再結成第2弾アルバム『ブラッド/キャンディー』に伴うジャパン・ツアーを行ったザ・ボウジーズ。6月1日の東京公演に引き続き行われた6月3日の大阪公演は『FLAKE
RECORDS』主催のアコースティック・ギタポ・イヴェント『TONE FLAKES
vol.26』のメイン・アクトとしての出演。あくまでもザ・ポウジーズ名義だけど、出演は核の2人...ケン・ストリングフェロウとジョン・オウアーのみで、リズム隊の2人は不参加。ホントはやっぱりフル・バンド演奏となる東京公演のほうを観たかったけど、仕事の都合で大阪で観た。
会場の『digmeout ART &
DINER』はふだんは24時間営業のレストラン&アート・ギャラリーだそうだけど、この日はライヴハウスに模様替え。とはいっても、演奏スペースを確保し、机を片付けてイスを100脚近く置いただけ。この日のイヴェント『TONE
FLAKES
vol.26』には全部で4組のアーティストが出演することになっていた。
開演時間の19時きっかりに、この日のトップ・バッターのOLDE
WORLDEが登場。といっても、緑のTシャツを来てアコースティック・ギターを構えた兄チャン(沼田壮平)ひとりだけど(苦笑)。ひとりでギターの弾き語りで英語詞のオリジナルを2曲歌ったOLDE
WORLDE。3曲目からはバンド編成時のギタリスト・富田クンがエレキ・ギターで助っ人で入り、残りの曲は全て2人で演った。OLDE
WORLDEは全部で7曲、約30分演奏。
2組目は、清水美和子の弾き語りソロ・プロジェクト、Predawn。清涼感あふれるギタポで、ベルギーのバンドと一緒に書いた“Sky
High”など、10曲全部彼女ひとりで歌い切った。最前列の客が皆、目を閉じて彼女の聴き入ってるのが気になった様子。「写真を撮られると魂が吸い取られるって言われるけど、それってホントですね。私は今日たくさんやることがあってそんな感じです」などとボヤいたり、今回のライヴの打ち上げを鰻谷でやることなどをM.C.してた(苦笑)。個人的にはザ・ポウジーズ以外の3組のアクトのなかでは、彼女の演奏が一番好みだ。
3組目はギター兼ヴォーカル、ベース、ドラム、女性キーボードによる4人組バンド、Turntable
Films。どっかの大学の学生バンドのような雰囲気で、ギター兼ヴォーカルとベースは2人ともメガネをかけてて、くるりの岸田ふう(苦笑)。今回のようなアコースティック・ライヴでなければまた違った印象を持つんだろうけど、音楽的にはカントリー・ウェスタンっぽい要素のあるギタポに聴こえた。ギターとシールドの相性が悪く音がきちんとアンプから出ないというトラブルもあり、2曲目からはOLDE
WORLDEこと沼田君のギターを借りて演奏するハメになったギター/ヴォーカルの井上陽介。ギターじたいの値段が自分のギターの4倍もするようで、少し緊張気味だった(苦笑)。トラブルの影響か、彼らは6曲の演奏で出番が終了。この時点でもう時間は21時だ(苦笑)。
座席が100脚くらいしか準備されてなかったから観客は100人だと思ってたら、イス席の後ろには立見の観客がギッシリ。皆、ポウジーズが目当てだったんだろう、ジョンとケンの2人が登場すると歓声が上がる。スウェットパーカ姿のジョンは相変わらずデカい....(苦笑)。漫画『ゲゲゲの鬼太郎』の目玉おやじがプリントされたTシャツ(苦笑)を着用してるケンはマイクと接触するとピリピリするのをさかんに気にしてる。2人がギターを構えたところで演奏始め、ジョンが歌った曲はデビュー盤の『Failure』からの“I
May Hate You
Sometimes”。次の曲は名盤『フロスティング・オン・ザ・ビーター』からで、ケンがメイン・ヴォーカルの“Love
Letter
Boxes”。この曲はアコースィック向けで妥当な選曲...といいつつ、『アコースティック・セット』を謳ってるもののこの日の2人の機材はエレキ・ギターであり、実質「ベースとドラムが居ないだけ」である(苦笑)。
この曲を演り終えるとマイクの感電が気になるケンが、スタッフを呼びつけて感電しないようにつなぎ変えた。感電の恐れが無くなり安心したのか、ケンが英語で「新作『ブラッド/キャンディー』聴いてくれたかい?」ってな感じで観客に問う。しかし、観客の反応の鈍さにシビレを切らしたのか、今回のツアーの日本側のコーディネーターと思しきピンクの髪の女性に「『ブラッド/キャンディー』、ベスト(な)アルバムだと思うので是非聴いてみて下さい」などと通訳させた(苦笑)。新作の話題が出たところでその新作からのジョンがメイン・ヴォ−カルの“So
Caroline”。ここから数曲は新作からの曲が続くかと思いきや、次の曲は『フロスティング〜』からの“Earlier
Than
Expected”。この曲はケンがメイン。意識してやってるんだけど、ライヴではジョンがメインとなる曲とケンがメインとなる曲を交互に演ってる。勿論サブに廻るほうはヴォーカルを任せっきりにするのではなく、バック・ヴォーカルに徹する。美しいヴォーカル・ハーモニーは彼らの持ち味なんだから。ここでケンはギターを下ろし、キーボードに就く。次の曲は、『アメイジング・ディスグレイス』からの“Throwaway”で、勿論ジョンがメイン(苦笑)。この曲を演り終えても、ケンはキーボードのままで、先ほど演奏したばかりのPredawnを招き入れる。歌詞を貼った譜面台を持ってPredawnが登場。ここで披露した曲は、CDでは女性ゲスト・ヴォーカル(Lisa
Lobsinger)が参加してる新作からの曲“Licenses To
Hide”。要は、彼女の代役をPredawnにやらせたワケ。先ほどの彼女自身の出番の時に「イロイロやることがあって、魂が吸い取られたかのようになってしまった」などと話してたけど、リハーサルでも2人と一緒に歌って気疲れし過ぎたんだろう、きっと(苦笑)。大御所の2人に囲まれ緊張の面持ちで無事コーラスの役目を終えたPredawnがケンにハグされ、ジョンとも握手して譜面台を撤収して退出した。『フロスティング〜』からのジョンがメイン・ヴィーカルの“20
Questions”、メジャーからのデビュー作『ディア23』からの“Any Other
Way”...と2曲古い曲を演ると、新作からのジョンがメインの“The Glitter
Prize”。いかにもポウジーズらしい爽快なチューンで、新作のなかでも私のお気に入りの曲だ。ケンが再びギターを下ろしてキーボードに就き、英語で「日本の歴史でも大変な時期に〜」と、先の大震災についてお見舞いなどが長々と語られた。今度はピンク頭の彼女には通訳は頼まなかった(苦笑)。ケンがキーボードに就いて歌い始めたのは“For
The
Ashes”。この新作からの曲が終わってから、またもや東日本大震災がらみのM.C.を始めたケン。私の拙いヒアリング能力では殆ど理解出来なかったが、「みんなが沈んでるなか、どんな曲を演ればいいんだろうと思ってたところに、『あなたたちにはこの曲があるじゃない!』って(ピンク色の頭の)彼女が教えてくれたんだ」というようなことを話してたと思う。ピンク色の彼女が彼らに再発見させてくれた曲“Love
Comes”をここで披露。この曲は再結成第1弾で前作となる『エヴリィ・カインド・オブ・ライト』収録曲。ここまで前作からは1曲も演ってなかったため、もしかして完全無視?...と危惧してたけど、全くの杞憂だった(苦笑)。、ここで『原則』が崩れ、次もジョンがメインの曲“Flavor
Of The
Month”。名盤『フロスティング〜』からはこれで4曲目だ。この曲からはケンもギターに戻る。この曲の中盤から観客が自発的に手拍子を始めたため、ケンもジョンも手拍子に合わせて飛び跳ねておどけてみせる。次の曲はケンがメイン・ヴォーカルの“Ontario”。真の意味でのアコースティック・ライヴでは絶対に出てこないハズのパワー・ポップであり、ケンのヴォーカルも力強い。この日のライヴが実質リズム隊抜きのエレキ・セットでよかった(苦笑)。彼らの代表曲“Ontario”の後は、前作からのジョンがメインの“Convasations”。この曲が終わると、ジョンもケンも唐突にギターを下ろす。あれ、もうお終い?
「どうもありがとうございます」と、達者な発音で日本語で観客に御礼を言ったケン、そしてジョンが観客からの拍手を浴びながら舞台裏に向かい、姿が見えなくなると同時にその拍手はすぐにアンコール要求のクラップに変わった。そして拍手がクラップに変わるのを見計らうかのように、ジョンとケンがすぐに戻って来た(苦笑)。ジョンもケンも紙を2枚手にしてる。ここでケンがまだ英語で東日本大震災について語り始めた。私の拙いヒアリングでは、「たくさん友達が居る日本にこんなことがあって、みんな沈んでるけど、音楽には人をポジティヴにする力があると信じてるし、僕らが出来ることは音楽を通じて皆をポジティヴにすることなんだ。日本のために曲を書いたよ」などと語ってたような。彼らがそれぞれ手にしてた2枚の紙は新曲の歌詞のカンニングペーパーであり、ケンはそれをキーボードの上に置き、ジョンは最前列席に陣取る女性2人に持たせた。文字(歌詞)が書かれてる部分が見えるように表のほうをジョンとケンに向けて持ってろってこと(苦笑)。ケンとジョンによる日本へのメッセージ・ソングが歌われた後、もう1曲披露。まだあのキラー・チューンを演ってない。英語で「多分、次が今夜最後の曲となると思うよ」などとケンが言って、観客をみんな立ち上がらせた。ここで2人は日本側スタッフのフジ(藤?)さんと富士山を引っ掛けたようなジョーク・ソングをチョロっと歌って勿体つける。そしてようやくケンがあの歌を歌い始めた。♪I'll
call you sister〜...“Solar
Sister”だ。ケンがこの曲を歌い始めた途端、この日一番の歓声が観客の間から上がる。“Solar
Sister”がザ・ポウジーズ、ひいてはギタポ史上に残る名曲なのはアタマでは解ってたつもりだけど、こうしてファンの反応を実際にみて改めてその人気ぶりに気付かされた。“Solar
Sister”で最後に大いに盛り上がったると、ジョンもケンもギターのストラップを外し、ケンはまた達者な発音で「どうもありがとうございました」と日本語で挨拶。5年前の来日時にはギターの弦をブチブチちぎってたジョンは今回は天井から垂れ下がるフックにギターを引っかけてた。ライヴが終了した頃には22時40分くらいになってた。この後、物販で2人のサイン会があったようだけど、私は帰りの列車の時間の都合からすぐに会場を抜け出した。
アコースティック・セットとの事前情報に反して、ベ−スとドラムが居ないだけのエネルギッシュなライヴ。2人のヴォーカル・ハーモニーの妙と楽曲の良さを存分に堪能出来た。
【SET LIST】...'11.6.3 大阪・digmeout
ART & DINER
1. I May Hate You Sometimes
2. Love Letter Boxes
3. So Caroline
4. Earlier Than Expected
5. Throwaway
6. Licenses To Hide
7. 20 Questions
8. Any Other Way
9. The Glitter Prize
10. For The Ashes
11. Love Comes
12. Flavor Of The Month
13. Ontario
14. Convasations
(encore)
1. ? (新曲?)
2. ?
3. Solar Sister