北沢GARAGE
1. さいはてのうた
2. コレクター
3. 飛べない羽根
4. 或る晴れた昼下がり
5. ? (未発表曲)
6. ジギタリス
7. フラグメント
8. 流浪の民
9. 晴れ (未発表曲)
10. メタモルフォーゼ (未発表曲)
11. water.
12. はらいそ
13. ぬけがら (未発表曲)
14. 共鳴
15. ? (未発表曲)
16. 海の底の空
17. アイ
18. 有明けの月
19. ナトリウム灯
20. 北風と太陽