ヒロくんのLIVE REPORT '10 PART 2 FOUNTAINS OF WAYNE

 ファウンテインズ・オブ・ウェイン(以下、F. O. W.)の来日公演を1月19日に渋谷クラブ・クアトロで観て来た。彼らの来日はアルバム『トラフィック・アンド・ウェザー』に伴うツアー以来2年半ぶりで、アルバムのリリースも特に無い今の時期の来日公演はホントに唐突な話。アダム・シュレシンジャーがティンテッド・ウィンドウズのツアーで日本に行くことが決まったついでF. O. W.でも...といった「ついで感」がどーしても拭えないんだよなぁ〜。ま、実際の事情はよく解らないケド...。今回のジャパン・ツアーは『ACOUSTIC ROCK TOUR 2010』と銘打たれ、アコースティック・セットで行われることが事前にアナウンスされてた。彼らがアコースティック・セットでライヴを演るのはとてもスペシャルなことで興味深いけど、彼らにはどう転んでもアコースティック・アレンジがそぐわない名曲もある。そこのところをどう料理するのか...という期待と、アレンジ出来ない曲は最初から演らないんじゃないか...という若干の不安の両方を抱きつつ、会場に向った。
 私が渋谷クラブ・クアトロに行くのは、
'06年7月の少年ナイフ(with ザ・ポージーズ)以来3年半ぶり。『クアトロ・パルコ』の建物にいつの間にか『BOOK OFF』が入り、クアトロ自身も禁煙となり喫煙ルームが設けられるなど様変わりしててビックリ! ステージ向って右側のステージ前3列目くらいで開演を待つ。アルバムのリリースも無い割には、フロアは8割は埋まってる。キャリアが長いバンドにしては、20代前半のファンの姿が目立つ。
 開演予定時間の7時を10分くらい廻った頃、ステージ向って左側の袖からF. O. W.のメンバー4人が登場。クリス・コリングウッドがアコースティック・ギターを構え、日本語で「コンバンワ〜!」と挨拶してから演奏始めた曲は、“Little Red Light”。無精髭が伸びたクリスはスーツにネクタイを締めてるが、ズボンはジーンズ(苦笑)。帽子を被ればケークのジョン・マックレアといった雰囲気(苦笑)。そのクリスの右隣では、襟の大きなシャツにカーディガンを羽織ったジョディ・ポーターがアコースティック・ギターを構え、左隣にはシャツにジーンズ姿のアダムがフツウのエレキ・ベースを弾いてた(苦笑)。ステージ奥のドラムキットには白Yシャツにチョッキ姿のブライアン・ヤングが居て、リズムを刻んでる。ブライアンのドラムの右隣にはピアノが準備されてた。曲が終わると、クリスが「ドモ、アリガト」と日本語で御礼を言い、アダムが「ドウモアリガトウゴザイマス」ともっと丁寧に御礼を言うと、ジョディがファンの耳馴染みなイントロを弾き始めた。『トラフィック・アンド・ウェザー』のアタマを飾る“Someone To Love”の登場にファンから歓声が上がる。曲が終わると、クリスはまた日本語で「アリガト」と御礼を言った。
 アダムによると、ファンが待ち焦がれてる新作は「almost finished」ということで、ここで新曲“Summer Place”を披露してくれた。曲が終わると、アダムはベースを下ろしてピアノに移動し、代わりにジョディがベースを構えた。するとクリスは、ピアノに就いたアダムを「今夜のスペシャル・ゲスト、アリシア・キーズさんです!」、ジョディのことを「ロン・カーターさんです!」とそれぞれ紹介(苦笑)。アダムがお返しとばかりにクリスのことを「スティングさんです!」と紹介すると、クリスは「スティングはベーシストじゃないか!」と反発。スティングはソロではギター弾いて歌ってるから、アダムは間違ってはいない(苦笑)。それに、クリスの頭の薄さがどんどんスティングのそれに似て来たしさぁ...。あ、これ、禁句?(苦笑) この編成で“Fire Island”をプレイ。曲が終わると、クリスが日本語で「アリガト!」と御礼を言い、ジョディはベースからギターに戻った。ここでもう1曲新曲をプレイし、律儀なクリスはこの新曲の後でも観客に日本語で御礼を言った。
 「僕たちは人数が少ないから、パーカッショニストが足りないんだ。誰か、僕たちのパーカッショニストになってくれないかい?」といった感じでアダムが言い、急遽観客のなかからステージに上って彼らと一緒に演奏してくれるひとを募集。手を挙げたファンのなかから、ステージ前に居た3人の男女が選ばれてステージに上がり、アダムからマラカス類(苦笑)を手渡された。ここで、“Hey Julie”を3人のファンの協力を得ながら演奏。ファンも曲に合わせて手拍子。曲が終わると、3人のファンはそこで『御役御免』。アダムから「デスティニーズ・チャイルドのみなさんでした」と紹介を受け(笑)、観客たちからも拍手を浴びると、ステージからフロアに戻された(苦笑)。
 しばらくピアノを弾いてたアダムがようやくベースを構え、弾き始めたのはクィーン&デイヴィッド・ボウイの“Under Pressure”のようなリフ。“Barbara H.”だ。ずーっとここ2枚のアルバムの曲か新曲しかプレイされず、この曲がこの日初めての1stからの曲。曲が終わるとクリスは「アリガト!」とまたも御礼を言った。ここで、新曲“Road Song”を披露すると、クリスが日本語を喋ってみると言う。「私ハ、世界ノ黒澤デス!」と喋ったクリスが場内の笑いを誘ったところで(苦笑)、“Red Dragon Tattoo”へ。日本における彼らの出世作『ユートピア・パークウェイ』からの曲がようやくここで登場。次の曲“Valley Winter Song”では、ミラーボールに光が当てられ、曲のイメージどおり雪が降ってるかのような粋な演出があった。ここでまたアダムはベースを下ろしピアノに移動し、代わりにジョディがベースを構える。またもやクリスがピアノに就いたアダムのことを「坂本龍一さんです!」と紹介し、ベースを構えたジョディを紹介しようと「Mr.」と言いかけたところでネタ切れ(苦笑)。結局、ジョディは「Mr. Msiter」と紹介され、MR.ミスターのリチャード・ペイジさんということになった(笑)。この編成で“I-95”を演ると、(MR.ミスターのリチャード・ペイジの行きがかり上)クリスがMR.ミスターの代表曲“Broken Wings”をワン・フレーズだけチョロっと歌ってみせた。アダムからは「これから演る曲はカントリー&ウエスタンだから、みんなで『イーハー』と言ってくれ」と言われ、観客みんな合わせて「イーハー」と言う練習をしたところで、カントリー&ウエスタン調の“Fire In The Canyon”をプレイ。ここで、ジョディはベースからギターに戻り、ピアノを離れてベースを構えたアダムが次に演る曲“Hackensack”の曲説明を始める。「“Hackensack”ってニュージャージーにある街の名前なんだ」とか言ってた(苦笑)。次の曲はアコースティック・セットに似つかわしくないヘヴィーなギター・リフを“Bright Future In Sales”。熱心なファンが「yeah! yeah!」と合唱になるなど、アコースティック・セットでもこの曲は盛り上がる。曲の途中、クリスは足元のノン・アルコール・ビールの缶を持ってグビグビやり、「very taste!」。次の曲はイントロが弾かれただけで、ファンから歓声が上がった。デビュー盤のアタマを飾る“Radiation Vibe”だ。この曲はライヴではいつも他の曲のカヴァーを挟む『お遊び』を演るんだけど、今回もピンク・フロイドの“Another Brick In The Wall (Part II)”や、30年前に人気だった曲(と彼らが言ってた)など少なくとも3曲のカヴァーが折り込まれてた。最後に元の“Radiation Vibe”に戻り、曲が終わると、クリス、ジョディ、アダムは楽器を下ろし、ファンに御礼を言って、F. O. W.の4人はステージ上から去った。
 ファンがアンコール要求の手拍子を始めると、すぐにF. O. W.の4人がステージに戻って来た。クリスはギターを構え、ブライアンはドラムに就いたけど、アダムはピアノに就き、ジョディはベースを構えた。アンコールの1曲目は新曲で、クリス曰く、「とても哀しい曲。戦争で人が死んでいくことを歌った曲だ」とのこと。その哀しい曲が終わると、ジョディはベースをギターに持ち替え、アダムはピアノからベースに移った。次の曲はヴォーカル・ハーモニーが美しい“Troubled Times”。この曲が披露されると、ファンから歓声が上がった。“Troubled Times”を演ると、またもアダムはベースを下ろしてピアノに就き、ジョディがギターをベースに持ち替える。アダムがピアノを弾き始める。アダムがピアノで弾き始めた旋律を耳にして私はすぐに彼らがこれから何の曲を演るつもりなのか閃いたけど、多くの観客は見当もつかないといった感じで沈黙してる(苦笑)。アダムがピアノで弾く旋律にクリスが♪Stacy's mom〜...と歌を乗せてようやく曲が大ヒット曲の“Stacy's Mom”ということが明らかになり、ファンから大歓声が起こるかと思いきや、「ほう、この曲だったのか」的な感嘆のざわめきのようなものは起こったけど、それは決して歓声にはならなかった。やっぱりスタジオ・ヴァージョンでのカーズのようなシンセによるアレンジがないと、ファンの多くには“Stacy's Mom”らしく聴こえないみたい(苦笑)。“Stacy's Mom”は全米チャート(『Billboard HOT 100』)にもランク・インし、グラミー賞にノミネートされるなど彼らのワールドワイドな出世に大きく寄与した曲だけど、日本のファンにはそれほど思い入れがないのも災いしてるのかも?(苦笑) 曲が終わると、またジョディはベースからギターに戻る。ピアノからベースに戻ったアダムは、観客に「次は『FUJI ROCK FESTIVAL』で会おう!」などと、早くも『フジ・ロック』出演宣言(苦笑)。ここでジョディが弾き始めたのは、“Stacy's Mom”での『外した』感じを一掃するヘヴィーなリフ。“Denise”(邦題“愛しのデニース”)だ! この曲ではファンは♪sha〜lalalalalala〜と歌い、♪do ya do ya〜のところでは手を掲げて手拍子するのが通例。今回もファンは大いに盛り上がったけど、ファンの世代交代のせいか、はたまたアコースティック・セットのせいか、昔ほどの熱狂と混乱はなかったように思う。『必殺技』といえる“Denise”を繰り出し、最後に大いに盛り上げたところで、F. O. W.の4人はステージを去った。こうしてこの日のライヴは終わった。
 アコースティック・セットということもあり、いつも演ってる曲でも演奏されない曲が多いのでは...と思ってたけど、盛り上がるべきところはきちんと盛り上がった意外なほどフツウのライヴ。近々リリース予定の新作からの新曲が逸早く聴けたほか、彼らの演奏の巧さと、ファンのノせかたをわきまえた芸達者ぶりも確認出来た貴重な一夜となりました。

【SET LIST】...'10.01.19 渋谷クラブ・クアトロ
1. Little Red Light
2. Someone To Love
3. Summer Place (新曲)
4. Fire Island
5. (新曲)
6. Hey Julie
7. Barbara H.
8. Road Song (新曲)
9. Red Dragon Tattoo
10. Valley Winter Song
11. I-95
12. Fire In The Canyon
13. Hackensack
14. Bright Future In Sales
15. Radiation Vibe

(encore)
1. (新曲)
2. Troubled Times
3. Stacy's Mom
4. Denise

FOUNTAINS OF WAYNE live @ Kawasaki Club Citta' '03.10.5

FOUNTAINS OF WAYNE live @ Shibuya Club Quattro '99.10.10

FOUNTAINS OF WAYNE live @ Naeba Ski Resort (FUJI ROCK FES.) '99.8.1

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