ヒロくんのLIVE REPORT '11 PART 10 FUJI ROCK FESTIVAL'11

 2011年の『FUJI ROCK FESTIVAL』(以下、『フジ・ロック』)の出演ラインナップが発表された時に私が目星を付けたアーティストはイロイロと居るけど、実際に日割りが発表されてしまうと、それらのアーティストの出演日がものの見事に分散してしまった。ケークとフィーダーとザ・キルズが出演する3日目を軸に予定を組んだけど、私としてはクラムボン、少年ナイフ(以上の2組は演奏時間が重なってしまったが)とファウンテインズ・オブ・ウェインが出演する2日目も捨てがたく、ホントは2日目と3日目の2日間とも参戦する気だった。が、3日目については早いうちから弟子に話をしておいて参戦許可をもらってたんだけど、2日目については、弟子の許可を取るどころか、その話を切り出すことすら出来ないまま(苦笑)タイムアップとなり、結果的に私が参戦出来るのは3日目だけとなった。しかし、新潟豪雨とそれに伴う交通機関のマヒを考えると、参戦するのを3日目だけにしておいてよかったと言わねばなるまい。豪雨の影響で、ほくほく線を通る特急『はくたか』だけでなく、ほくほく線全線と信越線直江津―新潟間、上越線水上―宮内間が止まってしまい、道路のほうも関越自動車道や国道17号線、253号線、353号線などが通行止めとなり、富山からは電車でもクルマでも越後湯沢に行くこと出来ないという状態。そんななか、長野新幹線を使って一旦高崎に出るという手段によって、7月30日の夜のうちに現地入りを済ませた私。伝説の嵐の天神山の第1回目の『フジ・ロック』から毎年参加してる古株フジ・ロッカーならではの「執念」としか言いようがない(苦笑)。
 1日目と2日目は雨に祟られ悲惨な状況だったと聞くけど、私が現地入りした7月30日夜は雨は降っておらず、濡れることなくキャンプサイトでテントを設営出来た。天気は回復傾向にあるという予報を信じ、3日目の好天を期待してた。が、7月31日当日の朝は雨こそ降ってなかったけど、8時頃に激しい雨が...(苦笑)。この雨も10時くらいには弱まり、これで天候回復か...と思った私、11時に会場入り。グッズの購入を済ませ、グッズの購入を済ませ、リンゴ・デススターを観ておこうと思い、一旦は『WHITE STAGE』に向かったものの、一度も『ドラゴンドラ』に乗っていないことを思い出し、乗り場のある『OASIS』エリアへ移動。『ドラゴンドラ』に乗る前の腹ごしらえのつもりで『OASIS』エリアで食事をしてると、急に大粒の雨が降り始めた。たまらず『RED MARQUEE』のなかに避難。『RED MARQUEE』ではAPOLLO 18がちょうど演奏中で、最後の曲を演ってる途中だった。彼らの演奏が終わってセット・チェンジが行われ、ザ・ブラック・エンジェルズが登場する頃にも雨の降りは激しいまま(ちなみに、楽器のチューニングしてたのは、ザ・ブラック・エンジェルズのメンバー本人だった)。『ドラゴンドラ』に乗るつもりだった私は、そのまま『RED MARQUEE』に缶ヅメとなってしまった。

【THE BLACK ANGELS】...RED MARQUEE
 『ブラック・エンジェルズ』といえば、私の世代の男性は殆ど皆『週刊少年ジャンプ』に連載されていた平松伸二の漫画を思い浮かべるだろう(苦笑)。「地獄へ落ちろ!!」という名セリフのアレである。2006年に彼らがデビューした時、バンド名につられて彼らのアルバムを買った私、中身を聴いて、あまりのポップさ皆無で取っ掛かりの無いサイケな内容に「私が聴くべきではないバンド」として封印したハズだった(苦笑)。しかも、彼らがこの『フジ・ロック』3日目に出るというので、予習を試みた結果、「やっぱりこのバンドとは縁が無いや...」と再びサジを投げたほど。天候のせいとはいえ、彼らのライヴを観ることになろうとは...。すご〜〜〜く因縁を感じる(苦笑)。突然の雨で、緊急避難的に『RED MARQUEE』に逃げ込んで来たフジ・ロッカーズは私以外にもたくさん居たようで、マイナーな存在な彼らのライヴにしては、かなりの聴衆の数だ。
 紅一点のドラマー、ステファニー・ベイリーを要する5人組の彼ら、ステージ向かって左側から左利きの若いギタリストのクリスチャン・ブランド、髭モジャなリード・ヴォーカルのアレックス・マース、屋内なのにサングラスかけた粋なギタリストのネイト・ライアン、ヒゲ生やしたベーシストのカイル・ハント...の順に位置しており、ネイトとカイルは位置を頻繁に入れ替える。ステージ奥ではブロンドの女性ドラマー、ステファニーがリズムを刻んでる。彼女のセットの前には誰が使うのか、青いフロアタムが置かれてた。1曲目ではパーカッション(シェイカーや皮無しタンバリンなど)も兼務してたアレックスは2曲目にはカイルのベースを演奏。自分の楽器を手放してしまったカイルはキーボードを演奏。ベースはアレックスからカイルに戻り、ネイトが観客にM.C.し、そのまま3曲目でリード・ヴォーカルをとり、4曲目から6曲目ではアレックスがパーカッションを担当しながらヴォーカルを担当...といった具合に曲によって担当楽器を変えていく『黒き天使たち』。彼らを平松伸二の『ブラック・エンジェルズ』のキャラクターに置き換えると(笑)、ギターを黙々と奏で続けるクリスチャンは雪藤で、髭のヴォーカル・アレックスは外見から鷹沢神父。サングラスかけたネイトから漂うニヒルさは水鵬を思わせ、体型が太めでどことなく鈍い感じがするカイルは羽死夢(苦笑)。ドラマーのステファニーはブロンドだからジュディ...と言いたいところだけど、彼女が醸し出してる緊張感は麗羅のそれだ。
 雨はなおも降り続いてる。5曲目でカイルがステファニーの前のフロアタムを叩く。誰が使うのか不明だった青いフロアタムの存在意義がここで判明(苦笑)。7曲目に演奏した“Telephone”(よーやく知ってる曲が出た)ではネイトとカイルが楽器を交換し、ネイトがベース、カイルがギターを演奏。8曲目の“The First Vietnamese War”ではカイルがキーボードを担当してネイトがベースを弾き、9曲目ではアレックスがベースを弾きながら歌い、カイルはギター、ネイトはギターも弾きつつパーカッション類も担当。10曲目ではアレックスとカイルがキーボード弾いてベースレスのダブル・キーボードになり、最後の11曲目ではアレックスもギターを構えてのトリプル・ギター編成...というふうに始めから終わりまで一貫して担当楽器を目まぐるしく変えた『黒き天使たち』。担当楽器を替えなかったのは、クリスチャンとステファニーだけ。演奏が終わると、ギターの2人が「アリガト!」と言ってステージを去った。彼らの演奏が終わった頃に、ようやく雨が弱まり、小雨がパラつく程度になってた。『RED MARQUE』軟禁状態からようやく解放(苦笑)。
【SET LIST】...'11.7.31 苗場スキー場
1. Young Man Dead
2. Entrance Song
3. Yellow Elevator #2
4. Black Grease
5. Haunting At 1300 McKinley
6. The Sniper
7. Telephone
8. The First Vietnamese War
9. You On The Run
10. Phosphene Dream
11. Bloodhounds On My Trail

【THE KILLS】...GREEN STAGE
 『RED MARQUE』前で、ケータイで写真を撮ってる渋谷陽一(らしき人)を目撃した後、『GREEN STAGE』に向かう。ステージ前向かって右側のエリアでザ・キルズの登場を待つ。英国人ギタリストの「ホテル」ことジェイミー・ヒンズとアメリカ人シンガーの「ヴィヴィ」ことアリソン・モシャートによる2人組だけど、ライヴだとサポート・メンバーが居るんだろう...とこれまで思ってた。ら、実際にステージ向かって左側から登場してきた彼らは、ホントに2人組。その分、ホテルがイロイロとドラム・マシーンの面倒をみてるようだ。ホテルがスウィッチ入れた(?)ドラムマシンのリズムに、ホテルがギターが重ねてく。そこにヴィヴィが歌を乗せると、2ndアルバムのタイトル曲“No Wow”だ。ヴィヴィは黒のパンツに黒の上着姿で黒ずくめ。写真でみて思ってたよりもちょっと太かった(苦笑)。スーパーモデルのケイト・モスと結婚したばかりのセレブであるハズのホテルも想像してた以上にオッサンだった(苦笑)。曲が終わり、ホテルが操作して新しいリズムを鳴らし始める。ホテルが弾き始めたギター・リフは...“Future Starts Slow”! シンプルだけど凄くカッコいいリフを持つこの曲では、ヴィヴィがマイクを持ってステージ向かって右端へ移動しようとする。すると、マイクのコードに引っ張られる形でスタンドが倒れそうになったので、それを止めにスタッフが慌ててステージに飛び込んで来た(苦笑)。マイクスタンドが倒れることなくヴィヴィが曲を歌い終わると、曲紹介。「“Heart Is A Beating Drum”」。この曲では、途中からヴィヴィもギターを構える。ヴィヴィもホテルも、ギターのシールドはひと昔前の電話コードのようにクルクル巻きになってる。ギターを構えたまま2回転半くらいしてシールドを体に巻き付けるヴィヴィ、曲が終わると「アリガト!」と日本語で御礼を言った。続いてホテルが操作して鳴らし始めたリズムは、彼らのデビュー・アルバム『キープ・オン・ユア・ミーン・サイド』からの“Kissy Kissy”のリフ。この曲ではホテルとヴィヴィがそれぞれギターを構えたままマイクを挟んで向き合い、1つのマイクで歌うという絡みあり、実にセクシー。まだ昼間なのに(苦笑)。曲が終わるとヴィヴィはギター下ろし、ホテルは「Hello〜! Fuckers!!!」と『GREEN STAGE』前に集まった観客を煽る。新作からの“DNA”を演ると、「thank you very much!」と観客に御礼を言ったヴィヴィ、これまた新作からの“Satellite”へ。曲が終わると、今度はホテルが「thank you〜!」と観客に御礼を言う。次に、ヴィヴィがギターを構えた“Tape Song”を演ると、またもやヴィヴィが「thank you very much〜!」。次の“Baby Says”では、ギターの代わりに缶ビールを持ちながら歌ったヴィヴィ、曲が終わるとステージ奥に準備してあったフロアタムへ移動し、ドラム・スティックを手にした。ここで演奏された“Pots And Pans”ではドラムマシンの代わりにヴィヴィ、フロアタムを叩きながら歌うも、曲の途中でヴィヴィはフロアタムとスティックを放棄。リズムは打ち込みに切り替わり、ヴィヴィもステージ奥のほうからフロントに出て来た。こうして“Pots And Pans”を演り終えると、3rd『ミッドナイト・ブーム』のアタマを飾る“U. R. A. Fever”へ。この曲を披露すると、ヴィヴィは「thank you very much! we are THE KILLS!」などと挨拶し、ホテルはシンプルに「thank you!」と御礼を言ってから、2人並んで観客に御辞儀し、ステージ向かって左側の袖へと消えて行った。
 新作『ブラッド・プレッシャー』からの曲の割合が多いものの、彼らのこれまでのキャリアを盛り込んだ納得いくセット。欲を言えば“Superstition”も聴きたかった(苦笑)。セクシーな彼らの本領発揮には、夜の『RED MARQUEE』のほうが致ってたかもね(苦笑)。
【SET LIST】...'11.7.31 苗場スキー場
1. No Wow
2. Future Starts Slow
3. Heart Is A Beating Drum
4. Kissy Kissy
5. DNA
6. Satellite
7. Tape Song
8. Baby Says
9. Pots And Pans
10. U. R. A. Fever

【FEEDER】...GREEN STAGE
 『フジ・ロック』5回目の登場となるフィーダーだけど、
1999年の初出演と2005年は『WHITE STAGE』、2001年と2008年は『RED MARQUEE』での演奏で、これまで一度もメイン・ステージである『GREEN STAGE』での演奏は無かった。これまでの『フジ・ロック』でのフィーダーの演奏は全て観てることもあり、今回の『フジ・ロック』、2日目と3日目とどっちを観に行こうかと迷ったけど、彼らが出るから3日目に決めた(苦笑)。そこまで愛着を持つ彼らが初めて『GREEN STAGE』に登場するというので、彼らの勇姿を観ようと、ザ・キルズの演奏後には『GREEN STAGE』前のモッシュピットに陣取ってた私、しばらくしてフィーダーのライヴん時にモッシュピットに居ては危ないということを思い出し、ステージ前向かって右側のエリアに移動(ザ・キルズを観てた位置に戻ったワケ)。ステージ奥には、彼らの現時点での最新作『レネゲイズ』のジャケットが描かれたバックドロップ(ただし、アルバムのアートワークのロゴは白だが、このバックドロップのロゴは赤色)が吊るされてる。彼らの登場予定時間の15:50になると、フィーダーの登場を告げるオープニング・テーマが流れ、ステージ向かって右側の袖からフィーダーの2人とサポート・メンバー2人が登場。ギターを構えるなり、グラントが「Fuji Rock〜!」と叫ぶ。去年のジャパン・ツアーでも叩いてたサポート・ドラマーのデーモンは最初から上半身裸で、ドラムキットに就くなりバタバタ叩き、景気づけ。オープニング曲は現時点での最新作『レネゲイズ』からの“Barking Dogs”。この曲の間奏部ではタカさんも「Fuji Rock〜!」と叫んだ。この曲を演り終え、グラントが弾き始めたギター・リフは“Insomnia”。彼らが初めて『フジ・ロック』に出演する直前にリリースした2nd『イエスタデイ・ウェント・トゥ・スーン』に入ってる曲で、この曲を聴くと今でも1999年の『WHITE STAGE』を思い出す。この“Insomnia”では早くもクラウド・サーフィンを行う者が現れ、モッシュピットを離れててよかったぁ...と自らの危機察知能力に感謝(苦笑)。“Insomnia”の余韻醒めやらぬなか“This Town”を演った後、グラントが曲紹介。「“White Lines”」。『レネゲイズ』のアタマを飾る“White Lines”がここで披露された。演奏が終わると、グラントもタカさんも楽器を交換。ここで、「ようやく『GREEN STAGE』で演奏することが出来て、嬉しい」などと英語で喋ったグラント、子供のような微笑をみせ、ホントに嬉しそう。ここで披露された曲は、『プッシング・ザ・センシズ』からの“Feeling A Moment”で、この曲のイントロのS.E.やシンセの音を耳にするまで、サポート・メンバーとしてドラムのデーモン以外にもう1人、キーボード担当のかたが居ることにようやく気付いた(苦笑)。グラントが「日本のrenegades(背教者?たち=ここに居る観客)に捧げるよ」などと観客に声をかけ、“Renegades”へ。曲が終わり、「アリガト!」とグラントが日本語で盛り上がり続ける観客に御礼を言うと、タカさんからM.C.。「『GREEN STAGE』で出来るのは格別だけど、今年は東北のほうでの震災もあり、特別な気持ちで来ました。この場所で『フジ・ロック』が出来るってことは凄いことなんだぞ。『SMASH』の日高社長、地元のかたがた、裏方さん、出演者、そして来てくれたみんな、自分たちに拍手だ」などと、タカさんにしては長いM.C.で、それだけ震災について思うところがあったということだろう。タカさんが長々と日本語で熱い思いを語ってる間、グラントは「彼、何を喋ってるの? 僕には分からない」というふうに(明石家さんま演ずる『タケちゃんマン』の宿敵)『ナンデスカマン』のような身振りをみせてた。“Just The Way I'm Feeling”を演った後、グラントが思わせぶりにギターである曲のイントロを弾き、途中で止めて帰ろうとすること2回。3度目の正直でようやく演奏に入った曲は“Buck Rogers”。ファンに大人気のこの曲でも、クラウド・サーフィン敢行者がばんばん続出。タカさんもピョンピョン飛び跳ねながらベース弾いてたけど、機材に不具合があったようで、曲の途中だというのに楽器を替えてた。“Back Rogers”の余韻が醒めやらないうちにデーモンが叩き始めたドラム・リフは“Come Back Around”。この曲に続き“Home”を披露すると、「今日は『GREEN STAGE』に僕たちを観に来てくれてどうもありがとう。近い将来新作を出して、またこの場に戻ってきたいと思います」などと観客に自分の思いを英語で伝えたグラント、続いて「1stアルバムから」と紹介し、“High”へ。この曲も1999年の『WHITE STAGE』で演奏された曲で、トンボが舞う昼間の『WHITE STAGE』を想い出してしまう(苦笑)。“High”を演り終えると、タカさん「こいつ、明日富士山登りに行くんだって。マジだぜ」とグラントの富士山挑戦を暴露。暴露されたほうのグラントは、岩登りする仕草をみせ、おどけてる(苦笑)。ここでフィーダーのライヴの締めとして演奏されることが多い“Just A Day”が登場。この曲ではクラウド・サーファーが続出。最後に大いに盛り上がってフィーダーの演奏は終わりかと思ってたら、タカさんがステージにゲスト・ギタリストとして、INORAN(LUNA SEA)と「昨日の『フジ・ロック』でのステージも大盛況だったらしい」(ELLEGARDEN〜the HIATUSの)細美武士を招き入れ、「お前ら、フジ・ロックに歴史に残るような、東北のひとたちに届くように声を出せ〜!」と観客を煽ってから演奏始めた曲は、“Breed”!!! ニルヴァーナのカヴァーとなるこの曲での観客の盛り上がりは想像以上。モッシュピットでばんばんクラウド・サーフィンが起こるのは当然として、モッシュピットを離れて安全地帯に居たつもりになってた私も、後ろからどんどん観客が押し寄せてくるものだから、ここでもクラウド・サーフィンが起こりそうな危険を感じた。もの凄く観客を盛り上げて演奏を終えたグラントとタカさんは、ゲスト・ギタリストと抱き合ってお互いの健闘を讃え合い、観客に手を振ってからステージを後にした。
【SET LIST】...'11.7.31 苗場スキー場
1. Barking Dogs
2. Insomnia
3. This Town
4. White Lines
5. Feeling A Moment
6. Renegades
7. Just The Way I'm Feeling
8. Buck Rogers
9. Come Back Around
10. Home
11. High
12. Just A Day
13. Breed (ニルヴァーナのカヴァー)

 フィーダーを観終えてから一旦キャンプサイトのテントに戻り、しばらく休憩。

【CAKE】...WHITE STAGE
 今回の『フジ・ロック』で私が一番楽しみにしてたのがケーク。彼らのライヴを観るのは
1997年の初来日以来であり、実に久しぶり。その間に4枚のアルバムのリリースと、幾度とないメンバー・チェンジがあった。14年前に私が観たメンバーのうち今も在籍してるのはリーダーでヴォーカル/ギターのジョン・マックレアと、トランペッターのヴィンセント・ディフィオーレの2人のみである。そうなる筈は無いとは思ってたけど、『WHITE STAGE』に入場制限がかかること恐れて(『GREEN STAGE』でのイエロー・マジック・オーケストラの熱演も無視して...苦笑)移動。開演40分前には『WHITE STAGE』に到着。最初は淋しい人の数だったけど、次第に人の姿が増えていき、恥ずかしくないくらいにひとが集まった。ケークがこんなに人気があるなんて! 新作『Showroom Of Compassion』が全米チャートでNo. 1となった効果だろうか。それとも、彼らの後にウィルコが登場することもあって、コアなオルタナティヴ・アメリカン・ロック・ファンがすでに集結してたんだろうか(苦笑)。スクリーン奥には雪山の絵が描かれたバックドロップが吊るされてる。これが富士山みたいな成層火山の絵だったらもっとよかったのになぁ...(苦笑)。8時25分くらいになると場内に彼らの登場を知らせる、どっかの映画音楽のようなテーマが流れ始め、開演予定時間の8時30分を過ぎると、ステージ向かって左側からケークの5人登場。ジョン・マックレアは、ゲートボール場に居る老人のような水色のジャンパー姿。オトナのバンドだけあって、その他のメンバーはドラマーを除いてスーツ姿だ。ジョンがコンパクトなアコースティック・ギター(以下、アコギ)を構えて弾き始めたイントロは、彼らにとって出世作となる2ndアルバム『ファッション・ナゲット』のアタマを飾る“Frank Sinatra”で、ファンの多くから歓声が上がる。アルバムで聴かれるよりもフォーキーかつシンプルに演奏され、曲の持つ哀愁がいっそう際立つ。ジョンの右側に居るヴィンセントがトランペット・ソロを決めると、観客から惜しみない拍手が送られる。ジョンの外見にはさほど変化は無いけど(14年前からすでにオッサンだった...苦笑)、ヴィンセントのアタマは14年前と比較すると薄くなってた。ジョンの左側には若手の金髪の男前ギタリスト、ザン・マッカーディが居て、ドラマーのパウロ・バルディ(パンフレットにはアンドリュー・グリフィンの名が記されていたけど、顔写真をみる限り、パウロだと思ったんで、パウロがドラマーだったとして本リポートを記す)の右隣にはベースのゲイブ・ネルソンが居る総勢5人での演奏。ヴィンセントはトランペットだけでなく、キーボードも弾く模様。“Frank Sinatra”の演奏が終わり、日本語で「アリガト」と観客に礼を言い、アコギを下ろしたジョンが次に手にした楽器はヴィブラスラップ(笑)。このヴィブラスラップの♪カーーー!...という音を聴くと「あ、ケークだな」と思ってしまう(苦笑)。初っ端からヴィブラスラップの♪カーーー!が鳴り響いた曲は新作『Showroom Of Compassion』からの“Mustache Man (Wasted)”。ヴィブラスラップだけでなく、シェイカーも振るジョン。この曲が終わると、またアコギを構えるジョン。ここで「『Showroom Of Compassion』と名付けたニュー・アルバムからもう1曲演る」などと英語でM.C.し、“Sick Of You”へ。ヴィンセントはキーボードやグィロ奏者としても活躍(苦笑)。曲の中盤にかかるとジョンが観客の居るフィールドをステージ真ん中で二つに分け、ステージ向かって左側半分には♪ah〜ahahah~...と歌わせ、残りの半分(ステージ向かって右側)には♪I'm so sick of you〜so sick of me〜I don't want to be with you〜と歌わせる。ジョンはアコギの演奏そっちのけで観客を煽るのに夢中といった感じで、2つのグループともジョンが満足するまで何度も歌わせられた。ようやくジョンが満足し、“Sick Of You”が終わると、要求にきちんと応じてくれた観客たちに「アリガト、ドウモアリガト!」と日本語で御礼を言ったジョン、アコギを下ろし、ニュー・アルバムについて「大手レーベルと契約せずに自分たちでやったよ」などと話してから「前のアルバムのアタマに入ってる曲」と曲紹介。前作『プレッシャー・チーフ』の1曲目の“Wheels”の演奏を始めた。アルバムで聴かれるとおりのアレンジで淡々と演奏したけど、アルバムどおりに曲は終わらず、最後にザンのギターの見せ場を設けてた。ザンをはじめとするメンバーたちに観客が大きな拍手を送ると、4th『コンフォート・イーグル』からの“Opera Singer”へ。この曲を演り終わったところで、日本語で観客にメッセージを送ったジョン。「ガンバッテ、ニッポン!」 このメッセージに『WHITE STAGE』に集まった観客から大歓声が沸き上がった。 3rd『とけない魔法』から“Guitar”、新作から“Long Time”を演ると、ジョン、(おそらくケーク・グッズの)Tシャツを後ろ向きになって(観客に背を向けながら)投げ入れた。次の曲は現在のアメリカでのケーク人気を決定付けたという大ヒット曲“Short Skirt / Long Jacket”。この曲は日本でも人気があるようで、観客から歓声が上がる。この曲でも“Sick Of You”の時と同じく観客を2グループに分けて♪nanananana〜na〜nanananana〜...と歌わせ、お互いの声量を競わせたジョン、続く“Sheep Go To Heaven”でも観客の半分に♪Sheep go to heaven〜、残りの半分の客には♪goats go to hell〜と歌わせ、観客に声出し合戦させた。次に“Never There”を演ると、一旦これで終わりのようなそぶりをみせたけど、「エ"エ"〜〜〜ッ! もう終わり!?」というファンの空気を察知して歌い始めたジョン。たぶん、ここでのファンが反応が無かったら、このまま彼らのライヴは終わってたことだろう。ジョンがオケ無しで歌い始めたラップ調の曲は、2nd『ファッション・ナゲット』からのヒット曲“The Distance”。古くからのファンは勿論のこと、多くの観客が盛り上がりをみせたところで、観客に一礼してからケークの5人は会場を去った。
 全米No. 1になったにもかかわらず日本未発売である新作からの曲が意外に多かったものの、1stアルバムを除く過去のアルバムから最低1曲は演ってくれ、彼らのキャリアを総括するようなバランスの取れた選曲。14年ぶりのケーク、堪能しました。
【SET LIST】...'11.7.31 苗場スキー場
1. Frank Sinatra
2. Mustache Man (Wasted)
3. Sick Of You
4. Wheels
5. Opera Singer
6. Guitar
7. Long Time
8. Short Skirt / Long Jacket
9. Sheep Go To Heaven
10. Never There
11. The Distance

【くるり】...RED MARQUEE
 『GREEN STAGE』でのケミカル・ブラザーズのパフォーマンスも無視し(苦笑)、『RED MARQUEE』には くるりの登場予定時間の23:00の約1時間前に到着。ステージではスタッフたちがセット・チェンジを行ってる。『RED MARQUEE』に続々と集まって来る くるりファン。最初はみんなイスを出したりして座ってたんだけど、開演前20分くらいになると座ってるとジャマなくらいの観客の数が増えたのと、本格的なリハーサルが始まったのとで、座ってた客も立ち上がる。ベースとドラムで本格的なジャム・セッション演ってるなぁ...と思って見ると、ベーシストは佐藤征史だ! よくよく見るとステージには、「TOWER OF MUSIC LOVER 2」の文字がプリントされた黒のTシャツを着てる岸田の姿も。メンバー自らが楽器をチューニングして音出しするリハーサルは「公開リハーサル」の様相を呈し、岸田が歌い始めたのは“太陽のブルース”。ギターの吉田省念、ドラムの田中佑司、トランペットのファンファンが加わった新編成による演奏で、ワン・コーラスだけ演るといったケチなことはせず、まるまるフル・コーラス演った くるり。開演前早くから彼ら目当てに『RED MARQUEE』に集まってたファンたちへの粋なプレゼントといったところだろう。演奏が終わると、岸田を除くメンバーは皆ステージを去り、最後まで残ってた岸田も「またあとで」などとファンに言い残し、一旦ステージを去った。
 『RED MARQUEE』のなかは見渡す限りひとで埋まってる。開演予定時間の23:00の5分前、岸田ひとりがステージに登場。エレキギターを構え、弾き語りで歌い始めたのは、“ばらの花”。弾き語りで聴くと随分と感じが違う(特に、歌詞の乗せ方)。岸田の弾き語りが終わると、残りのメンバー4人がステージに登場。それぞれの持ち場に就く。岸田が「フジロックーーー!」とシャウトし、演奏始まったのは“ロックンロール”。ステージ向かって左から吉田、佐藤、岸田の順に並び、後ろのドラムキットでは「もっくんが復帰したの?」と思わせる風貌の新ドラマーの田中が居て、彼の左側にトランペッターのファンファンが居た。“ロックンロール”を演ると、岸田と佐藤は楽器交換。ここで披露した曲は“お祭りわっしょい”。ここは祭りの場だから、「わっしょい! わっしょい!」と凄く盛り上がる(笑)。フェスならではの選曲か。続いて、懐かしの“ハイウェイ”を演ると、「フジ・ロックに帰ってきました!」と岸田。くるりのフジ・ロック出演歴は長く、岸田が語るには、まだ『RED MARQUEE』が無かった頃にこの場所にあった『Levi's NEW STAGE』(今の『ROOKIE A GOGO』的な性格の)ステージに1998年に出演(と岸田が言いかけたところで、佐藤から1999年と修正が入った...苦笑)したのが最初で、45分の持ち時間で3曲しか演らない怪演を披露したらしい(苦笑)。次に『FIELD OF HEAVEN』に出演して「知ってる曲演れ!」と怒られたりした後、『WHITE STAGE』で1回、『GREEN STAGE』で2回演奏(うち、1回は別バンド『The かまどうま』としても参加し、ダイナソーJR.を見逃したとのこと)。今回は「『RED MARQUEE』に出たい!」と最初から要望してたらしく、それが叶う形で今回のライヴと相成ったようだ。ここで、6月23日付で正式に加入した新メンバー紹介し、スペシャル・ゲストとしてペダルスティール奏者の高田 漣をステージに招き入れた。「(くるりの前に『RED MARQUEE』で演奏してた)アタリ・ティーンエイジ・ライオットに負けずに、このハードコア空間『RED MARQUEE』を湯気だらけにしてやる!」と宣戦布告する岸田。そのワリには岸田が構えてるのはアコギだ。ここで岸田が曲紹介したのは「“温泉”」(苦笑)。ハードコア空間とは対極の和み系の“温泉”、引き続きアコギで“旅の途中”を演ると、「『フジ・ロック』楽しんでますか?」と観客に訊く岸田。ファンが大いに楽しんでるぞ!とばかりに反応を示すと、「me too」と岸田(苦笑)。ここで岸田が「“飴色の部屋”」と曲紹介。♪止まない雨は〜...という歌詞は12時間前だったらシャレにならなかったかもしれないが、今はもう、大丈夫(苦笑)。再びアコギを構えた岸田が演奏し始めたのは、“奇跡”。この曲を演り終えると、高田 漣は御役御免となり、観客から大きな拍手を受けながら退場。「作ったばかりの曲 “いっぽ”」などと岸田が曲紹介して演奏始まった新曲は、佐藤もヴォーカルで大活躍。次に“リバー”を演ると、男性ファンたちから「ファンファン!」と次々に声がかかる。何か喋らなければ済まないような空気となり、ここでファンファンが「女のひと、めっちゃトイレに並んでて、たいへんだと思いましたぁ〜」などと喋った。ファンファンの短いトークの後、“ブレーメン”へ。この曲が終わると、「まだまだ続くけど、大丈夫か? このあとダンシーなアクトが続くから、ダンシーな曲を演る。“コンバット・ダンス”」などと岸田が曲を紹介し、この曲を演奏。「ありがとう、くるりでした」と岸田が観客に挨拶し、最後に“ワンダーフォーゲル”を披露。曲が終わると、5人が横一列(向かって左から田中、佐藤、吉田、岸田、ファンファンの順)に並んで肩を組み深々と御辞儀して、ステージを去った。この時点でもう23:55くらいになってる。ファンは熱心にアンコール要求のクラップをしてたけど、0:00から次のアクト(テイ・トウワ)が登場することになってたから、当然のことながら、アンコールは無理だった。“ワンダーフォーゲル”の終わりとともに、私の2011年の『フジ・ロック』もお終い。
【SET LIST】...'11.7.31 苗場スキー場
公開リハ. 太陽のブルース
1. ばらの花
2. ロックンロール
3. お祭りわっしょい
4. ハイウェイ
5. 温泉
6. 旅の途中
7. 飴色の部屋
8. 奇跡
9. いっぽ (新曲)
10. リバー
11. ブレーメン
12. コンバット・ダンス
13. ワンダーフォーゲル

 『RED MARQUEE』からキャンプサイトまで戻る途中に『THE PALACE OF WONDER』の『CRYSTAL PALACE TENT』の横を通りかかったら、ちょうどザ・ブラック・エンジェルズが演奏中(苦笑)。彼らにはやっぱり闇の中での演奏のほうが似合ってる...などと考えながらテントに戻った。

FUJI ROCK FESTIVAL @ Naeba Ski Resort '10.7.30

FUJI ROCK FESTIVAL @ Naeba Ski Resort '09.7.24

FUJI ROCK FESTIVAL @ Naeba Ski Resort '08.7.25

FUJI ROCK FESTIVAL @ Naeba Ski Resort '07.7.28

FUJI ROCK FESTIVAL @ Naeba Ski Resort '06.7.28

FUJI ROCK FESTIVAL @ Naeba Ski Resort '05.7.30

FUJI ROCK FESTIVAL @ Naeba Ski Resort '04.7.30〜8.1

FUJI ROCK FESTIVAL @ Naeba Ski Resort '03.7.27

FUJI ROCK FESTIVAL @ Naeba Ski Resort '02.7.27

FUJI ROCK FESTIVAL @ Naeba Ski Resort '01.7.27〜28

FUJI ROCK FESTIVAL @ Naeba Ski Resort '00.7.30

FUJI ROCK FESTIVAL @ Naeba Ski Resort '99.7.30〜8.1

FUJI ROCK FESTIVAL @ Tokyo Bayside Square '98.8.1

FUJI ROCK FESTIVAL @ Tenjinzan Ski Resort '97.7.26

INDEX