去年8月の『フジ・ロック』、10月の単独公演、そして2ndアルバム『パフォーマンス・アンド・カクテルズ』のリリースに伴う今回のツアーと、1年足らずのうちに3回も来日しているウェールズの3人組・ステレオフォニックス。この3回とも足を運んでしっかり観ている私は異常? ま、それだけ私はステレオフォニックスの音楽を評価しているわけだ。
会場の赤坂BLITZはほぼ満員の客の入り。ステレオフォニックスの3人がステージ上に姿を見せたのは開演予定時間の7時を15分過ぎた頃。楽器を構えて演奏し出したオープニング・ナンバーは新作『パフォーマンス・アンド・カクテルズ』のアタマを飾る“Roll
Up And Shine”。続く“More Life In A Tramps
Vest”で観客が大いに盛り上がったところでフロントマンのケリー・ジョーンズが「コニチワ!」と日本語で挨拶してから「“The
Bartender And The Thief”!」と曲紹介し、“The Bartender And The
Thief”を演奏。
過去2回の来日公演ではメンバー3人のみでの演奏だったが、今回のツアーはステレオフォニックスの3人の他、キーボード奏者が1人居る4人編成。デビュー作からの曲の場合はキーボード奏者抜きで演奏されたりもしたが、新作の曲では隠し味程度にキーボードを重ねていた。ステレオフォニックスといえば真面目で男臭い硬派バンドのイメージがすっかり定着しているが、ヴォーカル兼ギターのケリーもたまにMC入れる程度で、3人+1人は黙々と演奏。会場には彼らが持ち込んだ硬派な空気が張つめていて、それが破られたのは“T-shirt
Suntan”の演奏後、ドラムのスチュアート・ケイブルがドラム・スティックを上空に放り投げ、落ちてくるスティックを受け損なって落とした時くらい。スチュアートが落としたスティックを拾い上げたケリーは、観客に向かってそれを投げ入れた(笑)。
ライヴのほうはたまにケリーの曲紹介を挟みながら、真面目で硬派な空気を維持したまま進んでいく。「この曲は女のひとが1枚1枚服を脱いでいくことについての曲だ」とケリーが“She
Takes Her Clothes Off
”を曲紹介した時ですら、真面目な空気は揺るぎもしなかった。並の男ならこんなことを喋ると卑しい空気が漂うのに(笑)、ケリーは真面目な表情ひとつ変えずそんなセリフを口にするものだから、私はその事実に気付かず、ライヴ終了後に女のコたちが「ケリー、『女のひとが服を脱いでく曲だ』って言ってたよね」と話してるのを聞いて「そういや、そうだよな!」と改めて思い出したくらい(笑)。もっとも、この曲の歌詞の内容は「マリリン・モンローに憧れ、服を脱ぐのが好きな女が居たが、『43』という歳に絶望し首を吊った」という色気も何も無い歌だったりするが(笑)。
代表曲“A Thousand
Trees”で観客が大いに盛り上がった後は、ケリーが「ハリウッドに行って感じたことを歌った曲だ」と紹介して始まった“Plastic
California”。続くは“Is Yesterday Tomorrow
Today?”で、新作からの曲が続いた。ハッキリ言って私は、新作をデビュー作『ワード・ゲッツ・アラウンド』ほど評価出来ないで居るのだが、ライヴを観てその理由が解った。キーボードの存在だ! 新作ではキーボードのせいで明らかに音が饒舌になっている。ケリーの硬派な歌はそのまんまだが、バック・トラックが厚くなった分だけ、ケリーの真っ直ぐな歌の威力が落ちているような気がする。キーボードの彼には悪いけど、ステレオフォニックスには3人編成による『直球勝負』が似合ってる。
“Same Size Feet”、“Traffic”、そして“Local Boy In The
Photograph”とラウドな曲と静かな曲を織り混ぜながらライヴは進んでいく。驚きなのはどの曲もみんなケリーの歌に合わせて歌っていたこと。ベースのリチャード・ジョーンズの前にもマイク・スタンドがあり、彼もバック・コーラスを取れるようになっていたが、少なくとも私はリチャードがバック・コーラスを付けているのを見た記憶はない。リチャードがコーラス付けずに済むほどみんな、歌っていたわけだ。“Last
Of The Big Time
Drinkers”を披露すると「今夜が日本で最後の夜だ」とのMCを入れたケリー。ここで演奏されたのは“Just
Looking”。曲が終わるとステレオフォニックスの3人(+1人)は一度ステージを去った。
観客の熱心なアンコール要求に応えてステージに戻って来たケリー、ドラムセットに座りスティックも構えて少しおどけて見せた。スチュアートとリチャードもステージに現われ、ケリーもギターを構えてプレイしたのは“Check
My Eyelids For Holes”。この後、“Looks Like
Chaplin”を挟んでプレイされたのは新作の最後を飾る“I Stopped To Fill
My Car
Up”。アルバムではピアノで始まる静かな曲をケリーはギター1本をバックに歌い始めた。残りの2人(+1人)もそこへ音を重ねていった。先ほどから会場を支配していた真面目な空気もアンコール最後の(通算)21曲目にしてようやく乱れた!“I
Stopped To Fill My Car
Up”の最後で、突然ラウドに演奏し始めた3人(+1人)。演奏が終わるとケリーはギターを振り回してドラムセットのシンバルを叩き、ローディーのかたに向かってギターを放り投げてステージを去った。ローディーのかたはちゃんとこれを受け止めたが(笑)。『クソ真面目なバンド』とのイメージがファンの間にすっかり浸透しているため、このケリーの『御乱行』についてはライヴ終了後のファンの間からは「ケリーがあんな真似するとは思わなかった」との声が聞かれた(笑)。スチュワートはドラム・スティック1組と先ほど落としたスティックの片割れ1本(合計1.5組...笑)をフロアのかなり後ろのほうまで投げ入れ、やることの無いベースのリチャード・ジョーンズは前転を披露してステージを去った(←バック転じゃないところが少し情けない...笑)。
“A Thousand Trees”や“Local Boy In The
Photograph”といった代表曲では観客が大合唱になり大いに盛り上がるなど、楽曲と演奏だけに物を言わせて観客を沸かせることのできるステレオフォニックスはやっぱり最高だ!
【SET LIST】...'99.6.12 赤坂BLITZ
1. Roll Up And Shine
2. More Life In A Tramps Vest
3. The Bartender And The Thief
4. Hurry Up And Wait
5. Pick A Part That's New
6. T-shirt Suntan
7. Not Up To You
8. Too Many Sandwiches
9. I Wouldn't Believe Your Radio
10. She Takes Her Clothes Off
11. A Thousand Trees
12. Plastic California
13. Is Yesterday Tomorrow Today?
14. Same Size Feet
15. Traffic
16. Local Boy In The Photograph
17. Last Of The Big Time Drinkers
18. Just Looking
(encore)
1. Check My Eyelid For Holes
2. Looks Like Chaplin
3. I Stopped To Fill My Car Up
STEREOPHONICS live @ Tokyo Bayside Square (FUJI ROCK FES.) '98.8.1