6月1日、私は渋谷にいた。ここに来たのは例によって輪入盤屋めぐりをするためだった。CDを2万円分買い漁った後、渋谷のWAVEへ行く。WAVEの1Fのチケット・セゾンで、6月30日の日曜日に渋谷クラブ・クアトロで行われるあるアーティストの来日公演の前売りを買おうと思ったら、すでに『SOLD
OUT』...。そ、そんな...!
「観たい!」と思っていたものが、観れなくなると「何がなんでも、観たい!!!」となるのが人情というものである。結局、6月28日の金曜日に名古屋で行われる彼女のギグのチケットを取り、会社を半日休み、(特急「ひだ」に乗るつもりが、例の落石事故のため)特急「しらさぎ」に乗って、観て来ました。ソフィー・セルマーニ。
ソフィー・セルマーニといえば、スウェーデンのアーティスト。ここ数年の日本における『北欧ポップ・ブーム』の盛り上がりには凄いものがあるが、それをまざまざと見せつけられたのは、会場である名古屋クラブ・クアトロに足を踏み入れた瞬間のこと。開演の25分前ですでに満員に近い状態になっていた。へザー・ノヴァの時の3倍、マリア・マッキーの時の2倍ぐらい客が入っていたのではないか。客の男女比率は4:6、もしくは3:7で女性のほうが多く、殆どが10代後半から20代前半の女のコばっかりなので、なんかとても場違いなとこに来たような居心地の悪さを感じた。7時を10分も廻らないうちに、バンド・メンバーとソフィーが登場。おもむろにギターを構えたソフィーに、会場のいたるところから「カワイイ〜!」と嬌声がとぶ。そんなミーハー度の高いなか始まった曲はアルバムのオープニング曲“I'd
Be
Broken”。ソフィーのいでたちは、前が赤色で背中が黄色の袖無しTシャツにグリーンのスカート(スカート丈、ヒザ上5cm)。女のコたちは「カワイイ〜!」といっていたが、実物のソフィーを見た私の印象は「たくましい」というものだった。だって、彼女の二の腕とか、スカートから伸びる御御脚、とても筋肉隆々としていたんだもん。写真で見て抱いた「きゃしゃな少女」というイメージと違っていたので意外だった。顔は写真どおりで、「カワイイ」かったけどね。
2曲目は最新シングルの“So
Good”。この曲ではソフィーはギターを脇に置き、パンチラを警戒してか慎重な仕草でイスに座り、あんよを組んで歌っていた。以降、ソフィーは曲によってアコースティック・ギターを構えたり、このようにイスに座ったり、タンバリンを振ったりして歌っていた。3曲目の曲が“Stand
By”と紹介されると、相変わらず女のコたちが「キャー!“Stand
By”だってぇ〜!」と騒いでいた...。
曲が終わると、早くもバンド・メンバーの紹介。アコースティック・ギター2本にベース、ドラム、サックス、そして私のいた場所からは完全に死角に入って見えないところにストリングス音専門のひと(結局、彼の担当楽器は最後まで判らず)がいて、総勢6名からなるバック・バンド。バンド紹介からなだれ込んだ4曲目は“A
Thousand
Times”。サックスがフィーチャーされたこの曲でようやくサックス奏者のひとがサックスを吹きまくる。それまでの3曲では出番がなく、タンバリンとマラカスを適当に振るだけだったので、私はこのサックス奏者を気の毒に思っていたのだ。ギターの2人はそれぞれボブ・モウルド(元・シュガー、今はソロ)とディープ・パープルのジョン・ロードに似ていて、この2人がバック・コーラスも担当している。40はいってそうなオヤジが「woo〜」とウラ声でコーラスをとる姿は少し不気味だった。
“Tell Me You're Joking”と“Always You”を挟んで披露された“You
And
Him”はボブ・モウルドに似たギタリスト(以下、『モウルド君』と呼ぶ)とソフィーだけで始まり、曲の終盤になるとバンドが加わるという構成で演奏された。ここまでの客の盛り上がりはイマイチだったのだが、次の曲“There
Must Be A
Reason”のアタマでのドラマーの煽りが上手く、場内から自発的に手拍子が起こり、いよいよ盛り上がり始めた。ソフィーの『コノ曲ハ、愛ノ歌デス』という日本語MCで始まった“Until
Dawn”のあと、新曲?が披露された。♪oh mammy blue, oh mammy mammy
blue, oh mammy
blue〜というサビが印象的な曲で途中からソフィーから観客に一緒に歌うように要求があり、それに応えてみんな♪oh
mammy blue, oh mammy mammy blue, oh mammy
blue〜と歌った。曲が終わると「present for
you」といってソフィーが会場に人形を投げ込もうとする。当然「キャー!
こっちい〜!」と場内大騒ぎ。人形が投げ込まれた後、“I'll See
You”が披露され、全員が袖に引っ込むと当然、アンコールを求める手拍子。ものの1分も経たないうちにメンバー全員戻って来て、“Woman
In
Me”を披露した。ここでもドラマーのノセ方が上手く、場内手拍子状態に。次の曲は「この曲は『モウルド君』の好きな曲です」というソフィーの紹介で始まった。リッキー・ネルソンの“Garden
Party”である。この曲が終わるとまた全員が引っ込んだ。するとまた場内はアンコールを求める手拍子。そしてまたもや1分経たないうちに『モウルド君』とソフィーが戻って来たものだから「そんなにすぐに戻って来ないで、もっともったいつけろよ!」とツッコミたくなった。“I'll
Remember
You”をこの2人で演った後、バンド全員戻って来て新曲を披露した。曲が終わるとソフィーは「good
night, bye-bye, オヤスミ,
サ∃ナラ」と何度も縁り返して、足元に置いてあった日本語MCのカンペを拾いステージを後にした。こうして正味50分のライヴは終わった。(『モウルド君』の正体は、アルバムのプロデューサーのラーシュ・ハラピだったりする)
『アイドルのソフィー・セルマーニ』を観たい額客と、あくまでもアーティストとしての自分を表現したいソフィーとの間の著しいギャップのため途中まで盛り上がりに欠けていたが、そのギャップを埋めたのはソフィーではなくて、ベテラン揃いのバック・バンドである。ソフィーの歌は「勘違いファン」までノセられるほどの力強さに欠けていた。でも、客の質の割には、いいライヴだった。次回は『アーティストのソフィー・セルマーニ』を観たい観客が揃ったシチュエイションで観てみたいと思う。
【SET LIST】...'96.6.28
名古屋クラブ・クアトロ
1. I'd Be Broken
2. So Good
3. Stand By
4. A Thousand Times
5. Always You
6. Tell Me You're Joking
7. You And Him
8. There Must Be A Reason
9. Until Dawn
10. (新曲...“Mammy Blue”?)
11. I'll See You (In Another World)
(encore 1)
1. Woman In Me
2. Garden Party (リッキー・ネルソンのカヴァー)
(encore 2)
1. I'll Remember You
2. (新曲)