いつまでもみずみずしく...
そして、優しく、軽く

 先日レコ屋に行ったら、店頭にLUSHのベスト・アルバム『チャオ!』が並んでた。ドラマーのクリスが自殺して彼女たちが解散を表明してから早いものでもう3年。最後のアルバム『ラヴライフ』が出てからももう5年も経過してる。はじめ、木曽にスキーに出掛けたくなるようなタイトルのこのCDをレコ屋の店先で見つけた時、「ミキちゃんたちが再結成して新作を出した!」と思ってしまったけど単なるベスト盤でした(苦笑)。で、結局このベスト盤は買わなかったんだけど(笑)、よくベスト・アルバムの選曲って、異義申し立てしたくなることって多いじゃないですか(笑)。ファンひとりひとりによってアーティストに対する思い入れや見方が違う以上、万人を納得させるベスト盤って有り得ないんだけど、それならいっそのこと自分で選曲してベスト盤を作ってみるか...というのが今回の企画の発端。最後のほうで、私・ヒロくんが自分自身で選曲し、曲順も指定した『ベスト盤案』を披露しています。で、この選曲にあたって市販のベスト盤『チャオ!』の収録曲は見てません。『チャオ!』の収録曲見たうえで、「アチラがこうするならオレはこうする!」といったような奇をてらった選曲はしたくないし、あくまで私のLUSHファンとしての素直な気持ちを込めた選曲してます。


『ラヴライフ』リリース時(1996年)のLUSH。
左からフィル、エマちゃん、ミキちゃん、そして今は亡きクリス。

 ハンガリー人と日本人のハーフで『ミキちゃん』の愛称で日本のファンに親しまれてた Miki Berenyi (g.、vo.) と 、『エマちゃん』が日本での愛称だった Emma Anderson (g.、vo.) がLUSHを結成したのは1988年10月、ロンドンでの出来事。Chris Acland (ds.)、Steve Rippon (b.)の2人に加え、のちにペイル・セインツでデビューするMeriel Barham (g.、vo.) が居る5人編成だったらしい。Meriel Barham はペイル・セインツ加入のためほどなくバンドを離れて、『みんながLUSHを知った時の4人』 になっている。デビュー・アルバム『スプーキー』がリリースされる直前に、ベースのスティーヴがミュージシャン廃業のため脱退。後任に元・NMEの記者だった Phillip King が加入。以後、解散までこの4人で活動してくことになる。
 LUSHの音楽について、コクトー・ツインズ・フォロワーとして語られることが多いけど、デビュー当時のLUSHってモロにコクトー・ツインズのロビン・ガスリーがプロデュースしてたから似ていてアタリマエ。お友達バンドのライドとともにシューゲイザー一派扱いされたこともあったし、マイ・ブラディ・ヴァレインタインと比較されたこともあっったね。独自の美学を持った耽美的ギターサウンドを持ったバンドでした。その頂点がコンセプチュアルな作りの2nd『スプリット』。当時、『ストリップ』と勘違いして興奮してたファンが居たなァ〜(笑)。ま、冗談はさておき、この後、ブリット・ポップ全盛の時流に乗って、万人にも分かり易いポップ・アルバム『ラヴライフ』をリリース、大胆なイメチェン謀ったつもりだったけど、この成果がハッキリ現れる前にクリスが自殺。ミキちゃんもエマちゃんも、死の蔭を引きずるバンドには居たくなくなったのだろう、1998年2月23日付けで解散が発表された...。
 私がLUSHのことを知ったのは1990年のこと。音楽雑誌『rockin' on』の1990年8月号のグラビア・ページで見たのが最初だったかなあ。当時から熱心なRUSHファンだった私にとって、日本語で表記すると同じく「ラッシュ」になる彼女たちに興味を抱くのは当然の流れで(笑)、アルバム・デビュー前のEPコンピレーション・アルバム『ガラ』からリアルタイムで聴いてます(笑)。 「RUSHと間違ってLUSH買ってLUSHにハマった」とよく私は言ったりしますが、これは100%ジョークです(笑)。最初からRUSHとLUSHの区別はついてましたよ(笑)。他のアルバムもリリース早々買って聴いてます(笑)。ライヴも1回だけ観てますよ。
1996年の最後の来日。9月17日の新宿リキッドルーム。このちょうど1ヶ月後の10月17日にクリスが首吊ったっだけど...。まさかこんなことになるとは思わなかったし、クリスに自殺をうかがわせる様子も見受けられなかった。女性陣2名の蔭でなかなか陽の当たることのないクリスのドラミングを実際に観て、なかなかやるじゃないか!と思ったものでした。ちなみに、クリスは私がライヴ観たミュージシャンの『死亡第1号』です。『死亡第2号』はモーフィーンのマーク・サンドマン。そんなことはどうでもいいか(苦笑)。
 そこで
LUSHの作品紹介すると...。

Gala

(import : 4AD/Reprise 9 26463-2)
1. Sweetness And Light 2. Sunbathing 3. Breeze
4. De-Luxe 5. Leaves Me Cold 6. Downer
7. Thoughtforms 8. Babytalks 9. .Thoughtforms
10. Scarlet
 11. Bitter 12. Second Sight 13. Etheriel
14. Hey Hey Helen 15. Scarlet
 1990年リリースのコンピレーション・アルバム。1989年のデビューE.P.『Scar』(8.〜13.)、E.P.『Mad Love』(4.〜7.)、E.P.『Sweetness And Light』(1.〜3.)の3枚を集めたもの。“Hey Hey Helen”はABBAのカヴァー。もうこの時点でギターノイズに霞がかったヴォーカルが乗るという耽美的なLUSHサウンドの方向性は定まってた。“Sweetness And Light”、“De-Luxe”、“Downer”の3曲はライヴでは欠かせない定番曲。

Spooky

(import : 4AD/Reprise 9 26798-2)
1. Stray 2. Nothing Natural 3. Tiny Smiles 4. Covert
5. Ocean 6. For Love 7. Superblast ! 8. Untogether
9. Fantasy 10. Take 11. Laura 12. Monochrome
 コクトー・ツインズのロビン・ガスリー・プロデュースの1992年リリースの1stアルバム。コクトー・ツインズ・フォロワー的な耽美主義サウンドが貫かれており、LUSHとしてのサウンドはここで一旦完成をみる。

Split

(import : 4AD/Reprise 9 45578-2)
1. Light From A Dead Star 2. Kiss Chase 3. Blackout
4. Hypocrite 5. Lovelife 6. Desire Lines
7. The Invisible Man 8. Undertow 9. Never-Never
10. Lit Up 11. Starlust 12. When I Die
 1994年にリリースされた2nd。前作リリース後、あの『ロラパルーザ』に参加。全米をツアーして廻ったお蔭で、この手の英国のバンドとしては異例の『Billboard』アルバム・チャートにランクインを果たす。アメリカでは『Dream Pop』と呼ばれた彼女たちのサウンドはこのアルバムでさらに深化。ある意味コンセプト・アルバム的な仕上がりで、アルバム通して聴くと一本スジが通ってるのが分かる。このアルバムより歌詞カードを付け始めたせいか、それまで霞がかってたヴォーカルが、明確な輪郭を持つようになった。ちなみに、次作タイトル曲の“Lovelife”はこちらに収録(笑)。

Lovelife

(import : 4AD/Reprise 9 46170-2)
1. Ladykillers 2. Heavenly Nobodies 3. 500
4. I've Been Here Before 5. Papasan 6. Single Girl
7. Ciao ! 8. Tralala 9. Last Light 10. Runaway
11. The Childcatcher 12. Olympia
 1995年の英国ブリット・ポップ全盛の翌'96年にリリースされた3rd。『Billboard』アルバム・チャートで最高189位!を記録したヒット・アルバム(笑)。ブリット・ポップ・ブームの余波大きく、さらにヴォーカルが明確になったポップ・アルバム。ブリット・ポップ全盛の立役者、パルプのジャーヴィス・コッカーが“Ciao !”でゲスト・ヴォーカルで参加。初心者には一番入り易いかもしれないけど、LUSHサウンドの本質からは一番遠い作品。なお、結果的にこれがラスト・アルバムになった。

 みんなもう日本盤廃盤なのは悲しいなァ〜...。
 LUSHのアルバムをどれか1つ買うとするなら...難しいね。最高傑作は『スプリット』だと思ってるんだけど、コンセプチュアルな作りなため初心者には取っ付きにくいかもしれない。ポップな『ラヴライフ』がシロウトには聴き易いんだけど、これを聴いてLUSHを知ったつもりになってもらうのも困るので(笑)。フィル・コリンズがヴォーカル時代のジェネシス聴いてジェネシス知ったつもりになってもらったりするのが困るのと一緒(笑)。『ガラ』もE.P.の寄せ集めってことで難アリ。ってことで、消去法でオススメは『スプーキー』になりました(笑)。
 ここで、ようやく本題の
私・ヒロくんが自分自身で選曲し、曲順も指定した『ベスト盤案』、仮に『Sweetness And Light』とでもしとくワ(笑)。
 この『ベスト盤案』を組むのに次の条件を付けました。
1. 全部で78分以内(CDの収録時間内)に収める。
2. 同じアルバムからの曲が並ばないように、完全シャッフルした曲順にする。
 その結果、こんな『ベスト盤案』が出来ました。

『Sweetness And Light〜Hiro-kun's selection』(total time : 77' 25'')
1. Sweetness And Light (5' 17'')...from AL『Gala』
 LUSHのアルバムのオープニングっていうと、『ガラ』のアタマを飾るこの曲のイメージが強い。私の地元・富山のローカル局KNBのニュースのオープニング・テーマとしても使われてる。邦題は“優しさと軽さ”。
2. Heavenly Nobodies (2' 59'')...from AL『Lovelife』
 私が観た'96年のライヴのオープニング曲として思い入れ深い。
3. Lovelife (3' 56'')...from AL『Split』
 
コンセプチュアルな『スプリット』のなかにあって、ポップなメジャー進行の曲。次作『ラヴライフ』への布石になった?(笑)
4. Covert (3' 34'')...from AL『Spooky』
 『スプーキー』のアルバムのアートワークに致った曲だと思う。雨降りのイメージ。
5. De-Luxe
(3' 27'')...from AL『Gala』
 よくカウントしてないんだけど(←しろよ!...笑)、RUSH的(笑)変拍子の曲じゃない? ライヴの定番。
6. For Love
(3' 29'')...from AL『Spooky』
 
『スプーキー』からのシングル曲で、'96年のライヴで『スプーキー』から唯一披露されてた。
7. Leaves Me Cold
(2' 55'')...from AL『Gala』
 日本人の耳には、この曲の歌い出しは近藤マッチ(ショーケンでもいいケド...笑)の“愚か者”に聴こえるハズだ!(笑)。♪お〜ろ〜か〜もの〜よ〜(笑)。
8. 500 (Shake Baby Shake)
(3' 29'')...from AL『Lovelife』
 
これゾ、LUSHで一番ポップな楽曲。『ラヴライフ』からの3rdシングル。
9. Superblust !
(4' 07'')...from AL『Spooky』
 “Downer”(『ガラ』収録)も候補だったんだけど、同じような曲は2曲も要らない!ってことで迷ったんだけど、『スプーキー』からのシングル曲だったし(笑)こちらを残しました。だって、ウリふたつなんだモン、この2曲(笑)。
10. Single Girl
(2' 35'')...from AL『Lovelife』
 『ラヴライフ』からの1stカット。「シングル・ガールなんてイヤだァ〜」という歌い出しで始まり、「あのひとの身のまわりの世話するの、めんどくさい。やっぱ、シングル・ガールのままでいいや」というオチで終わる曲。それが痛快(笑)。
11. Light From A Dead Star
(3' 16'')...from AL『Split』
 ええっと...この選曲をするにあたり、他の19曲選んだところで時間を計算したら74分だったので、この曲加えました(笑)。名盤『スプリット』のアタマを飾る曲。
12. Untogether (3' 33'')...from AL『Spooky』
 
『スプーキー』のなかで一番好きだった曲。これこそ『Dream Pop』!というような浮遊感アリ。
13. Ladykillers (3' 13'')...from AL『Lovelife』
 ミキちゃんがファルセットじゃなくて地声で歌った!って話題になった曲。世の中のオトコたちへの憎悪ムキ出し?(笑) 『ラヴライフ』からの2ndシングル。
14. Never-Never (8' 04'')...from AL『Split』
 ベスト盤というとどうしてもコンパクトな楽曲を集めがちになるけど、コダワリの選曲として名作『スプリット』の中盤の要の大作を選びました。
15. Ciao !
(3' 31'')...from AL『Lovelife』
 ブリット・ポップ全盛の頃の時のひと、パルプのジャーヴィス・コッカーとミキちゃんのデュエットが聴ける。「乾かんじゃ、そりゃ!」とか「分からねェよ!」といった『そらみみ』が楽しめます(笑)。
16. Ocean
(4' 49'')...from AL『Spooky』
 クリスの自殺を知った時に何故か聴きたくなった曲。イントロがドラム・フレーズだからかな...? 邦題は“海”。ひとは死んだら海に還るのか?
17. Etheriel
(3' 23'')...from AL『Gala』
 『ガラ』収録のこの曲がLUSHにハマるキッカケだった。絶対に落とせない!
18. Kiss Chase (3' 17'')...from AL『Split』
 もし、LUSHの曲を1曲だけ選べって言われたら、この曲を選びます。それだけの名曲で、この曲順はこの曲が効果的に聴こえるように並べたつもり。
19. Scarlet
(3' 26'')...from AL『Gala』
 
『ガラ』に都合2ヴァージョン収録されてる曲。『ガラ』の10曲目のバージョンでお願いします(笑)。
20. Monochrome
(5' 05'')...from AL『Spooky』
 LUSHのアルバムのエンディングっていうと、『スプーキー』を締めくくったこの曲のイメージが強い。

 以上が私のLUSHのベスト盤試案でした。実際にこの曲順に並べて聴いてみましたよ。good!(笑)。
 『ガラ』から5曲、1stから6曲、2ndから4曲、3rdから5曲。2nd『スプリット』を名作呼ばわりしてる割に曲を選んでないのは、このアルバムはトータルで聴いてナンボ!という気があるから。
 惜しくも外した曲はいろいろあるケド(笑)。もしCDの容量増えて1曲追加できるなら、ABBAのカヴァー“Hey Hey Helen”選びます(笑)。
 この選曲するため、LUSHのアルバム改めて聴き直したところ、どれもイイ曲ばかりで「オレってホントにLUSH好きだったんだなァ〜」と再確認した次第。もし、クリスが死ななかったら、今もバンドがあったハズ。どんな音楽演ってたのかなァ〜? いや、やめよう...。
 ということで、私・ヒロくんが自分自身で選曲・曲順指定した『ベスト盤案』が決まったから、『チャオ!』の収録曲見ようかね(笑)。

Ciao ! 1989-1996

(国内盤 : ロック・レコード RCCY-1105)
1. Ladykillers 2. Single Girl 3. Ciao !
4. 500 (Shake Baby Shake) 5.Light From A Dead Star
6. Love At First Sight 7.Hypocrite 8.Desire Lines
9. Lovelife 10. When I Die 11. Nothing Natural
12. Untogether 13. For Love 14. Monochrome
15. Deluxe 16. Sweetness And Light 17. Thoughtforms
18. Etheriel
 解散から3年余が経った2001年5月19日にリリースされたLUSHのベスト盤。亡くなったクリスへの追悼盤の意味もあるようです。
 最後のアルバム『ラヴライフ』から時代を遡る構成・曲順。で、問題の選曲ですけど、コレ、なかなかツボを心得てる選曲ですよ。嬉しいなァ〜!(笑)。私の試案と12曲もかぶってる。これならLUSH初心者にオススメ出来ますネ(笑)。個人的には“Untogether”と“Etheriel”、“Monochrome”を加えたセレクションにニヤリ。
 話は逸れるけど音楽雑誌『CROSSBEAT』01年6月号のディスク・レヴュー、なんだありゃ!?(怒)

(2001.5.30)

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