ジュリアナ新譜は大傑作!

 先日(5月31日)、話題にしたジュリアナ・ハットフィールドの2枚の新譜。あの時はそれぞれ3回ずつ聴いて、「片方はおとなし過ぎでもう片方はラウド過ぎ。両方の曲を1曲ずつ交互に聴いたらちょうどいいんじゃない?」などと感想を述べたけど、それぞれ10回ずつ聴いた今の感想をここで言うと...。ジュリアナのソロ名義の『ビューティフル・クリーチャー』は大傑作だよ! ホントにコレ!!! だから『オススメ・ディスク』のところでも取り上げたんだけど(笑)。

JULIANA HATFIELD--Beautiful Creature

(国内盤 : ロック・レコード RCCY-1093) *6/21リリース
1. Daniel 2. Close Your Eyes 3. Choose Drugs
4. Cool Rock Boy 5. Don't Rush Me 6. Slow Motion
7. Might Be In Love 8. Somebody Is Waiting For Me
9. Until Tomorrow 10. The Easy Way Out 11. Hotels
12. When You Loved Me 13. Cry In The Dark

JULIANA'S PONY--Total System Failure

(国内盤 : ロック・レコード RCCY-1094) *6/21リリース
1. White Trash 2. Metal Fume Fever 3. Houseboy
4. Road Wrath 5. Let's Get Married 6. Breeders
7. My Portegee 8. Total System Failure 9. The Victim
10. Using You 11. Leather Pants 12. Noblesse Oblige
11. Ten Foot Pole

 今回、ジュリアナはソロ名義とバンド名義の2作を同時リリースした訳だけど、今現在のジュリアナのプライヴェートな心境・境遇は、間違いなくこの2枚を足して2で割ったものだと思う。ただ、それらの感情・心境のうち、ネガティヴィティーを持つものは全てバンド名義の『トータル・システム・フェイルアー』に集めた印象がある。世のすべての災厄を封じ込めた『パンドラの匣』みたいなもんかな、コレは(笑)。おかげでソロ名義の『ビューティフル・クリーチャー』は翳り無しの良質ポップ・アルバムに仕上がってる。アコースティックな感触が強いせいか、どこかほのぼのとした牧歌的な感じさえします。アメリカ人アーティストがアコースティックに走ると、ともすればカントリー臭くなったりしますが、そうはならないところ、さすが学生の街・ボストン・シーンの立役者ですね(笑)。ここまで翳り無しのポップさは、彼女のソロ・デビュー作『ヘイ・ベイブ』以来のような気がします。
 そこで、ジュリアナのソロ・デビュー以後の足取りを簡単に追ってみると...

JULIANA HATFIELD--Hey Babe

(import : Mammoth MR0035-2, 国内盤廃盤)
 元・ブレイク・ベイビーズの歌姫(兼ベーシスト)のジュリアナ・ハットフィールドが'93年にリリースしたソロ・デビュー作。当時、彼氏として騒がれた?レモンヘッズのイヴァン・ダンドゥの他、多数ゲストが参加。ポップ・アルバムとしての見地からするとこのアルバムがベスト!(...だった) この頃のジュリアナの声はキュートとしか例えようのないくらいで、“Forever Baby”でのジュリアナの声はまさにタイトルどおり。“No Outlet”のイントロのヴォーカルも反則モノで、これを聴くと「自分の声がイヤで自殺すら考えた」という彼女の気持ちがよく解る(笑)
1. Everybody Loves Me But You 2. Love And Saved
3. I See You 4. The Lights 5. Nirvana 6. Forever Baby
7. Ugly 8. No Outlet 9. Quit 10. Get Off Your Knees
11. No Answer

THE JULIANA HATFIELD THREE--Become What You Are

(import : Atlantic/Mammoth 7 92278-2, 国内盤廃盤)
 このアルバムでようやく日本でもリリースされることになったジュリアナ。2ndアルバムはトリオ編成のバンド形態で製作され、本作よりジュリアナはベースを手放しギターを担当。“This Is The Sound”を始めとして、楽器始めて間もない中学生バンドでも1週間でコピー出来そうなくらいシンプルな曲が続く。ロックとしてのジュリアナとしては、このアルバムが最高峰だと思うが、改めて聴くと、意外なほどポップ。
 なお、このアルバム・リリース時に、タニヤ・ドネリー率いるベリーとのジョイント・ツアーで今のところ唯一の来日公演を行っている。
1. Supermodel 2. My Sister 3. This Is The Sound
4. For The Birds 5. Mabel 6. A Dame With A Rod
7. Addicted 8. Feelin' Massachusetts 9. Spin The Bottle
10. President Garfield 11. Little Pieces
12. I Got No Idols

JULIANA HATFIELD--Only Everything

(国内盤 : ポリスター PSCW-5340)
 米『Billboard』誌のアルバム・チャートで99位を記録し、カレッジ・チャートの枠から脱却しかけた'95年作。ジュリアナの咳き込む音から始まる“What A Life”の元気さと、シングル・カットされた“Universal Heart-Beat”のポップさも捨て難いし、“Live On Tomorrow”のアコースティックな感触は最新ソロ・アルバムに生かされてると思うし、彼女の歴史の上ではそれなりの重要さはあるアルバムだけど、蔭が薄い...。やはり、彼女の代表的ロック・ナンバーである“OK OK”より後の曲の印象が薄いせいかな?
1. What A Life 2. Fleur De Lys 3. Universal Heart-Beat
4. Dumb Fun 5. Live On Tomorrow 6. Dying Proof
7. Bottle And Flowers 8. Outsider 9. OK OK
10. Congratulations 11. Hang Down From Heaven
12. My Darling 13. Simplieity Is Beautiful 14. You Blues

JULIANA HATFIELD--Bed

(import : Zoe 01143-1001-2, 国内盤廃盤)
 前作で活動が軌道に乗った!...と思ったら、所属レコード会社『Mammoth』との契約のゴタゴタがあり、レコード会社を移籍。間にミニ・アルバム『Please Do Not Disturb』を挟んでの3年ぶりのアルバム。そういう事情からフラストレーションがたまってたのか、オープニングからしてギターがラウドなものだから、ダークな印象を受ける。改めて聴き直すと、決してアルバム全体が重いわけではないけれど、生首が転がったような無気味なジャケ写もあってイマイチ印象悪い(笑)。
 なお、バンダイM.E.から出てた日本盤にはミニ・アルバム『Please Do Not Disturb』の曲がボーナスで収録されていた。
1. Down On Me 2. I Want To Want You 3. Swang Song
4. Sneaking Around 5. Backseat 6. Live It Up
7. You Are The Camera 8. Running Out 9. Bad Day
10. Let's Blow It All

 で、ジュリアナのアルバムのうち、最もポップなのは今作も含めて『ヘイ・ベイブ』だと思っていたけど、改めて聴き直したら、結構翳りを帯びた曲があった。『ビューティフル・クリーチャー』がジュリアナのポップ・アルバムNo.1かなって思っちゃったりして(笑)。
 前作『ベッド』のラウドさとダークさに驚いたファンとしては、何か吹っ切れた印象がありますね、今作には。そういえば、昨年末から話題になっているのが、ジョン・P・ストローム(g. vo.)、フリーダ・ボナー(ds.)とブレイク・ベイビーズを再結成するハナシがあるけど、もし、そうなったら当然ジュリアナはベースを手にすることになるよね。その再結成話の影響かどうか定かではないけれど、ジュリアナは『ビューティフル・クリーチャー』では久しぶりにベースもプレイしてる。ベースをプレイすることで自分の原点に回帰したことが今回の快作が生まれる要因になったのでは...と考えるのは穿ち過ぎですか?(笑)
 それにしても、ジュリアナ、“Somebody Is Waiting For Me”での♪somebody is waiting for me〜のリフレインといい、“Might Be In Love”でのコーラスの返しなど、こちらのツボをよくわきまえてるネ。ヤ・ラ・レ・タ...(笑)。
 で、もう片方の『パンドラの匣』こと、『トータル・システム・フェイルアー』のほうはというと、1曲目の“White Trash”のノイジーなギターに騙されてダークなアルバムとの印象を持ってしまうけど、よく聴くとそんなにダークでもないっスよ! そういう意味も含めて、まさに前作『ベッド』の延長線上にある作品ですね、このアルバムは。ヴォーカル兼ギターのジュリアナとベースとドラムの3人編成で製作されていて、ザ・ジュリアナ・ハットフィールド・スリー時代を彷佛とさせるんだよなあ...。ところで、このジュリアナズ・ポニーに参加してるベースのマイキー・ウェルシュ(前作『ベッド』にも参加)は、マット・シャープの後釜としてウィーザーに加入してるんだけど、そのウィーザー、間もなく『SUMMER SONIC 2000』で来日するよね。マイキー・ウェルシュがらみでジュリアナも『SUMMER SONIC 2000』に出てくれないかなあ...と密かに期待してるんだけど...ムリかなぁ...。
『CMJ』のホームページ見てたら、ニュース・ヘッドラインに『Juliana Hatfield rejoins Blake Babies』ってあったから...。

 ということで、ジュリアナ・フリークのあなた、熱いエールを→書き込みお願いします(笑)。

(2000.6.11)

INDEX