午後5時過ぎに会場の赤坂BLITZに着く。チケットの整理番号が『Cの3番』だったため、見えにくい位置を覚悟していたが、意外にもすんなり前のほうへ行けた(少なくとも、この間のマニックスのライヴの時よりも前)。開演予定時間の6時になるかならないかのうちにオープニング・アクトのポプシクルが登場。カーディガンズよりも長いキャリアがあるというスウェーデン出身の4人組のポプシクルは全部で7曲、30分弱演奏してステージを去った。この後セット・チェンジが行われた。 準備が整った7時頃、SF映画的なSEが鳴ると同時にステージ奥のスクリーンがライトを浴びてピンク色に染まり、ある程度間を置いてからピーター、ベングト、ラッセ、そしてマグナスではない(!)ベーシストがステージに登場。4人が演奏し始めたのは新作『グラン・トゥーリスモ』より“Marvel
Hill”。イントロに導かれるようにしてステージに現われたニーナは黒のタンクトップに黒革のパンツ姿。左腕にはビッシリとブレスレットをはめていた。『ファースト・バンド・オン・ザ・ムーン』からの“Step
On
Me”をプレイした後、観客に挨拶しようとしたニーナに観客から「ニーナ〜!」の声が次々と掛かる。これにはニーナよりもギターのピーターのほうが反応し、いろいろ観客とやりとりしていた。
「ここで昔の曲を演ります」とニーナがMCしてから演奏したのは、デビュー作の『エマーデイル』から“Rise
& Shine”と“Sick &
Tired”。最近の曲を歌うニーナには問題を感じなかったが、昔の曲は歌うのに慣れ過ぎたためか(例によって)歌のヨレが目立ってた。“Sick
&
Tired”の後、ニーナが日本語で「ドウモアリガトウゴザイマス」とファンに御礼を言うと、ピーターも日本語で「びーるクダサイ!!!」とおどけて観客を笑わせた。
以前私が観た'97年1月のライヴでは1曲歌う度にステージ袖に引っ込んだりして落ち着きなく、歌うにつれて声量がどんどん落ちていたニーナだが、今回はステージから出入りすることもなく、声量も多く、かなり改善された...ように思ったんだが、“Explode”の演奏中、ゲップが出たのか咳込んだのか分からないが、歌えなくなるというハプニング勃発! 一度軌道を逸れると元に戻るのはなかなか難しいもので(英語が母国語じゃ無いハンデもある)、20秒くらいニーナの歌無しになった。新作からの美しいバラードで私のお気に入りの“Explode”が台無しになってしまった(涙)。“Starter”をプレイした後、ピーターが新ベーシストの紹介をした。「彼が入ってオレたちのサウンドはより強力になったと思うゼ!」というピーターの自慢気な態度からして、この『故ジミ・ヘンドリックスか(シン・リジーの)故フィル・リノットといった感じ』の黒人ベーシストは、どうもマグナスの代役とかそういう類ではなさそう...。カーディガンズ初のメンバー・チェンジが起こってしまったようだ...。ピーターはよほどこのベーシストが気に入ったようで、「ヘイ、ベース・ソロやってみろよ!」とけしかけた。これに応えて短いベース・ソロを披露した新ベーシスト。次は大ヒット曲の“Lovefool”で、観客は大いに沸いたが、曲のエンディングをニーナが「♪I..................
can't.................. care..................
'bout.................. any..................
thing..................
but..................
you..................」といった具合に必要以上にもったいつけたので、興醒めェ〜。続く“Carnival”でも観客の興奮をよそに、ニーナは足元のペットボトルを取るため歌をないがしろにしたしさ...。ま、ニーナはこれが『許される』キャラクターだからイイケドさ(笑)。“Losers”、“Do
You
Believe”と続いた後、ニーナが「今夜最後の曲よ」と紹介した“Hanging
Around”では、ベングトは椅子を蹴散らし立ち上がってドラムを激しく連打。ギターに忙しいラッセがキーボードを空けているのを見て、チョコッとキーボードを弾いたニーナ(笑)。“Hanging
Around”をハードに演奏し終わるとニーナは無言でステージを去り、ピーターたちは観客に手を振っていった。
観客からアンコール要求の手拍子が起こりしばらくすると、場内に“Paralysed”のイントロの笛吹きみたいなSEが流れ、ステージに戻って来た5人。ピーターは着ていた長袖シャツを脱いだTシャツ姿で、刺青ムキ出し。“Paralysed”の次にプレイされたヒット曲“My
Favourite
Game”で大いに盛り上がった後、ニーナが「これがホントの今夜最後の曲」と紹介したのがこれまた新作からの美しいバラード“Higher”。これが終わるとニーナは「see
you next time,
bye-bye!」と挨拶し、ベングトは観客と次々と握手し、ピーターはギターピックを次々と投げ入れていった。会場に新作収録のインストゥルメンタル曲“Nil”が流れ、ここでライヴは終わった。
今回のライヴは新作からの曲が中心(収録曲全部演った!!!)で、ここ日本でのカーディガンズ人気の起爆剤となった2ndアルバム『ライフ』からは“Carnival”のみ。一般のひとが「カーディガンズ」と聞いて思い浮かべる曲...すなわち、1stと2ndの曲...は殆ど披露されず、新曲ばかりの構成に戸惑ったファンは多かったハズ。あと2曲くらい初期のナンバーがあったほうがいいな...と思った。それにしても、マグナス...(ハァッ...とため息)。彼のバカデカいズウ体はもう見られないのかどうかは正式な発表を待ちたいが、そういえば初期のカーディガンズの曲の殆どの歌詞を手掛けていたマグナスが、新作では2曲しか作詞しておらず、そのデカい体に反して影が薄くなっていたのは確かだった。が、まさか居なくなるとは...。と、ここまで書いて気付いたが、マグナスが歌詞を書かなくなるにつれ、カーディガンズの音がダークになっている。1st
&
2ndのメルヘンチックなサウンドから、3rd『ファースト・バンド〜』のおぼろ月夜のようなもやのかかったサウンド、そして新作ではますますダークにと音楽スタイルが変化するのに合わせてマグナスの作詞量が減っている。考え過ぎかもしれないが、マグナスの書く歌詞こそが初期カーディガンズのメルヘンチックなサウンドを方向付けていたのだとすれば...そのマグナスがもうカーディガンズのステージに居ない以上、「昔のカーディガンズのほうが楽しかった。昔のサウンドに戻って欲しい!!!」というファンは、『腹をくくる』しかないのかもしれない...。
【SET LIST】...'99.3.6 赤坂BLITZ
1. Marvel Hill
2. Step On Me
3. Been It
4. Erase/Rewind
5. Rise & Shine
6. Sick & Tired
7. Junk Of The Hearts
8. Explode
9. Starter
10. Lovefool
11. Carnival
12. Losers
13. Do You Believe
14. Hanging Around
(encore)
1. Paralysed
2. My Favourite Game
3. Higher
~ending theme~...Nil