ヒロくんのLIVE REPORT '00 PART 4 ANI DIFRANCO

 個人的には、新作『トゥ・ザ・ティース』の出来にシックリいかないところがあり、今回の約2年振りのアーニー・ディフランコのライヴを観るか観ないか随分と迷ったけど、アーニーのあの笑顔が、そして独特のライヴの雰囲気が忘れられなくて、当日券を当てにして1月29日、大阪・ベイサイド・ジェニーに行った。ら、『飲食物一切持ち込み禁止』のベイサイド・ジェニーなのに、外国人のみなさん、平気で『マック・バーガー』やら『六甲のおいしい水』やら持ち込もうとしていた。会場のチケットもぎりのお兄サンはその度に片言の英語で『持ち込み禁止』を説明しなきゃいけないので、「みんな日本語喋ってくれよォ〜!!!」とかなり泣きが入っていた...(笑)。
 ベイサイド・ジェニーに来るのは'96年のBECKの時以来だけど、当時は広く感じた会場もこちらがライヴ慣れしていろんなところを見たせいか、狭く感じた。会場は8〜9割がた客が入って結構混雑してて(例によって)3割がた外国人で占められていた。私の廻りも外国人グループに取り囲まれていて、パツキン女性の体臭が鼻につくなか開演を待っていると、予定時間の6時を15分ほど廻ったころ、場内にライヴの始まりを告げるSEが流れる。これにフロアの観客が歓声を上げたところで、まだ灯りがついていないステージに人影が2つ現われた。1つはステージ向かって右にセットされたキーボードのところへ。もう1つはステージ中央のマイク・スタンドのところで止まった。灯りがつき、ステージ真ン中に居たアーニーに歓声がとぶが、挨拶抜きでいきなりアーニーがキーボードをバックにして歌い出したのは“Freakshow”。♪welcome to the freakshow~! というフレーズが連呼される、オープニングにピッタリの曲でライヴは始まった。“Freakshow”の後、残るメンバーもステージに現われ、アーニーもギターを構えて演奏したのは“Virtue”。アーニーの右指には、いつものとおり激しくギターの弦をかきむしるための『爪』が黒色のテープで巻きつけられていた。曲が終わると、アーニーは簡単にバンド・メンバーの紹介をした。過去2回の来日公演はアーニーとベースのジェイソン・マーサーとドラムのアンディ・ストチャンスキーの3人編成で行われたが、御存知のとおりドラムのアンディが辞めたため、今回のライヴは、アーニーとジェイソンに加え新ドラマーのダレン・ハーン、そしてジュリー・ウルフという名前の女性キーボード・プレイヤーが居ての4人編成。新作『トゥ・ザ・ティース』のレコーディング・メンバーそのままで行われた。3曲目に披露された“Little Plastic Castle”では、CDヴァージョンでのホーン・パートをジュリーがアコーディオンで演奏。前回のライヴでホーン・パート抜きの“Little Plastic Castle”を聴いてかなり違和感があったから、アコーディオンででもホーン・パートが再現されて良かった。このジュリー・ウルフという名前の女性、水前寺清子(チータ)みたいな髪形で、キーボード、アコーディオン、鍵盤ハーモニカ...と担当楽器をコロコロ変えてステージ上を動き廻るものだから、寺のいたずら小僧みたいに見えた(笑)。
 アーニーは例によって、英語でオモシロい話をしていた(筈)。“Little Plastic Castle”の曲が終わると「テリヤキ~!」とか日本語を喋ったりしたが、メインは英語で、これには会場の3割を占める外国人の観客ばかりが反応、爆笑してた。英語が解らないと疎外感を感じずには居られないアーニーのライヴ特有の現象?がやはり起こってしまった...。このように英語でオモロい話を次々する(たぶん)アーニーを、ステージ袖から旦那サンがしっかり観ていた(『山羊ヒゲ』でおなじみのスタッフ、アンドリュー・ギルクライスト)。
 “Wish I May”が終わると、ジェイソンとダレンはステージを去り、アーニーのギターとジュリーのアコーディオンだけで“Angry Any More”をプレイ。ステージ中央のアーニーのマイクのところにジュリーも出て来て、1本のマイクを2人で使って歌ってみせ、見せ場を作っていた。次にアーニーが「very old song」と紹介してギター1本で歌い始めたのが“Both Hands”。アーニーの言うとおり、デビュー・アルバムの1曲目に収録されている「very old song」だ。この曲では観客の間から合唱が起こった。もっとも、歌ってるのは外国のかたばかり...。アーニー版アンプラグド・コーナーが終わり、ジェイソンとダレンも加えてプレイされたのは“Anticipate”、そして“The Diner”。CDヴァージョンではキーボードレスの曲がジュリーのキーボード入りで披露されるのを聴いて、それらの曲がようやく本来あるべき形になったと感じた。とくに“The Diner”は『キーボードあり』のほうが何10倍もしっくりくる。“The Diner”の後、アーニーから本格的なメンバー紹介があり、それによると、オリックス・ブルーウェーブのトロイ・ニール似のダレンはカリフォルニア出身、ジュリーはシアトル出身だそうだ。メンバー紹介の際、各メンバーのソロ・タイムがあった。楽器のソロ・タイムというと、アリーナ・ロックの悪しき伝統を思わせるだけに、アーニーには不似合いな感じ。冗長なソロ・タイムの後は“Shy”。“Shy”が終わると、アーニー、ジェイソン、ダレン、そしてジュリーは横一列になって肩を組み、観客に向かっておじぎ。観客からは拍手と声援が惜しみなく向けられた。このおじぎの際、ジュリーの胸のふくらみを確認(笑)。あまりにも『寺のいたずら小僧』してるので、もしかして男性?...と最後まで疑ってたのだが(笑)、間違いなく、女性です(笑)。
 アーニーたちがステージを去ると、観客の間からはアンコール要求の手拍子が起こる。意外に早くステージに戻って来たアーニーたちがプレイした曲は“Overlap”。このバラードを聴かせたところで、4人は次々とおじぎをしてステージを去り、過去2回の大阪公演とは違い、2回目のアンコールが無いままライヴはここで終了した。
 キーボードのジュリーのキャラクター(笑)と、キーボードが加わったことで楽曲により深み出たところを観られたのは良かったが、1年に2枚もアルバム出すなどあまりにもアーニーは多作過ぎで、馴染みの曲が多数セットから退いてるし、どこかライヴの構成が保守的になってたり...と、不満を感じるところもあった。それにしてもいつ観てもアーニーのライヴ、英語が解らないとミジメだね...クゥ〜!!!(泣)。

【SET LIST】...'00.1.29 大阪ベイサイド・ジェニー
1. Freakshow
2. Virtue
3. Little Plastic Castle
4. Fuel
5. Providence
6. Untouchable Face
7. Cradle And All
8. ?
9. Loom
10. Wish I May
11. Angry Any More
12. Both Hands
13. Anticipate
14. The Diner
~ drum solo ~ bass solo ~ keyboard solo ~
15. Shy

(encore)
1. Overlap

ANI DIFRANCO live @ Osaka Banana Hall '98.3.22

ANI DIFRANCO live @ Sinsaibashi Muse Hall '97.2.22

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