2001年はプログレが熱いッ!
始まりは音楽雑誌『rockin'on』7月号の「渋松対談」。この『rockin'on』随一のお笑いコーナー(笑)で「今、時代はプログレだ!」と言わんばかりに渋谷陽一センセイが熱くなっていらっしゃるが(笑)、渋谷センセイが熱くなるのも分かるくらい、ここ数ヶ月、プログレ風味の強い作品が立て続けにリリースされた。私がプログレ的と感じたのはこの3枚...。
...サイバー・ヘヴィー・ロックの雄とされ、デビュー当時から一貫してコンセプト・アルバムをリリースしてきているフィア・ファクトリーの4th『デジモータル』、怪集団トゥールの4年半ぶりの新作『ラタララス』、そして今やもっとも革新的なロック・バンドとして世間に注目されているレディオヘッドの5th『アムニージアック』(リリース順)...これら3枚の新譜は、私的にはみんなプログレなんだけど(笑)、そもそもプログレ...Progressive
Rock...とは何のか?
私・ヒロくんのプログレ観
ひとによって音楽観が違う以上、音楽ジャンルの定義も異なるのは仕方ないこと。プログレの定義について「『ユーロロック』という言葉で置き換え可能な音楽のみ、『プログレシヴ・ロック』と呼ぶ」という随分と偏狭なプログレ観を見たこともあるけど、これもまた『真』なりなのかな?とは思う(笑)。だけど、私はそこまで伝統的なプログレ観に拘泥するつもりはないのよ〜(笑)。マグマも聴いたことないし(笑)。「マグマ聴いたことないヤツがプログレを語るな!」って言われそうだけど(笑)。
私にとっての『プログレシヴ・ロック』とは、こんな感じかな。
(1)
アルバム1枚通して、楽曲なり歌詞が(ルーズでもいいから)1つのテーマに沿ったものになっているもの。ストーリィーに基づいて曲が展開していくいわゆる『コンセプト・アルバム』である必要は全く無いけど、コンセプチュアルな作り・構成になっていればよい。聴いてみて、一本スジが通ってるように感じられればそれでいい。
(2)
変拍子とまでは言わないけど、かなりリズムにこだわりがあるもの。
(3)
『プログレシヴ・ロック』と呼ぶからには、プログレシヴな...すなわち革新的で進歩的なロックでなくてはならない。従って、既成の枠からハミだして、誰もまだ手掛けたことのない新しい分野を開拓しようとする意志が聴き取れる音である...。
(1)と(2)は十分条件だけど、(3)は必要条件です。ゴメンネェ〜、こんな幼稚なプログレ観で(笑)。やっぱりマグマ聴いたり、月に1回は新宿レコードやGarden
Shed通うひとでないとプログレ語っちゃダメかな?(笑) で、必要条件である(3)が、あくまでも自分の感覚頼り...というかなり曖昧なモノだから、私にとって『プログレなモノ』が他のひとには『全然プログレじゃない』ってこともあるかもね。
そんな私にとっての『プログレシヴ・ロック』の名盤とは、実は↓コレ↓です。
RUSH--Signals |
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(1982年、国内盤 :
イーストウエスト AMCY-2297) |
RUSHっていうと、一般には『西暦2112年』、『フェアウェル・トゥ・キングス』、『神々の戦い』...の俗に『プログレ3部作』と呼ばれる'70年代後半の大作耽溺路線の作品を挙げるひとが多いけど、私にとって、RUSHのプログレというと1982年リリースの11作目なのよ〜♪。
この『シグナルズ』、デビュー当時は『ZEPPELINのクローン』などと呼ばれ、'70年代は大作耽溺のプログレ王道路線を歩んできたRUSHが、当時流行り始めたニューウエイヴ/テクノ・ムーヴメントの要素をカッパラって自分たちの音楽に大胆に取り入れて独自の『近未来路線』を歩み始めた記念すべき一歩。この次にリリースされた『グレイス・アンダー・プレッシャー』(1984年)もそうだけど、この『近未来路線』作品、今の耳にも十分に新鮮に聴こえるハズ。去年、レディオヘッドの『キッドA』は初めて聴いた時、「こりゃあ、『シグナルズ』じゃないかよ!」って思ったもんな(笑)。
ということで、先の私のプログレシヴ・ロック観に、もひとつ付け加えるなら
(4) 近未来的味付けがなされてる(これも十分条件です)。
というわけで、ヒロくんのプログレシヴ・ロック観(笑)が明らかになったところで...。
2001年のプログレシヴ・ロックを検証する。
FEAR FACTORY--Digimortal |
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(国内盤 : ロードランナー
RRCY-11134) |
まず、サイバー・ヘヴィー・ロックの雄、フィア・ファクトリー。元々、音楽雑誌『BURRN!』方面では有名なバンドで、デビュー当時からコンセプト・アルバムを作り続けてます。コンセプト・アルバムとしては前作『オブソリート』('98年)のほうが完成されてたと思うけど、1998年はまだ時代がプログレを必要としてなかったので(笑)当時はあまりピンと来ませんでした。2001年の今作は、時代がプログレなのでドハマリ(笑)。ナイン・インチ・ネイルズのようなインダストリアルなサウンドに、デス・メタル上がりのヴォーカルが乗るような感じ。なかには「メタルやん」って言うひとも居るだろうけど、ここまで近未来を意識してれば立派なプログレ。ストレス発散にイイよ。スカッ!としたいひと、聴いてネ(笑)。
コンセプト★★★★
リズム★★★
革新性★★★
近未来度★★★★
TOOL--Lateralus |
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(国内盤 : ゾンバ
ZJCI-14003) |
唄う『ひとり山海塾』...などと呼ばれる変態ヴォーカリスト、メイナード・ジェイムズ・キーナンをフロントに据えたアメリカのバンドのフル・アルバムで3枚目。『山海塾』などという単語が用いられるのも納得したくなるくらい前衛舞踏のBGM向けの民俗音楽っぽいリズムが多様されとります。メイナードのヴォーカル・スタイルは結構フツウなんだけど、スタイルは異常(笑)。これもヘヴィー・ロック系だけど、フィア・ファクトリーみたいにエネルギーを外に向かって発散するんじゃなくて内面に向かう感じで、かなりスピチュアルな音です。
コンセプト★★★★
リズム★★★★★
革新性★★
近未来度★★★
RADIOHEAD--Amnesiac (国内盤 : 東芝EMI
TOCP-65800)
1. Packt Like Sardines In A Crushed Tin Box
2. Pyramid Song 3. Pulk/Pull Revolving Doors
4. You And Whose Army? 5. I Might Be Wrong
6. Knives Out 7. Morning Bell/Amnesiac
8. Dollars And Cents 9. Hunting Bears
10. Like Spinning Plates 11. Life In A
Glasshouse
で、今やすっかりプログレ・バンド扱いされてるレディオヘッドだけど、彼らがプログレになったのは、3rd『O.K.コンピューター』('97年)からだろうねぇ...(笑)。そんな彼らの5thは前作『キッドA』('00年)の音を踏襲したサウンドで、ロック的なダイナミズムを去勢したモノ。フィア・ファクトリーとは全く違った文法論でエレクトニクスを導入。以前にヴォーカルのトム・e・ヨークが参加したU.N.K.L.E.のアルバム『サイエンス・フィクション』を思い出した(笑)。アルバムの終わり(“Life
In A
Glasshouse”)がこうだから、映画のサントラ的ともいえるし...。前作は衝撃作扱いされたけど、あれだけの衝撃を受けた後だから、このアルバムの音は予想の範囲内に収まってます(笑)。『キッドA』が気に入ったひとならこれも大丈夫でしょう(笑)。
コンセプト★★★
リズム★★★
革新性★★★
近未来度★★★★
《特別企画》
メイナード・ジェイムズ・キーナン・ギャラリー
ふだんのメイナード(左)、去年の『フジ・ロック』での金髪ヅラ姿(中)、ヅラ取った後(右)
スキ☆スキ☆メイナード♪(笑)
(2001.6.14/6.16)