はじめに
音楽雑誌『CROSSBEAT』2001年1月号p.
150で広瀬 融さんが書いてたけど、ロックが世に生まれて、プレスリーの全盛期から数えて44年、ビートルズのデビューから数えても38年が経ってます。広瀬さんが書いたものではないと思うけど、この広瀬さんのコラムに添えられたエルヴィスの写真には「ロックは“若者の音楽”ではなくなってしまったのか?」というキャプションが付いています。人間が44歳なら中年の域ですからね(笑)。
「ロックは“若者の音楽”ではなくなってしまったのか?」という問いに対する私の答えは、実体験者の話をありがたがっている限り、ロックは“若者の音楽”ではなくなっていくでしょう。ビートルズの武道館公演を観たひとや、ピンク・フロイドを箱根アフロディーテで観た者の自慢話をありがたがって聞く者が居る限り、ロックは確実に老いてゆきます。いまだに「レッド・ツェッペリンが一番!」などと言ってる者を『ロック界の大御所』としてのさばらせておいてはいけない(笑)。こういう実体験者たちが、ビートルズや、ピンク・フロイド、レッド・ツェッペリンの話をしようとするところで「そんな年寄りの想い出話なんか聴きたくねぇよ! それよりもロック・ファンなら、ストロークスの話をしろよ!」と突き放す姿勢こそ、ロックというジャンルをいつまでもみずみずしい状態で置いておくために必要なのです!
話は変わりますが、私の音楽を聴くうえでの絶対的なスタンスは「時代と並走」です。1982年に洋楽を聴き始めた時から、いや、1974年頃に『スター誕生』に「中三トリオ」(笑)が出てるのを観た時から、その時代の鼓動を伝える音楽のみを聴いていました。その時代にあるものしか聴かない。昔流行ったものには興味は無いわけではありませんでしたが、現在進行形の音楽に時間とお金を費やすのが精一杯で、とてもバック・カタログには手は廻らない状態がず〜っと続いてました。洋楽に限っていえば、私は1982年以降の音楽は「時代と並走」して来たためにある程度(笑)知識はあります。だけど、それ以前の音楽はホントは全然知らないんだよ〜!(笑) ラジオでも流れるような一部の超有名曲しか知らない(笑)。ビートルズもカーペンターズもパープルもイエスもエマーソン、レイク&パーマーもジェフ・ベックもアルバム1枚も持ってないよ〜!(笑) ところがこんなにロックの過去に疎い私なのに「ヒロくんがススメるものは『ロキノン』のレヴューより信用してます」って言ってくれるひとが実際に居たりします(笑)。つまり、今のロックを語るのに、ビートルズもストーンズもツェッペリンもな〜んにも聴いてなくても大丈夫ってこと(笑)。だけど先述したように、ロック業界は今だ「ロック創成期実体験者」たちに牛耳られてるため、彼らが「ビートルズもストーンズもツェッペリンも聴いてない奴がロックを語るな!」と一喝すると、「ビートルズとストーンズとツェッペリン聴いてないとロックを語っちゃいけないんだ」と素直に従う空気がいまだに蔓延してますケド...(苦笑)。
で、今まで'70年代までの音楽と無縁で居た私ですが、こんな私のところに当サイトの相互リンク先『spilt
milk』のアクアさんからこんな依頼がありました。「TOTOの『宇宙の騎士』のレヴューを書いてくれ!」...。「私はTOTOは'82年の『聖なる剣〜TOTO
IV』以降しか知らないんだけど...いいの?」って訊いたら、「それでもいい」ってゆわれたので、引き受けましたが(笑)。ということで、今まで聴いたことのないTOTOの『宇宙の騎士』('78年)を聴いてレヴューを書くことになりました。だけど、頼まれたレヴューも書かないまま月日は流れて行きました(笑)。そんなある日、少年ナイフを観に出掛けたら、開演前のBGMにグラハム・ボネット在籍時のレインボウが流れてました。「おおっ! “All
Night Long”に“Since You've Been
Gone”じゃないか!!!」と曲聴いただけで判りました(笑)。で、ふと気が付いたんだよね。「オレ、レインボウなんか聴いたことないゾ!!!」...。レインボウ聴いたことないのにもかかわらずグラハム・ボネット在籍時の“All
Night Long”と“Since You've Been
Gone”だって曲名まで判った...すなわち、意識しないところでそれと知らずにこれらの曲をたくさんたくさん聴いてたワケです、私は(笑)。そこで閃いたのがこの企画(笑)。自分が聴いたことないハズの'70年代の名盤を聴いてみてレヴューしてみたら、どうなるだろう?(爆笑〜!!!)
この企画は、'80年代以降の音楽しか知らないヒロくんに'70年代の音楽を聴かせてみて、その反応をみる『人体実験』コーナーです(笑)。'80年代以降の音楽しか聴いてこなかったヒロくんの耳には、'70年代の名盤たちはどのように響いて聴こえるのか!?
(2002.2.1)
CREEDENCE
CLEARWATER
REVIVAL--Pendulum
クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル『ペンデュラム』
(1970年、import : Fantasy FCD-8410-2)
1. Pagan Baby 2. Sailor's Lament 3. Chameleon
4. Have You Ever Seen The Rain?
5. (Wish I Could) Hideaway 6. Born To Move
7. Hey Tonight 8. It's Just A Thought 9. Molina
10. Rude Awakening #2
第5回目は、「C. C. R.」と略されることが多いクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルを取り上げます。
【クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルと私】
「C. C.
R.」こと、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルを私が初めて知ったのは、ハノイ・ロックスがC.
C. R.の“Up Around The
Bend”(アルバム『コスモズ・ファクトリー』収録)をカヴァーしたのがキッカケでしょうか? ハノイ・ロックスの1984年のアルバム『トゥー・ステップス・フロム・ザ・ムーヴ』のアタマを飾る“Up
Around The Bend”(曲名は知らなかった)がC. C.
R.のカヴァー曲だと聞き、ラジオでこの曲が流れてるのを聴いてるうちに自然とC.
C. R.の名前がアタマのなかに刻み込まれていきました。そのうち、この“Up
Around The
Bend”のオリジナルを聴きたくなったので、地元・富山ローカルの洋楽ラジオ番組『KNBポップス'84』にC.
C.
R.のオリジナル・ヴァージョンをリクエストしてみた。だけど、曲名を知らなかったので、同じく『コスモズ・ファクトリー』収録の“Lookin'
Out My Back
Door”を間違ってリクエストしちゃったんだよなぁ...(苦笑)。したがって、私が意識して聴いた初めてのC.
C. R.の曲は“Lookin' Out My Back Door”だったりする(笑)。
当時の洋楽小僧の愛読書だった音楽雑誌『MUSIC
LIFE』あたりがプッシュしてたハノイ・ロックスが彼らの曲を取り上げたことは、C.
C.
R.の知名度アップに相当貢献してました。1985年頃といえば、日本の歌謡界では“ロマンティックが止まらない”などのヒット曲で知られるC.
C.
B.(旧名・ココナッツボーイズ)が人気を博していた頃(笑)。当時高校生だった私のクラスメイトにも、ハノイ・ロックス経由でC.
C. R.を知ってるだけなのにもかかわらず、「C. C.
R.って知ってる? え? C. C. B.なら知ってるって? ははは」と、C. C.
R.を知ってることで優越感に浸ってるヤツが居たなぁ(笑)。
ところで、C. C. B.が日本の歌謡界を席巻してた(笑)'85年、C. C.
R.がその名を新世代洋楽リスナーに意識させる出来事がありました。C. C.
R.のリーダー、ジョン・フォガティが10年振りのソロ・アルバム『センターフィールド』をリリースして、シーンに復帰。MTVでプロモ・ヴィデオがじゃんじゃん流れるような新世代バンドがシーンの主流を占めるなか、『センターフィールド』は全米No.
1を記録。お蔭で、私にとって、C. C.
R.とはジョン・フォガティが昔演ってたバンドっていうイメージが強いです。
その後、“雨を見たかい”の邦題で知られる“Have You Ever Seen The
Rain?”という超有名曲の存在も知りました。この曲をカヴァーしてるアーティストの多いこと、多いこと。ちょっと考えただけでも、ボニー・タイラー、ラモーンズ、ジョーン・ジェットなどなど。あと、TVのCMでこの曲が使われることの多いこと、多いこと(笑)。地元・富山ローカルの洋楽ラジオ番組『KNBポップス・シリーズ』のD.
J.やってた相本芳彦氏が、この曲をかける度に「英語の現在完了形は、経験も表す」などと言っていたのも、今でも印象深いなぁ(笑)。
今回、C. C. R.を取り上げるに当たって、その名曲“Have You Ever Seen
The
Rain?”が収録されている『ペンデュラム』(1970年作)を選びました。
【んで、『ペンデュラム』を実際に聴いてみると...】
アメリカの大地に根ざしたアーシーなロックですね。1曲目の“Pagan
Baby”からサザン・ロックっぽい(笑)。で、意外に長い曲が多いのでビックリします。10曲の収録曲のうち、6分台が2曲、5分台が1曲。コンパクトなポップ・ソングが多いイメージを持ってたので、ちょっとビックリ! 勿論、“Sailor's
Lament”や“Hey
Tonight”、“Molina”みたいなポップな曲もありますが。ポップで短い曲に混じって、長い曲も平気で演るところが'70年代のバンドらしいというか...(苦笑)。私が抱いてたC.
C. R.のイメージに一番忠実な曲は“Chameleon”かなぁ。
ところで、アルバム聴いてて一番意外だったのが、キーボードが表に出てること。いちお、C.
C.
R.はギター2本にベース、ドラムっていう編成でキーボーディストは居ないし、私が今回聴いた米盤CDにはキーボード・プレイヤーのクレジットも無い。使われてる楽器がオルガンなのかシンセなのかも明記されてないんだけど、名曲“Have
You Ever Seen Rain?”だけでなく、“Born To Move”、“It's Just A
Thought”といった曲でキーボードの音色が耳を引く。“(Wish I Could)
Hideaway”に至ってはイントロのキーボードが主役じゃないの?(笑) '70年リリース当時には、オシャレなサウンドだったかもしれない(笑)。ってことで、このアルバムは大地に根ざしたロック演ってるワリには泥臭くないし、かなり聴き易かったッス。
話は変わるけど、私にとってジョン・フォガティの声って『センターフィールド』(1985年)で聴かれるヴォーカルが一番馴染みがあるんだけど、このアルバムでのジョンのヴォーカルは『センターフィールド』と違って、パワフルっつうか(笑)力みが感じられる。力入ってるな...って感じ(笑)。あまり若さは感じないけど(笑)。
(2002.6.27)
《お知らせ》当コーナーでは、みなさまからのリクエストもお待ちしております(笑)。「ヒロくんの感想を是非聞きたい」とか「ヒロくんに是非とも聴かせてみたい」という'70年代の名盤がありましたら、リクエスト下さい。年数回のペースでしかUPする予定がない企画なので、採用は約束できませんが...(笑)。