『猫』の声を聴いて、
『孤独な正義』を感じた夜

 『オススメ・ディスク』のところで取り上げたNeko Case & Her Boyfriends の『Furnace Room Lullaby』...これを聴いた当初、「誰かに似てるんだけどなぁ...。だけど誰に似ているのか思い出せない!」...という相当にもどかしい日々を送っていた(...というほど深刻なハナシでもないが)。が、ある日突然思い出した!!! これはまるっきりローン・ジャスティスじゃん!!! カントリー・テイストあふれる女性ヴォーカルのロックもの...どうしてすぐにローン・ジャスティスのことを思い出さなかったんだろう?
 ヴォーカルの『猫』ことNeko Caseの声は、ローン・ジャスティスのマリア・マッキーを彷佛させるし...とはいっても、『猫』には申し訳ないけど、ヴォーカルの上手さからいったら、マリアを『10』とするなら、『猫』は『7』だね。でもこれは、私にとってマリアは『ロック女性ヴォーカリストNo.1』に認定するほどのスーパー・ヴォーカリストだから仕方ないんだけど...。
 ローン・ジャスティスがこの世に存在したのは1980年代中期のほんの数年で、多くのひとは、その後ソロに転身したマリア・マッキーが『かつて居たバンド』としてしか知らないのかも。ただ、そのマリアが表舞台から姿を消して久しいので、ローン・ジャスティスもマリア・マッキーも知らないひとが相当に増えているんだろうなぁ。
 そこで、ローン・ジャスティス/マリア・マッキーの歴史を紐解くと... 

LONE JUSTICE

(国内盤 : ユニバーサル MVCG-21011)
 '85年にリリースされた、記念すべきデビュー・アルバム。1曲目の“East Of Eden”のアタマから凄まじいマリアのシャウトが度胆を抜く。しっとりとしたバラード“Don't Toss Us Away”など、マリアのヴォーカルの表現力は当時21歳のものとは思えなかった。個人的には“Soap, Soup And Salvation”が好き。
1. East Of Eden 2. After The Flood
3. Ways To Be Wicked 4. Don't Toss Us Away
5. Working Late 6. Sweet, Sweet Baby (I'm Falling)
7. Pass It On 8. Wait 'Til We Get Some
9. Soap, Soup And Salvation 10. You Are The Light

LONE JUSTICE--Shelter

(国内盤 : ユニバーサル MVCG-21012)
 大物新人としてデビューしたものの大きな成功を収められなかったため、バンド(というかその取り巻き)は大手術を断行! マリア以外のメンバー総入れ替え! ここで加入した元・パティ・スミス・グループのブルース・ブロディ(key.)はこの後、マリアの音楽的パートナーとして行動を伴にしていくことになる。ヒットした“Shelter”も含め、デビュー作ほどカントリー風味は感じない。“Inspiration”でのマリアのヴォーカルは凄まじく、私が『ロック女性ヴォーカリストNo.1』に彼女を認定する気持ちが解ってもらえると思う。
1. I Found Love 2. Shelter 3. Reflected (On My Side)
4. Beacon 5. Wheels 6. Belfry
7. Dreams Come True (Stand Up And Take It)
8. The Gift 9. Inspiration 10. Dixie Storms

MARIA McKEE

(国内盤 : ユニバーサル MVCG-25)
 バンド・メンバーを総入れ替えしても大きな成功は得られず、「マリアのvo.さえありゃいいや」と、ついにはバンドは解体。マリアはソロ・デビューを飾ることになった。数曲、カントリーぽい曲があるものの当時25歳のひとりの女性としての等身大の世界が描かれている。
1. I've Forgetten What It Was In You (That Put The Need In Me)
2. To Miss Someone 
3. Am I The Only One (Who's Ever Felt This Way)
4. Nobody's Child 5. Panic Beach
6. Can't Pull The Wool Down (Over The Little Lamb's Eyes)
7. More Than A Heart Can Hold
8. This Property Is Condemned 9. Breathe
10. Has He Got A Friend For Me ? 
11. Drinkin' In My Sunday Dress 

MARIA McKEE--You Gotta Sin To Get Saved

(国内盤 : ユニバーサル MVCG-115)
 '93年リリースの2ndソロでは、オリジナル・ローン・ジャスティスのメンバーが参加。本人はこれを『ローン・ジャスティスのアルバム』とでも思ってるのだろう、アルバム・クレジットには『This is not a solo album』との文字が。ローン・ジャスティス時代と同じくカントリー風ロックを伸び伸びと歌うマリアは実に素晴らしい!!! 特にヴァン・モリソンのカヴァー“The Way Young Lovers Do”の出来は鳥肌モノ。
1. I'm Gonna Sooth You 2. My Lonely Sad Eyes
3. My Girlhood Among The Outlaws 4. Only Once
5. I Forgive You 6. I Can't Make It Alone 
7. Precious Time 8. The Way Young Lovers Do
9. Why Wasn't I More Grateful (When Life Is Sweet)
10. You Gotta Sin To Get Saved

MARIA McKEE--Life Is Sweet

(国内盤 : ユニバーサル MVCG-189)
 前作から3年後にリリースされた3rdソロは、前作から一転し、カントリー風味を一掃。'70年代的グラム・ロックの影響が露な音楽を演っている。“This Perfect Dress”にそれは顕著で、最初聴いた時“The Woman Who Bought The World”というタイトルの曲か?と思ったほど(笑)。
 彼女の関わるどの作品よりも『オンナ』を感じさせる作品。
1. Scarlover 2. This Perfect Dress
3. Absolutely Barking Stars 4. I'm Not Listening
5. Everybody 6. Smarter 7. What Else You Wanna Know
8. I'm Awake 9. Human 10. Carried 11. Life Is Sweet
12. Afterlife

LONE JUSTICE--This World Is Not My Home

(国内盤 : ユニバーサル MVCF-24052)
 3rdソロ・アルバムから3年後の'99年に突如リリースされたローン・ジャスティスのベスト盤。アルバム・デビュー以前の音源多数の他、'98年に一時的にオリジナル・ローン・ジャスティスが再結成された時のライヴ音源として収められているルー・リードの“Sweet Jane”のカヴァーにはU2のボーノが参加。マリアとデュエット聴かせているが、マリアの歌の前だと「まだまだ修行が足りんな!」と思わせるボーノの歌(笑)。
1. Drugstore Cowboys 2. Rattleshake Mama
3. This World Is Not My Home 4. Working Man Blues
5. Cottonbelt 6. Go Away Little Boy 7. The Train
8. East Of Eden 9. Ways To Be Wicked
10. Don't Toss Us Away 11. You Are The Light
12. Sweet Jane (Live) 13. I Found Love 14. Shelter
15. Dixie Storms 16. Sweet, Sweet Baby (Live)
17. Wheels (Live)

 彼女(たち)の作品は、一度も大ヒットしたことが無い。ここまで見ていると、カントリー → 脱カントリー → カントリー → 脱カントリー → カントリー...という実に無節操な音楽的変遷をたどっていることが解るだろう。彼女がそのヴォーカルの実力ほど売れないのはその無節操さが災いしているのは間違いない。でも、そこの気紛れなところがマリアの魅力でもあるわけだから...。私はマリアのライヴを観損なったことがあるんだけど...。会場に客入れしてるのに「今日は歌えない」とマリアがライヴをドタキャンしたから(笑)。その時にほとんど怒りを感じなかったのは、マリアがそーゆーキャラのじゃじゃ馬だと解ってたから、「ああ、マリアならしょうがないな」って感じ(笑)。

 世の中には『スーパー女性ヴォーカリスト』と呼ばれるひとたちが居るけど、マライア某やセリーヌ某が巨大な富を築いていくのとは対照的に、『スーパーロック女性ヴォーカリスト』のマリアはどんどんボロボロになっていく一方。これもいかにもロック的でいいよなぁ〜(笑)。
 その『ロック界随一のじゃじゃ馬』もとうとう年貢を納めたのか、最近パソ通でマリアが結婚したと知った。相手までは憶えていないが、いつぞやのライヴのキャンセルになった原因の急病になった『ベースの彼氏』じゃないことだけは直感している(笑)。このまま家庭に入って消えてしまうには、あまりにもあのヴォーカルは勿体無い! いずれ復活してくれると信じて、それまでは『猫』で我慢します(笑)。
 マリアのファンのかた、よろしかったらあなたの『熱い想いを』
→書き込みお願いします(笑)。ファンじゃないかたも、御意見・御感想をお願いします。

(2000.5.20)

追記

MARIA McKEE--Ultimate Collection

(import : Hip-O/Universal 3145415052)
 この特集を組んだ後、輸入盤のみで'00年8月にローン・ジャスティス時代も網羅したマリア・マッキーのコンプリート・ベストが出ました。
 “If Love Is A Red Dress”は映画『パルプ・フィクション』のサントラより。“Show Me Heaven”は映画『デイズ・オブ・サンダー』のサントラに入ってる曲で、全英1位に輝いた、彼女のキャリア上で最大のヒット曲。
 個人的には選曲にかなり『???』なんだけどさぁ〜(笑)。こういう便利なものもありますよってことで紹介しておきます(笑)。
1. Ways To Be Wicked 2. Sweet, Sweet Baby (I'm Falling)
3. Don't Toss Us Away 4. Shelter 5. Wheels
6. Panic Beach 7. Only Once 8. Absolutely Barking Stars
9. I'm Awake 10. Scarlover
11. If Love Is A Red Dress (Hang Me In Rags)
12. Show Me Heaven 13. Sweetest Child
14. Sweet Jane (Live) 15. Dixie Storms 16. Breathe
17. Am I The Only One (Who's Ever Felt This Way)

(2001.6.1)

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