ヒロくんのLIVE REPORT '10 PART 18 凛として時雨

 凛として時雨(以下、時雨)のニュー・アルバム『still a Sigure virgin?』のリリースに伴う全国ツアー、その名も『VIRGIN KILLER』の11月12日の金沢・Eight Hallでのギグを観て来た。「まだ時雨を知らないの?」というアルバムタイトルにこのツアー名...いずれも挑発的だけど、私が彼らのライヴを観るのは今回が3回目であり、とっくに「Sigure virgin」では無い(苦笑)。今回の会場のEight Hallは運営会社が破綻し、存続が危ぶまれてる。もしかしたら、私がこのハコでのライヴを観るのが今回が最後になるかもしれない...という感慨に浸る間も無いくらい、私が会場に着いたのは開演間際であり、開演予定時間の19:00を5分ほどオーヴァ−してた。すでに客電が落ち、時雨登場のB.G.M.が鳴り響いて、ファンが大歓声を放ってたタイミングでフロア入り。まだステージには時雨のメンバーは姿をみせていない。17:40まで会社で仕事してから金沢に移動してたため、開演ギリギリになるのは予め覚悟の上だったけど、何とか間に合った! フロアにはギッシリ客が入ってる。遅れて来た私は前のほうで観るのを諦め、フロアの出入口付近に陣取る。ファンの歓声を浴びながら時雨の3人がステージに登場し、スタンバったところで演奏始まった曲は新作からの“I was music”。演奏が始まったばかりというのにステージ前の熱気は凄まじく、腕を振り上げてピョンピョン飛び跳ね、曲の途中に345がベースをブイブイ言わせるといちいち歓声を上げるなど、最初からハイ・テンション。新作に伴うツアーだから、このまま新作からの曲を続ける...という予想に反し、2曲目は“想像のSecurity”、3曲目は“テレキャスターの真実”で、『時雨クラシックス』ともいえる人気曲を次々と披露するものだから、ファンの盛り上がりにますます拍車がかかった。会場入場時に客に配ってたチラシにダイヴ禁止が明記されてなかったら、確実にダイヴァーが登場したことだろう(苦笑)。“Can you kill a secret?”の演奏後、早くも暑さにヘロヘロになった女のコが1人、スタッフに抱きかかえられるようにしてフロアから搬出されてった...。“シークレットG”を演ると、熱狂的な反応を示すファンたちに「ありがと」と御礼を言ったTK、楽器を交換した後またもマイクに向かい、「凛として時雨です」と改めて挨拶。ここで披露した曲は、前作『just A moment』から“JPOP Xfile”。TKはいつものように長袖の丸首シャツを着て、345も半袖Tシャツ姿もいつもどおり。ピエール中野はドラムセットに隠れてよく見えない(苦笑)。『just A moment』からもう1曲“Telecastic fake show”を演ると、時雨のキラーチューンの1つ“nakano kill you”を早くもここで披露し、ファンを大熱狂の坩堝に叩き込む。ギター交換を済ませたTKがセミアコな音色を試し弾き始めたので、何となく次は“moment A rhythm”かなぁ?...と思ってると、やっぱり“moment A rhythm”(苦笑)。先ほどまでのカオスな世界から一転、静寂の世界へ。この『静』と『動』のコントラストも時雨の魅力のひとつ。幻想的な“moment A rhythm”に続いて、“this is is this?”、345のヴォーカルで始まる“illusion is mine”...と、どちらかといえば静かめの曲が続けて披露される。“illusion is mine”が終わると、3人は一旦ステージを去り、スタッフがステージ上に椅子などを並べ始める。セッティングが終了し、アコースティック・ギターを構えたTKとフツウにベースを構えた345が椅子に座ると、意味ありげにTKが「これからスペシャル・ギタリストが登場します」などと紹介する。ファンの殆どがこれから何が起こるのか分かってて、ニヤニヤしてる。さらにTKが「(彼が出て来たら)拍手で迎えて下さい」などと言うと、ステージ向かって右側の袖からピエール中野がエレキ・ギターを持って登場。『スペシャル・ギタリスト』ピエール中野がフロア中央に用意された椅子に座ると、TKが「(この編成で)1曲演ります」と言い、新作から“eF”を披露。ピエール中野が16年振りにギターを弾いたことが話題になってたこの曲を、ライヴでもきちんと再現したワケだ。3人が椅子に座ってしまうと、私が居たフロア最後方あたりからはステージ前方に居る観客たちの頭に隠れてしまって殆ど見えない...。この静かな曲“eF”の間、暑さでヘロヘロになった観客が次々に目の前を通って避難してく。うち、スタッフに抱きかかえられてた男性客は、私の目の前で転倒したり、目が虚ろだったり、ホントにヤバそうだった。フロアへの出入口の前という位置に居た都合上、ライヴ中で私の前を10人以上の観客が『避難』してったけど、半分は自力で『避難』、残り半分はスタッフに保護される形でフロアから『搬送』されてった。如何にこの日のライヴが過酷だったかよく分かるだろう。
 “eF”を演り終えた後「どうもありがとう」と観客に御礼を言ったTKと、345はステージを去り、ひとりステージに残ったピエール中野はドラムセットに戻ってマイクをつかむ(苦笑)。ピエール中野のM.C.タイムだ(苦笑)。「みんな大丈夫か〜!?」「オー」「休むなら今のうちだぞ」というやりとりがあった後、ピエール中野から『ランランルー』やっていいか?」との打診があり(苦笑)、みんなで『ランランルー』をやった(苦笑...ピエール中野のポーズに合わせて、ピエール中野と観客が「ランランルー!」と合唱する)。すると、ピエール中野が「『かっこいいランランルー』をやる」と言い出し、その『かっこいいランランルー』をやってみせてくてた(ピエール中野が「ランランルー!」のポーズを取るのとチラチラ点滅した照明がピエール中野に当てられるというもので、仙台でやった時には今回の金沢ほど上手くいかなかったとのこと)。「俺は金沢が大好きなんだ。『ヤッホー茶漬け』、『忍者寺』...」などと、毛色の変わった金沢名物を絶賛するピエール中野。「みんな『忍者寺』に行ったこと、あるか〜!?」と観客に訊いてみたところ、半分くらいのひと(私もだ)が『忍者寺』に行ったことがないことを知るや、「賽銭箱が置いてあるところには、実は陥し穽が仕掛けられている」とか「外見は2階建なのに、中身は5階建くらいに複雑」などと『忍者寺』の見所を説明。最後に「この寺の一番凄いところは何だと思う?」などと観客に前フリし、「こんなに外敵の侵入に備えてイロイロ準備していたのに、一度も敵からの襲撃に遭ったことがないところだ」などと上手く『オチ』たところで、「みんなでカレー作ろう! 『ゴーゴーカレー』だ」などと言うピエール中野。「345のマイクよりこっち側(ステージ向かって左側)は、『人参』な。TK(のマイク)よりこっち側(ステージ向かって右側)は、『玉ねぎ』な。(『人参』にも『玉ねぎ』にもならなかった)真ン中は、『じゃがいも』な」などとフロアを3区画に分けてそれぞれの観客の『役割』を指定し、「オマエら全員『お肉』な」とさらに指示。みんなで作る『カレー』とは、ピエール中野が「人参!」と言えば『人参』に指定されたひとが「人参!」と返し、「玉ねぎ!」と言えば『玉ねぎ』のひとが「玉ねぎ!」と返し、「じゃがいも!」と言えば『じゃがいも』のひとが「じゃがいも!」と返し、最後にピエール中野が「お肉!」と言うと全員で「お肉!」と返す...というお遊びで、ピエール中野の弁によれば、Perfumeがドーム公演で観客にやらせてたのを観て感銘を受け、自分たちのライヴにも取り入れることにしたらしい(苦笑)。人参→玉ねぎ→じゃがいも→お肉...を数サイクルやったところで、「カレーが出来た」と満足げなピエール中野。続いて、いつものように「バイブス」、「玉筋」などのエール交換タイムへと突入。Xジャンプの際には『ヤッホー茶漬』のオヤジに敬意を表して「ヤッホー!」と叫べとか、ピエール中野が最近は氷川きよしにハマってることから、♪ズン〜ズンズン〜ズンドコ〜...とピエール中野がフった後は「きよし!」と言う代わりに「中野!」と声をかけるように...などと、ピエール中野のコダワリによるイロイロ細かく指示が出る。「say 『VIBES』!」、「VIBES!」...といよいよ本番が始まり、♪ズン〜ズンズン〜ズンドコ〜 中野!...まで無事にピエール中野と観客のやりとりが終わると、「俺たち、ひとつになれたぞ!」などと、満足そうなピエール中野。ピエール中野のM.C.タイムが終わると、今度はドラム・ソロへ。ドラム・ソロに入る前に「俺がドラムで♪ズン〜ズンズン〜ズンドコ〜...のリズム叩くから、『中野!』って返してくれ」などと観客に要求したピエール中野、ドラム・ソロの最初は言葉どおり♪ズン〜ズンズン〜ズンドコ〜...のリズムで始め、観客は律儀にもピエール中野の指示どおり「中野!」と返す。最初は“ズンドコ節”のリズムで緩く始まったものの、その『お遊び』が終わった後はピエール中野の独壇場。それまでの緩さから一転、野に放たれた獣のように、パワフルかつ手数の多いドラム・ソロを披露した。ピエール中野のドラム・ソロが終わりに近づくと、ステージに345とTKが登場。ピエール中野のドラム・ソロが終わると、早速“replica”を披露。次に前作『just A moment』のアタマを飾る“ハカイヨノユメ”を演ると、“DISCO FLIGHT”へ。時雨のレパートリィのなかでも異色曲といえるディスコ調のリズムを持つこの曲で大いに盛り上がる。文句無く、時雨のライヴで最も盛り上がる曲の1つだろう。“DISCO FLIGHT”で盛り上がりが最高潮に到達したところで、なおも新作からの“a symmetry”を演ると、TKが観客に「ありがと」と御礼を言う。そして「中村美代子さんからです」と、345にM.C.をフる。TKにM.C.をフられた345は、「暑い〜。凄く暑いですね」などと汗を拭いながらたどたどしいお喋りを開始。時雨名物(?)345の物販宣伝コーナーだ。ツアー名の『VIRGIN KILLER』が入ったタオル、「驚異のトリプルポケット」という物販コーナーのタタキ文句に345自身が感銘を受けたという(苦笑)クリアファイル、黒地に黒字のストラップ、そしてTシャツの順に345が紹介した物販宣伝コーナ−が終わってから演奏が始まった曲は、古い曲。1st『#4』収録の“傍観”だ! まさか、この曲を演るとは思わなかったのでかなり驚いた。なにしろ、“鮮やかな殺人”も“Sadistic Summer”も演らないなかでこの曲を演ったんだから! この曲のエンディングにかかると、345は(TKもピエールも演奏中なのに)ベースを下ろして逸早くステージを去り、最後にTKとピエールも演奏を終えてステージを去った。
 熱気にやられて這々の体でフロアから脱出したり、またはスタッフに救助された観客が多数出た激しいライヴ。もし、それらの観客のなかに今回が初めての時雨のライヴを体験したという新たな時雨ファンが居たとしたら、それはさぞかし『過酷な初体験』だったに違いない。まさしく『VIRGIN KILLER』である(苦笑)。

【SET LIST】...'10.11.12 金沢・Eight Hall
1. I was music
2. 想像のSecurity
3. テレキャスターの真実
4. Can you kill a secret?
5. シークレットG
6. JPOP Xfile
7. Telecastic fake show
8. nakano kill you
9. moment A rhythm
10. this is is this?
11. illusion is mine
12. eF
〜Pierre Nakano's drum solo〜
13. replica
14. ハカイヨノユメ
15. DISCO FLIGHT
16. a symmetry
17. 傍観

LING TOSITE SIGURE live @ Toyama Club Mairo '10.2.20

LING TOSITE SIGURE live @ Kanazawa Eight Hall '09.5.24

INDEX