別々の道を選んだ2人...

ルイーズ・ポストとニナ・ゴードン

 前にもいちど話題に取り上げたことがあったんだけど、ヴェルーカ・ソルトの2人がそれぞれ活動を再開した。
 ルイーズ・ポストとニナ・ゴードン(註・日本語表記は一般的に『ニーナ・ゴードン』とされてるけど、『ニーナ』というと、カーディガンズのニーナみたいにニブそうなのを思い出すので、Nina Gordonには合わない! したがって、当サイトでは『ニナ・ゴードン』と表記する)の2人の女性フロントマンを立てた4人組・ヴェルーカ・ソルト。2枚のアルバムをリリースし、順調に活動を続けるものと思われていたが、自分たちで『血縁関係のない精神的双児』とまで言っていた絆が突如崩壊。ニナ・ゴードンがバンドを飛び出したのは'98年のことだったろうか。他のメンバーにも、レコード会社にも、そしてマネージメント会社にも見放されたルイーズ・ポストはあくまでも『ヴェルーカ・ソルト』の名前に固執。新生ヴェルーカ・ソルトとしての復帰作をリリースした。それに合わせるかのように、ソロ・アーティストに転じたニナ・ゴードンもソロ・デビュー作を発表。ここで2人の足跡をたどってみると...。(ちなみに、曲名の
赤字ルイーズの曲、青色ニナの曲を示す)

VERUCA SALT--American Thighs

(国内盤 : ユニバーサル MVCG-171)
 インディー・レーベル『Minty Fresh』からリリースされたもののいきなり大評判となり、メジャーの『Geffen』から再リリースされた1994年のメジャー・デビュー盤。女性2人が全面に立つことから『アメリカ版LUSH』と形容されたとおり、LUSHを思わせる、繊細で耽美的なギター・フレーズが耳をひく。“Wolf”がその極致。'90年代を代表する名盤の1枚...と、私は思う。
1. Get Back 2. All Hail Me 3. Seether 4. Spiderman '79
5.
Forsythia 6. Wolf 7. Celebrate You 8. Fly
9.
Number One Blind 10. Victrola 11. Twinstar 12. 25 13. Sleeping Where I Want

VERUCA SALT--Blow It Out Your Ass It's Veruca Salt

(輸入盤 : DGC DGDDM-22212)
 デビュー盤と2ndの間のつなぎとしてリリースされたミニ・アルバム。プロデュースは米インディー・シーンの立役者のスティーヴ・アルビニ。(最初の2曲が特に)アルビニお得意のラウドなキター・サウンドに仕上がっており、彼女たち自身には、1stの耽美路線にコダワリが無いことがこの時点で判明。
1. Simmer Like A Girl 2. I'm Taking Europe With Me
3.
New York Mining Disaster 1996 4. Disinherit

VERUCA SALT-- Eight Arms To Hold You--

(国内盤 : ユニバーサル MVCG-219)
 プロデューサーに、メタリカやモトリー・クルーを手掛けたことで有名なボブ・ロックを起用。耽美路線は勿論のこと、ミニ・アルバムで示したアルビニ的グランジ路線も切り捨て、大衆的なポップ・ロック路線に転換。日本盤ボーナス曲の“One More Page Of Insencerity Please”のみ耽美的(笑)。ここ日本では“気まぐれヴォルケーノ・ガール”のタイトルで親しまれた“Volcano Girls”がヒットし、人気がブレイク。1stの後、チケットが売れなくて中止(たぶん)になった初来日公演もようやくここで実現。バンド活動が軌道に乗ったかと誰もが思ったが...。
1. Straight 2. Volcano Girls 3. Don't Make Me Prove It
4.
Awesome 5. One Last Time 6. With David Bowie
7.
Benjamin 8. Shutterbug 9. The Morning Sad
10.
Sound Of The Bell 11. Loneliness Is Worse
12.
Stoneface 13. Venus Man Trap 14. Earthcrosser

VERUCA SALT-- Resolver

(輸入盤 : Velveteen/Beyond/BMG 63985-78103-2)
 『ニナ・ゴードン、ヴェルーカ・ソルトを電撃脱退!』...まさしく寝耳に水の知らせの後、マネージメントも一部メンバーもニナ側に着き、レコード会社からも切られ、ひとりぼっちになったルイーズが『ヴェルーカ・ソルトの名前だけは消さない!』と執念でリリースにこぎ着けた作品。前作までのメンバーは誰ひとりとして残っておらず、実質的にルイーズのソロ。そういう状況なゆえ、全編、癇癪起こしたようなヒステリカルなサウンドに覆われていて、聴いてて、つらい...。
1. The Same Person 2. Born Entertainer
3.
Best You Can Get 4. Wet Suit 5. Yeah Man
6.
Imperfectly 7. Officially Dead 8. Only Youn Know
9.
Disconnected 10. All Dressed Up
11.
Used To Know Her 12. Pretty Boys 13. Hellraiser

NINA GORDON--Tonight And The Rest Of My Life

(国内盤 : ワーナー WPCR 10761)
 ルイーズに合わせるかのようにリリースされた『ニーナ・ゴードン』のソロ・デビュー作。プロデュースはヴェルーカの2ndを手掛けたボブ・ロック。ヴェルーカの2ndリリース後のツアーに同行してたドラマーのステイシー・ジョーンズが参加。スティーヴ・アルビニといっしょにグランヂィなギター・ノイズまき散らしてたひとが作ってたとは思えないほど、オーソドックスなポップ・アルバムに仕上がった。昔の面影は“Badway”などの曲にかろうじて見出せる程度。ヴェルーカのポップサイドはこのひとがニナってたことを再確認。
1. Now I Can Die 2. 2003
3.
Tonight And The Rest Of My Life 4. Badway
5.
Horses In The City 6. Hold On To Me
7.
New Years Eve 8. Fade To Black
9.
Number One Camera 10. Got Me Down
11.
Too Slow To Ride 12. Hate Your Way
13. The End Of The World

 なかなか日本盤を出さないアホのBMGファンハウスが発売権持ってるため、ヴェルーカ“ルイーズ・ポスト”ソルトの新作は日本では未発売。因縁のふたりの対決だァ〜!!!...と煽れば『しょーばい』になると思うのに...。
 ルイーズとニナの作品を聴き比べると、ヴェルーカ・ソルトってバンドにおける2人の役割分担がよく分かる。1stの頃からヴェルーカ・ソルトに目を付けてた私みたいな古株のファンが特にこだわる繊細で耽美的な音世界はルイーズが持ち込んだもの...ただし、今のルイーズは信頼してたひとたちに裏切られた怒りでヒステリ起こしてて、繊細で耽美的な音世界を描けてないけど...。一方、代表曲“Seether”や“Volcano Girls”でのポップな感覚はニナの仕事。ルイーズがあんなに怒り狂ってるのに、それを全く気にして無いようなアッケラカンさすら感じるポップなソロ・デビュー作を聴くと、ますますルイーズが可哀想になってくる...。そもそもこの2人、『血縁関係のない精神的双児』ということにムリがあったんじゃないかなァ...。別れるべくして別れた...という...。
 判官びいきな風土の日本ゆえ、私、しばらくルイーズのほうを応援します。


初来日公演の模様を描いたイラスト('97年9月作)。この頃は良かった...。

(2000.9.10)

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