File #18
KAMI
LYLE-- Blue Cinderella
カミ・ライル『ブルー・シンデレラ』
(1997年、国内盤
: ユニバーサル MVCE-24057)
1. Blue Cinderella 2. Porka Dots 3. Mr. Trouble
4. Hocus Focus 5. Worried One 6. Love Me
7. Midnight Club 8. Mr. Moon 9. Boys
10. The Grocery Song 11. September
今回紹介するのは、1997年にリリースされた女性シンガー/トランペット奏者、カミ・ライルのデビュー盤にして今のところ最後のアルバムになってる『ブルー・シンデレラ』。
このアルバムの内容に触れる前に、このアルバムがリリースされた1997年のミュージック・シーンを振り返ってみましょう。1995年にアラニス・モリセットのデビュー盤『ジャグド・リトル・ピル』という大きな爆弾が投下され、ミュージック・シーンに女性シンガー・ブームが起こります。そのブームのピークと言えるのが、1997年に始まった女性アーティストだらけの野外音楽フェスティヴァル『リリス・フェア』でしょう。1997年のアルバム『サーフィシング』で大ブレイクしたサラ・マクラクランが主宰したこの女だらけのフェスティヴァルは、北米で大成功を収め、この『リリス・フェア』に参加する/しないを問わず、この頃多くの女性アーティストがレコード契約を取り付け、デビューを果たしました。この空前ともいえる女性アーティスト・ブームに乗じてデビューを果たしたものの、それっきり音沙汰の無くなった女性アーティストって、たくさん居ます。今回取り上げるカミ・ライルも『リリス・フェア』ブームの頃にデビューを果たし、ブームが去った後には作品を全く出せないで居る典型的なアーティストかもしれません。だけど、彼女は他の『リリス』系アーティストとは明らかに一線を画す個性があったのに...。
カミ・ライルが持つ、他の女性アーティストと一線を画す個性とは、幼少の頃からトランペットをやっていた...というジャズィーなバック・グラウンドでしょう。このアルバム『ブルー・シンデレラ』は、カミの吹くトランペットをフィーチュアしたジャズィーな空気が支配しとります。もっとも、一般大衆向けの歌モノ・ポップ作品として世に出された訳ですから、真の主役はカミの歌なんだろうけど。
カミの歌声は、あのいかついルックスからは想像出来ないくらい可愛らしいハイトーン・ヴォイス。『女性版・小椋 佳
』か『女性版・クリストファー・クロス』っつうところか(苦笑)。このルックスと不釣り合いの涼しげなハイトーン・ヴォイスに、ジャズィーなサウンド。実にクール! オシャレだし、ムードづくりに最適。アルバム・ジャケットに表されてるとおりの清涼感が全体を覆ってます。何でこの続きのアルバムが出ないのか、個人的にはかなり『?』なんですけど...。やっぱりルッ(以下、禁句...苦笑)。
このアルバムでイチオシの曲は“Mr. Trouble”と、レゲエふうの“Mr.
Moon”ってところ。バラード調の“Worried
One”もイイです。いずれも、清涼感/透明感にあふれ、ジャズィーな空気も充満してます。今、気が付きましたけど、このアルバムのプロデューサーはヒュー・パジャムなんですね。ヒュー・パジャムって、スティングのソロのジャズィー路線を決定付けたプロデューサー。なるほど...納得ぅ〜...。で、そのヒューの人脈ってことでしょうか、マヌ・カッチェがドラムで参加してますね。
このアルバムをリリースした後、カミはリーダー・アルバムをリリースしてませんけど、現在はセッション・ミュージシャンとして活躍してるようです。新しいところでは、ロン・セクスミスの『ブルー・ボーイ』(2001年)や、Patty
Griffinの『1,000
Kisses』(2002年)にいずれもトランペット奏者として参加しています。トランペット奏者として需要があるのはそれはそれでイイ話だけど、あの、顔に似合わぬ(しつこい?)キュートな歌声を封印するのは勿体無い! 復活希望!!!
(2002.5.11)