北ア・白馬岳

2002.8.31〜9.1(1泊2日)

 去年、登山しに登山口の猿倉まで行ったにもかかわらず、大雨のため登山中止を余儀なくされた白馬岳へ登って来た。要は去年のリヴェンジである。8月最後の土曜日ともなると、夏山シーズンも終わり。JR白馬駅から猿倉までのバスも間引き運転になっている。富山から北陸線と大糸線を乗り継いで10時前には白馬駅に着いてたというのに、11:40までバスの便が無い。そのため猿倉着は12時半前になってしまう。フツウ、猿倉から白馬鑓温泉(以下、鑓温泉)まで1日で行くのは余裕シャクシャクなハズだけど、12時半スタートとなると話が違う。鑓温泉着は4時台や5時台になり、あんまり時間的な余裕はない。この春のダイヤ改正で大糸線のダイヤが間引かれた影響は大きく、何度も引き合いに出す話?で恐縮だけど、高校時代に山岳部の合宿で、朝に富山を電車で出て、その日のうちに大雪渓を登って村営頂上宿舎に到着しテント泊したことがあったんだけど、今やこれは実現不可能かもしれない。
 もうシーズンを過ぎ、時間的にも半端なためか乗客が3〜4人しか居ないバスに乗り、猿倉へ。猿倉からはわずかに山道を登り、すぐに砂防用林道に出る。この時間だと、下山組と多くすれ違うけど、大雪渓からへのコースを分けて鑓温泉へのコースに入ってしまうと、人影はめっきり少なくなる。猿倉からの道は緩〜い登り。「水芭蕉平」や「長走沢接近点」などのポイントを過ぎ、1時間歩いたところで休憩。やがて道は沢に沿っていくようになる。沢から離れ、小日向ノコルを乗り越すと、ザレ場のアップダウンの激しい道になる。途中、「雷岩」という巨岩で2回目の休憩。なおも登った分をそのまま下り返す感じのアップダウンの激しい道を行く。水量豊富な杓子沢を木橋で渡る。季節が早いと雪渓で埋もれてるそうだけど、もう山は秋なので、雪渓は消えていた。「サンジロ」の標識を過ぎると、パッと開けたガレ場に出る。ここで3回目の休憩。少し登ると道が湯ノ入沢に沿うようになり、後立山連峰(旧・大町営林署管内)でよく見る黄色い標識が立っている。「鑓温泉下」 ここまで来ると、鑓温泉小屋の建物が見える。が、建物が見えてるというのに、歩けども歩けどもなかなか着かない...。鑓温泉のキャンプ指定地に着いたのは16:38。登山道のすぐ脇を湯が流れてる。時間が時間だけに、テントを張るのに適した場所はもう先客に占拠されていて、登山道脇か、ずっと沢よりの奥地しか空いてないので、登山道脇の空きスペースにテントを張る。この鑓温泉の露天風呂は登山道から丸見え。露天風呂に居るオッサンたちがフリチンしてんのも丸見えです...。テントを張る前に鑓温泉小屋でテントの受け付けをしたら、テント場料の他に温泉の入浴料も取られた。テントだけやりたくて、温泉に入る気が無いひとはあらかじめそのように主張しておきましょう!(笑) もっとも、この標高2,000 m を超える場所にある温泉まで来ておきながら、湯に入らずに済ますひとも居ないだろうけど。テントを設営し、夕食済ませてから私もこの露天風呂に入ってみましたが、外から見られないように努力しました(笑)。ちなみにこの外から丸見えの露天風呂、夜8時から9時の間は女性専用になるんですけど、7時にはもう寝てしまったから、露天風呂入ってる女性が居たかどうかは知りません(ちなみに、女性専用の内湯もある)。
 翌9月1日は朝、3時半くらいに起床。この日の行程は長いので、なるべく早く出発したかったんだけど、若干寝坊気味...。この日の日程は、鑓温泉から白馬岳を越え蓮華温泉までのコースタイム10時間というキツいコース。10時間歩行だけでもキツいというのに、蓮華温泉からのバスの最終便が16時発なので、このバスに間に合うように歩かなきゃいけない。なんだかんだで鑓温泉を朝5時半に出発したから、バスが出る16時に間に合うためには、休憩時間を含まないコースタイムが10時間のところを10時間半で歩くことになる。休憩時間がさらに加わることを考慮したら、踏破不可能だろう、フツウ。だけど、鑓温泉から主稜線上までの登りのコースタイムが「3時間半」やら「4時間」っつうのは、鑓温泉と主稜線の標高差(約700 m)を考えたら明らかに時間が掛かり過ぎ。「300 m/1時間」登れるひとなら2時間半で主稜線まで行けるハズ。私は「300 m/1時間」登れる自信があったから、この鑓温泉から主稜線上までの登りでかなりの『貯金』が出来る算段をしてた。勝算あるからこそ、この一見無謀そうな山旅にトライしたんだよ〜。
 鑓温泉からしばらくは沢沿いの道を行く。ハシゴやら鎖、ロープが設置された岩場もあり、残雪があった場合、厄介そうなところが多い。やがて沢沿いを離れてパァーっと開けたところに出る。大出原だ。大出原から先の登山道は、電光型にジグザグに切られたザレ場の道に徐々に変わっていく。鑓温泉から1時間登ったところで小休止。谷を挟んだ向こう側(南側)に見える岩峰(・2,518 m)がよく見える。再び歩き出すといつの間にか、岩峰(・2,518 m)が自分の歩いている位置より下にみえる。なおも歩いていくと、やがて、頭上から人の話し声が聞こえてきた。恐らく、朝に天狗山荘を出発した登山者が鑓温泉へと下山してるんだろう。その下山組とすれ違ってから、しばらく登ると、ひょっこり稜線上に出た。鑓温泉から2時間も歩かないうちに長野・富山の県境をなす稜線にたどり着きました〜♪。この時点で(コースタイムに対する)「貯金」が1時間30分出来たっと。
 この稜線到達点(鑓温泉分岐)で休憩後、縦走路を北に取る。この日の天気は快晴で、夏山(この日から9月だけど)とは思えないほど視界が良い。黒部峡谷を挟んだ対岸の立山連峰や毛勝三山、さらにその先の富山湾や能登半島まで見通せたんだから...。南側は鹿島槍ヶ岳から槍ヶ岳、穂高岳方面まで丸見え。それらの景色を楽しみながら最初のピーク・鑓ヶ岳の登りにかかる。縦走路からほんの1〜2分外れたところにある鑓ヶ岳頂上には8:16に到着。頂上では多くの登山者が休憩してた。


鑓ヶ岳頂上から見た白馬岳頂上。手前右は杓子岳

 鑓ヶ岳頂上からは、これから向かう白馬岳の非対称山稜がよ〜く見えた。登山道がどこを通ってるのかも、一目瞭然。


鑓ヶ岳頂上から北アルプス南部を望む。双耳峰は鹿島槍。奥に穂高や槍も見えてます

 頂上から南側を望むと、双耳峰の鹿島槍ヶ岳がよく見える。鹿島槍よりも手前のハズの五竜や唐松岳がちっぽけに見えるほど、その存在は大きい。ず〜っと遠くに穂高連峰や槍ヶ岳も見える。この鑓ヶ岳頂上を辞し、下りにかかる。杓子岳の頂上は縦走路は通っていない。時間との競争もあり、杓子岳の頂上は踏まずに通過。それでも結構な数の登山者が杓子岳の頂上を踏みに行ってるのが遠めに見える人影で分かる。杓子岳から下って、丸山(・2,768 m)への登りにかかったところで、休憩。この丸山への登りから白馬岳頂上までが一番苦しかった。丸山頂上(・2,768 m)からすぐに小谷村営頂上宿舎の脇を通る。高校時代、そして8年前に私がテント張った思い出の場(笑)のテン場にはテントはなし。もう10時だからみんな出払ってて当然か。白馬岳登山のメイン・ルートである大雪渓からのルートを合わせ、富山県側からの清水岳ルート(マイナールートなので、富山県民でも歩いてるひとは少ない。私も行ったことはない)を合わせると登山者の数が極端に増え、登山道も広くなる(道幅3 m くらい)。夏山シーズンももう終わりだから、ボランティアの学生たち(もしかして、ウチの大学の後輩???)が植生調査や登山道改修をしてる。ホントは一気に白馬岳頂上まで登ろうかと思ったんだけど、キツくなってきたので、「もう一息」と分かっていながら白馬山荘で休憩。登山道を挟んで南側の建物の喫茶店?になってるところに缶ジュースの自販機があったから、ここでコーラ買って休憩。夏山シーズンももう終わりなので、一部の棟の改築(改修)工事に入ってました。白馬山荘を出発し、松沢貞逸碑の前を通り、10:46に白馬岳頂上に到着。


白馬岳頂上から見た穂高・槍連峰から立山に至るまでの山なみ
真ン中に見えるのは、黒部湖(黒部ダム)の湖水

 白馬岳の頂上には大パーティーがちょうど休憩中で、「こんなとこから黒部ダムのダム湖が見える〜!!!」などと大ハシャギ。私が頂上でパインアップル缶を開けていると、その大パーティーが記念撮影するようで「食事中すみませんけど、シャッター押してもらえますかぁ〜?」と言われたので、シャッターを押してあげた。「黒部ダムのダム湖も入れて下さい」...。
 この白馬岳頂上からこの日のゴールにあたる蓮華温泉までのコースタイムは4時間。16時に蓮華温泉に下りるまでの持ち時間は残り5時間。まだ余裕アリ。もしも、余裕がないようなら、大雪渓を下りて猿倉に戻るのが一番早い(最終バス便が出るのも早い)ケド、この調子なら時間までに蓮華温泉に下りれるとの判断で、予定通り蓮華温泉へのコースを取る。三国境への道を歩いてると高校時代の夏合宿を思い出すなぁ〜。雪倉岳や朝日岳、足元に光る長池を見ながら下ると、長野・富山・新潟の三県の境に当たる三国境の分岐に到着、白馬大池方面の分岐に入る。ここで富山県とはお別れ。登山道は長野・新潟の県境の稜線を往く。白馬岳から三国境への下山途中からガスが上り始め、小蓮華山への上り(実際には細かいピークが幾つもあってアップダウンが激しい)にかかるとどんどん周りはガス(霧)に包まれ、新潟県の最高峰である小蓮華山の頂上に着いた頃には展望ゼロになってしまった。小蓮華山の頂上で10分休んだ後、白馬大池へ向かって下る。小蓮華山の頂上から離れるにしたがいガスが切れて来て、展望が開けてくる。どうやら、小蓮華山頂上付近だけがガスの通り道になっていたようだ。自分の歩いてる登山道の先に高原湖である白馬大池が見える。展望よい道を下り、白馬大池に13:13到着。


白馬大池から小蓮華山への稜線をのぞむ

 白馬大池から蓮華温泉までのコースタイムは1時間50分〜2時間てとこが相場。蓮華温泉からのバスをキャッチするための残り持ち時間は2時間半だから、よほどのアクシデントが無い限り、余裕でバスに間に合う。もしもバスに間に合わないようなら、栂池方面へと下りることも考えていたけど、それはまったくの杞憂になった。余裕が出来たところで、白馬大池山荘でポカリスエットを買って飲む。白馬大池の水は飲用に不適のようで、白馬大池山荘では飲用水に限りがあるようだった。まだ時間が早いせいか、小屋の前のキャンプ場はテントは1張のみ。白馬大池山荘で10分休んでから、蓮華温泉への最後の下りにかかる。大きめの石がゴロゴロしてて歩きにくい道を10分くらい下ると、蓮華温泉から登って来たどこかの大学山岳部らしきパーティーが休憩中。恐らく、この日は白馬大池で泊まりだろう。「あと少しで白馬大池ですよ」って言ってあげようかと思ったけど、登りだと30分はかかりそうだから、声をかけるのはヤメた(笑)。白馬大池から50分の下りで、天狗ノ庭の標識のあるところに出る。天気は晴れで、西日が眩しい。「山の中に、こんな庭園みたいなところがあるなんて」と評判の場所らしいけど、直射日光を遮るものが無く暑い。単なる林のなかのほうが日陰があるから歩く者にとってはありがたいかな(苦笑)。天狗ノ庭を過ぎると道は樹林帯の中を往く。天狗ノ庭を過ぎて10分のところで休憩してから、なおも下ると、やがて木々の隙間から蓮華温泉ロッジの建物が見え始める。だけど、登山道は緩く長くつづら折りに付けられているので、なかなか蓮華温泉が近付かない。沢の水が流れてる「水場」(鑓温泉付近以来の水場らしい水場だ!)で喉をうるおした後、ぐんぐん下ると、ひょっこり蓮華温泉の外湯(露天風呂)『黄金湯』への分岐に出た。時計みたら15:27。バスの時間まで30分も余裕があったから、この『黄金湯』に入りました。蓮華温泉の外湯(露天風呂)はみんな混浴で、脱衣場も無い。原始的な露天風呂。先客は男性登山者ひとり。話を訊くと、蓮華温泉から朝日岳、雪倉岳を経て白馬大池から蓮華温泉に降りる周回コースを歩いたとのこと。私が「鑓温泉から来た」と言うと、「鑓温泉から猿倉への下り、あれはヒドいねぇ。行けども行けども(猿倉に)着かない」という話になった(笑)。今回私は猿倉から鑓温泉へ登ったワケだけど、確かにあのコースを下ると「行けども行けども麓に着かない」印象を持つかも。途中1時間くらい、登りと下りの差し引きがゼロになる区間(小日向ノコル─杓子沢間)があるから。『黄金湯』に入ってると、1組の夫婦がやって来て、この混浴の露天風呂に入る。「夫婦」というからには、女性も入ってきたわけだけど....こーゆー場合には、男のほうが目の遣り場に困るね(苦笑)。
 『黄金湯』から5分の歩きで、蓮華温泉ロッジに到着。時間は15:52。ロッジから大駐車場に出て、駐車場の端にあるバス停へ。平岩・糸魚川方面への16:00発のバスに無事に乗り込んだ。
 鑓温泉から稜線到達点までの標高差700 m コースタイム3時間半(一説には、4時間)のところを2時間足らずで通過して出来た『貯金』が最後までモノをいって、予定どおり歩き通せました。
 余談だけど、この9月1日はフェーン現象のお蔭で、日本海側の各観測点で異常なまでの高温を記録した日。長岡では観測史上最高気温を記録。富山でもこの夏一番の暑さを記録。下界はもの凄く暑かったようですけど、山の上ではさほど暑さは感じずに居ました。展望が良かったことと、この日の異常高温とに因果関係があるのかないのかも定かではありません(笑)。 

【行動記録】2002年8月31日(土)〜9月1日(日) 1泊2日
8月31日(土)
猿倉バス停1229─水芭蕉平1307─長走沢接近点1322─1329//1344─中山沢1357─
─小日向ノコル1437─1444雷岩1455─サンジロ1517─杓子沢1541─1555//1605─
─鑓温泉下1620─1638鑓温泉キャンプ指定地

9月1日(日)
鑓温泉531─631//641─735稜線到達点745─816鑓ヶ岳頂上826─926//936─
─丸山頂上1000─村営頂上宿舎裏(猿倉分岐)1007─1021白馬山荘1031─1046白馬岳頂上
白馬岳頂上1106─三国境1129─1202小蓮華山頂上1212─1313白馬大池山荘1323─
─天狗ノ庭1412─1423//1433─水場1510─1527黄金湯1547─蓮華温泉ロッジ1552─
─1554蓮華温泉バス停

【1:25,000地形図】 白馬町、白馬岳

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