小谷美紗子さんひとりのピアノ弾き語りで全国を廻るツアー『生』、本年度2巡目を11月2日に金沢市民芸術村ミュージック工房で観て来た。金沢市民芸術村ミュージック工房は、本来は金沢市民の歌や演奏の練習や発表会に使われる施設のよう。私が会場入りしたのは、開場時間を5分くらい過ぎた頃だろうか。フロアには長椅子の列が扇形にセットされている。真ン中部分は熱心なファンたちにすでに占拠されていて、ステージ向かって右部分と左部分しか座るところが無い。ステージ向かって右部分はピアノが邪魔して小谷さんの顔が見えにくい位置だし、ステージ向かって左部分からはピアノ演奏者の背中しか見えない。「ま、たまにこちらにも振り向いてくれるだろう」と思い、ステージ向かって左部分の3列目くらいに座って開演を待った。結果からいうと、演奏中に小谷さんが振り向くことはなく、ステージから出入りする時しか、顔は見えなかったケド(苦笑)。
場内に流れていたBGMがフェイド・アウトすると、すぐにステージに小谷さんが現れた。小谷さんに気付いた観客が拍手で彼女の登場を出迎える。「こんばんは、小谷美紗子です」と観客に挨拶してからピアノに就いた小谷さんは、アルバム『うた
き』のジャケットの色合いを思わせるような赤色のワンピースを着ていた。毎度見る度に思うんだけど、小谷さんって、ちっちゃいなぁ〜(笑)。この日の『生』の1曲目は??? みんな固唾を呑んでシーンと静まり返ったところ、小谷さんが弾き出したピアノの旋律は...知らない曲、おそらく新曲だ。「こんなに愛しているのに」という歌詞が印象に残るこの曲が終わると、続いてまたしても新曲の“off
you go”。こちらは前回の金沢での『生』でも演奏してた英詞の曲(一部、日本語詞)なので憶えてる。この“off
you
go”の演奏が終わると、もう1曲新曲を演った。会場の外では季節がひと月進んだような冷たい雨が降ってたんだけど、小谷さんのうたとピアノ演奏の一音でも聴き逃すまいと観客は静かに聴き入っていたものだから、雨が会場の屋根と外壁を叩く音までもが会場のなかに響いてた。
新曲を3曲演ったところで、小谷さんのMC。「新曲を3曲続けて演ったんだけど、2曲目は前の『生』の時に演った“off
you
go”って曲です」などと喋った小谷さん。ただし、他の2曲に関する言及はナシ。外は冷たい雨が降ってたけど、照明が当たる小谷さんはライトにあぶられる感じで暑くて汗をかくのか、頻繁にタオルで手の汗(たまに顔の汗)を拭い、さらにピアノの鍵盤を拭いてた。ここで演奏されたのは、最新作『Then』から“街灯の下で”。続いて、アルバム『うた
き』からの“左手”、さらに“惜しみなく愛を”を演って、次の曲を演奏しようと小谷さんが身構えたところで、「ガタンゴトン〜ガタンゴトン〜」と電車の通過の騒音が...。この会場はJR北陸線の線路に面しており、列車が来る度に通過音がこだまするロケーションだったりする。列車が通過するを待ってたけど、長編成の貨物列車でも通過したのか、なかなか列車は通過し終わらないので、「まだかな」と、これには小谷さんも苦笑するしかなかった。列車が通過した後演奏されたのは、アルバム『宇宙のママ』からの“カラカラのブルース”。前回の金沢での『生』ではこのアルバムからの曲を無視してたから、この曲が演奏されてうれしかったッス(笑)。
トーク・タイムでは、「お喋りが苦手なので、いつも何を喋ろうか悩むんですけど」などと前置きしてから話し始めた小谷さん、「今度私は26歳になるんですよ」と前フリしてから、去年まで小谷さんさんと1年間一緒に暮らしてて今はロンドン在住の親友からバースデイ・カードが届いた話をしてくれた。その親友は、「ソマリアで飢えて苦しんでるひとが居る」というニュースを見たらすぐに現地へ駆け付けるようなかたで、小谷さんはその親友のことを凄く尊敬しているそうです。小谷さんは自分が作曲してるところを誰にも見せたことがないらしいけど、その親友だけには、作曲してる姿を見せたそうです(部屋をシェアしていたからアタリマエか...笑)。で、小谷さんが曲や詩が書けなくてスランプで苦しんでる姿をみて、「美紗ちゃん、もうアーティストなんか辞めれば!? 美紗ちゃんひとりくらいなら私が養ってあげるよ」というふうに、その親友は言ったらしい。「『辞めろ』って言われたら、アーティスト続けたくなるじゃないですか。アーティスト辞めたくないから。そう言われて、やる気が出てきました」などと小谷さんは語ってた。
ここで「カヴァー曲を2曲演ります」と言って、小谷さんが演奏したのは、オフコースの“さよなら”と、ダイアナ・ロスの“If
We Hold On
Together”。後者はともかくとして、前者はなかなかの出来。最近のブームでベタ過ぎだけど『カヴァー・アルバム』っつうの出してみるのは、どうですか?(笑) 知名度バツグンの曲を演ったつもりなのか、カヴァー曲の演奏が終わっても曲についての説明はナシのまま、続けて“STAY”を演奏。ここで、この日の『生』が終わった後にもっきりやで行なわれる『打ち上げ』について小谷さんから紹介があった。お金さえ払えばファンも参加出来る『公開打ち上げ』で、こういう試みするのは今回初めてだそう。客は小谷さんの演奏を聴きながら飲み食いできる趣向で、小谷さん曰く「悪く言えば、『ディナー・ショウ』」(苦笑)。『公開打ち上げ』についての説明の後、赤い衣装はこの曲のため? 待ってました! “火の川”。この曲は小谷美紗子というアーティストを語る際に不可避でしょう。それくらいの名曲。最後に“眠りのうた”を演ると、小谷さんは一度ステージを去ったけど...。アレ? ちょっと短すぎ。
ファンのアンコール要求に応じてすぐにステージに戻って来た小谷さん、「高いヒールは履き慣れない」などと言ってたヒールを脱いで裸足で再びピアノに就いた(彼女はいつも裸足で演奏するそうだ)。「デビューしてから6年になるんだけど、いつもライヴでは始めのほうで演ってしまうことが多いんです。今回は敢えてここで演ります」などと言ってから小谷さんが演奏したのはデビュー曲の“嘆きの雪”。この曲に誘発されたのか、北陸ではこの後すぐに初雪が降った(笑)。こうして、この日の『生』は終わったんだけど、例のように、会場のなかは針が落ちる音すら聴こえそうな静寂に包まれ、ハサミで切れそうなくらい空気がピーーーンと張りつめてた。小谷さんの一挙一動を見逃すまいと観客が身構えてる感覚は、クラシック・コンサートに近い(苦笑)。この感じ、クセになる(苦笑)。
ちなみに、もっきりやでの『公開打ち上げ』は、私が金沢在住でないのと、ミュージック工房脇の池に落ちてヒザから下が濡れてしまい恥ずかしかったので、不参加(苦笑)。
【SET LIST】...'02.11.2
金沢市民芸術村ミュージック工房
1. ?
2. off you go (新曲)
3. Faint odor (新曲)
4. 街灯の下で
5. 左手
6. 惜しみなく愛を
7. カラカラのブルース
8. さよなら (オフコースのカヴァー)
9. If We Hold On Together (ダイアナ・ロスのカヴァー)
10. STAY
11. 火の川
12. ?
13. 眠りのうた
(encore)
1. 嘆きの雪