ヒロくんのLIVE REPORT '11 PART 15 LIMP BIZKIT

 新作『ゴールド・コブラ』をリリースしたリンプ・ビズキット(以下、リンプ)の『LOUD PARK』出演によるついでに行った東・名・阪を廻るジャパン・ツアーを東京・新木場のSTUDIO COASTで観て来た。私が彼らのライヴを観るのは、2001年1月の幕張メッセでの公演以来10年ぶり。当時は彼らの絶頂期であり、広い広い会場内には血気盛んなキッズがあふれてた。その後、バンドのサウンドの要となるウェス・ボーランドが脱退と加入を繰り返すなか、バンドのポテンシャルはどんどん落ちてった...。新作『ゴールド・コブラ』はウェスの二度目の出戻り後初めてリンプが発表するアルバムであり、これが再スタートという意気込みが込められたせいか絶頂期の彼らのサウンドを思わせる内容に、メディアでの評判も高い。10年前に比べると会場の広さは1/10も無いけど、2011年の今もこんなにリンプのファンって居たんだぁ〜と感銘を受けたほど、(SOLD OUTにはなっていなかったものの)熱心なリンプ・ファンが多数会場に詰めかけてた。開演前のステージは、黒い幕で覆い隠されている。開演時間となり、場内にイントロが流れると、黒い幕が中央からV字型に開いたところで止まる。まだ幕によって隠されているステージ奥からは、得体の知れない生物が脈打ってるかのように、黄色い光が点滅してる。やがて黒い幕はスタッフ2名の手によって左右に開かれ、ステージ全貌が明らかになった。すでにリンプの5人はステージに登場しており、(かつてのような赤い帽子ではなく)黒い帽子を被り、バスケットのユニホームを着たフレッド・ダーストがステージ中央に居る。彼の右側にはネックが赤く光るベースを構えたサム・リーヴァス、左側には体だけでなく顔まで真っ黒に塗りたくった「黒い山海塾」状態のウェス・ボーランドがギターを構えてる。顔にはメガネ型の電飾を付けてる模様(苦笑)。フレッドの背後にはD.J.リーサルのターンテーブルがあり、その左側のドラム・セットにはジョン・オットーが居る。そのまた後ろのステージ奥の壁には新作『ゴールド・コブラ』のアートワークが描かれたバックドロップが吊るされてる。オープニング・ナンバーは、新作から“Why Try”。オープニングからステージ前のキッズの一部がクラウド・サーフィンを開始(苦笑)。曲が終わると「Tokyo〜!」とファンを煽ったフレッド。ウェスが弾き始めたギターのイントロにファンが反応し、歓声を上げる。新作のアタマを飾る“Bring It Back”だ。曲の途中で大きくリズム・チェンジするのが印象的なこの曲でもファンは大いに盛り上がる。曲が終わるとフレッドが「ドモアリガト〜!」と日本語で御礼を言うと、続けて英語で「How do you do? We really, really, really love Tokyo, Japan〜!」と東京のファンへ愛のメッセージ(苦笑)を送る。フレッドが日本のファンとコミュニケートするのを大切に思ってるのは2001年の来日時の『影マイク』からもよく分かるが(苦笑)、今回は『影マイク』が無い分、平易な英語を使うことによって理解度を高めようと思ってるのか、一語一語噛みしめるようにゆっくりファンに語りかけてるのが印象的だった。新作からの曲はなおも続き、アルバム・タイトル曲の“Gold Cobra”がここで披露された。会場に集まってるファンたちには新作の浸透度が高いようで、フレッドがフロアに向かってマイクを向けるとしっかり歌が返って来た。新作からの曲はまだまだ続き、次は“Douches Bag”。この曲もファンは熱烈な反応をもって受け入れた。そのようなファンの反応に感激したのか、日本語で「アリガト!」と御礼を言った後、「You make me crazy〜!」と、惚れた女にでも言うようなセリフをファンに捧げたフレッド(苦笑)。D.J.リーサルがターンテーブルの技を見せ付け、ウェスが早速ペットボトルをフロアに投げ入れると、フレッドが「『ゴールド・コブラ』からもう1曲演る。“Get A Life”」などと宣言。この曲を演奏し始める。リンプの殆どの曲はフレッド1人がヴォーカルを担当してるけど、この曲ではウェスがバック・ヴォーカルを付けてた。曲が終わると、ここでようやく新作から離れ、全盛期のナンバー“My Generation”が登場。ファンの反応は凄まじく、腕を振り上げ、サビの部分は大合唱で応える。クラウド・サーフィンやってる奴も居る。この曲ではフレッドがウェスのギターのネックを押さえ、ウェスは右手だけ動かして2人がかりでギターを弾くお遊びも。フレッドとウェスの仲は順調なようだ。“Livin' It Up”が終わった後、D.J.リーサルが音をつないでいくと、フレッドが「“My Way”!」と曲紹介。曲のエンディングで使ってたタオルを最前列の観客へ投げ入れた。「ドモアリガト!」と日本語でまた御礼を言ったフレッド、続けて英語で「you great!」、「really good!」などとファンに謝意を伝える。ここでライヴのアタマから盛り上がり過ぎて熱くて死にそうになってるステージ前のキッズたちへ、フレッドからペットボトルの水をプレゼント。最初はバラの状態のペットボトルを次々にフロアに投げ入れる。バラのものが無くなると、今度はスタッフにペットボトルをダンボールごと持って来させ、ダンボールから1本1本取り出してはフロアに投げ入れてたフレッド、そのうち面倒臭くなったのか、ダンボールの中身が残り半分となったところでダンボールをひっくり返し、中身をブチ撒ける形でペットボトルをキッズたちにプレゼント(笑)。次の“Eat You Alive”ではベースのジョンと共にステージに降りて、キッズたちの上をフロートしながら熱唱。この曲が終わるとステージに復帰したフレッド、「アリガト!」とファンに御礼を言う。ここで、ウェスがロックの名曲のイントロを遊びで弾き始め、残りの楽器隊も音を重ねてく。メタリカの“Master Of Puppets”のイントロに続いて演奏されたのは、ニルヴァーナの“Smells Like A Teen Spirit”! こちらのほうはマジ度が高く、イントロだけでなくフレッドが歌まで披露(半分くらいは観客にマイクを向けて歌わせてたけど...苦笑)。もう少しで1コーラス歌いきるようなタイミングで突如プッツリ音が消えた(苦笑)。あと数曲「お遊び」を続けた後に2ndから“Break Stuff”へ。この曲のイントロが演奏された時、「またロック・クラシックスのカヴァーかと思ってしまった。それだけ“Break Stuff”のイントロがクラシック・ロック然としてたってことで...(苦笑)。全盛期の曲である“Break Stuff”での、場内の盛り上がりぶりには凄いモノがあり、ステージ前の観客のうえをクラウド・サーファーが次々にゴロゴロ転がってゆく。これにはフレッドも「凄く凄くうれしい」などと感動気味。曲が終わると、D.J.リーサルを除いたメンバーは一旦ステージから姿を消した。
 ひとり残ったD.J.リーサルによるターンテーブル・ソロが始まる。RUN D.M.C.の“Walk This Way”(?)などを織り込んだプレイに観客から歓声が上がってた。フレッドたちがステージに戻って来て、ウェスが弾き始めたギターのフレーズは“Take A Look Around”。彼らのキャリアを代表する曲の登場に、ファンは大歓声を上げる。この曲の中盤でフレッドは今年3月の東日本大震災による津波被害に触れ、日本に対しエールを送ってくれた。次の曲はこれまた代表曲の“Nookie”。この曲ではフロアから投げ入れらた女物の服を首から肩にかけて巻いて歌ったフレッド(苦笑)。観客のノリのよさに上機嫌だったフレッド、観客に♪I want a candy〜と何度も繰り返して歌わせたところで、「そんなにキャンディーが欲しいのか。そら、やるぞ!」とばかりに観客にキャンディーを投げ入れるおバカなやりとりもしてた。フレッドが「残り1曲になった。ジョージ・マイケルの曲にしようと思うけど、“Rollin'”のほうがいいか?」とファンに訊く。フレッドが「“Faith”聴きたい奴〜!」、「“Rollin'”聴きたい奴〜!」と観客に声を出させて声の大きいほうを演るつもりだったのに、どちらへの支持も拮抗してた。「同じくらいだ」と判定したフレッド、白黒つけようともう1回ファンに声を出させた。“Rollin'”への支持が若干上回ってたように思えたものの、フレッドのなかでは結局決着は付かなかったようで、「2曲とも演る!」ことになった。まずは“Faith”。私と同じように「“Rollin'”の勝ち」と判断してたのか、慌ててギターを替えたウェス(苦笑)。“Faith”では女のコをひとりステージに上げたフレッド、曲の終わりにその女のコにハグしてフロアに返した。残り1曲“Rollin'”を演る段階となって、ステージ最前列に居た男性の観客が、フレッドに「“Hot Dog”のドラムを叩きたい」などと書いたメモを渡したようだ。それを観たフレッド、「よおし、それじゃあ一緒に演ろうじゃないか!」となったようで、その観客をステージに上げ、ジョンにドラムを空けるように指示。ホントにその観客のドラム演奏で“Hot Dog”を演奏。いつもギター弾きながら自由奔放にステージ上を往き来するウェスだけど、初めての人間と演奏を合わせるのは難しいようで、彼のドラムに付きっきりで彼のタイミングを見計らいながら演奏してた(苦笑)。“Hot Dog”の演奏途中でドラムはジョンに交代。いくら彼が上手くても、女性かと見紛うほどのヤセ型の体型である彼にはパワー不足は否めないものがあり、本職のジョンとはドラムの音の重さが全然違う。“Hot Dog”はフルでは演奏されず、途中で打ち切り。ドラムの彼はフレッドに「よくやったな!」といった感じで胸を叩かれ(このことから、彼が「女性ではなく、男性である」と私は判断した。女性の胸を触ったらセクハラだから)、缶ビールをプレゼントされた。貰った缶ビールを、ジョンのドラム台に座りながら飲むドラムの彼(苦笑)。次こそ“Rollin'”で、多くの観客がフレッドの振りに合わせて両手を左右に振った。ドラムの彼は手持ち無沙汰なのか、ジョンの目の前でエアドラム(苦笑)。曲の演奏が終わるとフレッドはファンに御礼した後「また近いうちに戻ってくるからなっ!」などと言い残し、ウェスはピックをじゃんじゃんフロアに投げ入れ、リンプの5人はステージを去った。1時間半くらいしか演ってないから「この後アンコールがある」と思ってたら、ローディーが出てきてジョンの黒いドラム・スティックを予備が無くなるんじゃないかと思うほどばんばん投げ入れてる。もしかして、もうライヴは終わり?...と思ってるとホントに場内に終演のアナウンスが流れ、客出しの音楽としてザ・ホワイト・ストライプスの“Seven Nation Army”をベースにラップを乗せたような曲が流れた。
 往年の栄華を懐かしむようなオールド・ファンが多いだろう...としょーじき思ってた。が、フタを開けてみれば現役のキッズが多数つめかけてた。新作の充実した内容を反映し、10年前の絶頂期を思わせるキレ味と重厚感のあるライヴをみせてくれたリンプ。観客の反応がイイものだから、フレッドがすこぶる上機嫌だったのが印象的だった。

【SET LIST】...'11.10.17 新木場・STUDIO COAST
. Introbra
1. Why Try
2. Bring It Back
3. Gold Cobra
4. Douches Bag
5. Get A Life
6. My Generation
7. Livin' It Up
8. My Way
9. Eat You Alive
10. Break Stuff
〜D.J. Lethal turntable solo〜
11. Take A Look Around
12. Nookie
13. Faith
14. Rollin'

LIMP BIZKIT live @ Makuhari Messe '01.1.13

LIMP BIZKIT live @ Naeba Ski Resort (FUJI ROCK FES.) '99.7.31

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