3年ぶりの新作『ヘヴンリィ・パンク:アダージョ』(2枚組/2時間半の大作)を発表したばかりの七尾旅人と、『灰と花』に続く2ndアルバムに向けどんどん曲を書いてる古明地洋哉が、福岡・大阪・名古屋・東京を廻るジョイント・ツアー、その名も『七尾旅人と古明地洋哉』(そのまんまやん!)に出るというので、6月1日に大阪・心斎橋クアトロで観て来た。
会場には、七尾クン目当てとおぼしき若い女の子の姿が多く見受けられた。開演時間を廻ると、ステージに七尾旅人と古明地洋哉の2人が登場。椅子に座り、譜面を見ながらアコースティック・ギター(以下、アコギ)を弾く七尾旅人。そのギターの旋律に載せ、立ったままポエトリー・リーディングする古明地洋哉。詩の朗読が終わると、古明地クン、「今日でツアー2日目なんだけど、もうテレパシーで通じ合うようになったのか、2人とも白いシャツ姿で...。今日、楽屋でお互いの服装初めて見た時、気まずいやら恥ずかしいやら...」などと喋った(笑)。そーいえば確かに、2人とも白色の長袖シャツ姿(笑)。気の合う2人(笑)が一度ステージから袖に引っ込むと、改めて古明地一行がステージに現れた。
古明地一行はいつもどおり、古明地クンの他に、ギター、ベース、ドラム、ヴァイオリンが居る総勢5名。前に福岡で観た時は椅子に座りながらアコギ弾きながら歌ってた古明地クン、今回は全部立ったままで歌い演奏してた。ギターの弥吉淳二さんは相変わらず椅子に座っての演奏だったけど。ヴァイオリンの岡村美央さんはストリート・ファッションっぽい服装。その姿でヴァイオリン弾くので、目に新鮮に映った(笑)。
いつもはMCも少なめの古明地クンがこの日は結構喋った。「今回のツアー、古明地チームはキャンピング・カーで移動してる」とか。古明地クンの喋った内容で印象に残ってる言葉は「東京では街の灯りが明るくて『星空が無い』って言われてて、『そんなもんか』って思ってたけど、この間山梨の実家に帰った時、とても星空が綺麗だった。去年の9月にアメリカでヘンな事件が起ったりして、『今の世の中どうかしてる』ってみんな言うけど、綺麗な星空があるのに誰も気付かないのと同じで、今の世の中にも実はいいことあるのに誰もそれに気付いていないだけなんじゃないか...って思ったりする」。それと、「『生活』っていう言葉があるよね。『生活感が漂ってる』とか、そういう使われ方されてて、あまり刺激のない意味に使われてるけど、よくよく考えてみると『生活』って『生を活かす』って書くよね。『生を活かす』って前向きで凄い意味を持つ言葉だな! これは大発見だ! 是非ライヴで喋ろう!って興奮しました」という内容。前回観た福岡公演と比べると、話した量も内容の深さもスケール・アップしてました。深い...。
アルバム『灰と花』からの“星の埋葬”を演った後、古明地クンが「新曲です。タイトルは“ささくれ”」って曲紹介すると、会場から「クスッ!」と失笑が漏れる。「アッ! 笑ったな!!!」と古明地クン、不服そう(笑)。古明地クンひとりの弾き語りで“ささくれ”を演奏した後、「よくみんなから『タイトル変えたら?』って言われるけど、このまま“ささくれ”のタイトルで次のアルバムに入れたいと思います!」と宣言してた(笑)。意固地になってます(笑)。ライヴのほうは、代表曲の“ライラックの庭”と“ghost”を連発、最後は“欲望”でフィニッシュ! 古明地クンのトークの内容、ホントに深い...。
古明地御一行がステージから降りるとセット・チェンジが行なわれた。七尾クンのセットは打ち込み主体の新作からの曲を再現するシステム一式が載った長い机が1つ(笑)。ノート型パソコンが2台(いずれもMac)載ってるのが目を引いた(笑)。ステージにひとり現れた七尾クン、デパートのレストランでお子さまランチ食べてるガキが座るような異様に足が長く高い椅子に座りアコギを構える。「最近出した2枚組の2時間半のヤツから5曲演ります」と言った七尾クンがひとり弾き語り始めたのは“息をのんで”。この曲が終わる前にステージにシステム担当者が2人現れ、位置に就く。“息をのんで”が終わると、打ち込み音が会場に響き渡り、アコギを下ろした七尾クンは椅子を蹴飛ばし(笑)、歌と踊りに専念して“エンゼルコール”。曲の終わりにはみんなも踊れ!とばかりに観客を煽った。
「アメリカ村でギター弾いてたらトラックの運ちゃんに叱られた」という想い出の地(笑)・大阪。その大阪の観客の女のコたちからは、「カワイイ〜!」って頻繁に声がかかってた。これに対し「『カワイイ〜!』じゃなくて『カッコイイ!』だろ?」と返す七尾クン(笑)。こーゆーやりとりが何回もあった(笑)。「未発表曲を2曲演ります」などと言って七尾クンが披露した曲は“十字をきるよ”というタイトルで、往年のTVドラマ『コメットさん』が使ってたような☆形の付いたステッキを持った七尾クン、歌詞に合わせて胸の前で十字をきってみせる。「あと3曲」と言って観客から「エ"エ"〜ッ!!!」って声を引き出した頃には、いつの間にか背中には天使の羽根を背負ってました(笑)。最後に“完璧な朝”を演奏して、七尾クンはステージを去ったんだけど、当然、女のコたちを中心にして(古明地クンの時には起らなかった)アンコールの手拍子が起こった。
衝撃のデビュー作!(笑)『雨に撃たえば...! disc
2』を「若気の至り」と思ってるのかどうかは知らないけど、七尾クンは新作と未発表曲しか演らなかった。アンコールでステージにひとり戻って来た七尾クンに、女のコから「“夜光る”演ってェ〜!」って声がかかったけど、「“夜光る”ってハタチの時の曲だゼ。オレは今年で23だよ。そんな古い曲、忘れてしまったよ」などと、すっかり昔の曲扱い。このセリフ聞いて「『雨に撃たえば〜』って10代の時の作品かよっ!!!」って私は衝撃受けてたんですけど(苦笑)、それでもファン・サーヴィスで“夜光る”のさわりだけアコギで弾き語ってくれた。アンコールでは“真夜中2時→”と“『生涯の秘密』”の2曲をアコギで弾き語ってくれたんだけど、“真夜中2時→”のイントロを弾き始めたところ、間違って“夜光る”を弾いてしまい(笑)「同じようなフレーズを使い廻してるのが、バレてしまった」などと苦笑いしてごまかしてた七尾クン、最初から弾き直すんだけど...またも“夜光る”になっちゃった(笑)。「コイツがヘンなこと言うからだよ!」と、最初に「“夜光る”演ってェ〜!」って声かけた女のコに責任転嫁(笑)。『アコギ』と『打ち込み』...対極にあるサウンドを往き来する不思議なパフォーマンスだったけど、やっぱ『雨に撃たえば〜』からも聴きたかった...。
【SET LIST】...'02.6.1 心斎橋CLUB
QUATTRO
《古明地洋哉》
1. STARLIGHT
2. See Rosalie burns down this world
3. my private sun (新曲)
4. tonight (新曲)
5. Fuck you
6. reposer
7. 星の埋葬
8. ささくれ (新曲)
9. the lost garden
10. ライラックの庭
11. ghost
12. 欲望
《七尾旅人》
1. 息をのんで
2. エンゼルコール
3. 耳うちせずにいられないことが
4. わぁ。 (驚きに満ちた小さな悲鳴)
5. 天国北上
6. シュリンプ (ガリバー6)
7. 天使が降りたつまえに
8. 十字をきるよ (未発表曲)
9. ? (未発表曲)
10. ウィッグビーチ
11. 赤い星(サーチンソール)
12. ?
13. 完璧な朝
(encore)
1. 真夜中2時→
2. 『生涯の秘密』