ヒロくんのLIVE REPORT '10 PART 5 AC/DC

 '07年末から始まった日本盤紙ジャケ再発と'08年の新作『悪魔の氷』リリースにより、かつて無かったほど日本でAC/DCの人気が盛り上りを見せてる。その盛り上がりを受け、9年ぶり4回目のジャパン・ツアーが行われた。そのうち、SOLD OUTとなった初日・3月12日の さいたまスーパーアリーナでのショウを観て来た。会場は勿論満員で、会場の至るところでファンが頭に付ける悪魔の赤いツノがピカピカ点滅してる。前回の来日時でもグッズ売り場で扱ってたものの数が少なくすぐに売り切れてしまったため、赤いツノを付けてライヴに臨んでる観客は少なかったけど、今回はグッズ売り場にたくさん用意して来たようだ(笑)。'81年の初来日公演にも足を運んだようなオールド・ファンが観に来てるのか、50過ぎのオヤジの姿もチラホラみられたが、主力は今回AC/DCを初めて観るような20代のファンだ。一家全員AC/DCファンです!...みたいな外国人ファミリーの姿もあった。
 開演予定時間の7時を5分ちょっと過ぎたところで、場内のB.G.M.がフェイドアウトし、客電が消える。ステージ奥の巨大スクリーンに、機関車のアニメが流れ始める。暴走する機関車の機関室の火室にがんがん石炭を入れ、ますます暴走させてるのは無気味な笑みを浮かべるアンガスだ。そこへ色っぽいネエちゃん2人組が登場。アンガスを誘惑すると見せかけ、誘いに乗ったアンガスを殴りつたうえ後ろ手に縛り上げ、暴走列車を止めるべくブレーキを引く。が、ブレーキは根元からポッキリと折れてしまい、暴走列車を止める手段を失った彼女たちは列車から飛び下りた。機関室に残されたアンガスは、縛られた後ろ手を火室の炎のほうにもっていき、縛ってるロープを焼き切って自由の身となる。機関車はそのまま暴走を続け、激突〜!!! ここでアニメは終わり、実際にもの凄い花火とスモークが上がる。いつの間にかステージ上には帽子、ブレザー、半ズボン...のスクールボーイのユニフォームを着たアンガス・ヤングをはじめとするAC/DCの5人が登場し、スタンバってる。アンガスが弾き始めたリフは、新作『悪魔の氷』のアタマを飾る“Rock N' Roll Train”(邦題は“暴走/列車”)。ライヴ開始早々にダッグ・ウォークを披露するアンガス(笑)。いつの間にかステージ上のスモークは消え、1枚から左右2枚に分かれたスクリーンの間には、脱線して停まったかのように斜めに傾いた状態の巨大な機関車が現れてた。アニメの機関車が暴走の末にたどり着いた先がこの会場(さいたまスーパーアリーナ)だ...という寸法になってるよう。ステージは、ファッションショーのようにキャットウォークのあるT字型になっており、ステージの左右とキャットウォーク部分を前後にアンガスは走り回りながらギターを弾き、ヴォーカリストのブライアン・ジョンソンは『鬼太郎』の『目玉おやじ』が怒り狂ったような声で歌いながらノシノシ歩き回る。ステージ中央ではフィル・ラッドがドラムを叩き、その右にギターのマルコム・ヤングが、左にはベースのクリフ・ウィリアムスが居る。マルコムとクリフは自分のコーラス・パートにかかるとマイクスタンドのほうに歩みより、コーラスが終わると元居た位置に(フィルのほうに)戻った。2人のこのふるまいは、昔から変わらない(苦笑)。
 “Rock N' Roll Train”が終わると、アンガスが帽子をとって観客にぴょこっと挨拶し、ブライアンは「アリガト、トウキョウ!」と日本語で御礼を言う。次の曲は“Hell Ain't A Bad Place To Be”(邦題は“地獄は楽しい所だぜ”)。この曲演奏中に、アクションが激し過ぎたため、アンガスの帽子が脱げ落ちる。ステージ上に落ちたままになってた帽子をブライアンがステージ脇に蹴り出した(苦笑)。3曲目は世界で4,900万枚売ったという化け物アルバム『バック・イン・ブラック』のタイトル曲で、イントロが弾かれただけで場内から大歓声が上がった。曲が終わると「Thank you〜!」とファンに御礼を言ったブライアン、続けて「新作『悪魔の氷』からの“Big Jack”だ」などと曲紹介し、“爆弾ジャック”という邦題が付けられた曲を披露。曲が終わると、「Thank you、今夜を特別な夜にしようぜ」といった感じのM.C.をしたブライアン、「“Dirty Deeds Done Dirt Cheap”」と曲紹介。“悪事と地獄”という邦題で馴染みのこの曲では、サビの部分で♪ダンダーチープ〜と場内大合唱となった。“Shot Down In Flames”(邦題は“ショット・ダウン”)を演った後、アンガスがファンには耳馴染みのリフを弾きはじめる。“Thunderstruck”だ。ブライアンが一緒に「thunder!」と声を上げるように観客を煽り、場内に「thunder!」の合唱が起こると、ステージのスクリーンには合唱に合わせ「落雷マーク」が映し出される。大いに盛り上がった“Thunderstruck”の後、ブライアンから「新作からの曲だ。“Black Ice”」というふうに曲紹介があり、“Black Ice”(邦題は“悪魔の氷”)がプレイされた。
 「ダーティ・ウーマンについての曲だ」とブライアンから曲紹介があり、“The Jack”へ。この曲では、コンサート・スタッフ(シューティング班)のメガネにかなった会場のカワユい女性客の顔が次々と映し出される。ブライアンの煽りもあり、場内「jack! jack! jack!〜」の大合唱となった。この曲の途中、アンガスがギターを下ろす。これからいったい何が起こるか気付いた一部ファンからは歓声が上がる。アンガスがブレザーを脱ぎ、脱いだブレザーをブンブン振り廻し、放り投げるとみせかけて、そっと床に置いた(苦笑)。恒例のアンガスのストリップの始まりだ。外したネクタイで、風呂場でタオルでお尻を洗うかのように自分のお尻をひとこすり・ふたこすりし、場内の笑いを誘った後、Yシャツを脱ぎ、上半身裸となったアンガス、仕上げとして、半ズボンを下ろして、AC/DCロゴの入ったパンツをみせた。上半身裸の状態でローディーからギターを渡されたアンガス、“The Jack”の続きを弾く。曲が終わると、いつの間にか天井からゆっくりとAC/DCロゴ入りの鐘が降りて来る。鐘の登場をみて、大歓声を上げる観客たち。鐘が適当なところまで降りて来るのを見計らってブライアンが駆け寄り、鐘から垂れ下がるロープに飛び付いて鐘を鳴らす。ゴーーーン! そこにアンガスが奏でるギター・フレーズが絡みつき、“Hells Bells”(邦題は“地獄の鐘の音”)へ。代表曲の登場に場内大興奮。曲中、皆に気付かれないように鐘が少しずつ天井に向って上がってった(苦笑)。“Hells Bells”の興奮が醒めやらぬうちに、“Shoot To Thrill”(邦題は“スリルに一撃”)へ。この曲では、タバコをくわえながらドラムを叩いてたフィル。タバコに火が付いてたかどうかは、未確認(苦笑)。
 ブライアンから「song from last Album」との曲紹介があり、“War Machine”(邦題は“戦闘マシーン”)へ。“Give The Dog A Bone”(邦題は“ロックン・ロール・ハリケーン”)に似たリフを持つこの曲の演奏中のスクリーンには、AC/DCのロゴが入った戦闘機や、戦車などが登場する軍隊のアニメが登場。ところどころメンバーの写真がコラージュされており、最後には何故かAC/DCロゴの帆船も登場(苦笑)。曲が終わるタイミングで、物騒なヤツラの全てを閉じ込めるかのように上からAC/DCの鐘が降って来て、アニメの映像はお終い。「アリガト!」とブライアンが日本語で観客に御礼を言い、次の曲“High Voltage”へ。続く“You Shook Me All Night Long”(邦題は“狂った夜”)では、サビの♪you shook me all〜night〜long〜の部分になると、2枚のスクリーンの女性の全身像の形のシャドウが映し出され、艶かしく腰を振る。次の曲は“T. N. T.”で、(ブライアンの煽りもあって)イントロから「オイ! オイ!」の大合唱が場内に沸き起こる。ブライアンが♪T. N. T.〜と歌う度、ステージでは火柱がどーんと上がり、観客は「オイ! オイ!」の大合唱を巻き起こす。場内大興奮の“T. N. T.”に続くは“Whole Lotta Rosie”。この曲では、金髪でブラジャーとパンティーとガーターベルトと網タイツ姿の豊満な女性の形をした巨大なバルーン(以下、ロジーちゃん)が登場! ライヴ開演時から「脱線」したままの機関車にまたがり、バルーン内部への送風の関係か、一定のリズムでゆらゆら揺れてた。ロジーちゃんの登場に観客がアッケにとられてるうちに曲は終わる。いつの間にかロジーちゃんも脱線機関車も消え、2つあったスクリーンが1つにまとまってる。スクリーンにはフィルの姿が映し出され、彼らにしては珍しくフィルの叩き出すドラムが合図となって曲が始まったのは“Let There Be Rock”(邦題は“ロック魂”)。ロックンロールの歴史を振り返る歌詞の内容に合わせてか、この曲演奏中、1つになったスクリーンにはAC/DCの歴代アルバムのアートワークが次々と映し出される。曲が終盤になると、キャットウォーク先端部にあった円形のリフトに乗ったアンガス。リフトはアンガスを乗せたまま上昇し、高いところからギターを弾きまくるアンガス。同時にキャットウォーク先端部からは紙吹雪が吹き出し始める。半端じゃない量の紙吹雪が舞うと、リフトは元の位置まで降り、ステージに戻ったアンガス、今度はフィルのドラムキットの後ろの台(スクリーンの前)に廻る。アンガスのギターと観客の掛け声による掛け合いを何度もやり、満足し切ってからステージに降り、曲の続きを演奏。曲が終わると、AC/DCの5人は一旦ステージを去った。
 場内にアンコール要求のクラップが起こると、5分くらいでT字型のステージの交叉点あたりからスモークが立ち上る。そこの部分がせり出し装置になってるようで、ギターを構えたアンガスが床下から登場。アンガスが弾き出したフレーズは有名なロック・クラシックのイントロ。“Highway To Hell”(邦題“地獄のハイウェイ”)だ。いつの間にか残りのメンバーもスタンバって演奏に加わる。ファンによる♪high〜way〜to hell〜の合唱が会場にこだまし、曲が終わると、ステージの右と左に3門ずつ大砲が出現。演奏される曲は、勿論“For Those About To Rock (We Salute You)”(邦題は“悪魔の招待状”)だ。曲の中盤以降、ブライアンが「fire!」と叫ぶ度にドドーン!と大砲が火を吹く。曲の終わりにはドドーン!と大砲乱れ撃ちとなったところで、この日のライヴは終了。
 名曲の数々と刺激的な新曲を堪能出来て満足なライヴだったけど、『お約束』が多すぎて、「虚を突かれる」といった意味での刺激は少ない。'82年以降の彼らと時代を並走して来た身としては、もっと'82年以降の曲を聴いてみたかった。毎度のことだケド...(苦笑)。

【SET LIST】...'10.3.12 さいたまスーパーアリーナ
1. Rock N' Roll Train
2. Hell Ain't A Bad Place To Be
3. Back In Black
4. Big Jack
5. Dirty Deeds Done Dirt Cheap
6. Shot Down In Flames
7. Thunderstruck
8. Black Ice
9. The Jack
10. Hells Bells
11. Shoot To Thrill
12. War Machine
13. High Voltage
14. You Shook Me All Night Long
15. T. N. T.
16. Whole Lotta Rosie
17. Let There Be Rock

(encore)
1. Highway To Hell
2. For Those About To Rock (We Salute You)

AC/DC live @ Osakajo Hall '01.2.22

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