八ヶ岳・権現岳―編笠山
2003.11.8〜9(1泊2日)

 

 以前からの懸案だった八ヶ岳の編笠山へ登りに行って来た。前々から登ってみたいと思ってたけど、機会がなかなか無いまま今年ももう無雪期登山が厳しい季節になってしまった。だけど、11月2日に中央アルプス前衛の南木曽岳に登った際、中央アルプス主稜に雪が全く無いのを見て、「まだ中央アルプス、南アルプス、八ヶ岳方面は雪が積もってないゾ! これなら編笠山にも挑戦出来る!」と確信した私、その次の週末に当たる11月8日〜9日の土・日に、編笠山へ登りに行った。
 11月8日(土)の朝3時にクルマで富山を出発。国道158号線の安房トンネルを通らず、旧道の安房峠を越える。例年ならこの時期、冬期閉鎖になるのに、今年はまだ通行可能。今年は冬の訪れが遅いようだ。天気予報によれば、8日は晴れるけど、翌9日は曇りのち雨。したがって9日は雨が降る前に下山出来るかどうかが最大のポイント。今の時期、一番恐ろしいのは気象遭難だから。松本市内まで移動しておいて、7時に最新天気予報をチェックすると、「8日は晴れ、9日は曇り」というふうに変わってた。9日に雨が降らないなら、登山決行!...ってことで、八ヶ岳の麓の町・富士見を目指す。が、「晴れ」との予報と裏腹に、松本付近はもの凄い霧に包まれてる。ホントに晴れるのか?と不安になりながら、八ヶ岳の登山拠点・富士見を目指してクルマを転がす。
 今回の登山、家を出た時点では、道の駅蔦木宿→信濃境駅→(鉄道移動)→小淵沢駅→観音平→編笠山→青年小屋(テント泊)→西岳→道の駅蔦木宿...という計画を立ててた。だけど、蔦木宿から信濃境駅まで、さらに、小淵沢駅から観音平までの車道歩きがアホらしい...っつうか、現地到着が遅くて歩き切れないので、富士見高原のテキトーなところにクルマを駐めてから西岳に登る逆コース(富士見高原→西岳→青年小屋→編笠山→富士見高原)を歩けないか...と、コース変更。国道20号線の道の駅蔦木宿手前のJR信濃境駅入口から、富士見高原へ入る。国道20号線からJR信濃境駅へはヘアピンカーヴを登ってく。ここを歩いて登ったらさぞかしアホらしいだろうなぁ...と思いつつ、クルマを転がしてると、やがて富士見高原へ出た。テキトーな駐車余地を求め富士見高原をクルマでウロつくも、富士見高原はクルマを置いていこうものならレッカー移動されたり、「1万円申し受けます」と言われたりしそうな商業的なリゾート地。クルマを置いとくところなどありゃしない。ビンボーな山ヤなど追い払われそうだ。テキトーな駐車地を求めてウロウロする私のクルマはいつしか県境を越え、小淵沢へ。そして、いつしか観音平への車道に入っていった(笑)。観音平には広い駐車場があって、多くのハイカーのクルマが駐まってる。観音平駐車場にクルマを駐めて考えた。「この観音平駐車場を起点に、観音平→編笠山→青年小屋(テント泊)→権現岳→観音平...というふうに周回すりゃいいじゃん! 待てよ、明日のほうが天気が悪いから、観音平→権現岳→青年小屋(テント泊)→編笠山→観音平...と逆コースにしたほうがベターだ」 こういう経緯で、家を出た時に家族に渡してきたメモ書きとは全く別のコースを歩くことになった(笑)。
 観音平駐車場を出発する前に、クルマで登って来た車道を少し戻り、延命水を汲む。水量に限りがあるため水は垂れ流しにはなっていなくて、利用者はコックをひねってタンクに貯まった水を出す仕組みになってる。水を補給してから観音平駐車場を9:58、出発。観音平から東側に伸びる三味線滝への遊歩道に入る。すぐに家族連れのハイカーとすれ違った。観音平からは古杣川の谷へ一旦降りて、尾根へと登り返す。古杣川の涸れた谷には、何故か谷沿いにコースサインがぶら下がってる。そちらのほうに入りそうになるが、地図で権現岳へのルートの入り口(小泉コース分岐)がまだ先なのを確認して、三味線滝への遊歩道を行くと、10:23
ひょっこりと小泉コース分岐に出た。ここで権現岳へのルートに入る。15分ほど登ると、延命水への分岐が現れる。観音平にある延命水と同じ名前だけど、全く違う場所(笑)。観音平にある延命水とは違い、こちらの延命水は飲用に適さぬようで「動物たちの水場になってます。飲まないように」などと書かれた看板が立ってる。観音平からいきなり下り。さらに平行道歩きが続いた後に突然、小泉コースから登りに入ったお蔭でペースメイクに失敗。いつもの1ピッチ1時間を崩し、10:42に1回目、11:10に2回目の休憩をそれぞれ10分ずつとる。オレンジ食べたり、水の補給したりした。この日は天気予報どおり晴れで、太陽の陽射しが容赦なく照りつけて暑かったせいもあるかもしれない。なにしろ、陽を遮ってくれるハズの木の葉がみんな落ちてるせいで、まともに陽を浴びてるんだもんなぁ。暑いから半袖Tシャツ姿になって、落ち葉が積もった登山道をなおも歩く。「笹すべり」の標識を過ぎ、遭難碑の脇を通り過ぎると突然、ヘリーポート(現地表記)が現れた。ヘリーポートから15分の歩きで、立派な看板がある木戸口に12:32に到着。この小泉コース、途中までは稜線を避けて風が当たらないように道が付けられてたけど、ここらあたりから稜線上の道になり、まともに強風を受けるようになる。この日は陽が射してたものの風が強かった。木戸口で休んでたら、あまりにも寒くてTシャツ姿では居られず、トレーナーを着込む。木戸口まで来れば、権現岳までの半分は登ったことになり、1ピッチで三ッ頭、さらにもう1ピッチで権現岳、あとは青年小屋への下りだ...と思うと余裕が出て来た。が、実際は1ピッチでは三ッ頭にはたどり着けず、大泉コースの合流手前でギヴ・アップ。ここで休憩してると、下山組の登山者とすれ違う。この日、小泉コースを歩いててすれ違った登山者は、4〜5名。雪がまったく無いというのに、「11月3日を過ぎたら八ヶ岳はもうダメ」という固定観念に囚われた登山者たちは、登ることを考えもしないようだ。10分の休憩ののち、歩き出すと、10分で天女山からの大泉コースと合流。さらに2分で三ッ頭頂上に13:41、到着。三ッ頭頂上からは、これから向かう権現岳が見えた。あんな鋭い頂上にこれから登るのか...。


三ッ頭頂上からみた権現岳

 古杣川の深い谷を挟んだ向こう側に、この日の宿泊地・青年小屋と編笠山が見える。


三ッ頭頂上からみた編笠山(左)と西岳(中央)

 三ッ頭から一旦、潅木の中の道を下り鞍部に降りて、権現岳に登り返す。見掛けほど怖いところは無く、意外に簡単に権現岳の頂上の基部に出た。権現小屋へもすぐの場所だ。ここから動物の角のような岩峰に登るわけだけど、鋭い岩峰に標柱を立てようがないようで、基部のほうに「山梨百名山」の標柱が立ってる。権現岳の頂上まで登ったけど、岩峰ゆえセルフタイマーでは写真の撮りようがない。トライしてみたけど、案の定、失敗。もっとも三脚持っててもこの日の強風だと意味を成さなかったかもしれない。相変わらず風は強く、寒い。せっかく権現岳に登ったというのに、八ヶ岳の主峰・赤岳の頂上付近はガスに覆われ隠されていた。
 権現岳から、権現小屋へ降りる。小屋で暖かいコーヒーでも...と、考えてたら甘〜い! もう今季の営業を終了(文化の日頃までの営業)していて、小屋の入口には板が打ち付けてある。御丁寧にトイレにも板が打ち付けてある...。そのまま権現岳―編笠山鞍部にある青年小屋へと下山。ギボシ〜ノロシバ間のガレ場を慎重に下ってくと、15:39、青年小屋に到着。この青年小屋も今季の営業を終了済み...。入口や窓は板が打ち付けてある。この青年小屋のキャンプ指定地でテント泊。小屋が閉鎖されてっから、テン場代払わずに済んでラッキー〜♪などと思ってはイケナイ。何故なら、もの凄い強風で、いつテントが吹き飛ばされてもおかしくないくらいだったから。テントが飛ばされた時のことを考えると、小屋が開いてたほうが...。テントを設営してから、水場へ水を汲みに行く。西岳への道を5分ほど行くと、乙女ノ水と呼ばれる豊富な水量を誇る水場があった。広いテント場には私のテント1張のみ。テントのなかで炊事を済ませ、就寝しようかと思った日没後の6時に、1パーティーやって来ました(苦笑)。小屋が営業してたら小屋のオヤジに叱られてるに違いない(苦笑)。缶ビール持って来てたけど、あまりに寒くて飲む気にはなれず、結局手付かずのまま。強風にテントが揺さぶられ、眠就けぬ夜を過ごした。天井と壁が動く部屋で寝られないのと同じだから(苦笑)。
 翌11月9日(日)の朝5時半前、雨がパラパラとテントを叩く。いよいよ雨が来たか!...と思ったけど、本降りにはならず。この日は、雨が降らなきゃ編笠山の頂上踏みに行くし、雨が降ったら巻き道通って観音平へ直接下山と決めてた。この調子なら大丈夫...と、6:15、編笠山の頂上を目指して青年小屋を出発。大きな石がゴロゴロした道を行くと、やがてフツウの山道になり、ひょっこりと編笠山の頂上に出た。編笠山頂上は視界ゼロ。この日も風が冷たい。長居は無用と判断し、10分で退散。編笠山からは急な下り道で、樹林帯の中の道に変わるとパラパラと雨が落ちて来る。枯葉が厚く積もった道は、コースサインを見落とすと分かりにくく、途中迷いそうになった。青年小屋からの巻き道が合流する押手川に出たところで、休憩。雨具を着用。押手川にはこんな看板がある。

 「標高2200 メートル うっそうたる森林に冷気さえ感じ、あたり一面は苔におおわれた平坦地。その昔、ここを訪ずれた登山者が水を求めて手で苔を押したところ、コンコンと清浄な水が湧きでたところから、押手川と言われた。 観音平から1時間30分登山者の休憩地として最適である」

 実際のところ、清浄な水は出て来ない、殆どアテにならない水場らしいケド(苦笑)。押手川からなおも雨のなか下る。時折、ビールの匂いがする。それもそのはず、飲まずにいたビール缶が破裂してからだ。帰宅して荷物をほどいてようやく気が付いた(苦笑)。
 展望が開けた雲海は、抜群の展望地なんだろうけど、ガスがかかっててなにもみえない。観音平に向けて最後の下りを往くと、この天気なのに登ってくるカップル1組とすれ違った。この日初めてみた人間。今から登っても何も見えないのになぁ〜。道の傾斜が緩くなると、そこは観音平の一端。私が登って来た小泉コースには一切案内なかったのに、こちらのほうには青年小屋と権現小屋の今季営業が終了した旨が書かれた札が立ってる。観音平グリーンロッヂの前を通り、8:44、前日の出発点・観音平駐車場に到着。前日はあれだけ駐まってたクルマも、この日はあいにくの天気もあり、数えるほどだった。
 帰りは、この地域の山に登った時の私の定番の温泉
『ゆ〜とろん』で山の汗を流してから帰宅(笑)。帰りも国道158号安房峠を越えて富山に帰宅(笑)。
 風が強くて寒かったけど、人気山域の八ヶ岳で静かな山歩きを満喫出来ました。

【行動記録】2003年11月8日(土)〜11月9日(日) 1泊2日
11月8日(土)
観音平駐車場958─小泉コース分岐1023─延命水分岐1038―1042//1052─1110//1120─
─笹すべり1138─ヘリーポート1203―1219木戸口1232―1319//1329―1341三ッ頭1351─
─1436権現岳1451─権現小屋1455─1539青年小屋

11月9日(日)
青年小屋615─641編笠山651─744押手川754─雲海817─844観音平駐車場

【1:25,000地形図】小淵沢、八ヶ岳西部

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