ヒロくんのLIVE REPORT '13 PART 1 PATTI SMITH AND HER BAND

 8年ぶりにオリジナル・アルバム『バンガ』をリリースしたパティ・スミスのジャパン・ツアーを1月27日に金沢・EIGHT HALLで観て来た。会場のEIGHT HALL内に入ると、フロアでは福島の除染活動への募金協力の呼びかけが行われてた。一定額を募金すると、抽選でパティ作の芸術作品(パティのサインが入ったバスドラムのドラムヘッド)がもらえるようだ。場内で開演を待つ観客は、すっかり頭髪が無くなってしまったオヤジから、ロック・レジェンドの姿をひと目拝もうとやって来たキッズまで実に幅広い(苦笑)。
 開演予定時間の6時になると、会場に流れてたBGMがフェイド・アウトし、客電も消える。ステージ上にバンド・メンバーが姿を現し、それぞれの持ち場に就く。ワン・テンポ遅れて、観客からの歓声に包まれながら、『バンガ』のジャケットのように帽子を被ったパティがステージ上に登場。オープニング曲は、意外にもポップで和み系の“Kimberly”で始まった。つかみとしては弱いかと思いきや、名盤『ホーセズ』からの曲であり、パティの手振り身振りを混じえた独特のパフォーマンスに観客の反応は上々だ。ステージ上のバンド・メンバーは、パティの左にレニー・ケイ、その背後にはドラマーのジェイ・ディー・ドーティー...と、'70年代からの盟友たちが固め、パティの右側には息子でギターのジャクソン・スミスと、ベース兼キーボードのトニー・シャナハンが居る。曲を歌い終わると「“Kimberly”~!」と歌った曲を紹介するパティ、拍手する金沢の観客に、「金沢に来たのは今回が初めて」などと、不慣れな「Kanazawa」の発音につまづきながらも応えた。さっそく帽子を脱いでから披露した次の曲は、新作からの“April Fool”。この曲ではレニー・ケイがベースを弾いてた(トニーがギターで、ジャクソンがキーボードだったと記憶してる)。曲を歌い終わると、パティは足元に置いてあったマグカップの飲料で喉を潤す。次の曲は、“Ghost Dance”。レニーたちの♪we shall live again~のコーラスに合わせ、観客たちも歌う。次に披露した新作からの“Fuji-San”では、終盤に♪oh~Fuji-san~...と観客に合唱させたパティ、曲が終わると「アリガト! ツアーで今まで聴いた“Fuji-san”のなかで一番良かった」と金沢の観客を誉め讃える。これには金沢の観客も大喜び。
 ベースのトニーがファンには馴染みのフレーズを弾き始める。“Distant Fingers”だ。トロピカルなテイストのこの曲で場内が和ませると、“Dancing Barefoot”へ。サビの部分ではパティの動きに合わせて♪come on~!...と、多くのファンが合唱しながら拳を突き上げた。曲が終わると「ホントは日本語で喋らなきゃいけないのに、英語でしか喋らなくてごめんなさいね」といった感じで観客に謝ったパティ、続けて「凄く昔の曲を演るわ。テレヴィジョンたちと『CBCG』で演ってた頃の曲」などと喋ったろうか、これを聴いた観客から歓声が上がる。ここでパティが歌った曲は“We Three”。パティのライヴは何回も観てるけど、この曲を聴くのは初めて。 曲が終わると、レニー、トニー、ジャクソンがアコースティック・ギター(以下、アコギ)を構える。そして、パティ自身もアコギを構えた。アコギ4本で演奏されたのは、“Beneath The Southern Cross”(邦題は“南十字星の下で”)。この曲を聴くと思い出すのが、
'97年の初来日公演。あの時、若造だったトニーにすっかり貫禄が付いてるのを見て、あれから16年も経ったんだよなぁ...としみじみ。
 ここでライヴ開演前に行われてた福島除染チャリティー募金の抽選が行われることになり、さっきまで募金を呼びかけてた日本人スタッフのユキをステージに呼び入れたパティ、募金の総額を「hundred thousand yen」と紹介した後、自ら抽選を行い、賞品のアート(サイン入りドラムヘッド)と造花(?)をそれぞれ1名にプレゼント。抽選会が終わると、「Lenny Kaye~!」とレニーを紹介してから、パティはステージ向かって右側の袖に引っ込んでった。ステージに残された4人は、パティに紹介された形のレニーをメイン・ヴォーカルにしてロックン・ロール・メドレーを演り始める。レニーはすっかり銀髪のおじいちゃんになってしまってるけど、長身でスリムでカッコイイ。パティの独特の音楽世界とは異なり、ノリの良いロックン・ロールの連発に場内熱く盛り上がる。ヴォーカルはレニーからトニーやジャクソンにも移り、大いに盛り上がったところで、パティがステージに戻って来た。ここで演奏始まったレゲエふうのイントロの曲は、“Redondo Beach”だ。名盤『ホーセズ』の曲だからか、はたまたロックン・ロール・メドレーの余韻からか、観客の反応は、熱い。トニーがキーボードに就き、演奏始めたピアノのイントロを聴いて、観客から悲鳴に近い歓声が上がる。“Because The Night”だ! サビの部分の♪ because the night~belongs to lovers~...では当然のように大合唱が起こり、パティも歌うのを放棄してマイクを観客に差し出し、歌わせる。私のすぐ横に居た50代の夫婦と思しき男女も感激してた模様。生で聴く度に背中に電流が走るような興奮が味わえるこの曲は、やっぱり歴史に残る名曲だ。トニーがキーボードに張り付いたままで、次の“Pissing In A River”を演ると、次の曲でもトニーはキーボードに就いたままでイントロを弾き始める。“Gloria”だ! 勿論、♪Gloria~G, L, O, R, I, A~では場内に大合唱が渦巻いた。この “Gloria”で大いに盛り上がると、パティ・スミス御一行はステージを去った。
 観客がアンコール要求のクラップを始めると1分くらいでステージに戻って来たパティ、日本語で「マンゲツ(満月)」と言って、エレキギターを構え、新作のタイトル曲“Banga”を演奏。曲のエンディングではパティもレニーたちもオオカミ男(女)のつもりか、吠えるマネをしてた(苦笑)。次の曲は“People Have The Power”で、この曲でも♪people have the power~...の大合唱が起こった。最後の曲は、やっぱり“Rock N Roll Nigger”。上着を脱ぎ捨て、エレキギターを構えたパティ、老婆の域に入っても(苦笑)ツバを吐く姿もサマになってる。曲のエンディングで弦を1本ずつブチブチ切りながら不協和音を鳴らす。最後の1弦をブチッとやったところでこの日のライヴはお終い。パティは観客に御礼を言ってステージを去り、レニーは用意してたピックを全部観客にプレゼントしてからステージを去った。
 パティは何度もステージ前に降りてファンと触れ合うなど、終始フレンドリー。御歳66とは思えない衰えを知らないパフォーマンスに平伏すしかない貫禄のライヴでした。

【SET LIST】...'13.1.27 金沢・EIGHT HALL
1. Kimberly
2. April Fool
3. Ghost Dance
4. Fuji-San
5. Distant Fingers
6. Dancing Barefoot
7. We Three
8. Beneath The Southern Cross
〜medlay〜
9. Redondo Beach
10. Because The Night
11. Pissing In A River
12. Gloria

(encore)
1. Banga
2. People Have The Power
3. Rock N Roll Nigger

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